いよいよ今年は地方創生の年になりそうです。
第三次安倍政権の目玉の一つが人口減少に対する国としての取り組みで、それを「まち・ひと・しごと創生本部」では、年末に長期ビジョンを示しました。
そこにはまず人口問題に対する基本認識として、
①人口減少は今後加速度的に進む
②人口減少の状況は、地域によって大きく異なる
③人口減少は地方から始まり、都市部へ広がっていく
…という「人口減少時代」が来るという認識を国民が共有がもっとも重要であるとされています。
そして、人口減少は経済社会に対して大きな重荷になる、ということと、地方では地域経済社会の維持が大変なことになるわけです。
その一方で、やや間接的な人口問題として子供が増えない東京への一極集中が問題とされ、その是正が必要なんだと。
そうして今後の基本的視点として掲げられたのが、
① 「東京一極集中」の是正
②若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現
③地域の特性に即した地域課題の解決
…という三つのポイントです。
内閣府の調査によると、東京在住者の4割は「地方に移住する予定」または「今後検討した」という結果が出ているそうです。それを果たすことができれば東京への集中が解消できるのではないか、という視点。
さらに、18~34歳の未婚男女の9割程度は結婚の意思があるし、夫婦が予定する平均子ども数は2.07人だそう。
そうしたこれからの時代を担う若者たちの希望を実現するためにも、「質を重視した雇用」という安定的な経済的基盤を確保する必要があり、また子育て支援が欠かせないとも。
そういう観点での「地方創生」がこれからのわが国には必要で、それを国は応援します、と。
つまり、国としての人口減少を回復基調に乗せるためには、地方が元気でいてもらわなくてはいけなくて、そのためには東京は少し我慢をする、だから地方こそ頑張ってほしい、という言い方です。
でもこれって、国としての人口減少こそ言わなかったけれど、今までもやってきた政策のはず。
これがうまくいかなかったのにはいくつも理由があって、一つは「大都会へ人口が集中することは効率的な社会になる」ということ。
今でも国としては、経済効率を上げてGDPを上げようと頑張っているわけです。地方での分散的な暮らしはやはり効率では劣るわけで、そのあい矛盾する二つの方向性をどのように折り合いをつけるかということに、明確な基準が作れるでしょうか。
これまでも「効率だけを追い求めたら地方は成り立たない」という地方の声はあって、いざそれに応えると今度は「それは地方への非効率なバラマキだ」という批判を呼んできたわけです。
常に片方の政策を採れば、反対側からは異なる意見が示されます。そのバランスをいかに説明するかは、事前の明確な線引きではなく、極めて人間的な価値判断という要素が欠かせないのだと私は思っています。
あまり事前になにかを決めて(予算執行などの)効率を追い求め過ぎないところにこそ新しいアイディアや発想が生まれる余地があるのではないでしょうか。
◆
もう一つは、地方自治体の力量の問題です。
国にできなくて地方でなくては出来ないことがあります。私が考えるそれは、「故郷に住む住民たちに覚悟を促して、結束を図る」ということです。
国が国民に覚悟を促すことは相当に難しくて、法律を作ってある程度淡々と実行しなくては事は進みません。
しかし逆に地方自治体は、決まりごとを盾にとって淡々とやってしまってはいけないのです。徹底的にわがまちの現状を説明してあるべき姿とこれからやらなくていけないことについて対話を重ね、人々の信頼を得ると同時に覚悟を迫らなくてはいけません。
一番身近な基礎的自治体の暮らしとは、税金だけ払って誰かに任せ切ってしまえばできるものではありません。一人一人が自覚を持って参加し、職業者として働くだけではなく一住民としての務めを果たすということが求められます。
サラリーマンでも、朝晩に通学児童の安全を見守ることはできるでしょう。空いた時間で近くの年寄りの家を除雪を手伝ってあげるとか、地域を清掃するということだってできるはず。
一人が一人工(にんく)以上の働きで地域を支えなくてはこれからの地域は支えられないのです。高齢者だって年金をもらって遊んでばかりではなく、溢れる経験と有り余る時間を地域に貢献してもらわなくてはなりません。
それを全部税金で支弁するような地域はどんどん経営できなくなって衰退するに違いありません。
そんな、住民に対して覚悟を求める説得をできる力こそがより小集団の地方自治体にこそできることです。
だから帰って政令指定都市の様な大きな都市ほどこれはやりくくにて、対話を重ねられる小さな地方都市ほど却ってやりやすいというメリットもあるはず。
問題は地方の首長さんにもそこまでの力量がある人といない人が分かれるということではないでしょうか。
今回の地方創生の仕組みの中で、「地方創生人材支援制度」というのがあって、原則人口5万人以下の自治体の中で求めのあるところに対して、国家公務員や大学研究者などを副市町村長や幹部職員などとして人材を派遣する制度ができるそうです。
できれば私も参加したいくらいですが、その行く末を興味深く見守りたいと思います。
地方でなくては出来ないことをやる。地方創生はそこから始まるのだと思います。