めぐろのめばる

目黒川近辺で日本の四季を楽しみ、未来の日本を憂う。
かつての美しい日本と日本人がいかに素晴らしかったかを思う。

お花見を楽しむ為に

2016-03-25 16:50:48 | お花見

もうすぐ満開の桜が見られるかと思いきや、今朝は、そんな気持ちに
水を掛けるかのような寒さです。
もう片付けようと思っていた冬物のジャンパーを羽織って、目黒川に出ると
案の定、昨日とほとんど変わらない状況です。

海外からの観光客が十数人、まだ殆ど蕾の状態の桜並木に、
少し残念そうな表情です。
しかしながら、こればっかりは、自然の成せる事であり、本当ならば
満開の美しい桜を見て頂きたかったです。

ところで、お花見と言えば、桜の花に下で宴会をすると言うのが常ですが、
今年の目黒河畔は、全面宴会禁止と成りました。
観光客が増えた事や、ごみ問題等、目黒川の桜が日本中に知れ渡るにつれ
トラブルが頻発するようになった事が原因と思われます。

以前から、遊歩道の周辺で無秩序に催される宴会は、交通の渋滞を招き
更には、飲食物の摂取に伴うゴミの放置、更には、酒が入る事に因る
観光客同士の喧嘩等、桜の美しさとは裏腹に、トラブルは増えるばかりでした。

確かに、大量のゴミが発生したり、沢山の花見客同士の諍いは問題です。
しかしながら、誰もが花見をして、年に一度の喜びに浸りたいのは共通です。
ただ、それぞれの楽しみ方が有って、御互いの気持ちが解り合えない状態での
全面禁止は、主催者側の一方的な判断であり、お花見に水を差す事に
成っているのではと思われます。

目黒川周辺で商売をしている人たちにとって、この時期は書き入れ時で、
一人でも多くの人が訪れる事を望んでいます。
その為、年々祭りの規模を大きくしていったのですが、それに伴い、予想される
様々なトラブルを考えず、収益を常に目標に掲げていたのが、今のトラブルを
産んだとも言えるのです。

確かに、宴会をしないで静かに桜を楽しみたい人も多いものです。
しかし、桜の下でお酒を飲みたい、美味しい物を食べたい、皆で語り合いたいと
この時期を楽しみにしている方々も多いです。
つまり、桜が咲けば、必ず、この時期は、こう言った人たちが集まり、それぞれの
考えの違いにトラブルが起こるのは当然と言えます。

美しい桜を咲かせ、周辺道路を整備すれば、当然人が集まるのは当たり前なのです。
桜を咲かせるという事は、そのどちらの立場の人達も満足できる環境を作ることが
主催者側が最初にする事と言えます。

桜をより美しく見せるには、どうしたら良いか、収益を得る為だけの提灯を並べても
桜と合ってるとは言い難いものが有ります。
更には、桜の花の色を台無しにする、ブルーのビニールシートは、お花見をする
どの地域に於いても、興ざめと言わざるを得ません。

美しい桜を愛でるという事は、私達人間側も、桜を引き立たせる努力が必要です。
誰もが感動する美しい桜並木、しかし、その下を流れる川は、暗青色に濁り
私達の生活汚水を流す下水道に過ぎません。
そして、その美しさに集まる人々は、自分の欲求のみを主張する醜さが
見え隠れすると、せっかくの花見の楽しさが半減してしまいます。

日本人の美しい心は、美しい自然と共に育ってきました。
太古の昔から、私達日本人は、万物に神の存在を意識し、
野山の自然、海の雄大さと豊かさに育てられてきました。
美しい自然と同じく美しく生きて来ました。

そんな日本を、かつて江戸時代に訪れたシーボルトは、黄金の島、ジパングと
ヨーロッパに紹介しました。
日本は、黄金に恵まれた島と言うのではなく、彼が歩いた道中、何処に行っても
ゴミ一つ落ちてなく、美しい自然に溢れ、人々は、物を大切に、御互いに助け合い
気づかって生活していた事に感動して、黄金の島と紹介したのです。

当時、ヨーロッパの街は、ゴミや汚物に溢れ、自然はことごとく破壊され、
資本主義社会の元、人々は、殺伐とした生活を強いられていました。
そんな国から日本を訪れたシーボルトが見たものは、正に、夢の様な世界であり
彼ら西洋人からは想像できない様な美しい国であったのです。

今や日本は、世界でも有数の先進国と成りました。
工業化によって、豊かな生活を手にいれました。
しかし、国土の自然は破壊され、様々な汚染で海も川も汚れてしまいました。
私達日本人も、そんな生活に、日々ストレスが溜まり、単に、欲望を満たす生活に
心から疲れているとも言えます。

いくら手に入れても、いくら豊かな生活をしても、心が休まらない、安心できない
そんな日本人が増えています。
私達が本当に求めている幸せは、今の日本の社会からは得られにくくなっています。
物欲で満たそうも、幸せにならない事に、焦りと疲れを感じる人も多いと思われます。

元々日本人は、御互いに癒し癒される生活を行なって来ました。
人の気持ちを察して生きる事に美徳を感じ、何事にも感謝をして生きて来ました。
その心の表れが、もったいない、と言う言葉に表れています。
この気持ちは、万物に対して抱かれる、日本人特有の感覚でもあります。

数千年に渡って培われた日本人特有の気持ちが有るからこそ、現代社会の
合理的な生活を求める資本主義社会に抵抗を覚えるのです。
お花見をする時、単に、桜の美しさを見るのではなく、多くの人々が桜への感謝を想い
その気持ちを周囲の人々へと伝えようとします。

つまり、自然の美しさから、人と人との思いやりを育てているのです。
そんなにも奥深い日本人の気持ちが有ってのお花見なのです。
お花見によって、人々の心に諍いが生まれる事は、有ってはならないのです。
宴会をする人も、歩いて桜を楽しむ人も、その周辺で商売をする人も、
全ての人々がお互いを思いやれるお花見の場を作ることが大切なのです。


寒さに震える桜