電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

千葉潤『ショスタコーヴィチ』を読む

2010年06月17日 06時03分24秒 | -ノンフィクション
音楽之友社刊の「作曲家◎人と作品シリーズ」から、千葉潤著『ショスタコーヴィチ』を読みました。軽音楽の要素を持つ楽しい曲もあることはありますが、どちらかといえば苦手にしている作曲家です。有名どころの交響曲第5番や第7番、あるいはチェロソナタなどはCDでも聴いており、チェロ協奏曲や交響曲第9番を実演で接しておりますし、先の山響第205回定期演奏会で、ピアノ協奏曲第1番を聴いたばかりです。また、NHK-FMなどでチェロ協奏曲第1番に思わず耳を傾けたりもしていますけれど、積極的にCDを収集するテーマとはなっておりませんでした。それでも、毀誉褒貶の甚だしい作曲家の生涯は興味深く、センセーショナルな偽書騒動とは離れて、あるていど客観的な本を読んでみたいと、珍しく手を出した次第です。

構成は、次のとおり。

第1部 生涯編
-幼少時代
-音楽院時代
-新たな出会い、新しい道
-運命のオペラ
-危機
-間奏曲
-戦争交響曲
-ジダーノフシチナ
-雪解け
-「雪解け」の進展
-晩年の創作
-死後の評価
第2部 作品編
-交響曲
-弦楽四重奏曲
-オペラ
第3部 資料編
-詳細年譜
-ジャンル別作品一覧
-参考文献
索引

ご覧のように、やや生涯編に偏しており、作品編は残念ながら協奏曲も器楽曲も省略されています。そのかわりにジャンル別作品一覧を見よ、ということなのでしょうが、残念といえば残念。

政治や歴史の範疇に属する事柄は別にして、はじめて理解したことがありました。それは、ショスタコーヴィチがなぜジャズや映画音楽など、「西側退廃音楽」に親しんだのか、という経緯です。要するに、貧しかった時代のアルバイトに、映画館で上映される無声映画に、生ピアノで音楽を付ける仕事をしていたのですね。そして、そのかたわらで、交響曲第1番を作曲していた、という事情のようです。なーるほど。モダン・ボーイふうのシニカルでコミカルな味や、しつこく繰り返してとどめの一撃!などの一面は、多彩な無声映画のドタバタやメロドラマという角度から理解できる面があるのかもしれない、と感じました。

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