「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。
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(更新日:2008年6月21日)
第47回 Jurgen Aumuller <Schloss Wackerbarth><1>
ドイツ・ザクセン地方のワイナリー訪問第5弾は、
ラーデボイルにある 『Schloss Wackerbarth』 (シュロス・ヴァッカーバルト)のセラーマスター、ユルゲン・オムラ さんです。
<Jurgen Aumuller> (ユルゲン・オムラ)
シュロス・ヴァッカーバルトのセラーマスター
ザクセン最大のワイナリーへ
ドレスデンからマイセンに向かう電車に乗り、前回より2駅マイセン寄りのラーデボイル・ウエスト駅で下車し、ワイン街道を西に向かってしばらく歩くと、大きな建物と看板が見えてきます。
ここがザクセンで最も大きなワイナリー シュロス・ヴァッカーバルト
大きな理由は州の所有するワイナリーだからで、つまり、働いているスタッフは公務員ということになります。
そして、『シュロス・ヴァッカーバルト』はただ大きいだけでなく、
ドイツで2番目に古いゼクト(スパークリングワイン)の生産者でもあるのです。
となると、これはぜひ訪問せねば!
*シュロス・ヴァッカーバルトには電車で行けますが、ドレスデン市街からのトラム(路面電車)の4号線に乗ると、ワイナリーのすぐ近くまで運んでくれるので便利です。
今回はオムラさんと広報担当のシュレーターさんに案内していただきました
Q.このワイナリーは、かつてのザクセン王と関係が深いと聞きましたが?
A.はい、当ワイナリーは、ザクセン王だったアウグスト強王(在位1694~1733年)と非常に関係があります。
アウグスト王はポーランド王も兼ねていましたが、お金をたくさん使ってザクセンを治めていました。そのせいで、ドレスデン周辺にはさまざまなバロックの建物などが残っているのが見られます。
ワインも彼が情熱を注いいでいたもののひとつで、
自分が飲みたいためにつくらせていたのです。
敷地内の中で高台にある建物へ
Q.この建物もアウグスト強王と関係があるのでしょうか?
A.これがシュロス(=城)で、バロック様式で建てられたものです。400年くらいの歴史があります。今は、結婚式やさまざまなパーティーに利用しています。
建物の内部はホール状になっていました。スペース的にはそれほど広くはありませんが、窓から見下ろした庭園の景色が素晴らしく、ここでのパーティーは思い出に残るものになること間違いありません。
シュロスから見下ろした庭園
Q.この庭園も何かに利用されるのでしょうか?
A.庭にテーブルを出して、それぞれの季節でさまざまなイベントを行っています。
Q.シュロスの上から周辺にブドウが植えられていますが、種類は?
A.リースリングが多く、トラミナー、ヴァイスブルグンダー、ショイレーヴェなども植えています。樹齢はだいたい20年くらいです。
ワイナリーとしては、ブドウは40種類くらい栽培していますが、一番多いのがリースリングで、約32%です。
Q.畑はどのくらいありますか?
A.93haあります。ザクセンのワイナリーは家族経営の小さなところが多いですが、当ワイナリーは州が経営していますので、畑の面積はザクセン最大です。
つくっているワインの比率ですが、80%がスパークリングワインで、20%がスティルワインです。スティルワインの内訳は、88%が白で12%が赤です。
赤ワイン用のシュペートブルグンダーもありました
Q.ブドウ栽培で最も重要なものは何と考えていますか?
A.私は土壌が大事だと思っています。このあたりは、砂、残積土、粘土という土壌で、ワインにミネラリティー、フルーティーさ、エレガンスを与えてくれます。
Q.このあたりでは収穫時期はいつ頃になりますか?
A.9月中旬から始まり、1ヵ月から1ヵ月半くらい続きます。だいたい11月に入る頃までです。
白から収穫が始まり、続いて赤ワイン用黒ブドウとなります。
30%が手摘みで、70%が機械収穫ですが、ブドウは小さなケースに入れて丁寧に扱います。
Q.醸造のポイントは?
A.とにかく、収穫したブドウをしっかりとセレクトするということです。
白ワインは、ソフトにつくるためにステンレスタンクのみを使います。
赤はブドウ品種によって3種類の違うつくり方で行いますが、どの方法もソフトにプレスを行うようにしています。
ステンレスタンクの並ぶセラー内
Q.ゼクトはどのくらいつくっているのでしょうか?
