ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第50回 Vinhos Borges @「キャッチ The 生産者」

2009-07-25 10:45:58 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2008年9月21日)

第50回  Ricardo Campos  <Vinhos Borges>

ワイン生産量 “世界10位” のポルトガルで、1884年からワインづくりの歴史があるヴィニョス・ボルゲス社から、輸出セールスマネージャーのリカルド・カンポスさんが新製品とともに来日しました 。



<Ricardo Campos> (リカルド・カンポス)
1973年、ポルト市生まれ。
世界各地でのビジネス経験の後、2006年にJMVグループ(ボルゲス社の親会社)に入社。
コーヒービジネスの海外営業担当を経て、2007年から同社のワイン輸出市場担当に着任。



日々進化し続けているポルトガルワイン
                             ―Vinhos Borges ―

ヴィニョス・ボルゲス社は、1884年にポルトに創立されたワインメーカーで、トラズ・オス・モンテス地方(ポルトガル北東部)のポルトとドウロをはじめ、ミーニョ地方(トラズ・オス・モンテスの西側)のヴィーニョ・ヴェルデ、ベイラス地方(トラズ・オス・モンテスとミーニョの南側)のダンに広大な自社ブドウ園を所有しています。

ポルトガルというと、やはり酒精強化ワインの“ポートワイン”が真っ先に思い浮かびますが、実はポルトガルでつくられるワインの約85%が通常のスティルワインです。
それだけポートワインの印象が強いということですが、実際にポルトガルの人が日常的に楽しんでいるのはスティルワインの方です。

今回は、ポルトガルではもちろん、日本でも大人気の“ヴィーニョ・ヴェルデ”(ポルトガル語で“緑のワイン”の意味)と、初めて日本に登場するという新商品を中心にリカルドさんに紹介していただきました。





Q.ボルゲス社というと、猫ラベルの「ガタオ」が印象的ですが?
A.“Gatao”はポルトガル語で“猫”のことで、当社では、ヴィーニョ・ヴェルデとロゼワインに“ガタオ”のブランド名を付けています。

緑のワイン“ヴィーニョ・ヴェルデ”は、その名の通り、若々しさが特徴のワインで、フレッシュな酸を持つ早飲みタイプです。また、わずかに炭酸が残るので(弱発泡)、より軽やかに飲んでいただけると思います。

我々のヴィーニョ・ヴェルデのブランドが“ガタオ”は、そのフレッシュな色合いから、 “レモンジュース” 、ロゼを“ストロベリージュース”と呼んでいるんですよ(笑)



Q.以前、ガタオはフラスコ型のボトル(上記の写真参照)に入っていたと思うのですが?
A.はい、以前はFlagon(フラゴン=フラスコ)ボトルを使っていましたが、徐々にモダンなボルドー型のボトルに切り替えています。



また、栓もコルクから順次スクリューキャップに切り替え、よりフレッシュなガタオをご提供していきたいと思います。


スクリューキャップは確かに便利♪


Q.ガタオは微発泡ワインですので、いったん開けた後のスクリューキャップというのはかなり便利ですね。他にもリニューアルした箇所はありますか?
A.ボトルの裏に貼るバックラベルですが、今までは白い紙でしたが、こちらを見ていただくとわかるように(下記の写真)、透明なシールに変更しました。
これにより、ボトルの向こう側まで見え、ワインもより透明感のある印象が強くなったと思います。また、バックラベルに記載する情報が、より消費者にわかりやすく便利な内容になっています。




Q.他にもリニューアル商品があるということですが?
A.当社の大人気スパークリングワイン“フィタ・アズール”のラベルデザインを変更しました。

フィタ・アズールは、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵でつくる辛口(セッコ)のスパークリングワインです。樹齢20年以上のゴウベイオ(ドウロのブドウ品種)、マルヴァジア、コデガ、ラビガドを使っています。



フィタ・アズールはポルトガル語で”青いリボン”という意味で、以前のラベル(右)にはその名の通りの青いリボンを使っていましたが、リニューアルしたラベル(左)は、より新しい洗練された雰囲気を出すようにしました。


Q.今回は、新商品も紹介いただけるということですが?
A. “LELLO”(レロ)というワインで、赤白2アイテムあります。

原産地管理呼称は“DOCドウロ”で、ポートで有名なドウロのブドウを使ったスティルワインになります。同じドウロ地域でも、酒精強化の手法でつくったワインは“DOCポルト”になります。




Q.レロはどういうコンセプトでつくられたものですか?
A.気軽に飲んでいただける味わいのワイン(イージードリンキングワイン)としてつくりました。価格も非常に魅力的(輸入元希望小売価格で1,250円)だと思うのですが、いかがでしょうか?

