ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第23回 La Soufrandiere/B.Brothers@「キャッチ The 生産者」

2009-02-02 11:15:53 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年6月11日)

第23回  Jean-Philippe & Jean-Guillaume BRET
       <Domaine La Soufrandiere / Bret Brothers>
   


今回のゲストは、フランスはマコネ南部のヴァンゼル村からやってきた、若きジャン・フィリップとジャン・ギョームのブレ兄弟。
彼らは、「ドメーヌ・ラ・スフランディエール」「ブレット・ブラザーズ」の経営者です。



<Jean-Philippe Bret>
ブレ3兄弟の長男。カンヌ生まれの31歳。
マコン・ダヴァイエ醸造学校でエノローグ、ディジョンの技術学校でディプロマを取得後、ボルドーのバロン・フィリップ・ロッチルド、ムルソーのコント・ラフォン、ヴェルジェ、カリフォルニアのソノマ、ナパのワイナリーなどで修行。



<Jean-Guillaume Bret>
ブレ3兄弟の次男。リヨン生まれの30歳。
マコン・ダヴァイエ、アヴィズの醸造学校でエノローグの資格を取得後、ローヌ、ブルゴーニュ、ヴェルジェ、カリフォルニアのソノマ、ナパなどのワイナリーなどで修行。

*彼らの苗字「Bret」は、フランス語では「ブレ」と発音しますが、「Bret Brothers」は「ブレット」と英語読みします。


マコネとプイイ・ヴァンゼル

マコネがブルゴーニュの南あたりということはなんとなくわかるけど、
ヴァンゼル村って…?と要領得ないのがこの付近の地理。

広く"ブルゴーニュ"と呼ばれている地域は、北は"シャブリ"地区から始まり、その南が最もよく知られた"コート・ドール"地区、その南に"コート・シャロネーズ"地区、"マコネ"地区があり、最南端に"ボージョレ"地区と、細長く帯状に広がっています。
マコネ地区だけでも南北が50kmあり、シャブリとボージョレでは300kmも離れています。これは日本でいえば東京から新潟までに相当するから、けっこうな遠さです(マコネから北のボーヌまで90km、南のリヨンまでは60km)。

マコネでは、18世紀後半には白ブドウと黒ブドウは半々につくられていましたが、19世紀後半のフィロキセラ禍で黒ブドウのガメイが衰退し、現在は白ブドウのシャルドネが85%を占めています。
マコネはブルゴーニュ地域の中では最も面積が広く、土壌も多種多様な地区です。
"Macon+コミューン名"ワインが多く存在することからもわかるように、バラエティ豊かなワインが生まれます。

マコネ地区で最も有名なアペラシオンは、"Macon Village"や"Macon+コミューン名"以外では "Pouilly-Fuisse"(プイイ・フュイッセ)と"Saint-Veran"(サン・ヴェラン)でしょう。
この2つは面積も広いので、当然生産量も多くなります。

ところが、ブレ兄弟が拠点を置き、畑を所有しているAOC Pouilly-Vinzelles(プイイ・ヴァンゼル)は、面積においてはプイイ・フュイッセの6.6%(51ha)、生産量は5.6%(2455hl)と、非常に小さなアペラシオンです。マコネの最南端に近く、プイイ・フュイッセの東側に位置しています。




Q.あなた方が携わる前のドメーヌ・ラ・スフランディエールの状態は?
A.スフランディエールは祖父(ジュール・ブレ)が1947年に取得しましたが、祖父はパリで開業医をしていたので、畑は小作人に任せ、収穫したブドウは小作人と折半して協同組合に売っていました。
その後、父(ジャン・ポール・ブレ)が引き継ぎましたが、父もワインとは関係ない仕事をしていたため、ブドウ畑は引き続き小作人に任せていました。

Q.祖父、父もワインづくりには携わっていなかったのに、なぜあなた方はワインづくりの道に進もうとしたのですか?
A.スフランディエールには小さい頃から夏のバカンスなどでよく訪れていて、ワインも5歳くらいから飲んでいました(笑)。
ここからアルプスまでは比較的近く、ヴァンゼル村を拠点に山歩きをしたり、キノコを探したりしていました。2人とも自然の中にいるのが大好きだったので、大きくなったら自然を相手にした仕事をしたいとは思っていました。ワインに興味を持ち始めたのは15歳頃で、2人とも16歳からマコンの醸造学校に進みました。

