海外旅行中、宿泊ホテルの部屋でテレビを見るのは、なかなか楽しいものである。
日中のあわただしい観光スケジュールを終え、ホテルの部屋に戻るとホッとする。
缶ビールなどを飲んでくつろぎ、その日1日の出来事を思い浮かべながら、
言葉のわからないテレビをぼんやりと眺める楽しみは、格別のものがある。
バラエティ番組など、日本で見る番組とそっくりそのままのものがある。
日本のバラエティの企画や発想も、外国からのパクリが多いかも知れない。
いつかローマのホテルで見た現地のクイズ番組は、
日本の 「クイズ ミリオネア」 とまったく一緒だったもんね。
まあ、どっちが真似たのか、知らないけれど。
元号が昭和から平成に移った1989年、マレーシアのマラッカで泊まったとき、
つけっぱなしにしていた部屋のテレビに、ドラマ「武田信玄」が流れていた。
前年にNHKで放映されていた中井貴一主演のNHK大河ドラマである。
コトバは吹き替えではなく日本語のままだったが、画面を見て驚いた。
なんと、四ヶ国語の字幕が出ていたのである。
したがって、画面の下半分は字幕だらけだ。
それが邪魔になって、画面がよく見えない~。
翌日、現地の人に訊いたら、この国では英語、マレー語、中国語、タミル語、
という4つの言語が事実上の公用語として認知されているとのことであった。
日本人には理解しにくい多民族国家の一端を、
テレビを通じて垣間見ることができたことは、いい経験だった。
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今から10年前。…といえば21世紀が始まった2001年のことだが、
スペインのバルセロナのホテルで偶然「クレヨンしんちゃん」を見た。
いつもホテルの部屋ではテレビをつけっぱなしにしているので、
そのときもテレビから流れるスペイン語を耳だけで聴き流していたが、
ふとテレビ画面を見ると、 「クレヨンしんちゃん」 だったので驚いた。
番組は吹き替えだった。
だから、しんちゃんはスペイン語でしゃべっていた。
言葉はわからないが、雰囲気は十分に伝わってきた。
しばし時間と空間から抜け出して、僕は 「しんちゃん」 に見入った。
日本では「子どもに見せたくない番組」の上位を占めるモンダイ番組だが、
スペインでは、まあ、吹き替えだから言葉もそう下品にはならないだろうし、
国民性もずいぶん違うので、こういう日本のアニメは親も歓迎するのだろう、
時間帯も、いわゆるゴールデンタイムの放送だし…と思って見ていたのだ。
見れば見るほど、スペイン語を話すしんちゃんは可愛かった。
ところが、ごく最近、こんなニュースを聞いた。
スペインで放送されている 「クレヨンしんちゃん」 が、
教育上問題があるとして、放送時間帯が変更されたとか、
される予定だとかいった、そういうニュースだった。
いったいどういうこと…?
少なくとも10年前にバルセロナで 「クレヨンしんちゃん」 が放映されていた。
それが10年経った今ごろになって、「教育上問題がある」 とはナンなのだ。
遠く離れた異国を旅しているとき、ホテルに戻ってホッと一息つくと、
テレビに、わがニッポンの 「クレヨンしんちゃん」 が映っていた。
…あのときの懐かしくて嬉しかった気持を思い出すと、
無闇にこの番組を非難する気にはなれないし、
今回のスペインでの 「何を今さら」 の対応にも疑問を感じる。
「クレヨンしんちゃん」も、世界の各地で放映されているわりには、
あちらこちらで問題視されて、ちょっと気の毒過ぎ~ですよねぇ。
これが 「サザエさん」 だったら、何の問題もないのでしょうけど。