とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

八月の六日間 /北村薫著

2014-12-16 22:18:17 | 読書
八月の六日間
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店


《内容(BOOKデータベースより)》
40歳目前、文芸誌の副編集長をしている“わたし”。ひたむきに仕事をしてきたが、生来の負けず嫌いと不器用さゆえか、心を擦り減らすことも多い。一緒に住んでいた男とは、3年前に別れた。そんな人生の不調が重なったときに、わたしの心を開いてくれるもの―山歩きと出逢った。四季折々の山の美しさ、怖ろしさ。様々な人との一期一会。いくつもの偶然の巡り合いを経て、心は次第にほどけていく。だが少しずつ、けれど確実に自分を取り巻く環境が変化していくなかで、わたしは思いもよらない報せを耳にして…。生きづらい世の中を生きる全ての人に贈る“働く山女子”小説!

やっと順番が回ってきて、北村薫の「八月の六日間」を読むことが出来た。アラフォー女性編集者が、仕事の合間を縫って単独行でいろんな山に登る話で、彼女の山登りの数日間を描いた連作短編である。以前読んだ湊かなえの「山女日記」とよく似た内容であるが、自分が行ったことのある山が舞台になっている事もあり、親しみを持って読む事が出来た。

因みに舞台となった山々は下記の通りだ。
1.九月の五日間 有明温泉~燕岳~大天井岳~槍ヶ岳~上高地 表銀座コース
2.二月の三日間 裏磐梯 スノーシューハイキング
3.十月の五日間 上高地~蝶ヶ岳~常念岳~大天井岳~燕岳~有明温泉
4.五月の三日間 麦草峠~白駒池~高見石小屋~渋の湯   
5.八月の六日間 折立~太郎平~薬師沢小屋~高天ヶ原温泉~三俣蓮華岳~双六岳~新穂高温泉

どの作品も、私が実際に歩いたことのあるコースなのでその情景が浮かんできて、とても懐かしく共感する部分が多い。山を始めたばかりの女性がいろんな経験を積み、山の素晴らしさや怖さを学んでいく様子が微笑ましい。それにしても、この作品はしっかり女性目線で描かれているのが驚きである。作家の名前だけでは性別を判断できないのは、もう常識だ。有川浩が女性で、高村薫が女性という事は知っていたが、北村薫は男だったのだ。しかも、山登りの経験がないというのにここまで綿密に山の情景を描き、女性心理もうまく描ける(多分?)というのは凄い。仕事のキャリアを積んで、息抜きをしたくなったアラフォー女子には、山の魅力を伝える作品として特にお勧めである。