電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

浅田次郎『椿山課長の七日間』を読む

2007年01月16日 06時13分35秒 | 読書
映画になっているらしい、浅田次郎著『椿山課長の七日間』を読みました。著者のことはよく知りませんが、中年のしょーもないギャグが満載です。作品中にペーソスは流れていますが、決して生と死を厳粛に見つめた作品ではありません。それでも、読後のほんわか感、これは作者の個性なのでしょうか。

自分が死亡後に知った、父の大きな愛情、家族の秘密、そして昔の彼女・佐伯知子の一途な想い。ただバカ正直に仕事一筋の本人にとっては、そんな馬鹿な!だったのでしょう。しかし、和山椿さんの身体を借りて現世に逆送された椿山和昭氏、愛する妻は部下の嶋田と昔からデキていて、子供は自分の子ではなく、気楽な親友だと思っていた同期の佐伯知子が自分をそんなに愛していたなんて。知らなかった!というのですから、もう能天気なお人です。

解せないのは、デパートのセールの成績を知りたくて嶋田に問いただしたときの嶋田の反応。「僕らはみんな課長を尊敬していた。あの人は売場課長の鑑だったよ。僕も、三上部長も、女子店員たちも派遣の販売員も、メーカーの担当者たちも、みんな椿山課長が大好きだったんだ。」って。えーっ(@o@)aze-n

そりゃないだろう。上司の妻に子供を産ませ、初七日の間に泊まりに行き、死んだ上司のパジャマを着て出てくる男が!これだけでも、実にテキトーいい加減なお話であることがわかります。地獄極楽が常識の線を一歩も出ていないというだけではなく、実は基本的な論理的つじつまがあっていない物語。いやはや。

中陰役所の官僚性もあきれるほどに見事なものですが、反省ボタンを押すだけで全員極楽往生というのは、何がモデルなんだろう。クイズ番組?運転免許センター?ヤクザの武田勇と、椿山課長のシベリア帰りのお父さんとは実にかっこいい。蓮クンはかわいくて陽介クンは冴えている。佐伯知子さんは作者の理想か?

まぁ、この作品に理屈は無用ですね。高度経済成長を支えた中年賛歌、ちょいとピンク色をあしらった、現代の浪花節でしょう。かなり笑えそうな映画を見てみたい。
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