駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』

2020年03月14日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 宝塚大劇場、2020年1月12日11時。
 東京宝塚劇場、2月27日18時半。

 1920年代のアメリカ、ニューヨーク。マンハッタン島東南の場末、ローワー・イーストサイドには、政変のロシアや極貧の東欧から多くのユダヤ人が移住していた。誰もが新大陸での成功を夢見ていたが、現実は厳しいものだった。デイヴィッド・ヌードルス・アーロンソン(望海風斗)は幼い頃から裏社会で自らの手を汚して生きていた。マックス(彩風咲奈)、コックアイ(真那春人)、パッツィー(縣千)、ドミニク(彩海せら)ら信頼する仲間同士が寄り添い、非合法の世界に根を下ろすしか生きていく術がなかったのだ。ヌードルスには恋い焦がれる少女がいた。仲間内でただひとり正業に就き、親のダイナーを手伝っているファット・モー(奏乃はると)の妹デボラ(真彩希帆)だ。この土地を離れ、日の当たる場所へ抜け出し成功者になる、とヌードルスと女優志望のデボラは互いの夢を語り合い、自分たちの未来に思いをはせるが…

 大劇場での観劇は、友会が当たってSS最前列でのマイ初日となりました。ご縁があればなるべく生徒さんからチケットを買いたいと思っいて、東京はそれで手配していただいて観劇した回が、結局マイ楽となってしまいました。お友達に翌週の新公を手配していただけることになって舞い上がっていたところだったのですが、幕間に翌々日から3月8日までの公演中止発表を知ったのでした。政府が不要不急のなんちゃらみたいなことを言い出したときから悪い予感はしていたのですが、なんとかがんばってくれるのかもしれないと思っていただけに、しょんぼりでした。
 ただ、星組大劇場千秋楽は無事に9日に幕が上がり、袴のみつるも無事に大階段を降りて幕を下ろし、雪組東京公演も9日はもともと休演日でしたが無事に10日から、換気やアルコール除菌、検温、マスク装着、店内売店の営業中止などなど万全の体制で再開されました。さすが宝塚歌劇、と思いました。どのみち罹るときは罹るんだし、ある程度健康なら罹っても重症化しないと聞くし、もちろんなるべく罹らないよう移さないように必要な準備はするんだけれど、何もかもナシにしてただ家に籠もっていたら世界は終わるので、きちんと対策しつつなるべくいつもどおりの生活を続けた方がいいに決まっているのです。ファンの間にも、体調が悪いなら絶対に行かない、健康ならきちんと支度して元気にでもおとなしくでも熱く楽しく舞台を見守るのみ…!という気概が漲っていました。おもしろおかしく取り上げようとするマスコミの取材もあったようですが、おおむね毅然と無視していたようでした。なので中止期間中にあった新公も、再開したらどこかの水曜か金曜の夜にねじ込んでもらえるのでは、そしてチケットをそのままスライドさせてくれるなら私も観られるのでは、と密かに希望を抱いていました。すわっちのラスト新公にしての初主演をこの目で観たかったし、あがちんマックスとか良さそうだしあみちゃんジミーが大評判だったので、本当に楽しみにしていて、お友達たちとのごはん会の予定なんかも入れないで、空けて待っていました。中止になった日に上級生やスタッフの前でだけ上演したとかいう噂も聞きましたが、やはり舞台は一般の観客がいてなんぼでしょう。
 けれど、政府はさらなるイベント自粛要請の期間延長をしてきました。全国一斉休校騒ぎも同時でしたっけ? あいかわらずなんの根拠もないままに、事態がどうなったら再開でどうなったら中止延長なのかの明確な説明もないままに。そもそも現状の明確な説明からしてほとんどないし、あったとしても信用できないわけです。なんせ領収書も明細も議事録も公文書もない政府なんですからね。
 なので従う義理なんざない、引き続きできる限りの対策をして自己責任でショー・マスト・ゴー・オンだよ!…と思っていましたが、やはりなんらかの圧力はかかるものなのでしょう、宝塚歌劇は再度の公演中止を発表しました。悔しさのにじみまくる発表文でした。政府が言う19日までの中止です。20日には東京オリンピックの聖火が日本にやってくるらしいので、政府はそこから五輪万歳の空気を作りたくて仕方がないのではないか、と申し訳ありませんが私は邪推しています。私はずっと、日本開催なら福岡を推していて、東京開催に関しては反対してきました。今も反対です。今や延期ではなく中止にすべきで、ロンドンだけでなく世界のどこでも今回は開催が難しいのではないでしょうか。まずは健康でないと、スポーツも平和の祭典も何もあったものではないと思います。聖火は採火されたもののギリシア国内のリレーを中止しました。いろいろともう無理なんですよ、責任者とされる方が一刻も早く決断するべきだと思います。なんかWHO待ちみたいになってるの、おかしくないですか?
 …脱線しましたが、そんなわけで宝塚歌劇は、なんとしても22日の雪組東京千秋楽の幕は上げるべく、今は雌伏しているのでしょう。信じて待ちたいと思います。13日が初日のはずだった花組大劇場公演は、再開したその日が初日です。新トップコンビのお披露目本公演を、みんなで寿ぎたく思います。
 雪組が20日から再開されたとしても、週末はマチソワ公演ですし再開初日の夜公演に急遽新公をねじ込むとはさすがに考えられないので、やはり私の観劇はこれ以上はないでしょう。毎回ここの記事はマイ楽を終えたら書くことにしていて、最初の中止のときにも「まだチャンスはあるかもしれないから」と粘っていたのですが、現実を受け入れて、書き出すことにしました。
 ただし、そんなわけで東西1回ずつしか観劇していないので、いくら贔屓の卒業を見送って観劇回数も減るだろうとは思いつつも今までもまあまあもう少しは観られていただけに、近年では最小観劇回数の本公演となってしまい(別箱なら1回しか観ないことはむしろ通常運転なのですが…)、あまりディープにかつ細かくは観られていないかもしれません。でも、なんせ真ん中のたまさくが好きだし主要メンバーみんな好きなんで目が足りなくてタイヘン、な月組や、贔屓がいないとなると逆に見るとこなくてむしろ娘役ちゃんばっか見ちゃうんで「あんた、娘役群舞になるとオペラグラス上げるんだね」と親友にも笑われた宙組、らいととだいやをつい探してしまう花組とかりんちゃんをついつい追っかけてしまうだけの星組と違い、あやなが好きなはずなのに最近あがちんがグイグイ来て困るわでもまだ大丈夫よ、くらいな雪組は、今の私にとって一番フラットに全体を観られる組なので(個人の見解です。ちなみにだいきほは大好きだし雪娘もりさみちるひまりかのと大好きです)、少ない観劇数ながら演目そのものを堪能したなあ、という印象がとても強い公演となりました。この演目、私はとても好きです。今回はそんな話です。
 毎度前置きが長くてすみません…

