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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ第1番」を聴く

2014年02月09日 06時02分56秒 | -室内楽
通勤の音楽として、ここしばらく、ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ第1番」を聴いております。厳冬期に真夏のブラジルの音楽ですが、意外にもよく似合います。
「ブラジル風バッハ」というのは、「ブラジル風にアレンジしたバッハの音楽」ではなくて、「バッハ風にアレンジしたブラジルの音楽」という意味でしょう。
この第1番が、本来は8本のチェロのための音楽であるのに対して、第2番は、サキソフォンが活躍しジャズ風のテイストの「酒場のバッハ」(^o^;)であり、第3番はピアノとオーケストラによる、ピアノ協奏曲風という具合で、ブランデンブルグ協奏曲のように、様々な編成で試みられた音楽となっています。

ヴィラ=ロボスは、1920年代、30代半ばにアルトゥール・ルビンシュテインに認められ、国からも援助を受けてパリに移ります。そして、作曲家としての名声を獲得した後、43歳(1930年代)の時にブラジルに戻ります。1930年頃のパリというと、大戦間期の芸術の都ですが、やがて数年後にヒトラーのナチスドイツが政権を取ろうとする時期でもあります。故郷を思う気持ちが帰国を決心させたのでしょう。そして、サンパウロやリオデジャネイロで音楽教育に携わる中で、尊敬するバッハのポリフォニーと故国ブラジルの民俗音楽とを結びつけ、作曲をしたもので、パブロ・カザルスに献呈されているそうです。

第1楽章:序奏(エンボラーダ)、アニマート。エンボラーダは、ブラジル民謡だそうな。1938年に、あとの二曲にこれが追加されて、全部で三つの楽章からなる音楽として曲が完成したのだそうです。出だしのリズム感がカッコいいのと、音域により音色が変わるチェロの特徴を組み合わせた合奏が、たいへん印象的です。
第2楽章:前奏曲(モディーニャ)、アンダンテ。モディーニャとは、18世紀頃の抒情歌だとのこと。そのとおりに、抒情的な緩徐楽章となっています。チェロの魅力がいっぱいの音楽で、第2楽章と第3楽章は、帰国した年である1930年にはすでに作曲されていたそうです。
第3楽章:フーガ(対話)、ウン・ポコ・アニマート。チェロ合奏によるフーガは、力強さと風格があります。朗々たる歌謡性ではなくリズムと前進力を前面に出してこの楽器の別の面を生かしたもので、チェロ好きにはこたえられない音楽となっています。

活力に満ち、センチメンタルな感傷性も併せ持ち、チェロのみで奏でられる音楽。ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第1番」は、繰り返し聴いて耳に馴染むほどに、不思議に心に残る音楽です。

CDは、EMIの廉価3枚組で、この演奏はエンリケ・バティス指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の奏者たちによるもの。録音は1985年の11月、St James's, Clerkenwell green とあります。型番は、TOCE-16135-37 です。

■バティス指揮RPO盤
I=7'01" II=9'32" III=4'27" total=21'00"

(*1):ヴィラ・ロボス「ブラジル風バッハ第4番」を聴く~「電網郊外散歩道」2009年11月

【追記】
この曲の動画を貼っておきましょう。編成は8人ではなく、拡大されているようです。

■第1楽章。



■第2楽章。



■第3楽章。



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山形弦楽四重奏団第50回定期演奏会でハイドン、山田耕筰、ベートーヴェンを聴く

2014年01月14日 06時02分55秒 | -室内楽
真冬の連休の最終日、成人の日に、山形市の文翔館議場ホールにて、山形弦楽四重奏団第50回定期演奏会を聴きました。現在の山形弦楽四重奏団は、四人のメンバーがいずれも山形交響楽団の奏者で、オーケストラの仕事のかたわら室内楽の活動を続けている常設の弦楽四重奏団であり、こうした例は全国的にも珍しいものだそうです。年に四回の定期演奏会を開催して十三年目に入り、ついに今回は第50回目を迎えたという記念の演奏会。私はたしか第23回の佐藤敏直作品を取り上げたあたりから聴いているはずなので、半分くらいは聴いていることになります。当ブログの「室内楽」カテゴリーが突出して多いのも、このナマの演奏会の存在が大きいと感じます。

さて、夕食を済ませて会場に入ると、もうプレコンサートが始まっておりました。今回は、黒瀬美さんのヴァイオリンと田中知子さんのヴィオラで、シュターミッツの「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲Op.18の3?」だそうです。シュターミッツらしく、優雅でなかなかすてきな曲でした。
そしてプレトークはヴィオラの倉田譲さん。とくに、ベートーヴェンの「古典還り」という解釈の妥当性についての話が興味深かった。要するに、中~後期の重厚な曲を作曲した後に、再び古典派のハイドンやモーツァルトの作品を見直し、新たに取り入れて、自分の作風の変化を意図していたのではないか、という考え方です。「重厚長大こそベートーヴェンの本領で総決算」という見方からは、なおも変化しつづけようとしていたベートーヴェンという視点は生まれにくいものですが、そのように考えれば、なるほどと理解できます。

第1曲、ハイドンの弦楽四重奏曲ト長調 Op.54-1、いわゆる第1トスト四重奏曲の一つらしい。当方、この曲はCDも持たず、初体験です。第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ。活気ある明るい音楽。第2楽章:アレグレット。二つのヴァイオリンと、ヴィオラ・チェロとが、互いに対比したり合奏したりという趣向か。第3楽章:メヌエット。チェロが珍しくソロ的に活躍します。こういう例はあまり多くないのでは。第4楽章:フィナーレ、プレスト。軽やかで楽しいプレスト。最後もごく軽く終わります。ハイドンらしい晴れやかな音楽で、第50回目の演奏会のオープニングにふさわしい曲でした。

