駒子の備忘録

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宝塚歌劇花組『はいからさんが通る』

2020年09月05日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚大劇場、2020年9月3日11時(大正バージョン)。

 時は大正七年、春四月。陸軍少尉・伊集院忍(柚香光)は生まれる前から定められた許嫁のもとを初めて訪れる道中、赤いリボンを春風になびかせて自転車に乗る「はいからさん」と出会う。つむじ風のように彼の前に現れた、その花村紅緒(華優希)こそが運命の人であった…
 原作/大和和紀、脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/手島恭子、藤間仁。1975年から77年にかけて連載された少女漫画を原作に、2017年に上演された演目の、パワーアップ再演版。全2幕。

 日本青年館で観たときの感想はこちら
 3月初日のはずが中止になり延期になりまた中止になり…そのたびに私もお取り次ぎをお願いしキャンセルしまたお願いし、送金し返金され、友会が当たっても返金され…何度繰り返したことでしょうか、最後にお願いして取り次がれていた回が、奇しくも再開初回となりました。開演1時間前でも何かの発表があるかもしれないし…とビクビクしつつも早朝のいつもののぞみに乗って、14時ピックアップでたからづか牛乳のざらめヨーグルトとルマンのサンドイッチを予約して、チケット引き取りに向かい開場に並び、入場できたときにはさすがにほっとしました。星組『眩耀』新公以来、半年と半月ぶりの大劇場でしたよ…! パレードのあと緞帳が途中で止まり、再開のご挨拶がさおたさんとれいちゃんからありました。れいちゃん、涙声でした。一か月の中断は長かったよね…!
 さて、ちなつからあきらに変わった冬星(瀬戸かずや)さんでしたが、こちらもすらりと素敵で、ラブコメ芝居が濃くてよかったです。しろきみちゃんから替わったおとくりちゃんの環(音くり寿)もさすがの上手さでした。高屋敷先生(永久輝せあ)はひとこになって、台詞も出番も増やしてもらっていましたね。まあでも全体に、スターのファンにはどの役も出番の少なさが寂しいのではないでしょうかね…そして役が変わらなかった鬼島軍曹(水美舞斗)のマイティー、蘭丸(聖乃あすか)のほのかやかがりり、ひらめなんかは、上手く入れ替えるなどしてもらってファンとしては新しいお役が観たかったのではないかな、と案じられました。
 というわけでいつもマイ楽後に書いている感想を現時点ですでにまとめてしまっているのは、私は東京公演はもう観なくていいかな、と思っているから、です。申し訳ないのですが、はっきり言って、退屈しました。
 青年館公演も一度しか観ていないし、そのスカステ放送も一度ながら見しただけで、今回の初日翌日の配信も絶対に生で観るつもりだからと見ておらず、なのでちゃんとした記憶もなくてくわしい比較なんかはできないのですが、別箱版から大きくは変わっていませんでしたし、なので私の評価もあまり大きく変わらなかった、ということです。私はこの作品をそもそもあまり買っていないのでした。

 もともとの原作漫画のタイプが違うせいももちろんありますが、『天河』の方がまだ上手く舞台化できていたと思うんですよねー。そして私が原作漫画として『天河』より『はいから』の方がディープに好きだというせいもあるのかもしれないけれど、余計に不満に思ってしまうわけです。原作漫画のエピソードをただ順に、必死に消化しているだけで、パタパタ、クルクル話が進み、でも場面転換などとても紙芝居的で、そんな中で登場人物たちの心理や感情はあまり立ってきていない気がしました。情感あふれる、リリカルでロマンチックな、幻想的だったりもする、宝塚歌劇っぽい歌とダンスの場面、みたいなものがなかったからかなあ…スターのソロとかトップコンビのデュエットとかは一応ちゃんとあるんですけれどね。樹上の場面とか、たとえばブランコでやれたら印象違ったのかなあ? 木の葉の精のコロスが舞い踊るような…? シベリアの雪じゃなくて、もっと早く、少尉と紅緒さんの恋が成立していく中でやらないと、弱かったかなと思うんですよね。2幕の、紅緒さん逮捕のあとの盆がグルグル回るようなのも宝塚っぽいっちゃぽいんだけど、どちらかというとあれはイケコっぽいだけな気もしました。あるいは柴田先生ですけれど『凱旋門』みたいだったかな…あの演出は青年館ではなかったかな? よく覚えていません、すみません。
 とにかく、私は観ていて登場人物に感情移入できないというか、キュンキュンときめかず、心が動かなかったんですよね…原作漫画は今でもあれだけ萌え萌えで読めるのに、その感情が舞台を観ていても喚起されなかったのです。れいちゃんの少尉、素敵だなとか華ちゃんの紅緒さん、可愛いな、とは思ったんですよ? でもドラマがどうにも感じられなくて、ハートに火が点きませんでした。私が1幕で芝居になっていると見えたのは、伊集院伯爵夫妻のハートマークのやりとりの直前のくだりくらいでした。美穂さんの伯爵夫人はだいぶ天然っぽくて、原作はもっとゆかしくおっとりってイメージだったので解釈違いな気もしましたが、可愛かったのでまあいいです(笑)。そしてじゅんこさんもさすがでした。あのくだりくらい、少尉と紅緒さんが強がったり嘯いたり、心がすれ違ったり寄り添ったり…ってドラマを観たかったんだけどなあ。前半、展開は超スローなくらい丁寧にやっているんだけれど、なんかそういう感情の動きが立ち上がって見えてこなかった気がしました。
 だから2幕の編集長のラブコメ芝居の濃さが、あきらがまあまあ上手いだけに私には浮いて感じられました。あと、私は原作漫画の「うーむ……こいつあちんくしゃだな」「はは……実物はそうでもないさ」が大好物なんですが、台詞が変わっていたのはまあ仕方がないとはいえ、それを受けた鬼島さんの「写真どおりじゃねえか!」みたいな台詞に笑いが起きていたのが不思議でした。いやマイティーがまた上手かったってのはあるんだけど、基本的に宝塚歌劇団には美人しかいないので、紅緒さんの十人並みの容姿を表現するのって難しいはずだし、舞台版ではそういう台詞もないし、写真を映像として見せてくれているわけでもないのに、これで沸く笑いって不思議だな、イヤおもしろくないわけじゃないんだけど、と思ったりしました。
 そしてクライマックスの教会の火事のくだりは、原作どおりにやらないと、今の流れでは紅緒が編集長と生きるより少尉と死ぬことを選んだのだということがよくわからないなと思いました。その前の少尉の記憶喪失と回復、紅緒とラリサ(華雅りりか)の板挟みになる逡巡なんかもちょっとわかりづらくて、もったいなかったなー。
 ラストの、紅緒さんからするチューは可愛くて、原作にはなくても私は好きだったんですけれど…

