写真①:「光ふるさと郷土館」別館(礒部本家旧宅」)
=山口県光市室積5丁目で、2015年12月11日午前9時55分撮影
〈光市・町歩き〉 5
:「光ふるさと郷土館」別館
12月11日午前、山口県光市室積5丁目の「光ふるさと郷土館」本館(江戸時代末期創業の醤油屋・「磯民」=後に「磯屋」の屋号に=を営んでいた礒部家=いそべけ=を修復した町家)の見学後、「海商通り」を挟んで向かい側にある別館(「礒部本家=いそべほんけ=旧宅」)=写真①=を訪ねました。
礒部家の本家にあたり、「磯乃屋」の屋号で廻船問屋を営み、江戸・大坂・琉球などとの交易で江戸時代から栄えた室積の豪商の旧家です。明治前期建築の妻入り寄せ棟造り本瓦葺き木造二階建てで、昔の姿をとどめており、平成11年に主屋・茶屋・釜屋の三件が国の登録有形文化財になっています。材木や米なども商い、金融業、塩田経営にも携わった大地主だけに、富豪の裕福さがうかがえる豪壮な造りです。客間には、旧大和町(現光市束荷)生まれの初代内閣総理大臣・伊藤博文の額入りの書=写真②=や、藤愚渓(とうぐうけい)が描いた山水の襖絵=写真③=などがあり、床の間や欄間の造りも手が込んでいます。
写真②:初代内閣総理大臣・伊藤博文の額入りの書
写真③:藤愚渓が描いた山水の襖絵
仏間の横にある中庭には、礒部本家「磯屋」の船が江戸時代に琉球(現在の沖縄)方面から持ち帰ったと伝えられる樹齢数百年とされる大蘇鉄(おおそてつ)があります=写真④=。
写真④:中庭にある樹齢数百年とされる大蘇鉄
明治41年(1908年)に改築された離れ座敷のお茶室=写真⑤=は、材木問屋も営んでいた礒部本家らしく、使われた木材、造作とも優れています。
写真⑤:明治41年に改築されたお茶室の床の間
障子の窓ガラス=写真⑥=も風情があり、見事です。
写真⑥:風情がある障子の窓ガラス
お茶室の回り廊下角に放射状に張った板一つにも、疎かにしない建築の美学を感じます=写真⑦=。
写真⑦:お茶室の回り廊下角の放射状の板張
もちろん、欄間=写真⑧=もあります。
写真⑧:お茶室の欄間彫刻
洋間の椅子や調度=写真⑨=も、センスがいいですね。
写真⑨:センスのよい洋間の椅子や調度
洋間の出入り口は、内壁の縁取りをカーブさせ=写真⑩=、おしゃれです。
写真⑩:洋間らしく内壁の縁取りをカーブさせた出入り口
建物のあちこちに傷みがみられるのは残念ですが、かつての港町室積の繁栄を偲ばせる豪壮な造りは国登録有形文化財にふさわしい素晴らしさです。廻船問屋の建物をつぶさに見学できたのは初めてでもあり、港町・室積の歴史や文化に以前にも増して愛着を感じました。
(今回の〈光市・町歩き〉岳父の墓参旅行帰りのシリーズを終わります)