評価 (3点/5点満点)
医療(医師)とビジネス(戦略コンサルタント)の両方の世界を経験してきた著者が、「働くこと」と「心と身体の健康」の両立というテーマについて解決策を提示します。
具体的には「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介しています。
「休むとこれまで積み上げてきたものが全部なくなってしまう」
体調が悪くてもなかなか休まない方の声ですが、適応障害の症状は、これまでのやり方、考え方、環境、生活などを変える必要があることのサインです。
自分ひとりで何とかしようとせず、周囲とのつながりを頼ってほしいと思います。
【my pick-up】
◎休職は社員に与えられた権利ではない
休職は、労務を提供できないために「雇用契約上の債務の不履行による解雇」を猶予された期間です。休職期間とは「回復し、再び労務を提供できるよう努力をする期間」であり、「自由に使える休暇」ではないのです。そのため「自分は休職中だから家族の用事をする」ことを会社に伝えて、印象を悪くすることはやめましょう。
◎体調不良で休んだ翌日は、さらに出社しにくい
復職初期に休んだ場合、朝に休みの連絡を入れた後も、1日中何もできないほどの強い体調不良に陥るケースはそれほど多くありません。しかし、昼から夕方にかけては「ああ、休んでしまった」と後悔の気持ちで過ごし、夜になると「明日は仕事ができるだろうか」「明日の朝、上司にどう話そうか」など心配事で頭がいっぱいです。「休んだことでさらに不安が膨らみ、翌日以降ますます出社しづらくなる」という円環的因果律の悪循環が回りそうになっています。「鶏が先か卵が先か」の話ではありますが、少々の体調不良や気分の落ち込みであれば、休まずに働いたほうが絶対によいのです。
◎ハラスメントを相談する際には、最終的に「証拠があるか」が問われる
メモを取るのも有効ですが、もし「これは明らかにハラスメントだ」と確信しているのであれば録音をお勧めします。録音は明確な証拠になるだけでなく、精神的にもメリットがあります。慢性的なハラスメントを受けていると「また怒られるのでは」「何か言われるのでは」と常に不安な状態になり、心が委縮してしまいます。毎日、その人の一挙手一投足に自分の心が支配されている状態です。しかし、録音をしていることで「証拠を集めているのだ」と意識が変わり、ハラスメント的な発言が出ることすら「むしろ言ってくれ」と前向きに捉えられるようになります。この心の変化は非常に大きな支えになります。