ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

オストロベツに原発が建設されます

2012-07-29 | 放射能関連情報
 帝政ロシアの初代日本領事だったヨシフ・ゴシケーヴィチが人生最後の月日を過ごしたオストロベツ地区。
 その行政の中心にあるオストロベツ市は人口9000人の町です。
 4年後、2016年にオストロベツ市から30キロ離れたリトワニア国境に近いところにベラルーシ初の原発が建設予定です。
 10年ぐらい前からベラルーシで原発を造る話は出ていたのですが、その候補地がころころ変更し、定まっていませんでした。
 しかしとうとうオストロベツに建設が決定、今年から作業が始まりました。
 オストロベツ市内には原発作業員が将来居住する予定の団地の建設が始まり、ゴシケーヴィチの胸像を見に行く途中、その工事現場のそばを通り過ぎましたが、暗い気持ちになりました。
 原発が完成し、関係者がオストロベツ市に住むようになると、人口は3万人になると予想されています。
 市にとって経済的な効果はもちろんあると思いますが、もし事故が起きたら・・・と複雑です。

 市民の間で原発反対の運動はありません。心の中では反対、と思っている人はいるでしょうが、具体的な反対運動はありません。
 逆に国境を越えたリトアニアが反発しています。
 しかし、ベラルーシ国内で建設する原発なのですから、リトアニア人が反対しても、ベラルーシ政府はそれを聞く必要はありません。

 そもそもリトアニアにはベラルーシ国境すぐそばにイグナリナ原発がありました。やはり生態系が乱れる、などの理由でベラルーシ側の環境保護団体がリトアニア側に抗議したこともありましたが、もちろんベラルーシ人の意見をリトアニア政府がきく必要はありません。

 イグナリナ原発は70年代にソ連政府により造られた原発で、2009年には操業停止となりました。原発依存度80%の国であったため、電気料金はその後、家庭向けが30%企業向けが20%値上がりしました。

 現在は新しい原発をリトアニア政府は建設する予定です。、イグナリナ原発と全く同じ場所でヴィサギナス原発と言います。
 しかも沸騰水型軽水炉を建設するのは日本の日立の予定です。

 そんなわけで、リトアニア人がベラルーシに文句を言おうがお構いなしに、ベラルーシはベラルーシの原発を造る、ということになっています。
 ベラルーシ初の原発については日本が造る、という話もありましたが、結局ロシアが建設を開始しました。
 ロシアの最新技術を使い、安全は保障付き。絶対大丈夫、と住民には説明しているそうです。

 確かにエネルギー資源がほとんどなく、石油に天然ガスをロシアからの輸入に全面的頼っている国です。寒くなってきてそろそろ暖房がほしくなってきたなあ、と思う頃に、ロシアから石油や天然ガスの価格引き上げが通告され、政経ともに(国民の心理も)きりきり舞いになる・・・という状況がずーーっと続いているのです。
 自国内で電気を起こすことができるようになれば、ロシアにエネルギー依存しなくていいし、(ロシアとベラルーシの対外関係も変化する可能性がありますね。)こんないい話はない、というのがベラルーシ側の考えです。

 それはそれで分かるのですが、どうしても考えてしまうのは、もし原発で事故が起こったら・・・です。
 風向きによってはリトアニア領が汚染されて、ベラルーシは被害が少なかった、ああ、よかった、ということもありえます。
 でも風向きなんて、どうなるのか神のみぞ知る・・・

 ゴシケーヴィチゆかりの地が、避難地域になってしまったらどうしたらいいのか・・・。立ち入り禁止地区になったら、ゴシケーヴィチの胸像ももう見に行けないではないですか。
 美しいマリ村も無人の地になってしまうかもしれません・・・。
 ベラルーシで一番親日家の多い(と思われる)この場所が放射能に汚染されるようなことになったら・・・。

 事故が起きないことを祈るばかりです。 

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