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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

カーニハン『教養としてのコンピューターサイエンス講義』を読む

2024年12月14日 06時00分01秒 | -ノンフィクション

図書館から借りてきた単行本で、ブライアン・カーニハン著『教養としてのコンピューターサイエンス講義』(酒匂寛訳、日経BP刊、2020)を読みました。「カーニハン&リッチー」と呼ばれる名教科書『プログラミング言語C』の著者であり、私も愛用するテキストデータ処理言語「AWK」の共同開発者の一人でもあるカーニハン氏がプリンストン大学で一般社会人向けに行った講義の翻訳だそうです。

「まえがき」を読み、第0章「はじめに」に目を通したとき、本書の価値に気が付きました。これは、コンピュータを何か仕事に役立てようとか、プログラミングができるようになるためのテキストブックにしようとか、そういった実用的な目的のために読む本ではない。そうではなくて、コンピュータの碩学が、現代のデジタル社会をどうとらえ、考えればよいのかを示した本なのだ、ということです。その意味では、原題"Understanding the Digital World" のほうが、内容を適切に表しているようです。大きく見ると、

  • 第1部 ハードウェア
  • 第2部 ソフトウェア
  • 第3部 コミュニケーション

という三部構成になっており、第1部では CPU、RAM、ディスク、ビット、バイト、CPU の内部、などが取り上げられています。

これに対して第2部では、アルゴリズム、プログラミングとプログラミング言語、ソフトウェアシステム、プログラミングを学ぶ、といった内容になっており、最後のプログラミング体験では JavaScript でブラウザ上に "Hello, world" と表示するところから始まっています。しかし、では万人がプログラミングを学ぶべきかという問いに対しては、

プログラミングは万人向けではありません。本当に必須である読み、書き、算術とは異なり、全員にプログラミングを学ぶことを強制するのは理にかなっていないと思っています。プログラミングのアイデアを魅力的なものにすること、始めるのが簡単であるようにしておくこと、たくさんの機会を提供すること、できるだけ多くの障壁を取り除くこと、そしてあとは自然に進路を選んでもらうことが最善でしょう。(p.237)

としています。教育経験豊富な碩学らしい含蓄のある見解だと感じますし、本書の魅力の一つが、こうした問いに対する見解に随所で触れることができるということかと思います。

第3部では、ネットワーク、インターネット、ワールドワイドウェブ、データと情報、プライバシーとセキュリティ、などを扱います。検索エンジンの仕組みや広告とトラッキングのこと、データマイニング、クラウドコンピューティングなど、私にとってもたいへん興味深い内容がわかりやすく説明されます。そして、ふと気が付きました。AI の内容が書かれていない! 調べてみたら、原著は2017年に刊行され、翻訳出版は2020年となっています。そして現在は、2022年に第2版が刊行されているらしい。こちらの方では第4部として「データ」を独立させ、ここで AI を扱っているらしい。

うーむ、これは返却期限のある図書館の本を借りてすませるのではなく、新版を購入すべきではなかろうか。善は急げということで、さっそく地元の行きつけの書店に注文して来ました。12月16日に届くとのこと、楽しみです。

 


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (まるたけ)
2024-12-14 07:17:24
カンカンさまのところから飛んできました。
興味津々の話題に溢れていて、じっくり読ませて頂いております。
入院中の夫から「ACアダプタを持ってきて」と
言われましたが、それってなんだっけ的レベルの
私です。ACの意味、今日分かりました。(笑)
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まるたけ さん、 (narkejp)
2024-12-14 09:48:01
>まるたけ さんへ
>カンカンさまのところから飛んできました。... への返信
コメントありがとうございます。カンカンさんのところから飛んできたら、マニアックなコンピュータの本の記事で、びっくりされたのではないかと思います。農作業の記事や化学実験室の歴史、あるいは手帳や文具の話など、話があちこちに飛ぶブログですので、どうぞ興味の持てそうなカテゴリーで様子をみてください(^o^)/
夫君が入院されているのですね。どうぞお大事に、早い快癒をお祈りいたします。ACアダプタってなんだっけ、それはさすがにスゴイです(^o^)/ ご夫君も思わず笑ってしまい、ユーモアの力で元気が出るのではないでしょうか(^o^)/
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Unknown (みっち)
2024-12-15 18:29:43
ブライアン・カーニハン…なんと懐かしい名前でしょう。(笑)
プログラミングを学ぶという点では、生成AIの発展で1年前とはもう決定的に状況が変わってしまいました。ChatGPTのプログラミング能力は驚異です。みっちは5年前に自分で作ったパズル「数独」のコンピュータ解法プログラムを改良してもらいました。(笑)当たり前ですが、敵はみっちの数日かけた成果を、瞬時で追い越します。(笑)
みっちは半世紀前にBASICでプログラミングを始め、Pascal、Cと進みましたけれど、今からプログラムを習う人って逆にとても不幸なんじゃないでしょうか。こんな凄いAIがあっては、学ぶ意欲がそもそも削がれてしまうような気がします。
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みっち さん、 (narkejp)
2024-12-15 20:10:37
>みっち さんへ
>ブライアン・カーニハン…なんと懐かしい名前でしょう。(笑)... への返信
コメントありがとうございます。BASIC→Pascal→Cですか。私の場合は BASIC→TurboPASCAL→AWK でした(^o^)/ 手っ取り早くテキストデータを処理できるのを優先した結果です。
ChatGPT で改良が役立ちそうですね。私も MS-DOS 時代に日本語化された jgawk の split 関数ではできていたのに本家 gawk ではできない日本語の単語分解をできるように改善してもらおうかな(^o^)/
ほんとに、目標や意欲の喪失が AI の弊害として出てくるかもしれませんね。
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