よく晴れた日曜日、午前中にサクランボ果樹園の剪定枝の片付けをしてまだまだ終わらない量にため息をつき、午後から山響こと山形交響楽団の第307回定期演奏会に出かけました。会場の山形テルサ方面の駐車場は確定申告等で混雑するであろうと考え、早目に出かけたのが大正解、なんとか駐車場を確保してプレトークに間に合いました。
西濱事務局長が登場し、今回のソリスト堤剛さんと山響創立名誉指揮者の村川千秋さんとの友情と長い間の協力を紹介し、指揮の飯森範親さんに話を振り向けます。飯森さんは遅咲きの作曲家ブルックナーについてかなり詳しく紹介してくれました。それと、今回の新基軸として楽器配置の変更を行っていることも紹介。
さて、本日のプログラムは、
というものです。
1曲め、ハイドンのチェロ協奏曲。楽器編成とステージ上の配置は、中央左にソリストと右に指揮台、そして左から第1ヴァイオリン(6)、チェロ(3)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(6)、左奥にコントラバス(2)、中央奥にホルン(2)とオーボエ(2)、というものです。作曲された時代を考え、かなり編成を絞っての演奏となります。三大チェロ協奏曲というと、このハイドンの2番とシューマン、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を指すようですが、80歳のソリストにとってはこれまで何度演奏したかわからないくらいでしょう。その名曲の、おなじみの序奏がやわらかに奏でられる中に独奏チェロが入ってくるときの伸びやかな雰囲気が、なんともいえずいいなあ! 若い時代ならば音楽をねじ伏せようとする勢いが喝采をあびるのかもしれませんが、そうではなくて、かけがえのない時の流れを懐かしみ音楽を愛しむような、そんな演奏でした。考えてみれば、60年も前の若い頃に、米国で一緒に音楽を学んだ仲間の一人が故郷にオーケストラをつくり、草創期の苦闘の時代には来演して支えたそのオーケストラが、今50年の記念の年を迎えている。そんな感慨を持ちながら、しみじみチェロの音はいいなあと思ったことでした。
聴衆の拍手の中、創立名誉指揮者・村川千秋さんが花束を持って登場、堤剛さんに贈ります。90歳の指揮者が80歳の独奏者に花束を贈る、50周年記念年の最後にふさわしい光景に、飯森さんも思わず感激の様子でした。そして堤剛さんのアンコールは、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第1番から、第1曲「前奏曲」。ゆったりと奏されるチェロの響きに、やっぱりバッハはいいなあとため息でした。
休憩の前に、西濱事務局長から連絡が入り、3月25日(土)の16時から、YBC(山形放送)TVで山響のドキュメンタリー番組が放送されるとのこと。また、音楽雑誌「モーストリー・クラシック」の4月号で山響が取り上げられ、本文6ページのほか、表紙も山響が飾っているのだそうな。休憩時の物販で提供とのことでしたので、急ぎかけつけましたが、残念ながらタイミングでアウト! 幸いに終演後に追加で提供とのことで整理券をゲットし、あわせて堤剛さんのCDでフランクとR.シュトラウスのソナタと三善晃の「母と子のための音楽」を収録したものを購入して自席に戻りました。
休憩後の後半は、ブルックナーの交響曲第7番です。この曲は、2013年1月の第226回定期演奏会(*1)で取り上げられ、後に山響のレーベル YSO-Live からCDになっています(*2)から、9年ぶりの再演ということになります。前回の演奏の時と楽器編成や配置で変わった点というと、「新基軸」との言葉にあったとおり、コントラバスの数と配置でしょうか。前回、2013年には 10-8-7-6-5 という弦楽5部でコントラバス(5)は左後方に配置されていましたが、今回は弦楽5部が 10-8-6-6-4 という編成で、指揮者を中心に向かって左から 1st-Vn(10)、Vc(6)、Vla(6)、2nd-Vn(8)、コントラバス Cb(4) は正面最奥部になっています。正面奥に木管が二列、Fl(2)とOb(2)、Cl(2)とFg(2) が並び、その左に Hrn(5)、右に Wagner Tuba(4)、木管の奥には金管が横一線に Tp(3)、Tb(3)、Tuba、その後ろの最奥部に Cb(4) と Timp. という並びです。
