かつて私が公園作りをした長野県の国営アルプスあづみの公園。
私が赴任したときには、地元の一部の人たちから公園整備反対の声が上がっていました。
先方の主な主張は、公園整備といえども環境破壊だ、というものでしたが、確かに園路整備や建物を作るためには木を切ったり土を切り盛りしたりと現状の環境を変えることになります。
当方の主張は、そうして作られる公園によって、残されてはいるけれど使われていない自然環境が人々の役に立つ自然に変わり、おまけに将来にわたって維持管理され保全されるのだ、というものでしたが、反対のための反対のようなところもあって、議論はかみ合いませんでした。
私の在任中は膨らんでいた予算計画を緊縮させる必要があって、そのため施設を大胆に見直すべき時期でした。
そこで、地元の自然環境はもちろん、歴史や文化なども含めた「安曇野地域の地域案内所」的な要素を持たせつつ園内を楽しめるような工夫をし、かつ勉強好きな県民性をコンセプトに活かした「あづみの学校」という施設を計画しました。
Aさんは、その当時公園に反対する会に参加していたのですが、あるとき「公園だから自然も守られる」と考えなおしたようで、その後は公園のボランティアで安曇野の暮らしや歴史、文化を語ってくれる語り部として活動をしてくれるようになりました。
あるときから年賀状のやりとりが始まり今でも続いているのですが、数年前には「公園でのガイドボランティアがすっかりライフワークになりました。毎日が楽しくてこの公園のお陰です」と書かれていてほのぼのした気持ちになったことを覚えています。
今年、Aさんの年賀状を見ていたら公園事務所長から表彰された写真が貼られていました。
友人である現在のあづみの公園事務所長に電話して聞いてみると、「昨年がちょうど開園十周年だったものですから、これまでの公園の運営に功績のあった方達に感謝状をお送りしました」とのこと。
地域の人たちの力を借りながら、地域を紹介しやりがいのある公園運営という所期の目的が果たせることができたかなあ、とその時思いました。
信州の人たちは、ごまかしや嘘は通じないけれど、誠心誠意、心からの訴えであれば通じる人たちでもあるという思いは今も変わりません。
年賀状でちょっと嬉しくなった私でした。