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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

北海道観光の現状とこれから

2014-03-05 21:58:55 | Weblog

 北海道経済連合会(道経連)の地域政策部長である亀森和博さんの観光に関するミニ講演会を聞いてきました。

 亀森さんは政府系金融機関から道経連へ出向されている方で、ご出身は千葉県で富山県など地方経験もあります。北海道勤務は3回目となり、よそ者の視点を持ちつつ北海道に詳しくかつ霞ヶ関の動きもわかるという方です。

 亀森さんの目から見ると北海道の評価は「遅い!内向き!危機感がない!」と厳しいもので、その厳しさも「ポテンシャルがあってやれば出来る子なのにちゃんとやっていない」と写るからに外なりません。

 そんな亀森さんが今回は観光という切り口で北海道を分析し、現状の姿をまず見なさい、その上でこれからの北海道を支える産業としてどうあるべきかを論じたのが今回のミニ講演です。緻密なデータの分析からぼんやりした北海道観光の姿がシャープに見えてきました。

 全体を全てにわたってお知らせは出来ないので、印象的な部分を中心にまとめてみました。


       ◆     


 まずは北海道経済における観光消費の占める位置づけから。

 北海道における観光から来る所得形成は約1兆円(9800億円)で、道内総生産の5.2%に相当。これは、サービス業や運輸・通信業、農林水産業製造業などへの直接的な効果(5356億円)に加えて、それがさらに他の所得を形成するという誘発効果を加味したもの。

 観光を産業としてみると、旅館・宿泊業と飛行機やバスなどの運輸業以上に観光消費は地域に大きな経済効果をもたらしています。

 ではこの道内での観光消費は誰がしているかと言えば、実はそのほとんどは道民自身の道内日帰り、道内宿泊によるものなのですが、近年平均宿泊日数の短縮化が見られるとのこと。

 また最近は海外からのインバウンドがぐんぐん増加中。

 インバウンドは滞在期間も長いし多くのお金を消費してくれます。入れ込み実数では1.6%にしかなりませんが、観光消費は7%になるとのことなので、もう無視は出来ない数字です。

 ただ、道内の観光消費はその約7割が道央圏でのものとのことで、これらをもう少し地域に波及させるには工夫が必要です。

【外国から来るインバウンドには癖がある】
 海外からのインバウンドですが、これにはお国柄が出て特徴的なパターンが存在するよう。

 北海道インバウンドの総数は2012年で年間約80万人ですが、台湾からが28万人でトップでまだ伸びているほか、タイ国際航空が就航されたことでタイ、シンガポール、マレーシアなどが好調。

 中華圏では1月末から2月にかけての旧正月で休みが続くこともあり、インバウンドは冬季に北海道へ来る需要が多く、繁閑の差が激しい観光業にとってはありがたい緩衝材になっています。

 特にスキーリゾートを求めてくるオーストラリアなどは特に滞在期間が長くほとんどスキー場にいるという特徴があります。

 円安やビザ緩和の効果は大きく、新千歳空港の国際線利用客数は年間127万人と史上最高を更新。しかし新千歳空港は国際線需要やLCC需要によって混雑が深刻。

 容量を超える離発着リクエストがあり発着調整を行っている。これ以上の発着枠は深夜・早朝利用や24時間化するしかないが、さらには空港からの足も問題。

 快速エアポートは空港利用者の利用率が高く(51%)通勤・通学手段として地元の利用も多いことから、容量オーバーで札幌?新千歳空港間アクセスのJR依存がボトルネックになる可能性もあります。

 特に快速エアポートへの依存率が高いことは、運休・遅延時の影響が特に冬場は大きく、札幌都心部からの高速な代替手段整備も課題と言えます。
 
 さらには、道内の観光貸し切りバスは事業規模の小規模化と、供給能力の低下が進行しています。


【それでも観光業従事者の不安定】

 少しは上向いてきた北海道観光ですが、それでもはやり観光は繁閑の差が激しく、装置を抱えて迎えるタイプの宿泊業は稼働率が上がりません。

 道内の旅館業の法人税申告を見ると、なんと八割が赤字なんだとか。

 もっとも亀森さんは、「パンフレットや案内のマルチ言語化とか、外国人向け情報提供だとか、将来を担う若者に海外渡航経験が少ないなど、国際化に対する対応が遅い」とまだまだやれることがあると厳しい意見。

 道内の宿泊施設では、札幌のホテルが稼働率70~80%に対して道内宿泊全体の稼働率は36.8%。いかに札幌での宿泊が突出しているか、逆に言うと地方部での宿泊稼働率が低いかが分かりますね。

 こうした状況なので飲食・宿泊関連の賃金水準は低く、有効求人倍率は1以上と高止まりしていますがそれは逆に言うと、入っても条件が合わずにすぐに止めてしまい又募集するというサイクルが繰り返されていると考えられます。

 しかしこうした現状は、観光における継続的な人材育成を難しくしています。賃金面での待遇改善と、それだけではない人材としての付加価値の増加を同時並行的に行うことが大切ではないでしょうか。

 
 宿泊業も余り儲からない状態が続くのであれば、観光予算などとして税金を投入する意義も問われかねません。


      ◆   


 さてまとめです。

 宿泊業での利益や雇用も伸ばしたいところですが、あまたある観光地競争に勝ち抜いて、「北海道に来てみたい」という人たちをいかに増やし、リピーターにしてゆくか、何度も来る人にはある意味で安定したサービスと、ある意味で毎回違った魅力を提供できるような懐の深い魅力開発、人材育成、ハードでの備えなどがセットで拡大して行かなくてはならないと思います。

 特にハード面では、道東などで周遊する際の安全と安心、そして移動時間短縮をして観光地で過ごす時間を増やすためのより質の高い道路網と道路管理は重要な役割をもっています。

 目先の交通量にとらわれないような必要性についてもっとしっかりとした説明が必要ですね。


 そうそう、もちろん北海道の魅力として「野遊び」を切り口にした活動もこれからやっていきますよ。

 北海道の魅力はまず自分たちが味わわなくてはね。

 亀森さん、貴重なご講演をありがとうございました。 

コメント
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