演奏が始まると、ヴァイオリンのトレモロに続いてホルンとチェロが「ブルックナー開始」を告げると、迫力ある低音が正面からビンビン響いてきます。ホールの大きさと響きの特徴を知っている飯森さんらしい工夫と感じます。さらに、Tp, Tb, Tuba が横一線に並んで一斉に奏する時、迫力ある高音から低音まで光のスペクトルのように左右に広がります。この効果も、残念ながら我が家のスピーカーからは出せません。実演ならではの音響的な楽しみです。今回、いわゆる「ブル7」の演奏で気づいたのは、ティンパニが大きく連打するところだけでなく、その後もずっと鳴っていることでした。CDで聴いているときには気づきませんでしたが、目で見て演奏を聴いていると、たしかに背後にティンパニの連打が聞こえ、印象的に意識されます。また、第2楽章で Wagner Tuba と Vc, Vla が奏する中に Vn や Cb 等が加わっていくところ、悲痛というか厳粛というか、深い感情が呼び起こされると感じました。第3楽章スケルツォ、第4楽章フィナーレと進み音楽が高揚していくところは、この曲を聴く喜びとなります。曲が終わり、飯森さんの指揮棒がまだ下りきっていないうちに拍手が始まってしまったけれど、パワフルな演奏を聴き終えてじっとしていられなかった人がたぶんいたのでしょう。気がせいて待ちきれなかったということで、まあ、仕方がないのかも(^o^;)>poripori
拍手の中、飯森さんがオーケストラの団員一人ひとりに握手、挨拶をしていきます。常任指揮者、音楽総監督として山響の発展・飛躍を成し遂げ、阪哲朗さんにバトンを引き継ぎ、今後は桂冠指揮者として山響を見守る立場に変わるわけですが、来年は予定がなくても、今後また山響で意欲的なプログラムを聴かせてほしいものです。一人の音楽愛好者として、また山響ファンの一人として、飯森範親さんに心から感謝をしたいと思います。
コロナ禍への対応も少しずつ変わってきており、今回から分散退場のアナウンスもなし。ホールから外に出ると、まだ薄明るい景色に春の訪れを感じました。新シーズンも、山響が楽しみです。
(*1):山響第226回定期演奏会でシューマン、ブルックナーを聴く〜「電網郊外散歩道」2013年1月
(*2):飯森+山響によるブルックナー「交響曲第7番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2014年5月
西濱事務局長が登場し、今回のソリスト堤剛さんと山響創立名誉指揮者の村川千秋さんとの友情と長い間の協力を紹介し、指揮の飯森範親さんに話を振り向けます。飯森さんは遅咲きの作曲家ブルックナーについてかなり詳しく紹介してくれました。それと、今回の新基軸として楽器配置の変更を行っていることも紹介。
さて、本日のプログラムは、
- ハイドン:チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 Hob.VIIb:2 Vc: 堤剛
- ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調 WAB 107(ハース版)
飯森範親 指揮、山形交響楽団
というものです。
1曲め、ハイドンのチェロ協奏曲。楽器編成とステージ上の配置は、中央左にソリストと右に指揮台、そして左から第1ヴァイオリン(6)、チェロ(3)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(6)、左奥にコントラバス(2)、中央奥にホルン(2)とオーボエ(2)、というものです。作曲された時代を考え、かなり編成を絞っての演奏となります。三大チェロ協奏曲というと、このハイドンの2番とシューマン、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を指すようですが、80歳のソリストにとってはこれまで何度演奏したかわからないくらいでしょう。その名曲の、おなじみの序奏がやわらかに奏でられる中に独奏チェロが入ってくるときの伸びやかな雰囲気が、なんともいえずいいなあ! 若い時代ならば音楽をねじ伏せようとする勢いが喝采をあびるのかもしれませんが、そうではなくて、かけがえのない時の流れを懐かしみ音楽を愛しむような、そんな演奏でした。考えてみれば、60年も前の若い頃に、米国で一緒に音楽を学んだ仲間の一人が故郷にオーケストラをつくり、草創期の苦闘の時代には来演して支えたそのオーケストラが、今50年の記念の年を迎えている。そんな感慨を持ちながら、しみじみチェロの音はいいなあと思ったことでした。
聴衆の拍手の中、創立名誉指揮者・村川千秋さんが花束を持って登場、堤剛さんに贈ります。90歳の指揮者が80歳の独奏者に花束を贈る、50周年記念年の最後にふさわしい光景に、飯森さんも思わず感激の様子でした。そして堤剛さんのアンコールは、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第1番から、第1曲「前奏曲」。ゆったりと奏されるチェロの響きに、やっぱりバッハはいいなあとため息でした。
