電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響+仙台フィル合同演奏会でブルックナーの交響曲第8番を聴く

2022年07月24日 06時01分27秒 | -オーケストラ
ようやく雨が上がった週末の土曜日、山形市の県民ホールで「東北ユナイテッド〜東北は音楽でつながっている」と銘打って行われた、山形交響楽団と仙台フィルハーモニー管弦楽団の合同演奏会に出かけました。2011年の東日本大震災の後、何かできることがあるはずだと開催された2012年の山響+仙台フィルの合同演奏会、あれはたしかマーラーの交響曲第2番「復活」だった(*1)はず。あれから回を重ね、3月のマーラーの交響曲第5番(*2)に続き、今回はいわゆる「ブル8」(ハース版)を取り上げたものです。



会場となったやまぎん県民ホールは、山形駅西口に新しくできた、音響の良さとオペラも公演可能なオーケストラピットを持つホールです。開場してすぐくらいに入った今回の席は某住職氏が代わって取ってくれたもので、三階の中央最前列。ちょいと「天井桟敷」を連想する、ステージ上の見晴らしの良さという点では抜群のポジションです。

プレコンサートトークでは、今回の指揮者、飯森範親さんと、山響の事務局長、西濱専務理事が登場、今日の曲目紹介とともに、飯森さんが来年?還暦を迎えるとのことで、ブルックナーを得意とする指揮者が長命なことを話題にしました。たぶん、大フィルを率いた朝比奈氏や、海外の指揮者ではオイゲン・ヨッフムなどを想定してのことでしょうが、飯森さんが話題にしたのはブロムシュテットの元気さでした。たしかに、1927年の7月生まれですから満95歳。わが老母と同い年なのですから、活躍にびっくりです。



ステージ上の楽器配置は、いつもの山響のこじんまりした二管編成とは異なり、さすがの合同演奏会です。ステージ前列左から、弦楽5部が第1ヴァイオリン(14)、第2ヴァイオリン(12)、ヴィオラ(10)、チェロ(8)、右端にコントラバス(6)の通常配置。後方左側にホルン(9)が2列、ただし前列(5)は通常のホルンですが、後列(4)は形がやや違い、曲目解説によればワーグナー・チューバだそうです。反対側の後列右側、コントラバスの後方にはハープが2台。そして後列中央にはフルート(3)とオーボエ(3)、その後方にクラリネット(3)とファゴット(3:うち1はコントラファゴット持ち替え)、そしてその後方にはトランペット(3)とトロンボーン(4)とテューバ、最後列にティンパニ、トライアングルとシンバルが位置します。通常の編成よりもホルンとトロンボーンを増強しているみたい。うーむ、壮観です。

拍手の中を楽員の皆さんが登場、コンサートマスター席には山響の犬伏亜里さんが一礼して座ります。指揮台に上がった飯森さんが指揮棒を一閃すると、静かにサワサワとブルックナーの音楽が始まります。第1楽章:アレグロ・モデラートです。弱音部の神秘性も量感があり、一転して威嚇的な強奏は大迫力で、ダイナミックでスケールの大きな音楽と感じます。おそらくこれは、大編成でなければ出せない響きなのでしょう。第2楽章:スケルツォ、アレグロ・モデラート〜langsam(ゆっくりと)。何度も繰り返されるスケルツォ主題が堂々としていて力強い。第3楽章:アダージョ、荘重にゆっくりと、しかし引きずらないように。特にこの楽章で、今回の弦の人数の多さがメリットになることをあらためて実感します。弦楽合奏の分厚さと量感、また弦楽合奏をバックに例えばホルンやワーグナー・チューバなどの金管楽器とが並奏するところなど、オルガンの響きを連想してしまいます。もっとも、オルガンではこのような最弱音は望むことができませんが。第4楽章:フィナーレ、厳かに、速くなく。迫力の展開です。大編成の威力がストレートに伝わります。この大きさのホール、この大きさの編成であればこそ出せる迫力なのでしょう。壮大な伽藍を見上げるような音楽。山響定期では珍しい、少々フライング気味の拍手が始まってしまいましたが、演奏には大満足で、大きな拍手を贈りました。本当はもう少し間を置いて指揮棒が降りきってから拍手したかったけれど、好意的に受け取れば、たぶん感極まってしまったせっかちさんがいたのでしょう(^o^)/

