ベラルーシの部屋ブログ

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チェルノブイリ原発事故から35年

2021-04-26 | 放射能関連情報

 チェルノブイリ原発事故が発生して35年。当時のことを覚えている人は少なくとも40歳以上でしょうか。

 サイエンス誌に、ウクライナやアメリカなどの数カ国の研究者が合同で大規模なチェルノブイリの子供達の遺伝子検査を行った調査の結果が発表されました。

 

 2014年から2018年にかけて、米国立がん研究所の研究チームは、チェルノブイリ原発事故後の1987〜2002年に生まれた130人の子どもとその両親のゲノムの配列を調べました。

 対象となったのは、少なくとも片方の親が、事故当時チェルノブイリから70km以内の場所にいたか、事故処理作業員とし従事していた子どもです。

 子どもと言っても1987年生まれの人が2018年に調査対象になったのなら31歳になっていますが、あくまでチェルノブイリ事故後に生まれた若い世代が対象です。

 この両親世代は調査によると、被曝していたのですが、親と子どもの両方のDNAを調べても、子どもに突然変異は起きていなかったという結果でした。

 

 事故後、障害児が生まれる率が2倍になったというベラルーシの研究所の調査結果もありますが、これは妊娠中に母親が被曝した場合の調査結果です。

 今回の新たな調査では、親が被曝、親のDNAが損傷(異常)を受ける、その後その親から生まれた子どもはDNAの異常を遺伝しない、ということです。

 事故から時間が経っていれば、それが1年ほどでも、子どもに親からDNAの異常は受け継がれないというのは、よいニュースですね。福島第一原発事故で、被曝したという人から生まれる子どもには遺伝子に問題(遺伝子による病気など)が発生しない、ということです。

 

 今回の調査の中でも興味深いのは甲状腺癌の調査です。 

 甲状腺がんと診断されたウクライナ人440人を調べた結果、359人がチェルノブイリ原発事故で被曝していた人でした。それによると男性よりまた女性のほうが多く発病しており、事故当時ウクライナの首都キエフに住んでいた人が過半数を占めていました。チェルノブイリ原発事故に近いところに住んでいた人ほど病気になっているのでは?というイメージがありますが、そうではありませんでした。

(こう書くと、非難する人も出てくるかもしれませんが、チェルノブイリ原発事故と照らし合わせると、福島に住んでいた人より、離れた地域に住んでいた人のほうが甲状腺癌になる確率が高いのでは? と思われますね。ただし注意しないといけないのは、上記の調査はあくまで数を問題にしています。首都キエフのほうがチェルノブイリ原発近くの市町村より人口が多いに決まっているので、キエフに住んでいた人で甲状腺癌になった人が多かったというのは、母体数が多かったからとも言えます。だからキエフのほうが、放射能がいっぱい降り注いでいたんだよ、原発の周りには放射能は少なかったんだよ、とは全く言えません。)

 今回の調査結果では、甲状腺にかかった人の被曝時の年齢は平均7歳(1979年生まれ。事故当時小学1年生)、そしてがんと診断されたときの年齢はすると平均28歳でした。ということはあくまで平均の話で最大値の話ではないのですが、7歳で被曝して、21年後、28歳のときに甲状腺癌と診断されたウクライナ人が多かったと言ってよいでしょう。でも、そのころ結婚して、子どもを持つようになったとしても、その子どもには、親の被曝の影響は遺伝子としては、遺伝してなかったということになります。

 

 ウクライナ政府は、あと50年か60年かすれば、チェルノブイリ原発周辺の汚染地域に人が住めるようになると発表しました。しかし、やはり周辺10キロ以内は人間の居住は永遠にありえないとも述べています。

 

 35年前、避難対象地域に指定され、立ち退きを要求された村にいまだに住んでいる人(サマショール)の人が100人ほどいます。

 完全に自給自足生活で、事故前絵も事故後もずっと同じところに暮らしているのですが、特に病気にもならず、元気なおばあさんが多いです。今はほとんど女性ばかりのようですね。

 近くに病院もなく、医薬品もないです。こういう帰村者の家へ取材に行って、動画に上げている人もいるのですが、マスクをしていて、おばあさんに、今コロナウイルスが流行っていますから、と説明しています。

 この村は少なくとも事故直後は放射能汚染されていたから、立ち退き命令が出たと思うのですが、今はコロナウイルスに感染するリスクがとても低い場所だなあ、と思いました。こういう取材でやってくる人からコロナウイルスをうつされないでね・・・とも思いました。

 残念ですが、10年後、20年後にはこの高齢者の村民はいなくなってしまうと思います。そして30年後、40年後に正式に人が住んでよい村に戻るようです。そのときにこの村はどうなっているのでしょうか。

 さすがにご夫婦ともども亡くなっていまい、無人になた家も紹介されていましたが、屋根に穴があいて、崩れかかっていました。ウクライナ政府が50年後に住んでもいいですよ、と発表しても、戻ってくる人はいるでしょうか。

 

 次はベラルーシ発のニュースです。チェルノブイリ原発事故から35年という節目の年を迎えるからか、チェルノブイリ原発事故被害者を救済する法令が改められました。非常に細かい福祉の手が差し伸べられています。今でもちゃんとこのような救済をする姿勢をベラルーシ政府が示しているのは評価すべきだと思いました。 

 

 

 


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