続いて第2曲めは、山田耕筰の弦楽四重奏曲第2番、ト長調。
単一楽章だけの曲です。アダージョ~アレグロ・モルト。ヴィオラとチェロから始まり、これにヴァイオリンが加わる形の出だしです。歌謡的な旋律が続き、なるほど山田耕筰らしい、フレッシュな佳曲でした。

ここで15分の休憩です。



後半は、第3曲目のベートーヴェン、弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調、Op.130 です。第1楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ~アレグロ。ゆっくりと始まります。充実した響きです。この曲は、難曲だからというだけではなく、きっと奏者を没入させてしまうようなものがあるのでしょう。第2楽章:プレスト。暗めの色調で速いテンポの曲です。第3楽章:前の楽章と似た主題から、一転して田舎の散歩ふうな歩みに。途中、ピツィカートも。第4楽章:アレグロ・アッサイ。Alla Danza tedesca は、「~のように、舞曲」の意味らしいとはわかりますが、最後のがわかりませんでしたので、ネットで調べたら(*1)「ドイツの」という意味だそうな。すると、意味は「ドイツ舞曲風に」でしょうか。たしかに、ベートーヴェン風な味付けですが、軽やかな舞曲のような音楽です。第5楽章:カヴァティーナ:アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ。瞑想的というのか思索的というのか、とてもステキな緩徐楽章。酒飲みで不器用な中年男ベートーヴェンの優しさが伝わり、ごく静かに終わります。第6楽章:アレグロ。ここは「大フーガ」ではなく、改訂した方の終楽章を採用。なるほど、「古典還り」と言われるだけのことはあります。けれど、チェロの役割の大きさや、四人の奏者の緊密な集中の度合いは格別で、ハイドンの時代のおおらかな気分とは違います。やっぱりベートーヴェンの迫力はあり、充分に満足です。

アンコールは、山田耕筰の「赤とんぼ」を弦楽四重奏で。「15でねえやは嫁にいき~、お里の便りも絶え果てた~」、うーん、やっぱりいいですね~。

次回の第51回定期演奏会は、4月、担当:中島、とまでは決まっているそうですが、山形交響楽団のスケジュールが決まるまで、まだ日取りの確定はできないそうです。これはしかたがないでしょう。曲目はすでに決まっていて、山響の「アマデウスへの旅」完結年にちなみ、モーツァルトのハイドンセット全曲を二回に分けて全曲演奏する予定、とのことです。こちらも楽しみです。

議場ホールを出て、文翔館駐車場へ向かう途中の冬景色を見ながら、まだ高校生だった頃に、県民会館で巌本真理弦楽四重奏団の演奏会が開かれ、まさにベートーヴェンの弦楽四重奏曲が取り上げられていた(*2)ことを思い出してしまいました。あれから45年、同じ山形で、このような形で聴くことができることを、嬉しく感慨深く思います。

(*1):Tedesca 日本語・イタリア語 翻訳辞書
(*2):巌本真理弦楽四重奏団と山形~「電網郊外散歩道」2008年3月

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山形弦楽四重奏団の第50回定期演奏会が近づいて

2014年01月09日 06時05分09秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団(*1)の定期演奏会が近づき、様々なメディアに取り上げられています。1月4日(土)には、地元紙・山形新聞にも大きく取り上げられました。記事では、成人の日で休日となる13日(月)に、第50回の節目となる定期演奏会が開かれること、メンバーの紹介、日常の活動とともに、当日の曲目やチケットの入手方法などが紹介されています。かっこ内の表現は、記事中でメンバーの言葉として紹介されているものです。

1. ハイドン:弦楽四重奏曲作品54の1 (華やかな雰囲気に満ちた作品)
2. 山田耕筰:弦楽四重奏曲第2番
3. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 (全6楽章構成で「思慮深く慈愛に満ちた音楽」by 茂木さん)

なるほど~。
13日(月) 18:30 開演。山形市の文翔館議場ホールにて、前売り1,500円。
取材も記事も、いつもながらたいへん丁寧なものでした。署名記事ではありませんが、どなたが記事を担当されたのか、興味深いところです。

当方、すでに準備万端ととのえて待っております。チケット良し、ガソリン給油良し、夕食も「華園」(*2)の店主に、当日の夕方は少し早めに営業開始してほしいとお願いし、了解してもらっております(^o^)/

(*1):山形弦楽四重奏団ブログ
(*2):文翔館の近くで食事処を見つける~「電網郊外散歩道」2013年10月
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遠藤真理「サリー・ガーデン~チェロ・フェイヴァリッツ」を聴く

2014年01月02日 06時03分43秒 | -室内楽
山形交響楽団の第233回定期演奏会でマルティヌーのチェロ協奏曲を聴いた日に、会場で購入したCDを、ここしばらく、ずっと聴いておりました。当日のソリスト、遠藤真理さんのチェロ愛奏曲集「サリー・ガーデン~チェロ・フェイヴァリッツ」です。AVEX AVCL-25369 という型番のものです。

収録された曲目は、

1. サリー・ガーデン (アイルランド民謡、無伴奏チェロ版)
2. J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番(6曲)
3. ドヴォルザーク 「森の静けさ」
4. フォーレ 「夢のあとに」
5. サン=サーンス 「白鳥」
6. ショパン 「ノクターン 第2番」
7. R.シューマン 「アダージョとアレグロ」
8. ラフマニノフ 「ヴォカリーズ」
9. 「アメイジング・グレイス」(無伴奏チェロ版)

