駒子の備忘録

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『モダン・ミリー』

2024年07月18日 | 観劇記/タイトルま行
 シアタークリエ、2024年7月16日18時。

 初演の感想はこちら、前回公演の感想はこちら
 前回まあまあ満足したので、ただの再演なら見送るところだったのですが、一部キャストが変わる『シン モダン・ミリー』になるというので、お友達に頼んでチケットをいそいそと手配しました。ら、前回同様に最前列で、また首が痛かった…(^^;)
 今回はジミー/田代万里生、ドロシー/夢咲ねね、マジー/土居裕子、チン・ホー/大山真志…が新キャストかな? ミセス・ミアーズ(一路真輝)とトレヴァー・グレイドン(廣瀬友祐)の廣瀬くん(今回もサイコーに絶品!)は続投、ということです。あ、もちろんミリー(朝夏まなと)のまぁ様もね。
 あとは、ミセス・ミアーズが中国人ではなくなっていました。私は前回も語ったとおり、この悪役3人組はアジア人差別の表象とは違うのではないか、と考えていましたし、中国人兄弟はそのままいるので、コンプラで手を入れるにしてはなんだかなあ…とは感じましたけれどね。さらに言うと、それでではミセス・ミアーズがどんなキャラになったかというと、なんかよくわからなかったので…ホテルで暮らしている、オーディションを受けまくっている女優の卵である若い女性たちにずっと文句を言っていて、自分もかつては女優だったとか今でも彼女たちより自分の方が演技が上手いとか終止ぶつくさ言っているのですが、結局のところどういうことだったのかきちんとした説明がないので、中年女性は若い女性に嫉妬して意地悪するもんだよね、という女性蔑視を感じてしまって、むしろ前回版より居心地悪く感じたくらいでした。身寄りのない女性を選んで定期的に誘拐して人身売買しているのか、たまたま鴨葱の大金持ちドロシーが現れたからちょっと誘拐して身代金ぶんどったろ、と思いついたのか、そのあたりもよくわかりませんでした。
 というか私は前回、脚本的に過不足なかった、みたいな感想を書いてますけど、今回全然そんなことはなかった…もっと足してくれ、説明してくれ、と思ってしまいました。たとえばミリーが言う「モダン」ってどういうことなのか、とかね。実は全然説明がない。この時代のモダンと今のモダンって違うんだろうしさ、ヒロインに共感するためにも共通認識が欲しいんですよ。女の子には何もできやしないよと言われるのを振り切って田舎から出てきて、身ひとつで自活、独立しようとしていて、速記とタイプの腕はあって、「ボスと結婚するのが夢」と野望を語るヒロイン…これも、単に玉の輿に乗りたいということではなくて、恋愛感情に振り回されないクールで対等な関係を男性と築きたい、という意味だと思うんですよね。相手に経済力を求めるのは、現実的には男女の賃金はまだまだ同一ではなく、お金の余裕がないと女性側が搾取され我慢させられがちな現実を知っているからでしょう。ラブはあとから、なんなら婚外に求めてもいい、まずは経済的、社会的安定が欲しい…という「モダン」は、現代で上演するにも説得力があると思うので、そこはもっときっちり打ち出してもいいんじゃないかしらん…と思ったんですよね。そういう進化の「シン」をもう少し観たかったぞ…!
 その他、振付とか演出とかが大きく変わったのかどうかは、前回を「楽しかった!」くらいであまりよく覚えていないため、比較ができません…すみません。3階建てのセットはママだったと思います。お衣装も…どうだったかな? ポスターの赤いドレスはママでしたよね? あとはジミーは登場時はもっとデーハーなスーツを着ていた気がします…
 そう、万里生くんだと実はお坊ちゃん、とか実はねねちゃんドロシーの兄、というのにすごく説得力が出るな、とは感じました。中垣内くんのジミーはもっとエネルギッシュなチャーミングさがあって、実はボンボン、感はあまりなかった気がします。ボンボンだけどそういう性格、という役作りだったのか、羽根を伸ばしている感じだったのか、地金だったのか…なのでドロシーは意外と貧乏暮らしを楽しんでいたけれど、このジミーはけっこうしんどかったのかなとか、本当は仕事が好きで、早く実家の仕事に戻ってまたバリバリ働ける方が合ってるのかな、それならミリーも安泰だな、とか思える気がしました。万里生くんは珍しくちょっと喉がガラってましたが、相変わらず上手いので安心感しかなかったです。