 再開後はコロナ対策で銀橋や花道を使わないことにしていたようで、またおそらくモブの下級生を減らしたりしていることもあるのでしょうが、舞台が平面的で平板で、いつもあまり多人数が乗っていなくてスカスカで、絵面として寂しいというのもありました。あと、生徒があまり声を張り上げなくてもいいようマイクのレンジを上げているのか、逆にブレスや雑音を拾ってしまっていて耳障りだったのも興が削がれました。そしてれいちゃんも華ちゃんも、残念ながら歌があまり上手くなっていなかった…つらい…
 というわけで本当に申し訳ないんですけど、私はけっこう退屈してしまったのでした。フィナーレも、娘役ちゃん群舞は可愛くて男役群舞(軍服バージョンでした)はカッコ良かったけど、でもまあフツーかなという気がしましたし、あまりの悪評紛々さにそこまでではないやろと思っていたデュエダンが本当に残念な出来で、本当にしょんぼりしました。恋アリでもダンオリでも、華ちゃんもうちょっと踊れてたやろ…どうした? れいちゃんの良さまで殺す残念さだと思いました。私が今までで一番目を覆ったのは、なんのショーかは忘れましたがお披露目公演かな?のミキちゃんとジュンちゃんのデュエダンで、もうふたりとも必死でカウント数えてるのが見て取れるような、まるで体操のようなダンスだったなと記憶しているのですが、あれはホントふたりとも踊れなかったからさー…たとえば近年ではまさおが真ん中でゆらゆら揺れているだけの周りをちゃぴがガンガンクルクル踊りまくるデュエダンとかもあったけど、男女逆でやるのはつらいだろうしなー。しかもあれはまさおが歌えてたから成立したんだろうしなー。れいちゃんのダンス力が娘役相手に発揮されないとなると、もったいなさすぎですね…

 兵士の中に好みっぽい人がいるな、と感じてオペラグラスで覗いたら大弥だったので、ヨシ私ブレてない、と確信できたのが収穫でした(笑)。

 そしてひらめちゃんの雪組帰り咲き、トップ娘役就任が発表されましたね。正直、意外でした。組内から出ないならくらっち出戻りが最有力かな、でもららを呼んでくれてもいいのよ…?とか考えていたので。イヤひらめは娘役力のある、とても素敵な娘役さんですし、ド路線じゃなかった分トウが立った感じもないし、咲ちゃんとも今までいっぱい組んできていてお似合いだろうなと思うし、学年が近いトップコンビもいいと思っているし、古くはひびき美都とか渚あきとか最近ならゆきちゃんとかの上級生娘役のトップ就任も本当にいいことだと思っているんですけれど、でもじゃあたとえばくらげとの差は何?とか思っちゃうんですよね。イヤいろいろ事情はあるんだと思うんですけれどね。あとじゃあ今回の組替えはなんだったの?という…ワンスに出さなかっただけ? あきらバウヒロもそこ!?って思いましたけどね…えりたんと同じ、という話もありますが、あれは有力同期との玉突き事情が見えてたじゃん…娘役人事はタイミングがすべてなのかもしれませんが、ファンともども、なるべくみんなを幸せにしていただきたいです…
 そしてかのちゃんが宙組に来るんだから宙組から出るのは夢白ちゃんかなと思ってはいましたが、雪組に行きますか…早くも皮算用ですがひらめが短いならアリそうですよね、そしてあーさあやってのもお似合いそう…でもまあこのあたりはもう本当に全然わかりませんね。新公がしばらくできないとなると、下級生の育成にも響くからなあ…

 大劇楽の日にこんな更新で申し訳ございません。しかし劇団は元気で、ほぼ1年後までの本公演予定を打ち立ててきましたね。こちらも臨戦体勢を整えなければなりません。みなさまもどうぞお元気で、ご安全に、引き続きともに観劇その他のファン活動を地道にしてまいりましょう…!







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