というもので、3.から8.までは、ダイアナ・ケトラーさんの見事なピアノ伴奏つきです。

 第1曲目、無伴奏チェロによる「サリー・ガーデン」は、アイルランド民謡を編曲したというだけあり、バグパイプを模したと思われる響きを盛り込むなど、たいへん印象的な曲です。
 第2曲目、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第1番は、過去の大家たちの、重々しく堂々たる演奏とは異なり、軽やかさやリズミカルな要素を志向しつつ、チェロらしい伸びやかさでよく歌う音楽となっていると感じます。
 バッハの6曲を一つと数えれば第3曲目、ドヴォルザークの「森の静けさ」は、題名どおり静けさを感じさせる曲です。強く主張する性格の曲ではないだけに、つい聞き流してしまいそうですが、良く聴くと実にニュアンスに富んだ音楽になっています。
 第4曲目、「夢のあとに」。せつないメロディはチェロにぴったりで、ピアノ伴奏がまた素晴らしい。思わずこの曲をLPで繰り返し聴いていた若い時代を思い出してしまいます(^o^;)>poripori
 第7曲目、シューマンの「アダージョとアレグロ」。私にはこの曲が一番のお気に入りでしょうか。チェロが素晴らしく、またピアノも素晴らしい!激しすぎないけれども力強さも持った音楽になっています。遠藤さんが、このピアニストとの共演を望んだ理由がわかるような気がします。
 サン=サーンス「白鳥」やラフマニノフ「ヴォカリーズ」等は、言わずと知れたチェロの定番でしょうが、第9曲、無伴奏の「アメイジング・グレイス」は、意外なほど説得力のある音楽でした。やっぱり曲の力もあるのでしょう。

 録音は2007年の10月で、軽井沢の大賀ホールとクレジットされています。音はたいへん自然なもので、明瞭で聞きやすいです。たっぷりとチェロの音色を堪能し、満足できた一枚でした。



 一つだけ不満を言えば、CDケース裏面に表記されたトラック番号が黒地に白抜きで印刷されているため、全部が真っ黒の■に見えてしまい、数字が判読できません。これは多分、デザイナーが大きな画面サイズのディスプレイ上でのみ作業をしているからでしょう。実用上、大いに問題ありだと思います。老眼の中高年世代だけでなく、視力にハンディキャップをかかえた若い世代でも読めるような、ユニヴァーサル・デザインを心がけていただきたい、と要望します。

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人の輪の中の弦楽四重奏

2013年12月28日 06時02分47秒 | -室内楽
12月25日の地元紙・山形新聞のコラム「気炎」に、「出会い」と題する文章が掲載されました。町田灯子さんの署名記事で、今年一年の様々な出会いの中から、地区の文化祭で行われた山形弦楽四重奏団のミニコンサートと津軽三味線の福祉施設での演奏会のことを取り上げたものでした。

とくに前者は、同団が日頃から練習会場にしているという縁で、コミュニティセンターの多目的ホールに聴衆が大きな輪をつくり、その輪の中を舞台にモーツァルトの弦楽四重奏曲「狩」や「最上川舟唄」、「崖の上のポニョ」の主題歌、ドボルザークの「新世界より」などが演奏されたのだそうです。

室内楽という、クラシック音楽の中でもまことに地味な分野の演奏会が地方紙のコラムに登場するという珍しさもさることながら、人の輪の中で演奏家が活動を続けているということを、あらためて気づかされる内容でした。

先日、ミニコンポでMDにタイマー録音したAMラジオ番組(*1)でも予告されておりましたし、こんどはFM山形でも紹介される(*2)ようですが、来る1月13日(月)、第50回めの定期演奏会(*3)を迎える同団を囲む人の輪の中に私も加わり、味わい深い音楽を聴き続けていきたいものだと思ったことでした。

(*1):PRのPR~「中爺通信」より聞きどころ~「東の散歩道」より
(*2):ラヂオに出演します-2~「山形弦楽四重奏団ブログ」よりSunday Prism@エフエム山形~「茂木日誌」より
(*3):山形弦楽四重奏団の公式ブログより

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ディーリアス「ヴァイオリン・ソナタ、ロ長調(1892)」を聴く

2013年12月16日 06時01分41秒 | -室内楽
ここしばらく、通勤の音楽として、ディーリアスの「ヴァイオリン・ソナタ集」を聴いておりました。Susanne Stanzeleti(Vn)、Gusztav Fenyo(Pf) のデュオによるナクソス盤(8.572261)です。作曲の順序にしたがって冒頭に置かれた番号なしのロ長調の曲は、いかにも19世紀末の音楽です。セザール・フランクとかサン・サーンスといったフランス音楽のテイストも感じますし、また一方では黒人霊歌ふうの味もあります。

リーフレットの解説によれば、作曲者30歳の1892年に作曲され、翌年にピアニストの Harold Bauer の、パリのアパルトマンで初演されたけれど結局は日の目を見ず、20世紀の近年になってようやく再評価されたものだとか。

第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ
第2楽章:アンダンテ・モルト・トランクィロ
第3楽章:アレグロ・コン・モト

後のディーリアスの、番号付きのソナタと比較すると、まだストレートに情熱を発散するところがあり、それはそれで魅力的な音楽です。そういえば、私はディーリアスという作曲家のことをほとんど知りません。どんな人なのか、どんな音楽を書いているのか、こういうCDを通して、あまりなじみのない作曲家と作品を知るのは、楽しいことです。素人音楽愛好家の醍醐味というべきでしょう(^o^)/

