漆黒館密封殺人 その2
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外周の扉は個室らしいので、内周の扉から入ってみた。
内部は大広間になっていて数人の人間がいたが、彼らも同様に連れて来られた者達だという。
十司主税という男は、私は弁護士だと言い、事務所から自宅に戻る途中で意識が途絶えていると話した。
それに続いて、12名がそれぞれ簡単な自己紹介をした。
マジシャン、占い師、茶の湯教師、刑事、女子中学生、ギャンブラーと、実に年齢も性別も職業も、見事にバラバラな一同である。
しかし、手児菜と優以外の人名は、二宮や三谷など数字に基づいている。
これは高橋留美子の「めぞん一刻」へのオマージュか・・・
突然スクリーンと投影機が天井から降りてきて、ゲームマスターと名乗る仮面の男が話し出した。
「私はこの推理ゲームを主催した者だ
参加者の諸君には命を賭けた推理ゲームに参加してもらう。
12人のプレイヤーの中に、1人、殺人鬼が存在する。
この殺人鬼をこれ以降『ジョーカー』と呼称する
このゲームの唯一にして最大の目的は、プレイヤー達が協力して、ジョーカーを特定することだ
プレイヤーの勝利条件は、ジョーカーを特定することである。
ジョーカーの勝利条件は、ジョーカーを含めて、プレイヤーを6人にすることである。
ジョーカーの敗北条件は、1日1回の殺人を実行できないこと、自分の正体を知られることである。」
というルールが語られ、仮面の男は消えて行った。
12名はそれぞれの事情や思いがあるが、最強の対策は全員が一堂に会し、一緒にいることだ。
全員でいればジョーカーも行動できないからである。
しかし、2名は既に単独行動に移ってしまった。
刑事の五代がマスターキーを持って自室に引きこもるという。
それに優は反論した。
「警察官だというのは、自己申告でしかありません。
本当に警察官であるかどうかは、ここの誰にも分かりません。
それに、警察官であるかどうかと、ジョーカーであるかどうかは、別問題です。
警察官でも殺人鬼に……ジョーカーには成り得ます」
それに対して茶道師匠の四堂翁は、
「最初から妙案奇策が思い浮かぶわけでもあるまい。
まずは相手の出方を見るというのもありではないかね?」
と言う。
それに皆も納得した。
今は14時30分、 照明が落ちる21時まではかなり時間がある。
全員で、といっても八幡と六山以外の十人で、この館の構造を確認することになった。
館の構造は時計盤に似ていて、12の方向に、各プレイヤーの部屋がある。
優の部屋が12時の方向に相当していた。
12時方向から、時計回りに優、元、二宮、三谷、四堂、五代、六山、彩女、八幡、九尾、十司、そして手児奈の部屋が並んでいる。
20時、皆は五代の部屋の前に集まった。
五代は、「任せて下さい。 命に代えてもこのマスターキーは私が守ります」と力強く言った。
やがて消灯時間の9時近くになった。
全員が自分の部屋に戻ったが、手児菜の部屋の前で優は鍵を落としてしまい、探している間に照明が消えた。
幸い鍵は見つかったので、左手で壁を触りながら前進し、無事自室に辿りついた。
漆黒館密封殺人 その3へ続く