Q.ワインをつくりたいという気持ちは2人とも同じだったんですか?
A.ええ、我々は趣味も好みも似ていて、小さいときから何をするにも一緒でした。実は我々の下に末の弟がいるのですが、ジャン・ギョームとは4つ離れていることもあり、年の近い我々がいつも一緒にいたんです。ちなみに、末の弟はベルサイユの生まれなのですが、実は3人とも両親のバカンス先で生まれています(笑)。

Q.それで、醸造学校を卒業後、各地で修行をしてからスフランディエールを引き継ぐことになったわけですね?
A.我々がスフランディエールを引き継いだのは2000年で、この年の収穫からドメーヌワインとして醸造と瓶詰めを始めました。

Q.もうひとつ経営しているブレット・ブラザーズ(Bret Brothers)はどんな会社ですか?
A.2001年の8月に設立したネゴシアンです。現在は12の生産者と契約し、ネゴシアンワインとして流通させていますが、ドメーヌワインと全く同じ信念、情熱を持って生産しています。

Q.あなた方の信念とは?
A.長年の実績のある農家や従業員たちとの関係を大事にし、ひとつの区画はひとりの生産者に責任を持って手がけてもらい、ほかの区画とのブレンドはしません。樹齢は35年以上のもののみを選択し、畑での作業はすべて手で行います。
また、自然なものを尊重し、発酵は自然に任せ、すべて自分たちのコントロールの下、ワイン生産を行っています。。

Q.ビオディナミを実践しているということですが?
A.スフランディエールとしては、スタート時の2000年からビオディナミを始めました。2003年にフランス政府に申請し、ECOCERT(エコセール)の認可を受けています。しかし、実際にシールを貼って販売できるのは2006年ヴィンテージからになります。 スフランディエールではすべてビオディナミに切り替えが完了していますが、ブレット・ブラザーズの扱う生産農家においては、現段階では40%が公式に認証を受けています。残りの60%は転換中です。


<テイスティングしたワイン> (すべて白ワイン)


Bret Bothers

・Macon-Vinzells Clos de Grand Pere 2004

・Vire-Clesse limat a Verchere 2004

・Saint-Veran Climat Les Fournaises 2004

・Pouilly-Fuisse Climat En Carementrant 2004

・Pouilly-Fuisse Climat La Roche 2004

Macon-Vinzellsからすでに充分おいしいのですが、まろやかでふくよかな果実味の"Pouilly-Fuisse Climat En Carementrant 2004"、ミネラル感が際立ち、余韻も非常に長い"Pouilly-Fuisse Climat La Roche 2004"は秀逸。



Domaine La Soufrandiere

・Pouilly-Vinzells 2004

・Pouilly-Vinzelles Climat "Les Longeays" 2004

・Pouilly-Vinzelles Climat "Les Quarts" 2004

・Pouilly-Vinzelles Climat "Les Quarts" Cuvee Millerandee 2004

どれもワインに個性が感じられますが、滋味にあふれ、凝縮されたエキス分を感じる"Pouilly-Vinzelles Climat "Les Quarts" Cuvee Millerandee 2004"はさすがに素晴らしい!



<ふたつのテイスティングを終えて>

どちらもクオリティの高いワインが勢揃いで、地形や土壌による味わいの違いが見事に反映されています。
ドメーヌものの方がおいしくてネゴシアンものはイマイチと考える人が多いようですが、そんな考えはきっぱり捨てるべし! です。


<区画の違いによる味わいの違い>

ワインは区画ごとにそれぞれ異なった個性を持っています。
どれが優れているか云々よりも、まずはその個性を理解し、好みやそのときの気分でチョイスするといいでしょう。
なお、ドメーヌものとブレット・ブラザーズで同じ区画名がついているワインでも、全く同じ畑ではありません(隣り合うことはあります)