■Stanzeleit(Vn)盤
I=8'26" II=9'35" III=8'20" total=26'21"

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ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第2番ト長調」を聴く

2013年12月01日 06時03分45秒 | -室内楽
ベートーヴェンの音楽の中で、とくに若い頃の作品に、溌剌とした魅力を感じます。多くのジャンルで、野心と意欲を感じる「第1番」は特に魅力的なものが多い(*1)のですが、3番目に作曲されたとされる第2番においても、優雅さや軽やかさなど、また別な面で魅力があります。

過日、山形弦楽四重奏団の第49回定期演奏会で実演に接した(*2)ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第2番ト長調Op.18-2を、しばらく通勤の音楽としてCDを聴き、週末にあらためてPCオーディオで聴きました。演奏はスメタナ四重奏団、DENON の全集から。

第1楽章:アレグロ、ト長調、4分の2拍子。ソナタ形式。映画の中の王宮の場面で、左手を後ろに回し、少し身を屈めてハンカチを振るような挨拶の身振りを見ることがありますが、ちょうどあんな感じの、第1ヴァイオリンによる始まりです。
第2楽章:アダージョ・カンタービレ~アレグロ、ハ長調、4分の3拍子。ヴァイオリンが、とってもステキな、伸びやかな主題を歌います。優しい音楽の後に、速くせっかちな曲想も出てきますが、じきにチェロがあのゆっくりとした旋律を奏し、もとの優しい音楽に戻って、やがて静かに終わります。
第3楽章:スケルツォ、アレグロ。ト長調、4分の3拍子。第1ヴァイオリンが活躍する軽やかで優雅な始まりが、4人の掛け合いに変化していきます。このあたりの流れが、聴いていて快いものです。
第4楽章:アレグロ・モルト・クワジ・プレスト、ト長調、4分の2拍子。ソナタ形式。チェロの「挨拶」に応えて他の三人もそれぞれに挨拶をするところから始まり、小規模な転調を示したり、四つの楽器が互いに充実した絡み合いを見せたりしながら、快速テンポで演奏されます。曲の終わり方も晴れ晴れとしていて、まだあまりしつこくないところが、若いベートーヴェンらしくて良いですなあ(^o^)/

Wikipedia によれば、1800年に作曲され、1801年に他の曲と一緒に作品16として発表されたこの曲は、ロプコヴィッツ伯爵に献呈されているそうです。青木やよひさんの『ベートーヴェンの生涯』によれば、この頃のベートーヴェンは、その圧倒的なピアノ演奏の力で社交界の寵児となっており、テレーゼとヨゼフィーネ姉妹にピアノを教えながら、自作の「交響曲第1番」や「ピアノ協奏曲第1番」、「七重奏曲」というプログラムで自主演奏会を開いておりますが、一方で聴覚障碍に不安を持つという、複雑な内面生活の時期のようです。その割には、音楽の中にあまり深刻な危機を感じとる要素は少なく、むしろ若さと幸福な希望を感じさせてくれるものになっています。

スメタナ四重奏団によるCDの型番は、260C37-7711です。1976年6月にプラハのスプラフォン・スタジオで収録された、最初期のPCM/デジタル録音です。たしかこの第2番と第4番が、全集のスタートとなる最初の録音で、二曲を収めたLPがこの年のレコードアカデミー賞を受賞したのではなかったか。高音部がきつい感じを受けるのは、おそらく当時の機器の技術的な制約によるものでしょう。制作を担当したのは、スプラフォン側がエドゥアルト・ヘルツォーク、日本コロムビア側が結城亨さん、録音は、それぞれスタニスラフ・シコラ、穴沢健明の各氏とクレジットされています。

(*1):ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」2012年1月
(*2):山形弦楽四重奏団第49回定期演奏会でハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンを聴く~「電網郊外散歩道」2013年10月

※インフルエンザの予防接種後の経過は、発熱やかゆみなど変調を来すこともなく、たいへん順調です。今年こそ、インフルエンザはごめんこうむりたい(^o^;)>poripori

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ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第3番」を聴く

2013年11月23日 06時05分02秒 | -室内楽
今週は、通勤の音楽として、ベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第3番」変ホ長調Op.12-3 を朝夕に聴いてきました。全曲を繰り返し聴き、またトラックごとにリピートして聴くというスタイルで、いやおうなく耳に入り、頭に残るというものです。そんなことを言わずとも、ヨセフ・スーク(Vn)とヤン・パネンカ(Pf)というゴールデン・コンビによる演奏は、若いベートーヴェンの清新な音楽を見事に表現し、とくに緩徐楽章の魅力などは、するりと心に沁み入ります。

第1楽章:アレグロ・コン・スピリト、変ホ長調、4分の4拍子、ソナタ形式。ピアノの三連音によって始まり、第1主題が活き活きと提示されます。これをピアノとヴァイオリンが展開していく中で、一区切りをつけてスタッカートするヴァイオリンが第2主題を提示。ピアノでも繰り返されます。
第2楽章:アダージョ・コン・モルト・エスプレッシオーネ、ハ長調、4分の3拍子、三部形式。実に見事で魅力的な緩徐楽章です。この楽章を聴くためにこのCDを取り出すこともあるくらいです。つぶやくように始まるピアノの主旋律をなぞるように、しかし少しずつ形を変えながらヴァイオリンが奏されます。中間部は、そのヴァイオリンが主体となって、様々に転調しながらゆっくりと展開され、ピアノとヴァイオリンとが主役を交代しながらコーダへと進みます。
第3楽章:ロンド、アレグロ・モルト、変ホ長調、4分の2拍子。前の楽章から一転して、活発で生き生きとした、躍動的な楽章となります。くるりくるりと回転しながら踊っていたら、楽しいけれど目が回りそうな音楽です。途中の転調も効果的で、再び元の変ホ長調に戻るときの晴れやかで楽しそうな気分は、何とも言えず気分の良いものです。



