南月島の人魚 その1
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南月島とは、沖縄にある架空の島で、モデルは諏訪之瀬島とのことである。
作者の紹介ページでは、「便宜上、ホラーアドベンチャーとしてありますが、実際はそうではありません。」とあり、つまりゲームではなくサウンドノベルということらしい。
主人公翔は、沖縄生まれ大阪育ちの大学生で、親戚の安里林昌から島へと招待され、友人のピーコと共に島にやってきた。
南月島の「人魚祭り」は、ご神体である人魚のミイラの一般公開で、かがり火を焚き、厳かな雰囲気の中で行なわれる人魚のお披露目式。
神秘的なひとときが、島を静かに包みこむ・・・
翔とピーコはフェリーで10時間、船上で知り合った女子大生ノゾとメグと共に、南月島にやってきた。
船ではケイタというアメリカ在住の沖縄人と出会い、ヒナという従妹のことなども聞いた。
南月島では林昌から大歓待を受け、おいしい沖縄料理を鱈腹堪能した。
その代わりというわけでもないが、翔とピーコは人魚祭りのための薪拾いをすることになった。
薪といってもその辺の棒きれでは不可で、神聖な双子山の兄山の頂上から拾ってくるのである。
兄山の頂上には薪小屋があり、そこから適当に持って来れば良いそうだ。
こうして二人は山に登った。
兄山への道は細いながらしっかりついていて、途中には細い道が分岐していたが、2時間足らずで二人は頂上に着いた。
薪小屋の上部には展望台もあり、そこからの眺望に二人は歓声を上げた。
弟山は本当に何もないが、兄山と弟山の中間部分には何か白いものが見えている。
その白いものは建物らしく、その位置はあの細い道の先あたりである。
二人は面白半分その道に足を踏み入れた。
途中古い道しるべのようなものがあり、それは「皆見月島隔・・・」という文字が書いてあった。
少し先に建物があったが、完全な廃墟であり、周囲には石造りの壁が張り巡らされていて、1箇所だけ赤茶けた門となっていた。
その門には「皆見月島病棟」という看板があった。
しかしその建物は、妖気漂うというか、他所者が入り込むのを拒絶する趣きがあり、二人は無言で引き返した。
街に戻るとノゾとメグ、それに島っ子らしき女の子と出会い、その島っ子がヒナだった。
ヒナの案内で神社に行き、薪をもってきた礼にと人魚のミイラを見せて貰った。
ここの人魚のミイラは、人間の上半身と魚の下半身との継ぎ目もなく、限りなく本物に「近く」見えた。
そして神主は、「皆見月島隔離病棟」の話を始めた。
戦争中に政府がこの島に病院を建てることになり、島人は反対したが建設は強引に開始された。
それが「皆見月島隔離病棟」で、元々は伝染病の病院なのだが、戦争の進行に連れて軍の病院となった。
そして神主は「あそこは神隠しが起きる危険な場所なのだ」と強調した。
神主は神隠しの実例を幾つかあげ、さらに隔離病棟の感染症は未知の病気で、感染すると身体が溶けてしまうというのである。
翔はこの件は林昌や晶子にも確認して置こうと思った。
林昌に身体を溶かす病気のことを聞くと、即座にそんな病気はないと笑殺された。
あの病院はハンセン氏病の病院で、昔はともかく今はハンセン氏病など強力な治療薬もあるし、怖がる人はいないとのことだった。
その後ケイタと人魚の話となったが、彼もあの神社の人魚を見ていて、あれはジュゴンの突然変異体ではないか、という意見だった。
しかも彼は、この島では人魚の目撃談が今でもあると言いだした。
そして明日の廃墟調査には自分も参加すると言う。
翌朝、翔・ピーコ・ノゾ・メグ・ケイタ・ヒナの6人は、あの廃病院への獣道を歩いていた。
南月島の人魚 その2へ続く
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