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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

ローカルが馬鹿にされないために

2014-03-13 23:23:03 | Weblog

 わが心の師匠、掛川の榛村元市長さんとの問答には思い出深いことがたくさんあります。

 もう十年くらい前になりますが、榛村さんと話をしていて『田舎と都会と教養の力』という話題になりました。

 榛村さんは、「なぜか日本人は、『教養』というものを嫌うんだ」と言います。おそらくそれは「教養」ということを単に本を読んでその内容を覚えているとか、古典の一節を暗唱しているなどというような狭い範囲で捉えているからなのでしょう。

 訳知り顔のインテリを嫌う、という心理もあるかも知れません。

 榛村さんは「『教養のある人』というのは、『文化論ができる人』で、それはつまりトータルな文化、政策情報、情報の加工力、そしてそれがどうだったかをフィードバックする力、そして責任感とかそういうものがある人のことなんだよ」と言います。

 さらにまた、「地域の力は『トータルの力』なんだ。都会は"専門的"と言うと聞こえは良いが、要は縦割りの『扱う領域が狭い世界』にすぐに逃げ込んでしまって、その狭い世界からものを言うだけだ。都会となると人も多く、それらをまとめあげるのは容易ではないが、それを行うのが政治と言うものだ。だから地域においても縦の専門をまとめ上げるトータルの力が鍵になる。地方の政治家が中央から馬鹿にされるとしたら、それは物凄く早く動く時代の最前線にいる都会から発せられる良質の情報を集める力が足りないのと、そういう意味でのトータルの教養が足りないからなんだと思うよ」と続けます。

「なるほど」
「北海道や九州と言った、どこか貧しいところに力のある政治家が出やすいのは、彼らが『貧しい』と言うことをトータルで見ることができるからです。そしてその貧しさをどうにかしなくちゃ行けないという使命も強く負っている。最近の都会の政治家は法律でもビジネスでも専門の領域から出る人が増えてきて、専門家面(づら)してしまってその世界から世の中を見る。世の中を世の中としてトータルで見ることができない人が増えるというのは政治の貧困を招くよ」

 
      ◆      ◆      ◆

 


 自らこのような持論を展開してたため、榛村さんは掛川市というローカルなフィールドでも最新の情報を入手してそれを加工して地域を教養溢れる町にしたいという行動を自ら実践し続けていました。

 あしげく霞ヶ関に通い、官僚たちに最前線の話題を聞いて歩いたり、大学の先生とも付き合いが深く、そういう人たちには地元掛川に来てもらって現地を見てもらうことで感想やアドバイスを求めました。

 霞ヶ関も今はセキュリティがとても厳しくなって、このような情報の営業がやりづらくなりましたが、私を連れて霞ヶ関を巡った時には、「霞ヶ関は夕方五時を過ぎてから回るのがコツだよ」と教えてくれました。

 それは、「日中は打ち合わせや外からのお客さんが多いので、訪ねていっても相手にしている暇がないことが多いんだ。霞ヶ関では自分の仕事は夕方五時を過ぎてからやるので、そのときに訪ねて行く分には席にもいて相手もしてくれるよ」ということが理由でした。

 榛村さんはまたそういうときに、必ず今自分が進めている施策やテーマを一枚のレジメにして持ち歩いていました。

 そしてそれを相手に情報としてプレゼントしてその見返りに官僚の情報を入手していたのです。

 情報をただただ欲しがる人は多いのですが、それを得るには良い意味で相応の見返りがあればこそということを榛村さんはよく知っていました。

 またそれが地域の情報を相手に知ってもらう良いツールでもありました。

 そんなことを繰り返すうちに、何か新しい施策を考えて地方の意見や考えを聞きたいと思ったら、「掛川の榛村市長さんなら地域事情に詳しくて、いろいろなアイディアを持っている。彼ならどういう意見を言うかな」ということで、向こうから声がかかってくることも増えてきました。

 こうして足で最新情報を得るとともに、地域をPRするという一石二鳥を果たしながら、ローカルな掛川市の名を高らしめるというのは首長だから出来ることでもあり、首長だからやらねばならん、という責任も強く感じていたのです。

 首長によって、そのマチの有り様はいくらでも変わるのだと心から思ったものです。

 マチづくりには良いお手本が必要だと思います。でも手本があって出来ないのは自分の責任です。

 私たちは、地域の発展を首長だけに頼らずに、一人ひとりが何をすべきかを考えて行動に移すことが大切です。

 まずは自分自身も住んでいるローカルの視点から始めましょう。
 

コメント
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