大柄で大きな熊のような手を持つというヨセフ・スークの、自在で活発な演奏とともに、第2楽章におけるパネンカのピアノの素晴らしさに感嘆してしまう、名コンビによる1966年10月のアナログ録音。スプラフォン原盤です。

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山形弦楽四重奏団第49回定期演奏会でハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンを聴く

2013年10月20日 08時47分32秒 | -室内楽
週末の土曜日、勤務を終えてから県立図書館で調べものを済ませ、某店で夕食をとって文翔館議場ホールに急ぎました。ちょうど渡邊奈菜さん(Vn)と田中知子(Vla)さんのデュオによるプレコンサートの途中でしたので、足音を立てないように遠慮して入口のところで拝聴。モーツァルトだったようですが、曲目の紹介は残念ながら後ろの席までは聞こえませんでした。



本日のプレトークは、2nd-Vnの今井東子(はるこ)さん。先日まで風邪気味だったそうですが、「意地でも治してみせます」と宣言(*1)しての登場です。本日の曲目の解説も、幸いにグスグス鼻声ではありませんで、大丈夫そうです。まずは良かった良かった(^o^)/
で、曲目は:

ハイドン 弦楽四重奏曲 ト短調 Op.20-3
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第2番 ト長調 Op.18-2
モーツァルト 弦楽四重奏曲第18番 イ長調 K.464


ステージ上には、左からダークグレーのシャツに黒い上着の中島光之さん(1st-Vn)、そのお隣が今井さん、黒っぽいシャツに赤いネクタイの茂木明人さん(Vc)、そして同じく黒っぽいシャツに上着なしで倉田譲さん(Vla)の4人が並びます。

1曲目は、ハイドンの「太陽四重奏曲」Op.20の中から、ト短調をややゆっくりめのテンポで。出だしは少々心配しましたが、すぐに持ち直しました。4つの楽章中ではとくに第3楽章で、チェロがしっかりと土台を支えながら、おだやかな楽想を丹念に表現しようとしているのが感じられました。
「ひばり」や「皇帝」のような有名曲の場合は、何度も演奏する機会があるでしょうが、こういうマイナーな曲の場合は、滅多に演奏する機会はないのではと思います。そういう意味でも、ハイドンの弦楽四重奏曲の全曲演奏という目標は実現してほしいところです。

2曲めは、若いベートーヴェンの第2番。安定感のある出だしです。まじめでロマンティックな山Qに合っている曲想なのか、左手を後ろに回し、少し身を屈めてハンカチを振るような「挨拶」の身振りもすごくいいです(^o^)/
第2楽章で、Adagio cantabile なのに、まるでアタッカで次のスケルツォに入ってしまったかと一瞬思わせて、およよ、まだ2楽章だよとフェイントをかますところも(^o^)ばっちり決まります。第3楽章、若いベートーヴェンの軽やかさをよく表しつつ、第4楽章ではチェロの「挨拶」に応えて他の三人もそれぞれに挨拶をするところから始まり、最後は四人の没頭が感じられる、しっかりとしたアンサンブルの手応えでした。



15分の休憩の後、3曲目はモーツァルトの弦楽四重奏曲の中でも充実した「ハイドンセット」の最後から二番目の曲です。第1楽章:アレグロは柔らかに、ふくよかに。第2楽章:メヌエットは、舞曲由来とは思えない、かなり抽象的・前衛的な音楽です。第3楽章:アンダンテ。演奏者は楽しいだろうなと思わせる、技巧と情緒のバランスの取れた音楽です。VnとVlaの2人のかけあいも柔らかで、四人が交互に対話します。アンサンブルの妙味ですが、これが不思議に現代的です。第4楽章:アレグロ・ノン・トロッポ。この音楽を、是非にももう一度聴きたい!と思ってしまいます。

アンコールは、同じく若いベートーヴェンのOp.18から、第5番のメヌエット。途中のヴィオラが奏する旋律が、とても魅力的に響きます。
最後は、中島さんのトークで、第50回定期演奏会の予告がありました。すでにチラシも出来上がっており、新春1月13日(月)の成人の日、18:30~、文翔館議場ホール、入場料は、前売1,500円、当日2,000円です。当方は、すでにしっかりと確保してまいりました。

(*1):風邪にご用心~「東の散歩道」
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ハイドンの「太陽四重奏曲集」から弦楽四重奏曲第33番ト短調を聴く

2013年10月15日 06時02分03秒 | -室内楽
通勤の音楽に、ハイドンの「太陽四重奏曲集」から、弦楽四重奏曲第33番ト短調、作品20-3を聴いています。もちろん、10月19日(土)に山形市の文翔館議場ホールで予定されている、山形弦楽四重奏団(*1)第49回定期演奏会のための予習です。



聴いているCDは、DENON のクレスト1000シリーズから、COCO-70733~4 という型番のもので、二枚組1,500円というお財布に優しいもの(^o^)。ウルブリヒ弦楽四重奏団による演奏です。添付のリーフレットによれば、作曲年は、1772年と記載がありますから、1732年生まれのハイドンは、ちょうど40歳になります。この時代のハイドンは、後年の優しく穏やかな作風からは意外なほどに、こういう内面的な激しさや憂愁を見せることがあり、この曲集でも顕著に感じられます。おそらく「作曲家が表情を強め、かつ深めようとしている証拠」という大宮真琴氏の指摘のとおりなのでしょう。