山形と仙台と、それぞれに独自の立脚点を置いたオーケストラが存在し、ふだんの活動の他に、単独では難しい、こうした大規模な編成の音楽を協力して演奏することで互いの音楽活動に資することができるのではないか。もとは東日本大震災をきっかけに復興祈念の取り組みとして始まった合同演奏会でしたが、東北ユナイテッド〜東北は音楽でつながっている〜の精神が今後も続いていってほしいものです。

(*1): 山響・仙台フィル合同による第222回定期演奏会でマーラーの交響曲第2番「復活」を聴く〜「電網郊外散歩道」2012年7月
(*2): 山響+仙台フィル合同演奏会でワーグナー、マーラーを聴く〜「電網郊外散歩道」2022年3月


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4 コメント

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私も行きました (安倍禮爾)
2022-07-30 12:52:12
narkejpさん
 私も東京から行って聴きました。narkejpさんもいるんだろうなと思って会場に行きました。
 この曲、2年前に高崎へ行って群馬交響楽団の同じハース版の演奏も聴きました。この時は特に木管楽器のミスが結構あり、おやおやと思ったものでしたが、今度は大きなミスもなく、練習の結果を感じました。この曲の場合ハース版とノヴァーク版では結構違うのでハース版で良かったです。
 まあこの曲は難曲で、ドイツで聴いた時も完全に満足はしなかったですが、今度の演奏は日本の地方オーケストラの演奏としてはミスもなくハイレベルでしたね。更に望むとすればやはり曲全体の「めりはり」でしょうか。CDで聴くベルリンフィルとかウィーンフィルとかいうのはもちろん最高レベルですのでそこは上手く演奏していますし、もちろん指揮者の方針とも合い俟った話ですので今度の演奏に言うことはないですね。
 終わった後昔住んだ家の跡とか遊んだ神社、小学校などに行って遠い昔を偲べました。秋にブラームスのピアノ協奏曲第2番をやるというので、また来ようかと思いました。
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安倍禮爾 さん、 (narkejp)
2022-07-30 16:46:44
コメントありがとうございます。お聴きになりましたか! 良かったですね〜。私もふだん聴いているのはセル盤(ノヴァーク版)などですので、ハース版が逆に新鮮でした。山響の奏者の皆さんもだいぶハイレベルの方が多くなり、中にはコンクール最優秀者なども含まれますので、飯森さんの指揮で皆さん持てる力を十二分に発揮できたのではないかと思います。
山形市の様子もだいぶ変わったことでしょう。道路も広くなり、金融関係など大きなビルも増えましたが、生活道路に入ると全く変わらない面もあります。神社などは昔のままかもしれませんね。
11月のヘンデル、マルタン、ブラームスPC2番という第305回定期も、温泉と秋の味覚とともにどうぞお楽しみください。
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時は経つ! (安倍禮爾)
2022-08-05 18:25:43
narkejpさん
 昔遊んだ宮町の神社は荒れ果てていて実質「廃神社」状態、第3小学校や慈光寺の幼稚園も、当然ですが完全に姿を変えていました。北山形駅まで歩いて山形駅前のホテルへ帰りました。これが「時間の経過」ですがね。駅前の呑み屋で昔の話をして、「また来て下さい」と言われたのでまた行きましょうか😊
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安倍禮爾 さん、 (narkejp)
2022-08-05 20:10:12
コメントありがとうございます。そうですか、神社はそんな状態でしたか。確かに、人は変わり、街の姿も変わりますね。変わらないものと言えば、山々の姿くらいなのかも。
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/5d479df4c951c1746d913a9b31cb6337
「また来てください」と言われると、ことさらに嬉しいですね。
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