 さて、私は映画は未見です。今回の舞台では映画からどこがどう改変されていたか、の解説ブログなんかをふたつほど読んだ程度です。ま、とてもよくイケコナイズ、宝塚歌劇ナイズされているのでしょうね。デボラやキャロル(朝美絢)センター場面でのショーアップぶりや、特に1幕はヌードルスとデボラのラブストーリーに寄せていて2幕はヌードルスとマックスの友情や確執のドラマを描く感じなど、イケコの手だれっぷりを感じました。私にはなんの不満もないです。描かれていない部分はあえて描いていないのだと思えるし、基本的にヌードルスが主人公なんだから彼が知らないことは明かされないのが当然で、人生ってそういうもので、そういう多少のあいまいさとか不可解さとか謎とかつじつまの合わなさがまさしく人生そのもので、これはそういうことを描きたかった作品なのであり、タイトルは「かつて、アメリカで」だけれど私たちはこの時代のこの国のこともそこに生きた人々のことも本当の意味では知りえなくて、でも要するに「今、東京で」とか「いつかの、どこかで」の人間同士の物語である、ということはひしひしと感じ取れるので、それで十分なのである…という作品なのだと思いました。
 ハッピーエンドとは言いがたいし、多少は地味かもしれないし、確かにせつなくてしんどい話でもあるかもしれません。そういう意味で、好みでないと判断する方ももちろんいるでしょう。そして私は好みとして好きなので、いい作品だなーとマイ初日は本当にしみじみしました。初日には行けませんでしたが、あまり前情報を仕入れずに観られたのもよかったんだと思います。キャラクターにも役者にも特段の予断がなく、でもヌードルスやデボラやマックスやキャロルの想いに心寄せながら、ストーリーを追えました。もちろん宝塚歌劇的にも、この演出いいなとかこの転換上手いなとか感心しながら観られました。だいきほホントなんでもできるな、とかね。最近味が出てきてホントいいよなと思っているナギショーがまたまた良かったのもよかったです。とはいえ役の数自体は少ないかもしれない、とは思いましたが、それは原作ものあるあるですしね(オリジナルでも役が作れない座付き作家も残念ながらいますしね…)。フィナーレも素敵でした。
 私はだいもんも咲ちゃんももちろん好きですが、それはフツーの好きなので、もっとがっつり萌えモエで好きでかつもう少し回数を観られていたら、長官になってからのマックスがジミー(彩凪翔)に追い詰められてヌードルスに連絡して…からのドラマにもっとのめり込み執着し追っかけとことん考えたことでしょう。自分を責め、相手に悪いと感じ、どうせ死なねばならないのなら相手に殺されたいと考えるに至る想い…重くないわきゃないですよね、いいわー。
 そしてマックスとデボラの再会やその後の展開についても、もっと萌えモエで考えたことでしょう。私はマックスはキャロルとはあくまで遊びでずっとデボラが好きだったんだ、なんてふうには思わないし、デボラはマックスのことをヌードルスを悪の道に引きずり込んだ男としてむしろちょっと嫌う、くらいのところがあったかと思っています。でもお互いいろいろあって、いい歳になって、それこそ人生の後半にたまたま再会した。お互いの仕事のことやキャロルの存在もあった。それでもそこに芽生えた何かがあったということで、それを愛とは呼べないなどと外の誰かには言えないものだと思うのです。私は、デボラはヌードルスに本当にバーティーに来てもらいたくないと思っていたと思います。今一緒にいる人の方が大事、というのはとても自然なことだと思います。ヌードルスが去り、銃声が響き、デボラがマックスの部屋に入ってその姿を見て、顔を覆い天を仰ぐ…その姿を見せるイケコの手腕に唸りました。そういう人生を、ドラマを、宝塚歌劇の枠の中できっちり描いて見せている。長年温めていた企画だというのもあるかもしれないし、今のだいきほ(次の本公演での卒業が、東京お稽古最終日翌日に発表されました)がそれを十全以上にやってみせて、イケコの代表作のひとつといっていい仕上がりになったのではないでしょうか。少なくとも『るろ剣』はこの域にはなかったよイケコ…イヤ外部でやるのもいいことなんだとは思うけどさ…(笑)