Pouilly-Fuisse

En Carementrant
ロッシュ・ド・ヴェルジソンの断崖の下にある真南の畑。石灰質に富み、ヴェルジソンで最も素晴らしいテロワールのひとつ。

La Roche
ロッシュ・ド・ヴェルジソンの東向きの麓で、ヴェルジソンで最も素晴らしいテロワールのひとつ。岩場のワインはミネラルに富み、キメの細かなものになる。


Pouilly-Vinzelles

Les Longeays
丘の中腹の東~南東向きの畑で、粘土質石灰質土壌。一番早くブドウが熟す区画。フルーツ主体のワインとなり、純粋でまっすぐな果実味が特徴。

Les Quarts
南東向きの丘の上にある石英質にバジョース階(中期ジュラ紀の一段階)石灰岩を含んだ粘土石灰質土壌で、VolnayやPommardのように赤い部分が見られる。ピュアで透明感があり、ミネラルに富み、複雑で長熟なワインになる。




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インタビューを終えて

最初に現れた2人がとてもよく似ているので、「あれ?双子?」と思ったほど。すぐにその誤解は解けましたが、彼らの話を聞いてみると、趣味も考えも本当によく似ています。



ドメーヌ・ラ・スフランディエールとブレット・ブラザーズは、そんな息の合った若い2人が二人三脚で始めたドメーヌとネゴシアンですが、今までのワイン本では素通りされていたプイイ・ヴァンゼルを背負っていくことは間違いないでしょう。それは彼らのワインを飲んだ時に確信しました。

2人の信念が生み出すワインはナチュラルな土壌の味わいがしっかりと出ていて、それがカラダの細胞のひとつひとつにジワジワと染み渡るのです。
素直においしく、カラダがスーッと受け入れる、そんなワインです。

日頃はコート・ドールのワインにばかり目が行きがちですが、マコネ、そしてプイイ・ヴァンゼルという小さくてマイナーなアペラシオンにも、このような素晴らしいワインが生まれつつあります。

総じて、マコネ地区の生産者は小さいところ(4~5ha)が多いものの、情熱を持ってワインづくりをしている生産者がたくさんいる、とブレ兄弟は言っていました。
となれば、マコネ地区、中でもプイイ・ヴァンゼルのワインは、今後、要チェックですよ!


取材協力:トーメンフーズ(株)ワイン本部 →(現在)豊通食料

 http://www.vin-de-t.com/district/bourgogne/bourgogne/bret.html

 http://www.bretbrothers.com/index.php

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第22回 Marcel Richaud@「キャッチ The 生産者」

2009-02-02 11:10:37 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年5月11日)

第22回  Marcel Richaud  <Domaine Marcel Richaud>



「私は職人です」と言う マルセル・リショーさんは、フランスの コート・デュ・ローヌ の Cairanne(ケランヌ)村 で 有機農業による自然なワインづくりをしています。

<Marcel Richaud>
52歳。妻のマリーさんとの間に4人の子供あり。
趣味はハングライダーとバイク。
血液型はA型。(マリーさんの血液型はO型)。


テクニックに頼らない自然なワインづくり

このところ、「自然派」を唱える生産者が増えてきました。
その名の通り、栽培過程でも醸造過程でも化学的な薬剤類は使わないつくり、ということですが、
リショーさんは敢えて「自然派」ということを声に出さないのだとか。
それは、彼が自然なワインづくりに行き着いた過程に理由があるようです。





Q.ケランヌ村とは?
A.AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュには、ワイン名に村名を付けることを許されている村があります。ケランヌ村もそのひとつで、18ある村の中ではトップクラスのワインを生み出すとされています。
(コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ケランヌの認定は1967年)

ケランヌは南ローヌのオランジュの街の北東にあり、典型的な地中海気候です。ワインのアルコール度数は、 赤は12.5%以上、ロゼと白は12%以上と規定されています。

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<参考>AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(18)

