北海道内で道路系の技術屋さんたちと除雪の話をしていてしばしば聞かれるのが、「でも雪は災害じゃないですからね」と言う言葉です。
冬の東京で20センチも雪が降れば、電車は止まるわ車はいたるところで渋滞するわで、市民生活に大きな影響が出るでしょう。
それに比べて北海道で20センチの雪が降ったところで誰が大騒ぎをするでしょうか。これは普段降ると思って心の準備と除雪に対する意識の違いです。
しかしそれでも「雪は災害じゃない」と言えるのでしょうか。
今回の山梨県をはじめとする関東一円では、最大1メートルもの積雪があり、各所で道路が通行めとなり大きな影響が出る雪による災害となりました。
各所で国道が通行止めとなり、各県の道路事務所では『災害対策本部』が設置されました。災害対策本部が設置されたということは、つまり雪による災害だということを認めたということです。
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日本では雨も良く振りますが、雨が降っただけでは災害とは言いません。しかしそれが一時間に100ミリも降るような豪雨になると河川は増水して堤防で抑えきれなくなり市街地に名が手来るようならば災害となります。
雨はこのように降った水が河川に集まって増水してその力は巨大になるため、しばしば災害を引き起こしますが、雪だって同じこと。
ある程度の風を伴った雪となると道路を通行止めにして交通を麻痺させたり、その結果集落が孤立したり物流が滞ることで日常生活は営めなくなります。
2月中旬に道東地方を襲った勢力の強い低気圧による暴風雪では網走開発建設部と釧路開発建設部に災害対策本部が設置され、同時に札幌の北海道開発局においても災害対策本部が設置されました。
北海道だって雪による災害はあるのです。つまり要は多いか少ないかという程度問題だということです。
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さて、そういう災害のために、災害対策車としてこのときに活躍する排水ポンプ車という機械があります。
これは増水した個所へ向かって水を河川に戻すポンプを備えた自動走行車のこと。災害がなければ普段は倉庫に眠っていますが、一たび洪水が起きるということになると俄然活躍するのです。
では雪による災害のための特殊な機械は、というとこれはありません。
道路の雪をはねてゆく除雪トラックやグレーダー、除雪ドーザ、ロータリー車などの陣容は普段の除雪の体制と変わりません。
ただ災害クラスの暴風雪や大雪となると、雪を取り除くために余計な時間がかかるために、それらの台数が足りなくなるということです。
今回の山梨県での豪雪は120年ぶりで観測史上最大ということなので、それに合わせた機械力の整備となると備えとしては明らかに過剰でしょう。
今回は北陸地方から多くの除雪機械が支援に入り除雪の手伝いをしました。普段から使っているところにはそれなりの機械力があるのです。
つまり私が言いたいことは、東京や関東など、普段およそ使わないところに眠らせておくための機械はいらないけれど、普段使っているような東北や北陸などに少しだけでも余力のあるような機械を配置しておいてはどうか、ということです。
それによって、東北や北陸では普段の除雪がなお一層効率的に行えますし、関東などで大雪が予想されるときは一部を早目に移動させておくという作戦です。
北海道だって同じように、旭川や帯広、ニセコなどに予備用機械を配置して普段は周辺の除雪に当たり、いざというときには悪天候の箇所周辺に移動して道路啓開(どうろけいかい)に当たってもらえば良い。
「そのためには機械経費も整備費もかかる」という声もありそうですが、ある程度の余力を備えることは災害対策として必要なことで、これを機械力における冗長性(リダンダンシー)だと考えてはどうでしょう。
そもそも「雪は災害じゃない」という考えをまずは払しょくする必要がありそうですが。