A.先に話したように、年間生産量(約43万本)の8割がスパークリングです。
当ワイナリーは、ドイツで2番目に古いスパークリングワインの生産者ですが、現在、ドイツで6番目の規模のワイナリーでもあります。
ザクセンのゼクトは、1836年にBussardがレスニッツ(第46回で紹介したカール・フリードリッヒ・オーストの北西近隣)でつくったのが最初です。それが当ワイナリーの基になっています。
ザクセンではタンク内二次発酵でゼクトをつくる生産者が多いのですが、
当社はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵のみでつくっているのが特徴です。
選別されたブドウは上部からタンク内に入れられます
シャンパーニュと同様に回転させてオリを瓶口に集めます
ここで、セラー内の特別な仕組みのタンクのあるところに案内していただきました。オムラさんがスイッチを入れると、音楽が流れ、それに合わせてステンレスタンクが3色に輝きます! (下の写真)
流れる音楽に合わせて3色の光に彩られるリースリングのタンク
Q.なぜこんな仕組みをつくったのですか?
A.タンクの中はリースリングですが、3つのキュヴェがあります。毎年のテイスティングの積み重ねで、それぞれに個性があることがわかってきました。
ワインとして仕上げるためには最後にブレンドするわけですが、それぞれの個性を尊重しなければなりません。この、最後に合わせるという過程は音楽と同じですので、シンフォニーをつくり上げるようにワインもつくりたいと思い、音楽と光を与えることにしました。
とはいえ、セラーでは特に何をしているわけでもありません。ブドウを口に入れるとテロワールの香りがしますが、テロワールは畑でつくられるものです。
私は、ハーモニーのある丸いワインをつくりたいと思ってやっているだけです。
Q.樽の使用はどう考えていますか?
A.樽は赤ワインにのみ使います。ハンガリー、ロシア、アメリカのオークも使いますが、特に重要なのはフレンチオークだと考えています。ドイツのオークは使いません。
樽は内部のトースト加減が難しく、樽の匂いが強いとワインを壊してしまうので、強く出ないように注意しています。
まだまだ <2> に続きます
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。
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(更新日:2008年6月21日)
第47回 Jurgen Aumuller <Schloss Wackerbarth><1>
ドイツ・ザクセン地方のワイナリー訪問第5弾は、
ラーデボイルにある 『Schloss Wackerbarth』 (シュロス・ヴァッカーバルト)のセラーマスター、ユルゲン・オムラ さんです。
<Jurgen Aumuller> (ユルゲン・オムラ)
シュロス・ヴァッカーバルトのセラーマスター
ザクセン最大のワイナリーへ
ドレスデンからマイセンに向かう電車に乗り、前回より2駅マイセン寄りのラーデボイル・ウエスト駅で下車し、ワイン街道を西に向かってしばらく歩くと、大きな建物と看板が見えてきます。
ここがザクセンで最も大きなワイナリー シュロス・ヴァッカーバルト
大きな理由は州の所有するワイナリーだからで、つまり、働いているスタッフは公務員ということになります。
そして、『シュロス・ヴァッカーバルト』はただ大きいだけでなく、
ドイツで2番目に古いゼクト(スパークリングワイン)の生産者でもあるのです。
となると、これはぜひ訪問せねば!
*シュロス・ヴァッカーバルトには電車で行けますが、ドレスデン市街からのトラム(路面電車)の4号線に乗ると、ワイナリーのすぐ近くまで運んでくれるので便利です。
今回はオムラさんと広報担当のシュレーターさんに案内していただきました
Q.このワイナリーは、かつてのザクセン王と関係が深いと聞きましたが?
A.はい、当ワイナリーは、ザクセン王だったアウグスト強王(在位1694~1733年)と非常に関係があります。
アウグスト王はポーランド王も兼ねていましたが、お金をたくさん使ってザクセンを治めていました。そのせいで、ドレスデン周辺にはさまざまなバロックの建物などが残っているのが見られます。
ワインも彼が情熱を注いいでいたもののひとつで、
自分が飲みたいためにつくらせていたのです。
敷地内の中で高台にある建物へ
Q.この建物もアウグスト強王と関係があるのでしょうか?
