電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山本一力『ジョン・マン~青雲編』を読む

2015年01月15日 06時05分25秒 | 読書
講談社刊の単行本で、山本一力著『ジョン・マン~青雲編』を読みました。シリーズ第四巻は、アメリカでの陸上生活です。

ニューベッドフォード港に帰ってきて、ホイットフィールド船長は万次郎を連れて自宅に戻ります。メイドのデイジーと夫のチャンスに出迎えられて、万次郎は穏やかな生活をおくることができるようになりますが、牧師があからさまな人種差別をするために、船長は通い慣れた教会を離れ、ユニタリアン教会に移ることにします。

フェアヘブンの町で、海鮮レストラン「マーガレット」で食事を取り、この店の娘マーサと親しくなったのは、今後の展開に彩りを添えそうな気配です。万次郎は、ストーン小学校に通い、英語の基礎などを学ぶようになります。16歳の小学生。しかし、外国語を基礎から学ぶには、最も合理的な方法かもしれません。ところが、六年生のピートは、四歳年長の万次郎が注目を集めるのがおもしろくないのでしょう、何かと突っかかります。自慢の足を生かして、徒競走で万次郎を負かすのですが、ここから万次郎の負けじ魂に火が付いてしまいます。チャンスの特訓とお天気の幸運もあって、こんどは同着というのがいいですね。

高校生が小学生と張り合うと考えると、大人げないとも見えますが、人種差別が背景にあるのですから、堂々と振る舞わなければなりません。ピートの父親の、実業家らしい大物ぶりも立派です。このあたり、どのくらいまでが史実でどのへんが創作なのかは不明ですが、少年期の万次郎の人物造型としては、成功していると言ってよいでしょう。

ホイットフィールド船長に数学を、夫人に理科を習い、小学校の課程を卒業した後に、航海学校パートレット・アカデミーを受験し、合格するのです。
青雲の志がしだいに形になっていく巻でした。


コメント    この記事についてブログを書く
« 山本一力『ジョン・マン~望... | トップ | 葬儀で帳場を頼まれたときは »

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事