電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ヴィヴァルディの協奏曲集「ラ・ストラヴァガンツァ」を聴く(1)

2008年07月01日 06時54分37秒 | -協奏曲
赤毛の司祭アントニオ・ヴィヴァルディが作曲した、作品4の協奏曲集を聴いています。演奏はイタリア合奏団。Disc-1には、第1番変ロ長調から第6番ト短調の6曲が収録されています。

第1番は、チェンバロが通奏低音を受け持ち、急-緩-急の構成を持ち、3つの楽章からなっています。中間楽章が、カンタービレと指示されたラルゴ。少しセンチメンタルな気分を示します。典型的な構成から以後の曲調を推測できる、華麗で晴れやかな音楽です。
第2番ホ短調は、演奏時間が比較的長く、若いヴィヴァルディが情熱をぶつけたような音楽になっています。中間楽章ラルゴでは、ゆったりとした美しいヴァイオリン・ソロを聞くことができます。孤児の少女たちからなる合奏団も、ストレートに心情を表現することができたことでしょう。
第3番ト長調の通奏低音は、チェンバロ。合奏協奏曲としての性格を残しながら、ヴァイオリン・ソロが巧みな技術を披露します。緩徐楽章はあまりストレートな嘆きの歌ではなく、気品のあるものです。
第4番イ短調は、通奏低音をオルガンが受け持ちます。添付の解説書によれば、ポジティブ・オルガンというのだそうで、パイプオルガンのような威圧的なところはあまりなく、けっこうかわいい音色です。大きな跳躍を含む合奏に、ソロ・ヴァイオリンとオルガンが交互に協奏的に出番を作る工夫が面白い音楽です。中間のグラーヴェ、エ・センプリーチェと指示された短い緩徐楽章は、優美な旋律が美しいものです。そしてたいへん印象的な第3楽章でも、急速な合奏とソロ・ヴァイオリンとオルガンの協奏的な響きがすばらしく、通勤ドライブの途中でも、思わず耳を傾けてしまいます。
第5番イ長調は、重音奏法によるソロ・ヴァイオリンの活躍が目立ちます。通奏低音はオルガンです。緩徐楽章でも一部に重音奏法が使われ、抒情的な旋律が引き立ちます。
第6番ト短調も、緩徐楽章のソロが優美で美しく、前後の2つの楽章の、弾力のある合奏が素晴らしく魅力的な音楽になっています。

急-緩-急の構成を持ち、いずれも三つの楽章からなります。緩徐楽章は、哀感をたたえた抒情的なものですが、肺腑をえぐるような悲しみではありません。お約束のように典型的な形態の、基本的に明るく幸福な音楽。通奏低音が、オルガンだったりチェンバロだったりで、なかなか効果的です。ヴィヴァルディは、制約の多い編成の中でも、さまざまな変化を工夫しようとしたのでしょう。

何度も何度も繰り返して聴いてみて、ようやく一つ一つの曲の特徴がつかめてくると、若い楽士長兼作曲家ヴィヴァルディの工夫のあとが、私にも感じられるようで、嬉しくなります。

1993年9月に、コンタリーニ宮でデジタル録音された、DENON クレスト1000シリーズの中の1枚。この素晴らしい録音・演奏の2枚組(COCO-70655~6)で1500円とは、これまたなんとも嬉しい限り!



唯一、欠点と思われるのは、解説書の文字がやけに小さいことです。老眼の目にはつらいものがあります。二ページを費やしてシリーズのタイトル一覧を掲載していますが、解説が予定の頁数をはみだしたら、文字のポイントを小さくして無理やり収めるのではなく、イタリア合奏団のものだけをピックアップして小さく紹介してもよかったような。企画の問題でしょう。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
« キアゲハに夏を感じる | トップ | 畠中恵『ねこのばば』を読む »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは (n.anastasia)
2008-07-02 05:27:10
お久しぶりです。
この記事を読んで、私の過去のVIVALDIの記事など、思い出してしまいました!
少女たちの話、興味深かったですよね。
司祭であったために、少女たちとのかかわり合いは、繊細なものがあったVIVALDI。
というか、今日の評論家が大げさに話しているだけのことで、実はVIVALDIは、根っからのまじめな作曲家で、作曲とコンサートに日々追われていたのでしょうね。かわいそうな生涯でした。
このごろ、忙しくて、BLOGでのコメント返しが遅れております。できるだけ早く、追いつきます!
返信する
n.anastasia さん、 (narkejp)
2008-07-02 06:16:15
コメントありがとうございます。n.anastasia さんの記事で、ヴィヴァルディの晩年について知ることができ、目からうろこでした。若いヴィヴァルディの音楽は、制約が大きい中で精一杯工夫したのだろうと思わせるものです。私はたいへん気に入っております。当方のヴィヴァルディ関連記事は、若い時代の作品に偏しておりますが、市販のCD中心ですので、やむをえません(^_^;)>poripori
返信する

コメントを投稿

-協奏曲」カテゴリの最新記事