Rochegude,Rousset les vignes,Saint Maurice,Saint Pantaleon les vignes,Chusclan, Cairanne,Rasteau,Roaix,Sablet,Seguret,Valreas,Visan,Laudun,Saint Gervais,Massif d'Uchaux,Plan de Dieu,Puymeras,Signargues
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Q.ケランヌ村の特徴について、もう少し詳しく教えてください。
A.ケランヌでは、荒れた台地にブドウ畑が散在しています。日照量が多く、夏は非常に暑くて風が強いのですが、風のおかげで湿気が飛び、病虫害の被害はなく、ブドウが健康に育ちます。

砂質、粘土石灰質、大きな石混じり、とさまざまな土壌から得られるブドウは、ワインに複雑味をもたらし、不作といわれる年にも柔軟に対応ができます。
また、ワインに石灰質土壌によるブドウのミネラル分を感じるのがケランヌの特徴です。

Q.32年前からワインづくりをしているということですが?
A.父の時代はブドウを栽培して協同組合に売っていましたが、私の代から瓶詰めを始めました。醸造学校などには行っていません。全くの独学です。醸造庫や熟成庫なども自分でつくったんですよ。

Q.あなたは現在「自然派」と言われていますが?
A.最初の10年くらいは技術を極めたワインづくりをしていました。ありとあらゆるテクニックを駆使したワインをつくっていましたが、なかなか売れず、非常に悩んでいました。

ところが、あるときパリのビストロで素晴らしいワインに出会ったんです。ソムリエに聞くと、それは土壌をよく表現しているワインだと言います。

そうか、私もケランヌのという土地の個性を生かしたワインをつくらねば!そのためにはどうしたらいいだろうか?行き過ぎたテクニックを捨ててみようか?と、テクニックをひとつひとつ捨てていった結果、おのずと自然なつくりになってきました

Q.テクニックは一切否定しますか?
A.土壌の味を表すワインをつくることが大事だと思いますので、ワインづくりにはできるだけ人間の手が介入しない方がいいと考えています。ブドウの持っているものを全部引き出してあげたいんです。

しかし、テクニックを全く使わないために土壌の味を殺してしまうことになるのなら(そうした生産者もいますが)、多少使っても、きちんと土壌を表すワインをつくる方がいいと思います。

Q.ワインづくりで大事なことは?
A.まずその土地の土壌を理解することです。土壌の味、ブドウ本来の味を出していくためには、生産量を落とし、よい品質のブドウをつくらねばなりません。
また、地元の古いブドウを守っていくことも大事ですので、クローンを使うのではなく、セレクション・マサル(ブドウの枝から挿し木で増やしていく方法)により自分で増やしています。

Q.あなたのワインの特徴は?
A.私のワインは、清潔でピュアな、きちんとしたワインです。たしかに、栽培から醸造まで化学薬剤を使わないことによるリスクはありますが、リスクのない状態で瓶詰めできるようにしています。
また、ヴィンテージの差よりも土壌の違いを表すワインです。ノンフィルターで、補酸なども一切行いません。なお、ワインを守るため、わざと全てのワインに少しガス(二酸化炭素)を残して瓶詰めしています

Q.現在所有している畑について教えてください。
A.50ha所有していますが、そのうち40haをドメーヌものとして瓶詰めし、10haは協同組合に貸すなどしています。これが手をかけられる限度で、ちょうどいい広さだと思っています。これ以上広げるつもりはありません。これでひとまず食べていけますしね(笑)。
従業員は10人います。化学的な技術(除草剤や殺虫剤など)を使えば人手は少なくてすみますが、手作業で行うには人が必要です。モラルに欠けたワインはつくりたくありません。私は職人ですから

Q.貸し出している10haの畑の手入れ方法は、貸出先に任せているのですか?
A.いいえ、どちらも同じように我々が手をかけてブドウを育てています。化学的なものは一切使いません。畑の雑草は残します。土には空気がたっぷり含まれ、ミミズもいます。

Q.輸出の割合、輸出先について教えて下さい。
A.90%がフランス国内で消費されています。国内400店ほどのワインショップ、レストランなどに入っています。輸出先は、アメリカ、イギリス、日本です。





