電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

天野郁夫『学歴の社会史』を読む

2014年11月27日 06時03分06秒 | -ノンフィクション
当ブログの「歴史技術科学」カテゴリーの関係で、明治初期の高等教育とお雇い外国人教師のことを調べているうちに、天野郁夫著『学歴の社会史』(平凡社ライブラリー)を読むことになりました。江戸時代には、学歴よりも身分制が大きく重かったわけで、学歴が影響力を持つようになったのは明治以降であることは明らかですが、では明治のいつごろ、どのような経緯でそうなったのか?

本書の構成は、次のようになっています。

  1. 学歴のすすめ
  2. 教育授産
  3. 士族学校
  4. 農民たち
  5. 商人教育
  6. 教育も銭なり
  7. 上京遊学
  8. パンと教養
  9. 身を立るの財本
  10. 学歴の効用
  11. 庶民の世界
  12. 学歴の岐路
  13. 中等教育
  14. 教員社会
  15. 官尊民卑
  16. 学歴戦争
  17. 官私抗争
  18. 学校選択法
  19. 学問・学校・職業
  20. 学閥の形成
  21. 採用待遇法
  22. 苦学・楽学

ここで、誤解のないように付け加えておけば、1.の「学歴のすすめ」とは、著者が学歴偏重を勧めているわけではありません。明治時代に外山正一という初代社会学教授が著した『藩閥之将来』という本にもとづき、藩閥に代わって学閥が中心になってくることを簡潔に説明しています。

以下、明治維新によって生計の道を失った士族が、教育によって官僚への道を歩むが、農工商の身分の人たちは、当初は立身出世の道を選ばなかったこと、やがて明治中期になると徴兵制における優遇など学歴の価値は誰の目にも明らかとなり、その結果として(旧制)中学校への進学熱が高まり、士族の比率が低下し富裕な平民層出身者の比率が高まっていくことが示されます。近い過去に激しい内戦の記憶を持つ明治の日本で、子の徴兵期間が三年から一年に短縮されるという一年志願制度の特権は、富裕な平民層の親にとって価値あるものであったことは間違いないでしょう。



本書の後半においては、主として法科をめぐって、帝国大学と私学の争い等が描かれます。これらの経緯は、当方の興味関心とはだいぶ方向性が違います。正直に言って、歴史的・社会的な重要性は理解できるとはいうものの、要するに特権をめぐる確執ですから、あまり良い印象を受けません。よって、ばっさりと省略します。このあたり、当方はどうしても人あるいは組織間の利害関係よりも、事物の仕組みや法則により興味を持ってしまう傾向があります。これは、理系の弱点だと思いますが(^o^;)>poripori

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