A.これがシュロス(=城)で、バロック様式で建てられたものです。400年くらいの歴史があります。今は、結婚式やさまざまなパーティーに利用しています。
建物の内部はホール状になっていました。スペース的にはそれほど広くはありませんが、窓から見下ろした庭園の景色が素晴らしく、ここでのパーティーは思い出に残るものになること間違いありません。
シュロスから見下ろした庭園
Q.この庭園も何かに利用されるのでしょうか?
A.庭にテーブルを出して、それぞれの季節でさまざまなイベントを行っています。
Q.シュロスの上から周辺にブドウが植えられていますが、種類は?
A.リースリングが多く、トラミナー、ヴァイスブルグンダー、ショイレーヴェなども植えています。樹齢はだいたい20年くらいです。
ワイナリーとしては、ブドウは40種類くらい栽培していますが、一番多いのがリースリングで、約32%です。
Q.畑はどのくらいありますか?
A.93haあります。ザクセンのワイナリーは家族経営の小さなところが多いですが、当ワイナリーは州が経営していますので、畑の面積はザクセン最大です。
つくっているワインの比率ですが、80%がスパークリングワインで、20%がスティルワインです。スティルワインの内訳は、88%が白で12%が赤です。
赤ワイン用のシュペートブルグンダーもありました
Q.ブドウ栽培で最も重要なものは何と考えていますか?
A.私は土壌が大事だと思っています。このあたりは、砂、残積土、粘土という土壌で、ワインにミネラリティー、フルーティーさ、エレガンスを与えてくれます。
Q.このあたりでは収穫時期はいつ頃になりますか?
A.9月中旬から始まり、1ヵ月から1ヵ月半くらい続きます。だいたい11月に入る頃までです。
白から収穫が始まり、続いて赤ワイン用黒ブドウとなります。
30%が手摘みで、70%が機械収穫ですが、ブドウは小さなケースに入れて丁寧に扱います。
Q.醸造のポイントは?
A.とにかく、収穫したブドウをしっかりとセレクトするということです。
白ワインは、ソフトにつくるためにステンレスタンクのみを使います。
赤はブドウ品種によって3種類の違うつくり方で行いますが、どの方法もソフトにプレスを行うようにしています。
ステンレスタンクの並ぶセラー内
Q.ゼクトはどのくらいつくっているのでしょうか?
A.先に話したように、年間生産量(約43万本)の8割がスパークリングです。
当ワイナリーは、ドイツで2番目に古いスパークリングワインの生産者ですが、現在、ドイツで6番目の規模のワイナリーでもあります。
ザクセンのゼクトは、1836年にBussardがレスニッツ(第46回で紹介したカール・フリードリッヒ・オーストの北西近隣)でつくったのが最初です。それが当ワイナリーの基になっています。
ザクセンではタンク内二次発酵でゼクトをつくる生産者が多いのですが、
当社はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵のみでつくっているのが特徴です。
選別されたブドウは上部からタンク内に入れられます
シャンパーニュと同様に回転させてオリを瓶口に集めます
ここで、セラー内の特別な仕組みのタンクのあるところに案内していただきました。オムラさんがスイッチを入れると、音楽が流れ、それに合わせてステンレスタンクが3色に輝きます! (下の写真)
流れる音楽に合わせて3色の光に彩られるリースリングのタンク
Q.なぜこんな仕組みをつくったのですか?
A.タンクの中はリースリングですが、3つのキュヴェがあります。毎年のテイスティングの積み重ねで、それぞれに個性があることがわかってきました。
ワインとして仕上げるためには最後にブレンドするわけですが、それぞれの個性を尊重しなければなりません。この、最後に合わせるという過程は音楽と同じですので、シンフォニーをつくり上げるようにワインもつくりたいと思い、音楽と光を与えることにしました。
とはいえ、セラーでは特に何をしているわけでもありません。ブドウを口に入れるとテロワールの香りがしますが、テロワールは畑でつくられるものです。
私は、ハーモニーのある丸いワインをつくりたいと思ってやっているだけです。
Q.樽の使用はどう考えていますか?
A.樽は赤ワインにのみ使います。ハンガリー、ロシア、アメリカのオークも使いますが、特に重要なのはフレンチオークだと考えています。ドイツのオークは使いません。
樽は内部のトースト加減が難しく、樽の匂いが強いとワインを壊してしまうので、強く出ないように注意しています。
まだまだ <2> に続きます