第1楽章:アレグロ・コン・スピリト、4分の2拍子、ト短調、ソナタ形式。ト短調の出だしはかなり強い印象があります。そしてこの主題が、全曲を通して曲の性格の一面を強く印象づけているように感じます。いっぽう、もう一つの主題はやや明るい性格を持ち、曲全体が暗鬱な印象となることから逃れているようです。
第2楽章:メヌエット。アレグレット、4分の3拍子、ト短調。メヌエットというにしてはいささか暗い楽章です。曲は前進する活力を持ち、同様に明暗を描き分けますが、全体的には憂愁の色調が支配的で、終わりは結末が明瞭でないままに、自然に次の楽章に移っていきます。
第3楽章:ポコ・アダージョ、4分の3拍子、ト長調。唯一の長調の楽章で、この曲のもう一つの性格が、この楽章のような穏やかな慰めを感じさせるものです。曲全体の中では最も長い演奏時間を要する楽章で、でも、ずっと聴いていたいと思ってしまう、とくに後半部でチェロの歌う旋律がたいへんに魅力的な音楽です。これは、ぜひ生で聴きたい!と強く思ってしまいます。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ・モルト、4分の4拍子、ト短調。大宮真琴氏の言葉を借りれば「ソナタ形式の枠組みの中に対位法的な書法のタッチを盛り込」んだ緊密さを持った短い楽章で、最後はフッと消えるように終わります。これも、印象的な終結です。

1970年の4月に、ドレスデンのルカ教会で収録されたアナログ録音で、制作は Heinz Wegner、録音担当が Horst Kunze、ドイツ・シャルプラッテンによるもの。DENON はオイロディスク社からライセンスを得たもののようです。ウルブリヒ弦楽四重奏団は、ドレスデンのシュターツカペレのメンバーによって組織されたもので、レコード会社の宣伝政策上は地味な存在ですが、演奏は見事なものだと感じます。

参考までに、CDに記載された演奏時間を示します。
■ウルブリヒ弦楽四重奏団
I=4'04" II=4'35" III=7'00" IV=2'40" total=18'19"

(*1):山形弦楽四重奏団公式ブログ

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今年も東沢バラ園で山形弦楽四重奏団の演奏会を聴く

2013年09月23日 06時03分02秒 | -室内楽
初秋の晴天の休日、山形弦楽四重奏団の演奏会を聴くために、村山市の東沢バラ公園へ出かけました。午前中は、早朝から植木屋さんが来て庭木の手入れをしてくれており、私のほうは果樹園に堆肥を入れる作業を行い、半分ほど済ませたところでお昼となりました。シャワーを浴びてから東沢バラ公園へ出向くと公園の駐車場は満車で、臨時駐車場に回ります。歩いて公園入り口に行くと、今日は入園料無料の日だそうで、たいへんな人出でした。なるほど、それで駐車場も満車だったのだな、と納得です。




会場はいつもの交流館内に50脚ほどの椅子を並べ、さらにベランダにも10席ほど高脚の卓と椅子があります。合計して60席くらいでしょうか。ローズティーやアイスなどをいただきながら、くつろいで音楽を聴き楽しむことができる、得がたい機会です。



今回は四人とも黒色のシャツで、正面左から、第1ヴァイオリンの中島光之さん、第2ヴァイオリンの今井東子さん、チェロの茂木明人さん、右端にはヴィオラの倉田譲さんです。

本日の曲目は、

(1) J.S.バッハ G線上のアリア
(2) モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジーク
(3) 真室川音頭
(4) さんさ時雨
(5) チャップリン 映画「ライムライト」のテーマ
(6) 映画「マイフェアレディ」から「踊り明かそう」
(7) 映画「千と千尋の神隠し」より「命の名前」
(8) 百万本のバラ

今日の進行役は、今井東子さんでした。曲紹介の途中で、「宮城県からいらした方はいらっしゃいますか?」とたずねたところ、数人のお客様が手を挙げました。純情かつ乙女な今井さん、あまりにもドンピシャリだったので嬉しくなってしまったらしく、少々どぎまぎしておりましたが、さすがに経験を積んで場慣れしているのか、すぐに「さんさ時雨」を紹介。な~るほど!そういうことでしたか(^o^)/

「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」では、有名な第1楽章の後の第2楽章で、不思議な乾いた音を出す奏法を取り入れ、ちょいとシニカルな、あるいはアルカイックな味わいを出しておりました。情緒纏綿とした昔のウィーン風スタイルとは違った表現と受けとりました。日本民謡の二曲は、小さいお嬢ちゃんも真剣に聴いていましたが、「ライムライト」のテーマでは後ろを向いてあちこち眺めていました。うーむ、小さい子どもには、大人を感傷的な気分に誘う旋律は無縁なのかも。「踊り明かそう」は中島さんのリードで軽快に。もしかして、気持ちよさそうに奏いていた中島さんもヘプバーンのファンなのでしょうか(^o^)/

そして、恒例となったこの演奏会の最後は、やっぱり「百万本のバラ」でした。

盛大な拍手に応え、アンコールは「見上げてごらん夜の星を」と「赤とんぼ」の二曲。私もお客様とともに、幸せな時間を過ごしました。



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ベートーヴェン「ヴァイオリンソナタ第2番」を聴く

2013年09月07日 06時04分18秒 | -室内楽
このところ、若いベートーヴェンの作品から、チャーミングな「ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調Op.12-2」を聴いております。演奏は、ヨセフ・スークのヴァイオリン、ヤン・パネンカのピアノで、第1番(*1)と同様にDENONの紙箱全集(COCO-83953~6)からの一枚。

