日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「閏日」。「電話した。相手の日本語がわかった!」。

2012-02-29 08:37:30 | 日本語の授業
 小雪が舞っています。朝、外を見ると、どこの家の屋根も真っ白に染まっています。予報通り、雪のあしたです。けれども、ありがたいことに道は濡れているだけ。これなら少し用心すればどうにか歩けることでしょう。先だっての雪の日には、転ばないように気をつけていても、往生しましたもの。今朝は、皆、肩を竦めながらも、足捌きよろしく、サッサッと歩いています。

 雪は、軽そうに舞ってはいますが、それでも風が強いのでしょう、傘にあたって雨音のような音がします。建物に、行く手を阻まれたり、車に追い立てられたりするのでしょうか、右から左から、あるいは角度を変えてと千変万化の舞い方をしています。粉雪ですから、よけいにそう感じられるのかもしれません。

 さて、今日は閏年の閏日、四年に一回の二月二十九日です。「二月は逃げる」と謂われていますが、なにやら一日得をしたような気分です。

 昨日、タウンワークを見ていますと、市川浦安地区の人材派遣会社を見つけました。それで学生にそれを見せ、留学生であるということ、この地区に住んでいるということを言い、登録できるかどうか聞いてみるように言ってみました。

 「初級」がもうすぐ終わり、「中級」に行こうとしている学生たちです。ある程度のこと(日本語)はわかります。工場での仕事は、すでに何名かしており、特別困ったこともないと言います。ただ、彼らにはなかなか一歩が踏み出せないのです。つまり、自分で行動を起こすという一事です。

 皆、友達がお膳立てをしてくれるのを待っている、誰もしてくれなければ、「先生がして」となるのです。

 これまで、この学校では中国人が多かったので、このように「口を開けて待っているだけ」の人たちというのは、あまりいませんでした。いたのかもしれませんが、互いにどうにかできていたのでしょう。

 もちろん、中国人にしても、高校を卒業したばかりの人たちは彼らと同じだったはずです。どうしていいかわからなかったでしょう。けれども、先に来ていた人達が、どんどん、自分で電話がかけられるようになる(なっていなくても、です)と「募集中」の所に電話をかけてみたり、あるいは、自転車で募集中の店を探したりして、生活力を見せてくれていました。

 中には、タウンワークを持ってきたり、ハローワークへ行って仕事捜しを手伝ってもらったりする人もいました。当然のことながら、最初は、タウンワークなどを見てもわかりませんから、聞きに来ます。その説明は私たちがするにしても、それからあとは、つまり、実際の行動は、彼ら自身がしていました。私たちは、ただ「頑張れ。独り立ちするのだ」と声援を送るだけ。それだけで、高校を出たばかりの女の子でも向かっていけたのです。

 ところが、今いる学生たち(実際に仕事をしなくてはならない人)のうち、大半は「待っている」のです。切羽詰まっても、自分からはできないのです。

 多分、彼らの国では経済的にも恵まれており、そういうことをせずともよかったのでしょうが、それは中国人とても同じです。親が丸抱えしてくれ、苦労しなくてもよかったのは同じです。

 やはり世界に飛び出し金を稼ぐという点では、中国人はすごいのですね。最近は、外国の大学へ行っても、「ねえやがいないと何もできない」という中国人の若者の話が、よく笑い話のように出てきますが、少なくとも日本語学校に来るような中国人(直接、中国から日本の大学に入った学生は、アルバイトをせずに皆、親からの送金だけで暮らしていけるそうですから違うのでしょうが)の若者は違います。

 こういう若者は、かつての日本の逞しかった人たちの姿と重なります。

 日本では、「若い頃の苦労は、金を出しても買え」と言われていますが、こういう異国での辛い思いは、人生において、貴重な財産となるはずです。「おんぶに抱っこ」で、どうにかなるなら、外国に出て行く必要なんぞありません。しかも勉強もしたい、そのための金も必要というのですから、普通の根性ではなかなかできることではありません。

 今の学生たちが、この関門を早く越えることができるといいのですが。

 ただ、救いは、昨日二人の学生が、電話したけれども断られたと知らせてくれたとき、いかにも嬉しそうだったことです。

「これは日本語の練習だと思ってやりなさい。いつまでもただ待っているだけではだめ。何もいわないのもだめ。自分で探しに行け。自分で交渉してみろ」。彼らは、それをやってみて、「相手の日本人の言ったことがわかったよ」というのがうれしかったのでしょう。

 こういう積み重ねが、人に度胸をつけ、日本での生活に幅を持たせてくれるのです。今度は、募集中と書いてある店を捜し、そこに行ってみて、頼んでみることですね。そして、「こんなことを言われたけれども、これ、どういう意味?」と聞きに来てくれることを楽しみにしています。

日々是好日
コメント
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