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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組『花の業平/PHOENIX RISING』

2025年05月07日 | 観劇記/タイトルは行
 相模女子大学グリーンホール、2025年5月4日12時。

 平安初期、京の都に従五位下、左近将監に蔵人を兼ねる在原業平(鳳月杏)という公達がいた。歌才に優れ、眉目秀麗の誉れ高く、その上武勇にも長じ、総じて自由闊達で雅びな当代随一の貴公子であった。業平の祖父は平城天皇、父母も皇族という出生だが、さほど身分が高くないのは当時の宮廷には藤原氏の権勢がはびこっており、他の氏族の出世はかなり抑えられたものになっていたからだった。中でも太政大臣の藤原良房(英かおと)は帝の祖父にもあたり、政治の実権はほぼ彼が握っていた。ある年の春、宮中では花の宴が催されていた。業平はそこで美貌の姫・高子(天紫珠李)に出会う。高子は良房の養女であり、良房はこの天覧の舞に高子を加わらせ、帝の女御にあげて皇子をもうけさせ、藤原の勢力を一層強大なものにしようとしていた。父の下心を悟っている高子は、その計画に同調する兄・基経(風間柚乃)の圧力をも振りきって、花の舞に加わることを拒んだのだが…
 作/柴田侑宏、演出/大野拓史、作曲・編曲・録音音楽指揮/吉田優子、編曲/鞍富真一、初演アドバイザー/尾上墨雪、振付/尾上菊之丞、尾上京。2001年星組初演、同年再演、翌年中日劇場公演まで続演された王朝ロマン。

