南月島の人魚 その2
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廃病院を見たケイタは嘆声を上げ、夢中になってシャッターを切りまくる。
翔はそんなケイタを置いて仲間の所に戻った。
女の子三人組はキャーキャーと騒ぎながら、廃病院を眺めているが、姦しい(かしましい)とは、正にこのことだろう。
ピーコはここはなにか妙な気がすると、不安げである。
ともあれ5人は廃病院内に侵入した。
内部は荒廃はしているが、ここに相応しくないものがあった。
真新しい足跡である。
なんのことはない、その足跡は先に院内に入ったケイタのものだったが、彼の観察では2階が患者の部屋で、1階は院長室や警備室、資材室などがあるそうだ。
不思議なのは、院長室や薬品庫にはカルテや薬品などが全く残されておらず、完全な空室となっていることだ。
普通、その種の部屋には何かしらの記録が残されている筈なのだが?・・・
看護婦室らしい部屋には、一通の手紙が残されていた。
それには「この病院はおかしい、 深夜2時頃に何者かが徘徊する物音が聞こえる・・・」
そしてその続きは・・・ 「患者が数人消えた」とある。
これは神隠しではないか。
「益田院長は患者は亡くなったと説明しているが、その態度はおどおどしていて、明らかにおかしかった。
そしてついに看護婦まで消え始めた。」
街に帰ると昌子は、なぜあの廃墟に入るなと言ったのか、説明を始めた。
「あの廃墟には怪物がいて、その怪物は人の死を見て成長するの。
そして死ぬ人が少なくなれば、人を殺すというわけ。」
ヒナからの連絡があり、祭りの日、ケイタがいなくなったとのことである。。
前の日、ケイタとヒナが釣ってきたトビウオの調理をしていると、ケイタに電話がかかり、ケイタは兄山に行くといい残して、出ていった。
翌日になってもケイタは戻らず、ヒナは頂上まで行ってみたが誰もいない。
時間は既に夜の10時を過ぎていたが、とるものもとりあず一同はあの廃墟に向かった。
院長室にはケイタの手帳が落ちていて、戸棚は隠し戸になっていて開けた跡がある。
その先には地下への階段があり、そこは天然の洞窟になっていた。
その洞窟にはがいこつがあったが、それは無論ケイタではない。
先へ進もうとした翔は足を滑らせて転倒し、皆とはぐれてしまった。
そしてメモを発見した。
「1972年、私は医歩に会う為に皆見月島に向かった。 隔離病棟のあの生物実・・・」
その先は破れていて読むことが出来ない。
進むとノゾと出会った。
やがて二人は洞窟からかなり広い部屋に出た。
ヒナは洞窟が海へと繋がる所にいた。
そして「それ」もいた。
長い黒髪、透き通るような白い肌、下半身は尾びれとなり、「それ」は静かに微笑んでいる。
翔がヒナに何をしたと問い詰めると、「なにもしない」と答えた。
そこへケイタが現れ、人魚からヒナを受け取り、手当てを始めた。
南月島の人魚 その3へ続く
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