<テイスティングしたワイン>

1)Cotes du Rhone Village Cairanne Rose 2004
セニエ方式でつくったロゼ。春から夏の季節にオススメ。ピクニック、食前酒、魚のグリルなどに、よく冷やして。

2)Cotes du Rhone Cuvee Printemps 2005
ボージョレ・ヌーヴォー的な位置づけとして、2005年のキャラクターを知ってもらうためにつくったというカジュアルでフルーティーな赤。ラベルのデザインは毎年変わるそうです。ラベルはアーティストに依頼して「春」のイメージで描いてもらっています。


2005年の「春」のイメージ

3)Cotes du Rhone Les Garrigues 2004
ガリーグ(潅木の生えている土地)のワイン。ボディがしっかりとし、タンニンが豊かでスパイシーで、ブドウの種を噛んだ感じがあるので、ハーブやトマトを使った料理や仔羊などがオススメだそう。

4)Cotes du Rhone Village Cairanne 2004
甘草、香草、ミネラルの香りがあり、全てのバランスを取ってつくられたワイン。

5)Estrambords 2003
リショーさんが「限界ギリギリの思いでつくった」というワイン。猛暑に見舞われた年だったけれど、ミネラルが残り、バランスが取れたとのこと。

6)L'Ebrescade 2001
ケランヌからラストー村にかけて広がる土地で、どうしても手に入れたかったため、2倍のお金を払ったとのこと。300mの高台にあり、南向きなので、北から吹くミストラルが当たりません。古い樹齢のムールヴェドル、グルナッシュ、シラーからつくられています。ミネラル、酸、ブドウが完熟した年でした。

7)L'Ebrescade 2003
リショーさん曰く「アクシデントのワイン」。糖度が非常に上がったため、発酵の際に残った糖のせいで甘く感じます。
「樹齢50年の完熟したグルナッシュ(100%)のポテンシャルを出し切りました」とリショーさん



 右から順に1~7



ワインはどれも「バランス良くエレガント」なスタイルです。
南ローヌというと、アルコールが高くて濃厚なイメージがありますが、リショーさんのワインには、穏やかなやさしさがあります。


1)のロゼ以外は全部赤ワインです。

白ワインはつくっていないんですか?白を飲みたくなったら、どうするんですか?」と尋ねたところ、

実はほんの少しだけ(5%)白ワインをつくっているとのこと。
魚料理やフロマージュ・ブラン(熟成させる前のフレッシュな白いチーズ)に合わせて楽しんでいるそうです。


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インタビューを終えて

リショーさんは「無口」だと聞いていたのに、次の質問になかなか入れないほど絶(舌?)好調。ワインづくりのこととなると、話が止まらないようです。

趣味はハングライダーとバイク。今回の来日では、ぜひホンダやトヨタの工場見学に行きたいと思っていたそうですが、時間が取れなかったので、次回はぜひ!と、少年のようでした。

そんなリショーさんを支えるのが、妻のマリーさん

「マリーが経理と営業、従業員管理など、全て取り仕切ってくれています。家族の力は大きいです」と言うリショーさん。

4人のお子さん(30~15歳)のうち、末っ子の女の子がワインに興味を持ってくれているようなので、彼女がワインづくりを引き継いでくれることを期待しているとか。

「世界各地のワインと競合することで、多くのワインはその土地のオリジナルから離れていきました。元のオリジナルの土壌をそのまま表した、誠実で素直なワインこそ消費者のためになるワインです。私は消費者が喜んでくれるワインをつくりたいと思っています」

テクニックを知り尽くしたリショーさんだからこそ出てくるこの言葉。
そして、いつのまにか辿り着いたという自然なワインづくり。

「自然派」という手法が目的になりがちな昨今ですが、彼が敢えてそれを語らないのには、そんな背景があるようです。 ワインを飲む側にとって、こうした生産者の気持ち&姿勢というのは、なんとも嬉しいことではありませんか。


取材協力:有限会社ベスト・マーケティング・オフィス
      クラブ・パッション・デュ・ヴァン

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第21回 Chateau Suau@「キャッチ The 生産者」

2009-02-02 11:06:42 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年4月11日)

