東京宝塚劇場、2007年10月18日マチネ。
20世紀半ば、ヨーロッパのとある国。上流階級の人々の間で人気のあるクロースアップ・マジシャンのシャンドール(瀬奈じゅん)は、透視術を持っているとして世間で評判になっている。宮廷に仕える女官ヴェロニカ(彩乃かなみ)は彼を皇太子ボルディジャール(霧矢大夢)の元に連れて行き、皇太子妃の事故死の真相を透視してほしいと頼むが…作・演出/正塚晴彦、作曲・編曲/高橋城のミュージカル。併演はスピリチュアル・シンフォニーと銘打たれた、日本の伝統芸能や民族舞踊を織り込んだショー。作・演出・振付/謝珠栄、作曲・編曲/吉田優子。
宝塚初観劇、という知人ふたりを伴っての観劇だったので、受け入れてもらえるかヒヤヒヤものでした。
先にショーが来て、しかもヤマトタケルだのなんだのいう通し役があるショーだったので、バラエティには欠けるかとヒヤヒヤし…でも楽しんでもらえていたようでした。
城咲あいがやっぱり可愛くて、目を引くなあ。
ミュージカルは…いいんですけど…私はやっぱりトップコンビと男役二番手がかっつり組むメロドラマが好みなので、そこは不満。でもまあ、ライトなコメディには仕上がっているかと思いました。
ただし完全に役不足なのでは…あと、マジックというものはタネがあるのが当然なのに、だから「シャンドールの奇跡」にも仲間たちの事前調査とか仕掛けとかのタネがあるのが当然なのに、万能の超能力者としてもてはやされて困ってしまう…というとまどいやおかしみを描く、というのは、こういう大劇場には不向きな題材なんじゃないかと思いますよ。
明るくて爽やかで、でもなんとなく仲間に流されて「奇跡のマジシャン」を演じてしまってホントはちょっと困惑気味…というシャンドールのキャラはアサコのニンかなとは思います。
皇太子妃の侍女で、真相究明に必死なヴェロニカは、わざと声を低くしての役作りなのですが、ちょっと男役の声のようで、あだになっていると思いました。普通にいわゆる娘役声のままでも、芝居で、仕事に必死でプライベートを忘れてしまっているキャリアガール、みたいなものは出せると思うんだけどなあ。愛らしい彩乃かなみを期待していたので、ちょっと残念。
同僚女官で武芸にも秀で、ちょっと怖い女スパイといった趣すらあるシャーロットとエヴァは憧花ゆりのと夢咲ねね。これはよかった。キャラクター造形も良かったし、それを十分に演じていました。
皇太子ボルディジャールは、ちょっと浮世離れしたところのある王子さまってことでいいんですかね…本人は王制を廃止して民主国家にするべきだと思っているようなので(なので貴族暮らしの甘い汁を吸い続けたい悪党どもが皇太子妃に陰謀を仕掛けた、ということになっているのですが)いいんですが、こんなのが次の王様じゃこの国はちょっと心配…まあ笑いのためにやっているんでしょうし、キリヤンは達者なのでそれはやってのけているのですが、当然あんまりかっこよくはないのでちょっと残念。
シャンドールの友達で居候で発明家だけどもうからないのでシャンドールにたかっているジグモンド…なんてどーでもいい役が大空祐飛です。かわいそうすぎる…三番手くらいまでにはいい役が書けていないようでは宝塚歌劇の脚本としては失敗だと私は思うぞ。いくらひいきの正塚さんといえどこれは言っておきたいです。発明家らしさなんて全然ないし必要性もないし、だいたいなんなんだあの変な衣装は…
これで卒業のエリちゃんは同じくシャンドールの仲間の探偵ラースロで、これは出番が多くて儲け役だし、エリちゃんの黒髪が好きだったのでこれで見納めができて私は満足なのですが、要するにシャンドールのスタッフとしては彼くらいがいれば十分なわけで、あとは出雲綾とか遼河はるひとかがやっている役はみんな無駄なわけ。やはり作劇として問題があると思いました。
ただ、エンディングがいいのでなんとなく好印象にはなってしまった…
皇太子妃が無事戻り、悪人どもが逮捕され、女官の任を解かれて一度故郷に戻ろうかな、というヴェロニカ。
一方、「奇跡」を求め続けられるのに疲れて、ほとぼりが冷めるまでヨーロッパを放浪でもしようかな、というシャンドール。それなら一緒に旅しましょうか…という淡い想い。女としての色恋など忘れてきてしまったけれど、なんとなくときめく自分にとまどうヴェロニカ。不器用な彼女を微笑んで待ち、手を引くシャンドール。
惜しむらくは「好きですよ」という肝の告白セリフをあまりにソフトに言いすぎて、3列目どセンターの席だったわれわれにすら聞きづらかったこと。あれでラブシーンだと他の観客にはわかったんでしょうか…正塚先生はあいかわらず照れ屋だなあ…
ロケット、デュエットダンスや大階段パレードのフィナーレはこちらについていました。さすがに派手でいい感じ。ただし覚えて歌って帰れるようないい主題歌がなかったことはやはり残念。
ともあれ知人は華やかさ・あでやかさには圧倒されたようで、満足してもらえたようなので、まあ「こういう世界もある」と思ってもらえればいいかな…
宝塚歌劇は演目によって本当に当たり外れがあるので、また誘いたいと思います。
とりあえず来年の名古屋公演での『メランコリック・ジゴロ』の再演が、今から本当に本当に楽しみです!!
