駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

音楽劇『精霊の守り人』

2023年08月04日 | 観劇記/タイトルさ行
 日生劇場、2023年8月2日18時。

 短槍使いの用心棒バルサ(この日は明日海りお)は、思わぬことから新ヨゴ皇国の宮殿に呼び出され、二ノ妃(雛形あきこ)より息子である第二皇子チャグム(この日は込江大牙)を連れ、逃げるよう言い渡される。チャグムの身体に宿った精霊の卵を魔物と考えた帝(唐橋充)が、暗殺を企てているというのだ。バルサは幼馴染みの呪術師見習いタンダ(この日は村井良大)の助けを借りながら、帝が放った刺客や卵を狙う魔物と戦うが…
 原作/上橋菜穂子、脚本/井上テテ、作詞/国井桂、演出/一色隆司、音楽/かみむら周平。ドラマ化、アニメ化もされた1996年刊行のファンタジー小説を舞台化。日生劇場開場60周年記念公演、ファミリーフェスティヴァル公演。全二幕。

 原作は昔読んだ気がするのですが、そんなにはハマらなかった記憶…子供向けに上演時間が短いショート・バージョンも用意された公演で、私は子供が嫌いなので嫌な予感はしていたのですが、子供向けというものを誤解した子供騙しな舞台に思えて、ちょっと、かなり、退屈しました…
 私が観たのは通常版で、平日夜公演でもありましたし、もう夏休み期間でしょうが観客が家族連ればかりで子供がわあきゃあ叫ぶ…みたいなことはまったくありませんでした。子供向け回を知人の家族と観た親友によれば、開演前の子供たちの騒ぎっぷりは阿鼻叫喚で大変なものだったそうですが、舞台には集中して見入っていたとのこと。つまり、子供向け企画としてはこれで成功している、ということなのでしょう。
 でも私は、まず冒頭のターコさんのナレーション説明からして、あいまいというか漠然とした言葉の多い、わかりにくいものだなーと感じましたし、その後も脚本がスカスカというか、台詞や会話に情報量が全然なく、痩せていて芝居のしようがないようなものに思われて、観ていて閉口しました。舞台装置も単純だったし(美術/乘峯雅寛)、殺陣もなんだかなあで(アクション/加藤学)、魔法や魔物みたいなものの表現もなんか…かなりイマジネーションのおもしろさに欠けたものに思えたので、何をどう楽しんだらいいの…?って感じだったんですよね。みりおの歌はあいかわらず高音が微妙でしたし…
 というかみりおも、ダブルキャストの梅田彩佳も、実年齢はともかく小娘に見えがちな外見の役者さんだと思うので、ぶっちゃけバルサっぽくないじゃないですか。そしてチャグム役者も、オーディション時にはもっと少年っぽかったのかもしれないけれど、成長期で背が伸びたのかあっという間に青年っぽくなってしまったようで、これじゃ原作者が最初にイメージした「中年のおばさんが、男の子を守って旅をする話」になってなくないか…?というのが何より残念でした。
 チャグムはふたりともこれが初舞台だそうで、私が観た方は、映像のキャリアはあるとのことですが舞台の声も姿勢も全然できていませんでした。そもそも無口で、またとまどってもいるので口数が多いキャラではない、というのでボロが出づらくなっていたかと思いますが、それでもまとまってしゃべらざるをえないくだりはあり、その台詞はかなりつらかったです。またラスト、バルサが「私と逃げるか? 暴れてやろうか?」と言うのを断るくだりは、チャグムがつまり王宮に戻り皇太子になりやがて王になる運命を受け入れたということなので、そこでしゃっきり背筋を伸ばして綺麗に立つ、くらいのことをしてほしかったのですが、ずっと猫背でぼやんと立ったままでした。逃避行に呆然とし疲弊し不安でしょぼくれている少年…のときはそれでよくても、仮にも王子なんだから教育はされているはずで、でもそのお行儀を体現する役者としての技術がまだないのが丸わかりで、残念でした。ぴあ貸切公演でカテコがあり、挨拶の様子は真面目で茶目っ気もあって好感が持てたので、これからのお稽古や場数次第だなとは思えたものの…うぅーむ。
 村井良大があまり大きくないのはいいな、と思ったんですよね。原作の描写がどうかは忘れましたが、彼は決してスマートな二枚目などではなく、成人だけど小男、という役どころなのかなと思えたので。なのでバルサは、たとえばチエちゃんとかきりやんなんかがやった方が、長身の中年の女丈夫感が出て、そこに小男と少年、って絵面が理想的だったのでは…などと考えてしまいました。
 家族向けということでチケット代金も最近の舞台にしてはとてもお安く、なのでまあ許せるか、という気にもなりましたが…うぅーむ、不満です。いい観客じゃなくてすみませんでした。



 






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