添付のリーフレットによれば、この作品は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中では一番作曲された時期が早く、ボン時代に遡るらしい。出版の際に作品番号を調整するという、若いベートーヴェンの通例(*2)が、ここでも見られます。

第1楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ、8分の6拍子。冒頭は、ゆるやかな下り坂をスキップして下りていくような音楽です。やがてヴァイオリンとピアノの役割が交代して繰り返されます。このあたり、ハイドンの作品だと言われても信じてしまいそう(^o^)/
第2楽章:アンダンテ~ピウ・トスト・アレグレット、イ短調、4分の2拍子。寂しい表情で始まり、ヴァイオリンを少し遅れてピアノが追いかけるカノン風な経過が、ピアノとヴァイオリンが役割を交代するような形で繰り返されます。
第3楽章:アレグロ・ピアーチェヴォレ、イ長調、4分の3拍子。piacevole の言葉のとおり、愉快で心地よいアレグロ楽章です。軽やかなロンド・アレグロみたい。ピアノが、実に優しく歌います。このあたり、ヤン・パネンカの美質が感じられます。

通勤の音楽として存分に聴いた後で、静かな週末の朝に、自宅でゆっくりと耳を傾けるのはまた格別の味です。日中ならば、ある程度大きな音で聴くこともできますので、自室のステレオ装置で聴くこともできますが、早朝なればそれははた迷惑というものでしょう。デスクの前にセットした寄せ集め PC-audio で楽しんでおります。

パソコンに取り込んだ音楽ファイルを、RhythmBox というソフトウェアで再生し、ONKYO の USB-オーディオプロセッサ(*3)を通じて古いミニコンポで増幅して鳴らすスピーカとして、これまでは子どもと一緒に作った自作スピーカを使っておりました(*4)が、過日、単身赴任の際に使っていたミニコンポのスピーカを載せて、これを鳴らすように変更しております。どうもヴァイオリンの高音部の質は、小音量時にもこちらの方が自然で良いようです。




(*1):ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」2013年8月
(*2):ベートーヴェンの第1番~「電網郊外散歩道」2005年2月
(*3):ONKYOのUSBオーディオ製品を試す~「電網郊外散歩道」2009年2月
(*4):PCオーディオ用アンプを小型(ミニコンポ)に交換する~「電網郊外散歩道」2010年9月
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ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第1番」を聴く

2013年08月31日 06時03分34秒 | -室内楽
先にシューベルトの「ヴァイオリンのためのソナチネ第2番」を聴いた関連で、若いベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調Op.12ー1」を聴いています。通勤の音楽として繰り返し聴くとともに、週末には自宅のステレオ装置でも聴くという、相変わらずのパターンです。演奏は、ヨセフ・スーク(Vn)とヤン・パネンカ(Pf)のコンビで、DENON の紙箱全集(COCO-83953~6)からの1枚。

この曲は、1795年~1797年ごろに作曲されたものらしく、実際は第1番よりも第2番のほうが先にできたらしいです。このあたりも、できた順番ではなく、自信作(?)のほうを第1番にするという、若いベートーヴェンのいつものパターンが見られます。完成後は、師匠のサリエリに捧げられているそうで、映画「アマデウス」ですっかり悪役イメージが定着したサリエリですが、実際はだいぶ違うらしい。

第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ。ピアノとヴァイオリンがフォルテで主音を奏することで開始します。いかにも若いベートーヴェンらしい、颯爽とした、自信に満ちた活発な音楽です。
第2楽章:Tema con variazioni、アンダンテ・コン・モト。Tema con variazioni は「主題と変奏」くらいの意味でしょうか。はじめにピアノが主題を提示し、ヴァイオリンがこれを繰り返します。そこから実にチャーミングな変奏が展開されるうちに、ごく自然に転調し、重音奏法を用いた、振幅が大きく訴える力のある暗い表現になります。ここらへんが、この楽章の中心的な部分でしょうか。やがて再び穏やかな表情に戻り、ppで優しく終わります。
第3楽章:ロンド・アレグロ。この楽章も、ピアノによる軽やかで快活なロンド主題の提示で始まります。ヴァイオリンも、スタッカートのきいたリズミカルな運動を聴かせます。さらに別な旋律が提示され、転調しながら展開されて、コーダ部に入るとロンド主題が再現し、最後はピアノがffで音階を駆け下りて終わります。

中期の充実した、あるいは晩年の深い音楽世界とはまた異なる魅力を持った、若いベートーヴェンのフレッシュで活力のある音楽です。
録音はスプラフォンによるもので、1966年10月3~6日、チェコのプラハにある、スプラフォン・ドモヴィナ・スタジオにおけるアナログ録音です。

参考のために、演奏データを示します。
■スーク(Vn),パネンカ(Pf)盤
I=9'20" II=7'33" III=4'45" total=21'38"

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シューベルト「ヴァイオリン・ソナタ(ソナチネ)第2番イ短調」を聴く

2013年08月23日 06時04分14秒 | -室内楽
パソコンの前に座って、テキストファイル備忘録を読み返していると、思わず懐古的な気分になってしまいますが、そんなときはたいてい音楽に聴き惚れていたりするものです。たとえば、シューベルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタ(ソナチネ)第2番イ短調、D.385など。