20世紀半ば、ヨーロッパのとある国。上流階級の人々の間で人気のあるクロースアップ・マジシャンのシャンドール(瀬奈じゅん)は、透視術を持っているとして世間で評判になっている。宮廷に仕える女官ヴェロニカ(彩乃かなみ)は彼を皇太子ボルディジャール(霧矢大夢)の元に連れて行き、皇太子妃の事故死の真相を透視してほしいと頼むが…作・演出/正塚晴彦、作曲・編曲/高橋城のミュージカル。併演はスピリチュアル・シンフォニーと銘打たれた、日本の伝統芸能や民族舞踊を織り込んだショー。作・演出・振付/謝珠栄、作曲・編曲/吉田優子。
宝塚初観劇、という知人ふたりを伴っての観劇だったので、受け入れてもらえるかヒヤヒヤものでした。
先にショーが来て、しかもヤマトタケルだのなんだのいう通し役があるショーだったので、バラエティには欠けるかとヒヤヒヤし…でも楽しんでもらえていたようでした。
城咲あいがやっぱり可愛くて、目を引くなあ。
ミュージカルは…いいんですけど…私はやっぱりトップコンビと男役二番手がかっつり組むメロドラマが好みなので、そこは不満。でもまあ、ライトなコメディには仕上がっているかと思いました。
ただし完全に役不足なのでは…あと、マジックというものはタネがあるのが当然なのに、だから「シャンドールの奇跡」にも仲間たちの事前調査とか仕掛けとかのタネがあるのが当然なのに、万能の超能力者としてもてはやされて困ってしまう…というとまどいやおかしみを描く、というのは、こういう大劇場には不向きな題材なんじゃないかと思いますよ。
明るくて爽やかで、でもなんとなく仲間に流されて「奇跡のマジシャン」を演じてしまってホントはちょっと困惑気味…というシャンドールのキャラはアサコのニンかなとは思います。
皇太子妃の侍女で、真相究明に必死なヴェロニカは、わざと声を低くしての役作りなのですが、ちょっと男役の声のようで、あだになっていると思いました。普通にいわゆる娘役声のままでも、芝居で、仕事に必死でプライベートを忘れてしまっているキャリアガール、みたいなものは出せると思うんだけどなあ。愛らしい彩乃かなみを期待していたので、ちょっと残念。
同僚女官で武芸にも秀で、ちょっと怖い女スパイといった趣すらあるシャーロットとエヴァは憧花ゆりのと夢咲ねね。これはよかった。キャラクター造形も良かったし、それを十分に演じていました。
皇太子ボルディジャールは、ちょっと浮世離れしたところのある王子さまってことでいいんですかね…本人は王制を廃止して民主国家にするべきだと思っているようなので(なので貴族暮らしの甘い汁を吸い続けたい悪党どもが皇太子妃に陰謀を仕掛けた、ということになっているのですが)いいんですが、こんなのが次の王様じゃこの国はちょっと心配…まあ笑いのためにやっているんでしょうし、キリヤンは達者なのでそれはやってのけているのですが、当然あんまりかっこよくはないのでちょっと残念。
シャンドールの友達で居候で発明家だけどもうからないのでシャンドールにたかっているジグモンド…なんてどーでもいい役が大空祐飛です。かわいそうすぎる…三番手くらいまでにはいい役が書けていないようでは宝塚歌劇の脚本としては失敗だと私は思うぞ。いくらひいきの正塚さんといえどこれは言っておきたいです。発明家らしさなんて全然ないし必要性もないし、だいたいなんなんだあの変な衣装は…
これで卒業のエリちゃんは同じくシャンドールの仲間の探偵ラースロで、これは出番が多くて儲け役だし、エリちゃんの黒髪が好きだったのでこれで見納めができて私は満足なのですが、要するにシャンドールのスタッフとしては彼くらいがいれば十分なわけで、あとは出雲綾とか遼河はるひとかがやっている役はみんな無駄なわけ。やはり作劇として問題があると思いました。
ただ、エンディングがいいのでなんとなく好印象にはなってしまった…
皇太子妃が無事戻り、悪人どもが逮捕され、女官の任を解かれて一度故郷に戻ろうかな、というヴェロニカ。
一方、「奇跡」を求め続けられるのに疲れて、ほとぼりが冷めるまでヨーロッパを放浪でもしようかな、というシャンドール。それなら一緒に旅しましょうか…という淡い想い。女としての色恋など忘れてきてしまったけれど、なんとなくときめく自分にとまどうヴェロニカ。不器用な彼女を微笑んで待ち、手を引くシャンドール。
惜しむらくは「好きですよ」という肝の告白セリフをあまりにソフトに言いすぎて、3列目どセンターの席だったわれわれにすら聞きづらかったこと。あれでラブシーンだと他の観客にはわかったんでしょうか…正塚先生はあいかわらず照れ屋だなあ…
ロケット、デュエットダンスや大階段パレードのフィナーレはこちらについていました。さすがに派手でいい感じ。ただし覚えて歌って帰れるようないい主題歌がなかったことはやはり残念。
ともあれ知人は華やかさ・あでやかさには圧倒されたようで、満足してもらえたようなので、まあ「こういう世界もある」と思ってもらえればいいかな…
宝塚歌劇は演目によって本当に当たり外れがあるので、また誘いたいと思います。
とりあえず来年の名古屋公演での『メランコリック・ジゴロ』の再演が、今から本当に本当に楽しみです!!
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