 私は初演は生では観られなかったようで、再演は記事にしていて、こちら。ちなみに『応天の門』の感想はこちら
 梅田でも観る予定だったのですが、いろいろ手はずが狂って一度きりの観劇になってしまいました。かつ帰省中で久々に母親を伴っての観劇で、彼女は誘えば観る程度の人ですがこの10年くらい誘えていなかった気がしていて(^^;)、話わかってるかしらん、楽しめてるかしらんとやや気をつがいながらの観劇となってしまい、いつもより集中度は低かったかもしれません。でも中通路より数列後ろの上手ブロックのセンター寄り、視界良好で客席登場など近く見えて楽しめて、ショーの客席下りは話題の大楠てらくんの狩り場(笑)で母はハイタッチもしてもらえて喜んでいて、ありがたかったです。
 演目発表時に私がそんなにアガらなかったのは、名作の誉れ高く再演希望が多かったことは知っていたものの、個人的には「なんかしょっぱい話だったような…」という記憶があったからです。結局、引き裂かれて終わるお話なので…たとえば主役カップルの片方ないし両方が死んじゃって、でも愛や志は貫かれたのでハッピーエンド、みたいに見えるタイプのお話もありますが、これはそういうんじゃない物語のように思えたんですよね。負け戦の話で、「でも愛してる、これからもスキ見て会おう」とか言って別れるんだけど、負け惜しみに聞こえるな…と今回観てみて私はやはり思ってしまったのでした。ただ、こういう史実だしなあ、仕方ないよね…老後に、死ぬときに若き日の恋を振り返るようなまとめかたにするならまた印象も違ったのかもしれません。でも柴田先生は、この生木を引き裂くような別離をこそ描きたかったんでしょうしね…今回も概ね好評のようなので、それは何よりですし、あとは好みの問題かな、と思いました。
 なんせ多彩なキャラクターたちが描かれていて物語が重層的なのは素晴らしいですし、確かに暗転は多いんだけど演劇としてはわりと普通のレベルで、ブリッジ音楽が素敵だったり前の場面の芝居の余韻が続いたりするのでそこまで転換の不手際に思えないのもいい。お衣装も素敵だし、全ツにはいろいろ制約があって演目に日本物が選ばれることはあまりないのかもしれませんが、たまにはいいし、もっといろいろやっていくべきだよな、とも思いました。
 今回のために映像などで予習することは特にしませんでしたが、特に音楽、歌を自分がけっこう覚えていたことに新鮮な驚き、ときめきを感じました。冒頭の「チャーン!」って音から始まって、まあ主題歌はタカスペその他で歌われることが多いから耳馴染みがあるのは当然としても、「♪近頃都に流行るもの~」とか「♪遠い東国へ~」とか「♪みちのく武蔵野~」とか(もう思い出せないので細かい歌詞は違うかも…でもリアルタイムで聴いたときにハッとなったのは確かなのです)、あったあった!と懐かしくおもしろかったです。
 あとはみんな適材適所で、芝居が確かで、観ていてストレスがなく、よかったです。
 トップトリオはもちろん、どなたかがツイッターに上げてくださった歴代配役表を眺めると、ことことがやっていた恬子(花妃舞音)をまのんたんがやったんだなー、とか、えみくら、かのちか、新公ウメちゃんの若葉(乃々れいあ)がれいあちゃんとかわかるわー、とか盛り上がりました。「内裏の不良女官の頭」というなかなかな役紹介になっているあけび(彩みちる)は、今回新設されたお役なんですかね? では梅若(礼華はる)との設定も新設…? ここ、ひとつ別のお話が作れそうでしたけどね…!! 女官メンツが強そうなのもよかったです。
 梅若はブンちゃん、サエちゃんで新公チエちゃんというのも、その系譜か…!となりますし、ぱるが『応天』で演じていた藤原常行(彩海せら)は今回あみちゃんで、以前はトウコさん…というのも味わい深いです。『応天』でまのんたんが演じた多美子(羽音みか)はみかこで、これはソンちゃん…かよちゃんとまとぶんがやっていたところがわかとりひとくんで、わかへの餞別台詞は新設ですよね? ご当地アドリブ場面にもなっていたし、各地で大きな拍手が送られることでしょう。うちの母はわかのことは知らずとも、崎陽軒のシューマイにちゃんとウケていましたよ…(笑)
 あとはおじさんチームとかもホント頼もしく、特にうーちゃんは組の貴重な人材になってきたなと思うので、るねっこともども大事にしてほしいなと改めて思いました。白玉のカゲソロはみゅーずちゃん、エトワールも(ショーのデュエダンのカゲソロはあみちゃんで、これも素敵でした)。
 プログラムの大野先生のコメントがなかなかに熱く、読んでいて感慨深かったです。高子も嫁いで帝のお召しを断るわけにはいかないのだから、業平も高子を想いつつ恬子に流されても仕方ないというか同罪なのかもしれませんが、こういう場面を入れちゃうのが柴田先生だとも思うし、その後の高子と恬子の場面を作るのもホント柴田先生っぽいなと思います。それが、女性観客からしたら嫌な気持ちになる男性のリアルとか、男性視点の理想の女性像…みたいにギリなっていないところも味わい深いですよね。こういうところも、お若い作家さんたちにもっと学んでいってほしいですし、柴田作品の演出も大野先生だけでなくもっといろいろな若手にやらせていくといいのかもしれません。スターもファンも作家も育てて繋いでいかないと、未来がないですからね…
 ラストで冒頭に戻る構成なんかも本当にお見事でした。

 Takarazuka Spectacularは作・演出/野口幸作。本公演の感想はこちら
 ゴンドラも大階段も使えなくてもギラギラと景気良く、人数が減ってもまだまだわしゃわしゃしていて、楽しかったです。あみまのんのタイ場面が夜バージョンに進化し(笑)、アイドル場面はセカンドシングルになり(笑笑)、退団者場面、ヨジャドル場面はるねうーとあまし氏、娘役の場面になって、デュエダンもイメージが変わって新鮮でした。
 WINDのあまし氏がやはり大好物ですねー。ボリウッド・アクトレスのまのんがオダチン・カーン(風間柚乃)と組むようになっていて小躍り! プロローグは出る位置がかわって、おはねのところを歌っているようで涙…でもロケットに入るまのんが久々に観られて小躍り! 韓国場面でりりちゃんが抜けたところに静音ほたるちゃんが入っていて小躍り! 母はヒデキサイジョウにウケていました。
 ここからはマンネリとの戦いかもしれませんが(すでに、か…?)、野口先生にもがんばっていただきたいものです。


 ツアー大楽は沖縄、平日ですが思い切ってついていくファンにはいっぱい楽しんでもらいたいなと思います。どうぞご安全に…!







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