電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第57回定期演奏会でハイドン、バックス、メンデルスゾーンを聴く

2015年10月18日 09時53分35秒 | -室内楽
この土曜日は連休とはならず、出勤して懸案を片付け、自宅に戻って同窓会から依頼された宛名印刷をしようとしたら妻のインクジェット・プリンターが故障していることを発見、なんだかんだで文翔館議場ホールへの到着が遅くなってしまいました。すでにプレコンサートが始まっておりましたので、足音がしないようにそうっと入らせてもらい、斎藤真美さん(Ob)と田中知子さん(Vla)のデュオを聴きました。2つの楽章だけ聴きましたが、ステキな音楽・演奏でした。残念ながら、曲名は不明。

プログラム&プレトーク担当は、チェロの茂木明人さん。本日の曲目の他、様々な出会いについて、思い出を語りました。プログラムの印刷が無事に出来上がり、ほっとした様子でした。本日のプログラムは、

  1. ハイドン 弦楽四重奏曲ホ長調Op.54-3
  2. バックス オーボエ五重奏曲(1922)
  3. メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第2番イ短調Op.13

というものです。

カルテットが入場、1st-ヴァイオリンの中島さん、ヴィオラの倉田さん、チェロの茂木さんの男性三人は黒が基調ですが、2nd-ヴァイオリンの今井東子さんは秋色の装い。いい色ですね~(^o^)/

まずは、ハイドンから。作曲年代は1788年だそうです。ハイドンは1732年生まれですから、充実の56歳の作品となります。曲は、第2ヴァイオリンとヴィオラ、チェロの3人のよく響く音から始まり、第1ヴァイオリンの出番を作ります。ハイドンの時代には、というよりも、作曲家が想定した1st-Vnのトスト氏は、きっとオーケストラで言えばコンサートマスターのような名手だったのでしょう。「じゃーん、真打ち登場!」というわけです。第2楽章:ラルゴ・カンタービレ。ゆったりしたテンポの中で、優雅に上品にやりとりをしますが、1st-Vnは音符がいっぱいありそうで、やっぱり忙しそうです。ほかの皆さんはゆったりしていますが、チェロの出番もあり、音色が魅力的です。第3楽章:メヌエット、アレグレットで。なるほど、たしかにメヌエットです。繰り返される旋律は、踊りを思えば当然の効果でしょうか。第4楽章:アダージョ→プレスト→アダージョという、変化の大きい音楽です。中断をうまく生かして、効果をあげています。ハイドンの楽しさと難しさと、両方がある音楽と感じました。

続いて、バックスのオーボエ五重奏曲。作曲者のアーノルド・バックス(Arnold Bax)(*1)は、1883年に生まれ、1953年に没していますので、世紀末の欧州の不穏と二度の大戦を経験した後に、たった一年だけではありますが、ワタクシも同時代の空気を吸っているわけですね(^o^)/

議場ホールの特設ステージ上には、左から1st-Vnの中島さん、2nd-Vnの今井さん、Vlaの倉田さん、Vcの茂木さん、そしてオーボエの斎藤真美さんが白系のドレスで座ります。

第1楽章:弦楽四重奏で始まり、オーボエが低音で入ってくると、独特のバグパイプ風の響きに魅了されます。作曲された年代が1922年ということですので、第一次大戦の欧州の惨禍の影響が大きいのでしょうか、不協和な要素も不安と緊張も感じられる音楽(*2)です。
第2楽章:2nd-Vn,Vla,Vcから始まり、1st-Vnが加わって、レント・エスプレッシーヴォで演奏される始まりは、オーボエがお休みしているせいもあって、田舎風でやや悲しげな弦楽四重奏曲の味わいです。これにオーボエが加わってくると、ケルト風な五音音階? なんだか親しみを感じる民謡みたいです。オーボエとバグパイプの親近性を感じながら、曲は静かに終わります。
第3楽章:アレグロ・ジョコーソ。リュートかマンドリンのような弦の響きの中に、オーボエが入ってきます。始まりの曲調は明るめで、リズミカルでユーモアもあり、楽しいものですが、途中で曲調はガラリと変わります。再び始めの楽しさが戻り、曲が終わります。

ここで休憩です。当記事もここで休憩をいただきまして、ここからは夜の部(^o^)/



最後は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番イ短調Op.13です。
第1楽章、アダージョ~アレグロ・ヴィヴァーチェ。出だしの、そっとささやくような序奏が、いいですね~。そのあと、イ短調の急速な主部が情熱的な歌曲のように奏されます。低音域~中音域~高音域へと受け渡される音型が、なんとなく悲痛な感じを醸し出すところがあります。
第2楽章、アダージョ・ノン・レント。四人が互いに響きを確かめながらゆっくりと語り合うような、穏やかな表情で始まります。静かな緩徐楽章です。同じ主題を追いかけるようにメロディが次の楽器に移っていき、フーガ風の構成になっているところは、むしろ厳しさを感じさせますが、再び穏やかな表情に戻って終わります。
第3楽章、インテルメッツォ:アレグレット・コン・モート~アレグロ・ディ・モルト。三人のピツィカートをバックに、1st-Vnが子守唄かわらべ歌のようなメロディーを素朴に歌った後に、軽快なスケルツォが展開されます。はじめの旋律に戻ったときに、懐かしさを感じながら、ピツィカートでこの楽章を終了します。
第4楽章、プレスト~アダージョ・ノン・レント。切迫した表情の音楽が、悲劇的な緊張感をたたえて始まり、ちょうど嘆き悲しむ人が心の痛みを訴えるように、テンポを変えながら展開されます。やがて、ゆっくりしたアダージョ・ノン・レントと指示された部分が始まり、1st-Vnのモノローグの後に曲の最初の旋律が回想されて静かに印象的に終わります。

わーお!ブラボー!です。メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は、ほんとにいいですなあ。とりわけこの第2番は、いいですね~。
今回は、とくにバックスのオーボエ五重奏曲という音楽を知りました。還暦を過ぎて、初めて聴く音楽に心を揺さぶられるというのは、貴重な出来事です。その点からも、実に良い機会に恵まれた演奏会でした。

次回の第58回定期演奏会は、来年、2016年1月28日(木)18:45開演、とのお知らせがありました。担当はヴィオラの倉田さん。バルトークの第2番、シューベルトの第10番、ハイドンのOp.54-2という予定だそうです。今から楽しみです。


(*1):アーノルド・バックス~Wikipediaの解説
(*2):参考までに、こんな音楽です~YouTubeより。
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