駒子の備忘録

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『モダン・ミリー』

2022年09月25日 | 観劇記/タイトルま行
 シアタークリエ、2022年9月21日18時。

 1922年、ニューヨーク。モダンガールに憧れて、カンザスの田舎町から出てきたミリー(朝夏まなと)はニューヨークについて早々、財布を盗まれて無一文に。偶然出会ったジミー(中河内雅貴)から聞いた、女性向けの長期滞在型ホテル・プリシラへたどりつく。中国人のミセス・ミアーズ(一路真輝)がオーナーを務めるこのホテルには、この街での成功を夢見る女の子たちが多く暮らしていた。なかなか就職が決まらず家賃を滞納していたミリーは、ホテルの新たな仲間ドロシー(実咲凛音)と仲良くなったり、ジミーに誘われて世界的歌手マジー(保坂知寿)のパーティーに行ったりと新しい生活を楽しみつつ、速記の腕を認められて保険会社に採用され、玉の輿を狙って社長のグレイドン(廣瀬友祐)への猛アプローチを開始するが…
 脚本/リチャード・モリス、ディック・スキャラン、新音楽/ジニーン・テソーリ、新歌詞/ディック・スキャラン、原作・ユニバーサル・ピクチャーズ同名映画脚本/リチャード・モリス、演出・翻訳/小林香、訳詞/竜真知子、振付/木下菜津子、RON×Ⅱ、松田尚子。ジュリー・アンドリュース主演で1967年に公開された同名映画を舞台化した作品で、2002年ブロードウェイ初演。日本では15年ぶりの上演。全2幕。

 私はリカちゃんミリーにジュリちゃんドロシーだった日本初演を観ていて、そのときの感想はこちら。楽しかった記憶があったし今回はまぁ様だしで、いそいそとチケットを手配しました。本当なら20年に上演予定でしたが、コロナで初日直前に中止が決まった公演です。2年越しでなんとか上演にこぎつけて、数回のコロナによる中止はありましたが今もなんとか公演が続けられていて、よかったです。新歌舞伎座でのゴールまで、ご安全をお祈りしています。
 で、とにかく楽しかった可愛かったもうずっとニマニマしていましたー! キャストがみんな達者でチャーミングなのはもちろん、台詞や歌詞の訳に過不足がなく、キャラクターの性格、心情、状況が的確に伝わって、私にありがちな「そういうことがやりたいならこの言い方じゃ伝わらないよ!」とキレる、みたいなのが全然なくて、ノーストレスで観られました。もちろんそんなに難しい話じゃないってのもあるけど(^^;)、でもこのあたりがクリアじゃないと単純な話だってノレないんですよ。でも今回の舞台は本当によかったです。
 中国人云々に関しても、これは差別的な表現とはちょっと違うんだと思います。この頃のチャイナタウンが誘拐などの犯罪の温床だったことは単なる事実なんだろうし、ミセス・ミアーズは中国人ではなく、中国人のふりをしているおそらくはアメリカ人、なのです。もちろん中国人兄弟(安倍康律、小野健斗)を悪巧みに使役しているんだけれど、彼らも母親を中国から呼び寄せるための資金を貯めるために仕方なくやっているのであって、ここにもやはり人種差別的な視線があるわけではないと思いました。中国語台詞が正しいのかは怪しいですが、ヘンに訛った日本語台詞を言わせるくらいなら、むしろこの字幕形式は正しいのかもしれません。
 あとはもう本当にキャストがいいのと、ナンバーが楽しくまた間延びせずに感じられたのもよかったです。まぁ様の歌唱はやっぱりもうあと一歩、には感じたんですけれどね。でもキュートだからいいのです!(甘い)
 ミリーは「恋愛と結婚は別」と考える「モダン」な女性になろうとして奮闘しています。で、着替えるとまぁ様はそらすらりとしていてハンサム・ウーマン感が出ちゃうのですが、でもすごく素朴でまっすぐなミリーをちゃんと演じていて、金にならなさそうな男にうっかり惚れちゃってあわあわする、実にいじらしく微笑ましいヒロインをくるくると楽しげに演じていて絶品なのでした。
 親友になるドロシーが元相手役のみりおんだというのがまたエモいし、また上手いんだコレが! グレイドンとのグラン・パみたいなダンスもすごいし、ミリーとのデュエットではもちろんしっかりまぁ様を支えるし、本当に頼れる共演者っぷりでした。私はみりおんのざっかけない感じが娘役さんとしては苦手だったんですけれど、ミュージカル女優さんとしては本当に素晴らしいと思うので、もっとバリバリ出演してー!と常に思っています。
 てかだいきほでもみりかの(蘭ちゃんでもゆきちゃんでも華ちゃんでも出来るだろうけど、ここの私の好みで)でもチギみゆでも、トップコンビOGはみんなミリーとドロシーをやればいい…!と思いつつも、娘役のミリーだってもちろんあっていいのであって、きぃちゃんミリーとか今ならくり寿ミリーとかいずれ観たいぞ!!とも思いました。
 いわゆるシンデレラ・ストーリーというよりは、真実の愛を選んだらたまたまお金もついてきた、という感じの展開なのもいいですね。私はジミーはドロシーとはお金持ち仲間で面識があって、なんなら親が決めた婚約者同士なんだけど当人はふたりともその気がない、みたいな知り合い同士なのかなと思っていたんですけれど、兄妹とはわかりやすすぎました(笑)。ミリーがいうても色仕掛けではなくちゃんと速記とタイプの腕で雇われるのにも好感が持てましたし、そのボスの廣瀬くんがまた絶品でした! タッパがありすぎて普通のヒーロー役だとちょっと浮いちゃう役者さんだと思っているのですが、こういう役まわりが出来るとホント強いな…! そして中河内くんも本当に素敵でした。まぁ様と並ぶと背が同じくらいなんだけど(なのに頭身は全然違うという恐ろしさよ…!)、その対等感がいいなと思いましたし、やはりすごく愛嬌のある役作りで、ちょっと口が悪かったり辛辣なところがあるはずのキャラなのに憎めない好青年になっているのが本当によかったです。
 そしてイチロさんの悪役、新鮮…!(笑)そして実に楽しそうに演じている気がしました。鷹揚なマジーと実はやはり田舎育ちの同級生、ってのがまたいいですよね。いつかリカちゃんとジュリちゃんのこの二役を観てみたいなと思いました。若いときにミリーとドロシーをやって、20年くらいしたらミセス・ミアーズとマジーをやるって、素敵なことだと思うのです。
 お友達におかげで最前列ほぼセンターみたいなお席で観たので、三階セットを見上げるのはやや首が痛かったですが(^^;)、楽しかったので大丈夫です。女性陣のスカートの中もよく覗けました(笑)。楽しい観劇になりました。



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