第21回  Monique Bonnet  <DUO@Chateau Suau>

今回のゲスト、モニク・ボネさんは、フランスのプルミエール・コート・ド・ボルドーにあるシャトー・スオウのオーナーです。
モニクさんは、新しいスクリューキャップワイン「DUO」(デュオ)の紹介のために来日しました。



<Monique Bonnet>モニクさんの父クロードさんが資金提供し、1986年にボネ家がシャトー・スオウを取得。
以降、それまでは栄養士やダイエット関係の仕事に従事していたモニクさんがシャトーのオーナーとして就任。現在に至る 。


ボルドーでスクリューキャップ?

シャトー・スオウはプルミエール・コート・ド・ボルドーに82haの土地を所有し、うちブドウ畑は59ha。小石と粘土がモザイク状に入り混ざった土壌です。
赤品種ではメルロ(50%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(30%)、カベルネ・フラン(20%)を、白品種ではソーヴィニヨン・ブラン(40%)、セミヨン(40%)、ミュスカデル(20% )を栽培し、豊富な資金力のもと、最新の醸造設備を駆使したワインづくりを行っています。
特にオーク樽を使用した白ワインは、国際的にも非常に高い評価を得ています。

そうした高品質ワインを生産する一方で、モニクさんは新しいタイプのワイン「DUO」を誕生させました。しかも、スクリューキャップというから驚きです!

ボルドーでスクリューキャップ栓とは、一体どんなワインなのでしょうか?



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AOCプルミエール・コート・ド・ボルドー

ボルドーのワイン生産地域はかなり広範囲に広がっていますが、
ポイントは3つの川
フランスの南西部を東から西に流れるドルドーニュ川と南から北に流れるガロンヌ川が合流してジロンド川となり、大西洋に注いでいます。
これらの川の流域の地形や土壌はさまざまで、それらが各地域のワインに独特の個性をもたらしています。

プルミエール・コート・ド・ボルドーはガロンヌ河の右岸沿いに広がる地域です。赤ワインは早飲みでフルーティーなものが多いといわれてきました。しかし、しっかりした色とコクを持つワインもあり、繊細な味わいのワインもあり…と、ひとことでは言い表せません。 ここは、今後見守りたい生産地域のひとつでしょう。

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Q.DUO はいつから生産していますか?
A.2002年ヴィンテージからです。

Q.DUOと従来のシャトー・スオウのワインと違う点は?
A.私が今まで手がけてきたワインというのは、赤であればタンニンがしっかりとしたクラッシックなもので、つまりボルドーの基本ともいえるワインでした 。

しかしDUOは、赤も白も味わいはフレッシュでみずみずしく、ボトルに詰めたらすぐ飲めるワイン、というコンセプトでつくりました。ボルドーの伝統的な、長く寝かせておいて飲むタイプのワインではありません。

Q.なぜDUOにスクリューキャップを採用したのですか?
A.DUOは、買ってきたらすぐにでも楽しんでいただきたいワインですから、栓が簡単に開けられる方がいいでしょう?

開けて、注いで、キャップを閉めてと、とても簡単だし、ボトルに残ったワインをそのまま取っておけるのもスクリューキャップのメリット。きっちりキャップを閉めておけば、また別の日に楽しむことができますもの。

Qスクリューキャップを採用しているワイナリーは、ボルドーでは現在どのくらいありますか?
A.はっきりとした数はわからないけど、まだそんなに多くないと思うわ。たぶん15ほどじゃないかしら?