とはいえ、栽培は減農薬で行い、収穫はすべて手摘みで、非常に手をかけて丁寧につくっているのが自慢です。

赤も白も、2008年インターナショナルワインチャレンジ(ロンドン)で賞を取っているので、品質については折り紙付きです。



<テイスティングしたワイン>



Gatao Vinhos Verde NV
アザール、ペデルナン、トラジャドゥラ、アヴェッソと、舌を噛みそうな名前のポルトガルのブドウを使った弱発泡性の白ワインで、フルーティで、スッキリと爽やかな飲み心地が特徴です。ラベルの猫もキュートで、ハーフサイズボトルはちょっとしたプレゼントにも使えそうですね。

Gatao Rose NV
樹齢30~40年というトゥーリガ・フランカと、モウリスコ種からつくられたロゼワイン。リカルドさんが“ストロベリージュース”と呼ぶほど鮮やかなロゼカラーとフレッシュな味わいが魅力です。これも弱発泡性なので、華やかな雰囲気も楽しめます。




Fita Azul Reserva Seco NV
産地はトラズ・オス・モンテスで、樹齢20年以上のゴウベイオ、マルヴァジア、コデガ、ラビガトからつくられています。セッコ(辛口)ですが果実味がしっかりとし、ほどよいボディとキリリ感が楽しめる、瓶内二次発酵でつくったスパークリングワインです。

新しくなったラベルは高級感が漂い、とてもオシャレでステキで、これは女性受けしそうでしょうか。




Lello Douro White 2007
ブドウはマルヴァジア・フィナ、ゴウベイオ、ヴィオジーニョ、コデガというドウロの品種で、樹齢は平均20年とのこと。

樽は使っていないので、非常にクリーンな味わいで、果実のほどよい厚み、余韻のほろ苦さなどもあり、素晴らしいコストパフォーマンスのワインだと思いました。
シュル・リーの状態で4カ月熟成させているので、複雑味も感じます。

ラベルも若々しくスタイリッシュで、ショップで見ても目立ちそうですね。

Lello Douro Red 2006
ポートワインで使われるブドウ、トゥーリガ・ナシオナル、トゥーリガ・フランカ、ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカを使った赤のスティルワインです。熟成にはステンレスタンクとフレンチオーク樽の両方を用いるため、口当たりがふっくらとし、適度なコクがあり、モダンなスタイルに仕上がっています。

重たさはないので、食事とのマリアージュを特に意識せず、気軽に開けたい赤ワインです。


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インタビューを終えて

ポートワインのイメージから、クラシカルなものが多いと思われがちなポルトガルワインですが、このボルゲス社に関しては、かなり国際市場を意識した戦略を展開していることを感じました。



まず、輸出担当が若いイケメンのリカルドさんという点からも、歴史は長い老舗ワイナリーだけれど、古臭い体質ではなさそうだなというのが窺えます。

体質改善は、1998年にJMVグループの傘下に入ってから始まっているのかもしれませんが、リカルドさんがワイン事業の輸出担当となった2007年以来、特に顕著に現れているようです。

「ガタオ」のスクリューキャップや透明タイプのバックラベルの導入、「フィタ・アズール」のラベルのリニューアル、お値打ち新製品「レロ」の登場など、彼らには、市場が求めるニーズにどんどん対応していこうという意欲と柔軟性があり、それがいい結果を生み出しています。




実際、「ガタオ」は世界40カ国に輸出するボルゲスの主力商品ですが、日本市場ではこのところ非常に人気があり、商品が間に合わなくて困るほど売れている!という話を聞きました。

現在の日本では発泡性ワインの人気が非常に高いということも「ガタオ」の売上アップの要因のひとつかと思いますが、価格以上の品質のものを提供してきた結果でしょう。

新製品「レロ」も期待が持てそうですし、リカルドさんの活躍とボルゲス社の動きは、今後も要チェックですね。


(取材協力)東京木下商事株式会社

コメント
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