休憩の前に、西濱事務局長から連絡が入り、3月25日(土)の16時から、YBC(山形放送)TVで山響のドキュメンタリー番組が放送されるとのこと。また、音楽雑誌「モーストリー・クラシック」の4月号で山響が取り上げられ、本文6ページのほか、表紙も山響が飾っているのだそうな。休憩時の物販で提供とのことでしたので、急ぎかけつけましたが、残念ながらタイミングでアウト! 幸いに終演後に追加で提供とのことで整理券をゲットし、あわせて堤剛さんのCDでフランクとR.シュトラウスのソナタと三善晃の「母と子のための音楽」を収録したものを購入して自席に戻りました。
休憩後の後半は、ブルックナーの交響曲第7番です。この曲は、2013年1月の第226回定期演奏会(*1)で取り上げられ、後に山響のレーベル YSO-Live からCDになっています(*2)から、9年ぶりの再演ということになります。前回の演奏の時と楽器編成や配置で変わった点というと、「新基軸」との言葉にあったとおり、コントラバスの数と配置でしょうか。前回、2013年には 10-8-7-6-5 という弦楽5部でコントラバス(5)は左後方に配置されていましたが、今回は弦楽5部が 10-8-6-6-4 という編成で、指揮者を中心に向かって左から 1st-Vn(10)、Vc(6)、Vla(6)、2nd-Vn(8)、コントラバス Cb(4) は正面最奥部になっています。正面奥に木管が二列、Fl(2)とOb(2)、Cl(2)とFg(2) が並び、その左に Hrn(5)、右に Wagner Tuba(4)、木管の奥には金管が横一線に Tp(3)、Tb(3)、Tuba、その後ろの最奥部に Cb(4) と Timp. という並びです。
演奏が始まると、ヴァイオリンのトレモロに続いてホルンとチェロが「ブルックナー開始」を告げると、迫力ある低音が正面からビンビン響いてきます。ホールの大きさと響きの特徴を知っている飯森さんらしい工夫と感じます。さらに、Tp, Tb, Tuba が横一線に並んで一斉に奏する時、迫力ある高音から低音まで光のスペクトルのように左右に広がります。この効果も、残念ながら我が家のスピーカーからは出せません。実演ならではの音響的な楽しみです。今回、いわゆる「ブル7」の演奏で気づいたのは、ティンパニが大きく連打するところだけでなく、その後もずっと鳴っていることでした。CDで聴いているときには気づきませんでしたが、目で見て演奏を聴いていると、たしかに背後にティンパニの連打が聞こえ、印象的に意識されます。また、第2楽章で Wagner Tuba と Vc, Vla が奏する中に Vn や Cb 等が加わっていくところ、悲痛というか厳粛というか、深い感情が呼び起こされると感じました。第3楽章スケルツォ、第4楽章フィナーレと進み音楽が高揚していくところは、この曲を聴く喜びとなります。曲が終わり、飯森さんの指揮棒がまだ下りきっていないうちに拍手が始まってしまったけれど、パワフルな演奏を聴き終えてじっとしていられなかった人がたぶんいたのでしょう。気がせいて待ちきれなかったということで、まあ、仕方がないのかも(^o^;)>poripori
拍手の中、飯森さんがオーケストラの団員一人ひとりに握手、挨拶をしていきます。常任指揮者、音楽総監督として山響の発展・飛躍を成し遂げ、阪哲朗さんにバトンを引き継ぎ、今後は桂冠指揮者として山響を見守る立場に変わるわけですが、来年は予定がなくても、今後また山響で意欲的なプログラムを聴かせてほしいものです。一人の音楽愛好者として、また山響ファンの一人として、飯森範親さんに心から感謝をしたいと思います。
コロナ禍への対応も少しずつ変わってきており、今回から分散退場のアナウンスもなし。ホールから外に出ると、まだ薄明るい景色に春の訪れを感じました。新シーズンも、山響が楽しみです。
(*1):山響第226回定期演奏会でシューマン、ブルックナーを聴く〜「電網郊外散歩道」2013年1月
(*2):飯森+山響によるブルックナー「交響曲第7番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2014年5月
また教科書的な一般的配置は相変わらず、Vn1、Vn2、ヴィオラ、チェロ、となっているようですが、これも最近はヴィオラとチェロを入れ替えるのが多く、一般的な配置ってどれなんだろうと思いますね。(笑)