日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「虎が雨」。「『異文化』同士の『軋轢』、『葛藤』、『矛盾』」。

2010-05-11 07:14:16 | 日本語の授業
 アワアワと雨が降っています。五月も中旬に入りました。不思議なもので、生まれた時から「新暦」で育ってきているはずなのに、時々「五月」ではなく、「皐月」の時間に、反応してしまいます。

 今朝もそうでした。旧暦でいけば、「卯月」の始めとも言えるでしょう。それなのに「皐月」で、思わず「お虎が雨」という言葉が浮かんできたのです。「曾我兄弟の討ち入り」で出て来る、あの「虎御前(とらごぜ)」です。降り方が、そんな具合だったのです。新緑も霞むどころか、柔らかい雨に濡れて、色合いも鮮やかに、生き生きと見えます。この言葉も旧暦の「皐月」の頃のもの。本来ならば、梅雨入り前後の雨を指す、言葉でありましょうに。

 さて、学校です。
 新しいクラスでも、少しずつ矛盾が出はじめました。「馴れ」からくる「勘違い」、「思い違い」です。始めのうちは、初めての外国人クラスに入ったということで、互いに様子をうかがっていたのでしょう。が、すでに一ヶ月を過ぎ、互いの名前も覚え、性格も何となくわかったつもりになったところから出て来る「失敗」です。

 自分の国であったら、こんなタイプの相手はこういう反応をするだろうと、ついつい安易に考えてしまい、時によっては「けが(これは、『しまった』ということをしでかしてしまうという意味で)」してしまうのです。

 国や民族が違えば、当然のことながら、時として相手の反応が違ってくることも多くなります。気軽に、(自分国であったら)こういうタイプは、こんな反応をするだろうというと安易に考え、軽く言ったつもりが、相手に重く受け取られ、誤解されてしまうということも少なくありません。

 しかしながら、これに懲りて何もできなくなるというのも困りもの。外国(この場合は日本)で、他国の人と「一つクラス」で勉強するということの、すばらしさも、もしかしたらこういうところにあるのかもしれません。つまり、「異文化」というものを、失敗を通して、肌で感じられるというところなのです。これで「成長」していけるか、あるいは、「首をすくめた亀さん状態になるか」は、「本人の資質」プラス「学校側の取り組み」プラス「仲間たちの助け」なのでしょうが。

 「国際化」と、一口で言うことはたやすきことながら、「いざ、簡単にできるか」というと、そういうものでもないのです。なかなかに難しい。とは言え、すでに自分の国を離れ、しかも、来たのが「一つの国で固まっていない」学校であり、教室なのです。こういうことは、実際に身をもって体験しなければ、わからぬことです。得難い経験ができたと、プラスに考え、自分を成長させていかなければなりません。

 この世の中には「絶対」ということなどなく、ほとんどのことは「相対的」に動いています。感じるのも「相対的」なのです。場所が変わっただけで、人の表情も感じ方も異なってきます。それらを一つ一つ乗り越えていかなければ、他国(この場合は、日本)で、多くの国から来た人たちと友達になったり、わたりあったりすることはできません。

 とはいえ、この「若いクラス(まだ十代が多い)」のメンバーにとっては、これが「始まり」なのです。こういう、心の「軋轢」や「葛藤」を経験しながら、これまで築き上げてきた、自分の裡なる「常識」を一つ一つひっくり返し、新たな自分の「基盤」を創り上げていくしかないのです。私たちができるのは、その「お手伝い」くらい。どう感じ、どう考えていくのかは、本人の問題です。

 まあ、そうは言いましても、これには時間がかかります。彼らは来日して、まだ一ヶ月。一緒に、ゆっくりやっていきましょう。

日々是好日
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