 あと、多分前回もそうだったんだろうけどエアチュー(宝塚式キス)だったのがわかって、すごくよかったと思いました。すんごいシリアスな芝居とかならまあ生々しいリアルキスもアリでしょうけれど、基本的にはお芝居はお芝居なんだからわざわざホントにしなくてもよくない?とは思うんですよね…実際の役者さん同士は決して恋仲じゃないんだからさ。ましてこういうラブコメはほとんどファンタジーなので、観客もロマンチックなラブストーリーが好き、というのとリアルなセックスはノー・サンキュー、ってのは全然両立するわけです。むしろニアリー・イコールなワケでさ。私たちのまぁ様に、ねねたんにナニしてくれんの!?(怒)というのとは別に、マジで特に求めていないので、ただ綺麗なキスシーンを見せてくれれば十分なので、エアでいい、エアがいいのです。こんな至近距離で歌って踊って汗も飛ぶので今さら感染対策も何もないでしょうが、それでも粘膜接触はない方がいいでしょうしね。まぁ様はされるのも上手、万里生くんもちゃんと肩で隠したりが上手くて、私は大変満足しました。
 あとはやっぱねねたんね! 素晴らしかったですね!! こーいうお役のときのねねたんの破壊力、マジでハンパない!!! みりおんのときとはちょいちょいお衣装が違った気もしますが、冒頭の白いフリフリのホントすっとんきょうギリギリのお嬢様ワンピ着ておぼうぼ被ってしゃなりと現れて、「うふっ」って笑って小首傾げて挨拶する…ねねたんでないと許されませんよ! はー可愛かった。もちろん歌はみりおんの方が上手かったと思うけれど、いいのよホント眼福でした…!!
 それでいうとマジーも、イヤ素晴らしい大ミュージカル女優なのは存じておりますが、しかしもっと華とパンチと声量ある、なんならもう一声若い女優さんを呼んでもいいのでは…とかちょっと思ってしまいました。それこそ初演ドロシーのじゅりちゃんとか、今ならきりやんとかどうかしらん? この役はなんかもっとばーんとしていないと、ここなんのシーン?って気がしたな、とかちょっと感じてしまったので。後半、実は…というのも多い、けっこう大きなお役だけにね…
 そしてそれで言うならまぁ様の歌唱はやっぱりもの足りなかったので、もっと上手い人でちゃんと観たいミュージカルだぜ、とは改めて思ってしまいました。すべてのトップコンビが退団後にミリーとドロシーをやればいい、とか言いましたけど、たとえば差をつけるようでアレだけど、まどかミリーにくりすドロシーとかどう? 学年差でいくなら潤花ドロシーというテもある。そこまで下げる前にまずちゃぴミリーにゆうみドロシーとかはどうだ!? ゆうみミリーにそらドロシーとかもたぎりますね!? 女優に役がある作品はやはり楽しいし、元娘役さんが主演を張っていっても全然いいと思うので、いろいろ広がっていくといいな、と心底思います。
 いつもまぁ様の歌唱力に文句をつけているような私ですが、歌以外はいいんだよね…すらりんとのびやかな手脚で楽しそうに踊るダンスも、演技もホントにチャーミングで素敵だと思っています。なので初ストプレになるのかな?の『ロボット』、楽しみにしていますよ…元トップスターをトラムで観る、なかなかないですからね…!
 ミュージカル女優さんはアイドル畑からも本当に歌える人はガンガン出てきますし、OGもどんどん増えていくんだし、もちろんお仕事となるといろんな要素が絡むのでしょうが、でもミュージカルはやはりまず歌える人がやってくれないとね、というのはあると思うので…続けるならレッスンをがんばっていただきたいし、ミュージカルじゃなくても舞台はもっといろいろタイプの違うものもあるよ、とも言いたいのでした。
 同様に、輸入翻案でも脚本や演出はもっといろいろがんばれるのではないか、とホント毎回思います。これも契約とかでそうそう改変できないのかもしれませんが…そしてそれで言うならオリジナルをホントもっとがんばってほしいよな、と思うのでした。
 ともあれ、まあまあわりと万人向けな楽しいハッピー・ミュージカルで、こういうのもいいな、とはホント思いました。無事の完走をお祈り申し上げます!






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