昨夜のこと。
晩御飯も食べずにマメイカ釣り夢中になっていて、帰りが中途半端な夜の9時くらいになってしまいました。
妻に連絡を取ると、「それほど晩御飯を食べてない」というので、「じゃあ居酒屋でも行こうか」ということになり、(土曜日の夜でも、どこかの居酒屋さんがやっているだろう)と適当なアタリをつけて、家の近くの大きな通りに向かいました。
大きな通りにはスナックや居酒屋の入っている飲食ビルがあって、いくつかのお店の行燈の明かりがついているのが見えます。
とあるビルの一階には、大手チェーン居酒屋が入っているのですが、ふと見るとそのビルの地下に居酒屋がありました。
(たまには行ったことのないお店も開拓してみようか)と入ってみると、わずか3坪のお店にはお客は一人もいなくて、お年を召したお母さんが一人で切り盛りする居酒屋。
「いらっしゃい、でも食べるものがあらかた出ちゃったんだわ。それでもいいですか?」
遅い時間に来たんだから仕方がないか、とビールと日本酒と焼き鳥などを注文して、お店の歴史やこのあたりの出来事などを聞いて、話を肴にします。
「ここのお店は30年とちょっとになるんです。昔はここも賑わっていて、この地下にも7軒のスナックとか居酒屋があったけど、今やっているのは私のところと向かいのスナックの2軒になっちゃった。寂しくなりました」
「定休日はいつなんですか」
「木曜日。最初は日曜日に休んでいたんだけど、向かいのスナックに合わせたの。そうでないと、向かいが定休日の時は、私のところしか開いてなくて寂しくてねえ」
「お母さんくらい長く商売をしていると、お客さんも歳を取って行くでしょう?」
「そうなの、今年に入ってから常連のお客さんが3人も亡くなってさ。それに、来なくなったなあと思っていたら、『もうものを食べられないんだ』とかね。寂しくなったわ」
時折向かいのスナックからお客さんが帰るようで、「ありがとうございましたー」という女性の声が聞こえますが、他に音のしない地下の廊下は、すぐに静けさを取り戻してしまいます。
「僕もこのあたりにもう十数年住んでいるけど、こちらのお店は初めてきました。近くにいつも行くお店があるんだけど、どうしても行くお店って決まってきちゃってね」
「是非また来てください」
「お母さん、このお店、後何年くらいやるおつもりですか?」
「ああ、どうでしょう。元気なうちはやってますよ」
チェーンの居酒屋はメニューも豊富で安心だけど、どこか味気ない感じがします。
こういう一軒飲み屋こそ、地域の歴史であり味わいを感じる場所なのになあ、と思うのでした。
年寄りがやっているお店が増えて、皆ちゃんとやれているかどうかを見回るためのハシゴなんてのもあるかもしれませんね。