齢(よわい)六〇にして
贔屓の鮨屋が四店あって
週に一度は何処かしらに
通っているとは、
幼少時の自分には
夢にも思わなかっただろう。
いつか大人になったら、
カウンターで存分に
おスシを好きなだけ食べたいなぁ・・・
という願望は、
今ここに極めりである。
幼い頃から
おスシが大好きだった。
将来は鮨屋になりたい、
とも夢見たこともあった。
雪の日なぞ、
いつも、雪を手にとると
スシを握る真似なぞをしていた。
さながら、
スシオタ、スシフェチ、
スシキチというほどの
鮨数寄であった。
もっとも、この世に
おスシの嫌いな子どもなぞ
いないのかもしれないが。
しかし、偏愛というほどに
好きだった記憶がある。
亡き父も好きだったようで、
ちょいちょい
連れて行ってもらったから
それが「三つ子の魂百まで」と
なったのかもしれぬ。
なにせ、食生活も貧しい
昭和三十年代の生まれだから、
コロッケが御馳走だったし、
ハンバーグと言えば
マルシン・ハンバーグくらいしか
なかった時代である。
やはり、
おスシは大御馳走で
滅多に食べれないものだった。

なかでも想い出深いのは、
大好きだった祖父に連れられて、
稲荷神社裏にあった
次郎長のカウンターに座ったとき、
目の前に竹の樋があって
そこに水が流れている
その粋な風情に
感激したものである。
父にも
銘店の名高かかった
「達磨鮨」には、
よく連れて行ってもらった。
ここは父の常連店で、
母が帳簿会計をやっていたので
親方のフーさん、女将さんとも
お馴染みであった。
当時は、福島一という
評判の店だった。
子どもながら
生意気に生鮑を頼んで
その歯応え、磯の香りに
魅了されていた。
海老が好きなのを知って
フーさんが海老尽くしの
盛り桶を作ってくれたのも
その美しさに感激した。

後年、叔母さんが
藤寿司を始め、
大学時代はずいぶんと
ギター部のコンパで
使わせてもらったが、
今は、居酒屋に
商売替えしてしまった。
父には、
山田(デパート)にあった
100円寿司というミニ寿司にも
よく連れられて行った。
「お決まり」の桶盛りよりも
カウンターであれこれ言って
「お好み」で食べるのが
好きだったので
この頃から、「山牛蒡巻」なんて
ませた注文をして職人さんに
作ってもらっていた。

箸袋を
三つ織りにして
さらに立て織りにし、
末端部を開口部に差し込むと
小洒落た箸置きになる。
握りの合間に
ちょこちょこっと
作りあげては
箸を置いて悦に入っている。
今日も、
贔屓の鮨屋に
行こうっと。

贔屓の鮨屋が四店あって
週に一度は何処かしらに
通っているとは、
幼少時の自分には
夢にも思わなかっただろう。
いつか大人になったら、
カウンターで存分に
おスシを好きなだけ食べたいなぁ・・・
という願望は、
今ここに極めりである。
幼い頃から
おスシが大好きだった。
将来は鮨屋になりたい、
とも夢見たこともあった。
雪の日なぞ、
いつも、雪を手にとると
スシを握る真似なぞをしていた。
さながら、
スシオタ、スシフェチ、
スシキチというほどの
鮨数寄であった。
もっとも、この世に
おスシの嫌いな子どもなぞ
いないのかもしれないが。
しかし、偏愛というほどに
好きだった記憶がある。
亡き父も好きだったようで、
ちょいちょい
連れて行ってもらったから
それが「三つ子の魂百まで」と
なったのかもしれぬ。
なにせ、食生活も貧しい
昭和三十年代の生まれだから、
コロッケが御馳走だったし、
ハンバーグと言えば
マルシン・ハンバーグくらいしか
なかった時代である。
やはり、
おスシは大御馳走で
滅多に食べれないものだった。

なかでも想い出深いのは、
大好きだった祖父に連れられて、
稲荷神社裏にあった
次郎長のカウンターに座ったとき、
目の前に竹の樋があって
そこに水が流れている
その粋な風情に
感激したものである。
父にも
銘店の名高かかった
「達磨鮨」には、
よく連れて行ってもらった。
ここは父の常連店で、
母が帳簿会計をやっていたので
親方のフーさん、女将さんとも
お馴染みであった。
当時は、福島一という
評判の店だった。
子どもながら
生意気に生鮑を頼んで
その歯応え、磯の香りに
魅了されていた。
海老が好きなのを知って
フーさんが海老尽くしの
盛り桶を作ってくれたのも
その美しさに感激した。

後年、叔母さんが
藤寿司を始め、
大学時代はずいぶんと
ギター部のコンパで
使わせてもらったが、
今は、居酒屋に
商売替えしてしまった。
父には、
山田(デパート)にあった
100円寿司というミニ寿司にも
よく連れられて行った。
「お決まり」の桶盛りよりも
カウンターであれこれ言って
「お好み」で食べるのが
好きだったので
この頃から、「山牛蒡巻」なんて
ませた注文をして職人さんに
作ってもらっていた。

箸袋を
三つ織りにして
さらに立て織りにし、
末端部を開口部に差し込むと
小洒落た箸置きになる。
握りの合間に
ちょこちょこっと
作りあげては
箸を置いて悦に入っている。
今日も、
贔屓の鮨屋に
行こうっと。