Q.DUOに合うオススメの料理は?
A.白はアロマが豊かだけれど口当たりが爽やかなので、さっぱりとした料理に。
赤は中華料理とかのスパイシーな味付けの料理に合うと思うわ。

Q.DUOはどんなふうに楽しんだらいいでしょう?
A.好きなときに好きなように楽しんでほしいと思っています。ちょっとした集まりやピクニック、クリスマスetc…。
どんなときにでも気軽に飲めるのがDUOの良いところよ。

Q.ラベルがとても親しみやすくてキュートですね。描かれているは?
A.これは"特別な鳥よ"(笑)。"ルルー"という名前で、いつも動き回っていて、立ち止まらないの。

Q.特別なギフトパッケージボックスがあるとか?
A.2本入りのかわいいギフトボックスがあるので、一番のお勧めはバレンタインのプレゼント用ね。1本は彼が、もう1本はあなたが飲む、というのはどうかしら?(笑) 母の日や父の日の贈り物にも最適よ。





<テイスティングしたワイン>

DUO@Chateau Suau Blanc 2004<AOCボルドー>
セミヨン(Se)45%、ソーヴィニヨン・ブラン(SB)40%、ムスカデル(Mu)15%のブレンド。ソーヴィニヨン・ブランのアロマがとても豊かに香り立ち、爽やかで、ほどよいコクもあり、みずみずしさにあふれたフレッシュなワイン。これからの季節なら、テラスでくつろぎながら飲みたくなること請け合い!

DUO@Chateau Suau Rouge 2002<AOCプルミエール・コート・ド・ボルドー>
なめらかでスルスルとしたノド越し。果実味がやわらかく、タンニンはまろやかで、バランスも良好。ハンバーグ、焼き鳥、肉ジャガといった、普段のご飯にも合わせられそうな、使い勝手のいい赤。気温が高いときは少し冷やしても。メルロ(Me)60%、カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)40%のブレンド。

Chateau Suau Blanc Cuvee Tradition 2004
DUOのワンランク上の白ワイン。ステンレスタンクを使って発酵、熟成を行っているクリーンなスタイルのワインで、ボルドーの気品をしっかり備えながらもリーズナブルなプライスが魅力。SB50%、Se40%、Mu10%のブレンド。

Chateau Suau Rouge Cuvee Tradition 2001
DUOのワンランク上の赤ワイン。Me40%、CS40%、カベルネ・フラン(CF)20%。きれいにバランスが取れた、ふくよかな味わい。CFが入ることで、より複雑になり、エレガントさも感じます。

Chateau Suau Blanc Prestige 2004
オークの新樽を100%使って熟成(8ヶ月)させているため、ボディに厚みがあり、豊かなコクがあります。文句なしにウマイ!と思わせる、本格的なボルドーの白。クリームを使った料理などにピッタリ。SBとSe各50%。

Chateau Suau Rouge Prestige 1999
オークの新樽を使って熟成(12ヶ月)。典型的なボルドーのスタイルと品の良さを持った赤ワイン。タンニンにきっちりとした存在感があり、飲みごたえがあります。ようやく飲み頃を迎えつつあり、まろみも出てきました。CSとMe各50%。


※シャトー・スオウでは、甘口の貴腐ワイン"カディヤック"(Cadillac)も生産しています。
  生産本数が少ない希少なもので、15年以上の熟成が可能です。



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インタビューを終えて


モニクさんは本当に陽気な女性で、ついつい彼女の楽しげな話しぶりに引き込まれてしまいます。

今回モニクさんが紹介してくれた「DUO」は、楽しくおしゃべりをしながら、いつのまにかグラスを重ねてしまう、そんなワインです。

そのまま飲んでもいいし、軽くなにかをつまみながら、また、しっかり食事をしながらでも楽しめるという柔軟さも嬉しいポイント。
特にラベルに描かれている"ルルー"の存在が楽しく、このルルーは格好の肴になってくれそうですよ。



"ボルドーワイン"というと、ちょっと気取っていて、敷居が高くて、なんだか敬遠しちゃうのよねぇ…、それに、どうやって飲んだらいいの?と思う人もいるかもしれません。
でも、この「DUO」なら、思わず手に取って開けてみたくなりませんか?

普段の生活の中で気軽にボルドーワインを楽しめたら、なんだかとっても嬉しいかも。

寝かせて待たなくてもいいし、好きなときに好きなように飲んでいいのなら、ワインの楽しみ方は無限に広がりそうです。

型にはまらないワインの楽しみ方を、モニクさんはこの「DUO」で教えてくれたようです。


(取材協力:中部貿易株式会社)→ 現社名は(株)アグリ に変更

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