この曲は、シューベルト19歳にあたる1816年に作曲されたものだそうですが、Wikipedia によれば、この頃はちょうど小学校教師を辞め、作曲をしながら自由なボヘミアン生活を始めた時期にあたるのだそうです。第1番イ長調D.384、第3番ト短調D.408と同時期に作曲され、いわばセットになるものですが、残念ながら Wikipedia にもこれら3曲に関する言及はありません。ということは、いわゆる有名曲ではないということでしょうか。でも、なんと魅力的な音楽であることか。



この曲に初めて接したのは、学生時代に購入した「シューベルト・ヴァイオリン作品全集」と題したエラートの廉価盤二枚(RE-1040/1-RE)で、ミシェル・オークレールのヴァイオリン、ジュヌヴィエーヴ・ジョワのピアノによる演奏でした。このステレオ録音によって、シューベルトのヴァイオリン作品の魅力を知りました。
そして現在は、著作隣接権の保護期間を過ぎ、公共の財産となった録音で、ネット上に公開されているものから、ヨハンナ・マルティ(Vn)とジャン・アントニエッティ(Pf)による演奏を、PC-audio を通じて聴いています。これならば、「Blue Sky Label」(*)等を通じて、多くの方々が実際にこの音楽に接することができそうです。

第1楽章:アレグロ・モデラート。はじめに、第1主題がピアノだけに現れ、少ししてヴァイオリンが入るとすぐに2オクターブも跳躍する、劇的な音楽となります。
第2楽章:アンダンテ。まるでシューベルトの歌曲のような、素朴で叙情的な調べです。実に印象的で効果的な転調があり、なんともチャーミング。シューベルトらしい個性が現れたところと言えるでしょうか。
第3楽章:アレグロ。メヌエット楽章でしょうが、力強さもあり、あえて舞曲の名前では名乗らなかったのかも。トリオ部では変ロ長調から再びニ短調に変わります。
第4楽章:アレグロ。優しく悲しげな調べと、激しさのあるリズミカルな三連符の主題が、入り乱れて展開されるアレグロで終結します。明るい長調では終わらないところがこの曲の特徴でしょうか。

ヴァイオリンの親しみ深い魅力をいっぱいにふりまきながら、ちょいと感傷的になってしまう佳曲だと思います。

(*):シューベルト「ヴァイオリンソナタ第2番」~「クラシック音楽へのおさそい」~Blue Sky Label

(*2):YouTube には、こんな演奏がありました。どうも、ヴァイオリン奏者ご本人の投稿みたいですが、ほんとのところはどうなのかな?



それにしても、シューベルトの音楽は、いいですね~!

(*3):シューベルト「ヴァイオリンのためのソナチネ第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」2006年4月

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プレシャス・カルテット山形公演を聴く(2)

2013年07月27日 07時08分40秒 | -室内楽
7月25日(木):プレシャス・カルテット山形公演の後半です。曲目は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番イ短調Op.13。この曲については、カルミナ四重奏団の演奏で親しんでおりますが、実演で聴くのはもちろん初めてです。



第1楽章:アダージョ~アレグロ・ヴィヴァーチェ。イ長調の優しい響きで始まり、イ短調の速く情熱的な主部が展開されますが、これはまさしくベートーヴェンの後期の四重奏曲を経験した若者のものでしょう。
第2楽章:アダージョ・ノン・レント。穏やかな表情で始まります。四人が互いに音を確かめながら、静謐な緩徐楽章となっています。フーガ風に展開するところは、むしろ厳しさを感じさせますが、再び穏やかな表情に戻って終わります。
第3楽章:インテルメッツォ:アレグレット・コン・モト~アレグロ・ディ・モルト。少しだけチューニングした後、三人のピツィカートをバックに、1st-Vnが親しみやすい旋律を歌います。この情感は、やや古風ではありますが、好ましいものです。そしてあの軽やかなスケルツォも見事に決まり、はじめの旋律に戻ったときには、懐かしさを感じます。
第4楽章:プレスト~アダージョ・ノン・レント。切迫した表情の音楽が、次第に高揚してフィナーレに向かうかと思わせておいて、実はアダージョに転じ、1st-Vnのモノローグの後に曲の最初の旋律が回想され、静かに印象的に終わります。

うーむ、いい演奏を聴いたぞ。良かった~。

聴衆の拍手に応えて、アンコールはピアソラの「リベルタンゴ」。これも、思わず体が動きます。大いに楽しみました。



ところで、もっぱらCD等の録音を通じて楽しむ素人音楽愛好家であるワタクシは、情感豊かな旋律には反応しますが、技巧的な見事さを理解することは少なく、例えばこの曲の第3楽章のスケルツォ部や、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番の終楽章などを文章にするときに、視点に困っておりました。今回、プレシャス・カルテットの演奏を聴いていて、ふと思い当たりました。そうか、作曲家はなにも聴衆のために音楽を作っているわけではなくて、演奏者の顔を思い浮かべ、彼らが困難を乗り越える喜びを想定するところもあるのだろうし、自分自身の理論的な課題に取り組んでいるところもあるのだろう。そのような意味で、情感と技巧、感情と理性、などが交互にバランス良く登場するのだろう。楽章ごとに、優位になるものが交代したり、あるいは同じ楽章の中でも、これらがバランスを持って交替するような作りになっているのではないか。

漠然としてはいますが、まあ、そんなようなことを帰りの車の中で考えておりました。
たいへん良い演奏会でした。2nd-Vnの古川仁菜さん、もしかしたらおめでたでしょうか。元気な赤ちゃんが生まれますように、お祈りいたします(^o^)/

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