とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

有川浩の作品を読む

2014-01-29 23:56:21 | 読書
このところ有川浩の作品を立て続けに読んでいる。気になる作家が見つかると、その作家ばかり読み続けるタイプなので、まだ当分読み続けることになりそうだ。今まで読んだ作品の簡単な感想を挙げてみる。

「図書館戦争」シリーズ
近未来の日本が舞台だが、公序良俗を乱し人権を侵害する表現を規制するための「メディア良化法」が制定され、メディアの監視をするための組織「良化特務機関(メディア良化隊)」が創設される。この法律の執行においては武力制圧も行われるという行き過ぎた行為もあり情報が制限され自由が侵されつつあるなか、弾圧に対抗した存在が「図書館」だった。メディア良化隊から表現の自由を守るため武装した軍隊「図書隊」が配備され、互いに対立し武力抗争になっていくという奇想天外なお話だ。内容のメインは、メディアの自由を巡る人々の戦いであるが、高校3年生の時出会った一人の図書隊員に憧れて図書隊入隊を志した少女・笠原郁の成長と恋も並行して描かれ、ホットなラブストーリーにもなっている。こんな風に、本が自由に読めない国にはなって欲しくないと強く思ったものだ。

自衛隊と未知の物体・生物との接触をテーマにした自衛隊3部作
「塩の街」
「塩害」によってすべてが塩で埋め尽くされようとした世界での陸上自衛隊の男と少女の恋愛物語だ。「塩害」とは東京湾羽田空港沖に落下した巨大な塩化ナトリウムの結晶を視認したことにより人が塩の塊になって死に至る病が広がっていることを指す。ただし直接的に塩を目視しない限りは感染することはなく、テレビ等で見ても塩害にはならない。しかし、塩害による死者は300万人を超え都市機能はほとんどなくなっているという設定である。ただ、塩害が発生した理由は明らかにされていない。これも奇想天外な話だが、崩壊しつつある世界の中で少女を救うために奔走する自衛隊員の姿が涙ぐましい。
「空の中」
超音速旅客ジェット機と航空自衛隊機が高度2万mで突然爆発炎上する事故が立て続けに起きる。事故の原因は、高度2万mの成層圏に生息していた直径50~60kmほどの白く巨大な硬質の楕円形の知的生命体に衝突したためだった。この知的生命体は、人間が認識している電磁波より汎用性の高い「波長」を利用する事ができ、波長を体内に透過させる事ができるので、空と同化することができ、人間には認識されていなかった。空の中には、まだ人間が知らない生命体が存在していたというまったくもって興味をそそられる話だ。しかも、この生命体は優れた知能をもち、接触以前から人間の放送電波を受信して知識などを蓄え、やがて流暢な日本語を話すようになっていく。物語は、その生命体と、事故で無くなった人たちの家族や関係者たちの関わり合いを描いている。自衛隊3部作の中では、一番面白かった作品であり、できればこの作品は映画化して欲しいものだ。
「海の底」
桜祭りで一般に開放された横須賀米軍基地に突如海からザリガニのような巨大生物の大群が襲来し、次々と人を襲う。自衛隊員2人は逃げ遅れた子供たちを連れ、米軍基地内に停泊していた海上自衛隊の潜水艦でろう城することになる。物語は、いろんな思惑で動く組織の絡みが描かれている。市民の犠牲も省みず爆撃を画策する米軍、政治的判断を優先させなかなか巨大生物への攻撃を自衛隊に許可しない内閣、火力が乏しく犠牲者を出しながらも孤軍奮闘するが巨大生物の前にはなすすべもない機動隊、潜水艦に取り残された者など様々な視点から描かれているのが面白い。結局、自衛隊が一斉に攻撃すると巨大生物は一網打尽に退治されてしまうのだが、内閣が自衛隊に攻撃許可をなかなか出さなかったために人的被害が増大してしまったという側面が注目される。こんな状況が、仮に起きたら日本政府は迅速に行動できるのか心配になってしまう。

「フリーター、家を買う」
大学を卒業して就職したものの、会社に馴染めず三ヶ月ほどで会社を辞めてしまった武誠治は、以後再就職も出来ずにだらだらとフリーター生活を送っていた。結局、それが原因で父との口論が絶えず、母はそんな誠治をかばい続けて来たが、ある日母がうつ病になってしまう。誠治は、このままではいけないと考え始め、バイトと就職活動と母の看病に奔走していくお話だ。最近の若い人の就職事情が良く分かる内容であり、一念発起して頑張っていく若者の姿に元気づけられる。

「県庁おもてなし課」
高知県庁に生まれた新部署「おもてなし課」の若手職員・掛水が、地方振興企画の手始めに、人気作家に観光特使を依頼するが、なかなか簡単に地方振興を進めるのは簡単ではない。お役所仕事と民間感覚の狭間で揺れる掛水の奮闘の様子が、読んでいてなるほどと頷けることが多い。実際に高知県庁にある「おもてなし課」がモデルとなっており、如何にお役所仕事と民間の感覚が違うかという事が良く分かる。お役所の人には、是非読んでほしい作品だ。映画化もされている。


上記以外では、「ストーリー・セラー」や「植物図鑑」も読み始めているところだ。