評価 (4点/5点満点)
誰よりも長く、誰よりも近いところで、稲盛さんに接していた著者が、稲盛さんの言葉を15個選び、仕事・人生を好転させていく具体的なエピソードを紹介します。
京セラの成長やJALの再生など、数々の苦難を乗り越えてきたからこそ、稲盛さんの言葉には「力」があります。
稲盛さんの本は、どちらかと言うと、主に経営に関する本が多いのですが、本書はあくまでも「現場で仕事をしている働き盛りの人」に向けて書かれています。
稲盛さんから叱られたり、諭されたりするのをイメージしながら読むといいですね。
【my pick-up】
◎「現場での経験も大事だが、読書も同じぐらい大事だ」
経営者が、日々の仕事における「現場での経験」と「読書」をほぼ同等のものとして扱っている。経営者として、そこまで踏み込んで発言するのも、勇気のいることだと思います。
◎「過去を否定しては、ダメなんだ。それでは誰もついてこない」
新しい職場で新任のリーダーは、組織をより良くしようとするあまり、ついつい過去の問題点を列挙してしまう。それでは前任者の過去を否定してしまうことになる。そんなことをしていては、新しい職場の人は誰もついてこない。
◎「お前が部下をかばうから、部下が育たないんだ」
自分の部下がミスをしたのなら、上司としては、厳しく注意しなくてはならない。なぜ部下を厳しく注意しないんだ?お前は人から嫌われたくないから、部下を厳しく注意することもできないんだ。人から嫌われたくない人間では、部下を育てることも、強い組織を作ることもできない。上司が厳しく注意したとき、素直に聞いてくれる部下と、素直に聞いてくれない部下がいるはずだ。素直に聞いてくれない部下というのは、本人が悪いわけではない。やはり、上司が日ごろから人間関係を大事にできていないんだ。上司が信頼関係を作るには、日々、話し込みをするしかないんだ。感謝の気持ちを持って話しているか、どうか。部下に成長してほしいという、思いやりを持って話しているか、どうか。
◎「集団に問題が発生したのなら、その原因を作った個人がいるはずだ」
皆が悪かったでは、組織の問題は解決しない。個人を追求するくらいの勇気がなければ、強い組織は作れないんだ。しかし、目的はあくまでも問題の原因を追い求めることであって、その原因がわかったからといって、その個人の責任を追い責めることではないのです。
◎「去年と同じなら、この1年間お前は死んでいたのか?」
今年は去年より何かしら良くなっていなければならないんだ。そうでなければ、この1年お前は何も成長していなかったことになるじゃないか。この1年、どれだけ付加価値を生んだのか、それを考えなければならない。去年、9人の人間でやっていたのなら、今年は8人でやってみる。去年、100万円でやっていたのなら、今年は90万円でやってみる。とにかく去年と今年では何か変えなければダメだろう。
◎「全員参加の経営を実現する能力がもっとも重要なのだ」
「社員全員が経営に参加する」意識を持つといったところに、その真髄があります。自分で「考えよう」と思った瞬間から、積極性が出てくる。現場の社員に知恵がないわけではない。経営者が考えさせていないだけなんだ。現場の社員は、考えさせさえすれば、現場の問題点もその解決策も、だいたいわかるものだ。