 無事の再開を祈っています。そして全ツはチケットがなんとかなったので、コンサートが無事に観られますように。というかちゃんと公演されますように。そしてその次の卒業公演が素晴らしいものになりますように。
 花組も無事に初日が開き、宙組の別箱も無事に予定どおり公演されますように。星組も無事に東京にやってきて公演できますように。
 年末を除けば、いつでもどこかで何組かが公演していて誰かしらが観ていて、レポツイがツイッターのタイムラインに上がりお友達からレポLINEをもらい、常に常にキャッキャしているのがこの数年の、なんなら十数年の日常でした(私は観劇歴研28で、今は個人的に第三次ブームを終えたところなのですが、ツイッター歴は丸11年とかでやはりこれが大きいのです)。通勤の満員電車危難の制限もされず、ただイベントだけに自粛要請がなされ、映画館はやっているものの劇場は大きなところはほぼ公演中止になり、宝塚歌劇も例に漏れず、こんなに静かで張り合いがなく虚しい日々を過ごそうとは思ってもいませんでした。家にいる時間が長くなった分は、愛蔵コミックスの再読なんかを順にしていて、それはそれで新しい発見があったりしておもしろいものなのですが(どこまでもオタク…)、やっぱりちょっと、かなり、寂しいです。
 そうそう、会社で50歳で取れる十日間のリフレッシュ休暇とニューヨーク旅行もキャンセルしました。おりしもブロードウェイも公演中止になりましたね。悲しいです…
 キャンセルした当初は、なので予定を全然入れていなかったのでこれを機に絶食ダイエットでもして少し身体を絞りたい、とか考えていたのですが、そんなことをしていたら近隣のなじみのお店が端からつぶれてしまいそうだし経済回さないとウィルスよりそっちの影響で人死にが出そうなので、ガンガンお金を使おうと思ったりしています。よくわからないノーブレスオブリージュめいたキモチ…ただ、このまま緊急事態なんちゃらとかになって預金封鎖でもされた日には、私が今まで汗水垂らして働いて稼いで貯め込んだ小金も何もあったもんじゃなくて、ああさっさと海外移住しておけばよかったと臍を噬む羽目にもなりかねないので、今後も政治には注視していきたいし次のでっかい選挙って何? いつ? 早くして? マジヤバいって今の政府! と騒いでいきたいです。
 引き続き、がんばります。ここは公演感想日記がほとんどなので更新が少なくなりますが、こりずに覗きに来ていただけたら嬉しいです。私はめげずに5月とか7月とかのチケット手配をガンガンしています。ニューヨークも秋には行きたいし、今年も夏の海外ひとり旅をやりたいです。
 負けないぞ!!!







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