映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢(2018年)

2019-07-25 | 【し】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv67534/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 2年前からうつ病を患い、会社を退職して引きこもりがちな生活を送っているベルトラン(マチュー・アマルリック)。子供たちからは軽蔑され、義姉夫婦からも嫌味を言われる毎日をなんとかしたいと思っていたある日、地元の公営プールで「男子シンクロナイズド・スイミング」のメンバー募集を目にする。すぐさま惹きつけられたベルトランはチーム入りを決意。

 だが、そのメンバーは、妻と母親に捨てられた怒りっぽいロラン(ギョーム・カネ)、事業に失敗し自己嫌悪に陥るマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)、ミュージシャンになる夢を諦めきれないシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)、内気で女性経験のないティエリー(フィリップ・カトリーヌ)など皆、家庭や仕事、将来になにかしらの不安を抱えた悩めるミドルエイジ集団であった。

 元シンクロ選手のコーチ、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)のもと、様々なトラブルに見舞われながらもトレーニングに励むベルトランたち。そんな彼らは無謀にも、世界選手権で金メダルを目指すことになる……。

=====ここまで。

 スウェーデンに実在する男性のシンクロ(今はアーティスティックスイミング=AS)チームの話が元ネタとのこと。

 

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◆笑えない。

 男性シンクロ映画といえば、日本にはあの『ウォーターボーイズ』がある。TVでのオンエアをながら見したことしかないけど、なかなか面白かった。まあ、あれは高校生のフレッシュな男子たちの青春映画なんで、見た後には爽快感を味わえるのが良い。

 引き換え、本作は、見た後に爽快感は、、、正直言ってナイ。あるのは、多少の達成感とやるせなさ、、、だった、私の場合。

 人生の山あり谷ありを経験してメタボ体型になったオッサンたちが、そのたるんだ裸を晒してシンクロを“やり遂げた!”というドラマを見せられても、若い子たちによる同じストーリーのドラマとはゼンゼン違って、ひたすらイタいのよ。イタいってのは、普通はちょっと蔑むニュアンスがあるけれども、そうじゃなくて、本当に胸に痛みを感じるというか。

 ただでさえ疲れているのに、40年だか50年生きてきて初めて挑戦するシンクロでさらに疲弊するオッサンたち。これが若者たちなら、シンクロのトレーニングの厳しさを通して、現実に立ち向かう!みたいな希望が持てるオチになるけれども、オッサンたちの場合、そんな現実は骨身に沁みているわけで、今さら感も半端ない。

 そういう、“どうしようもなさ”を描きながら、一応コメディのようで、笑いも多少狙っているっぽいのだけど、私にはあんまし笑えなかった。多分、20年前に本作を見ていたら、笑えたかも知れない。メタボ体型で必死にシンクロやってるオッサンたちの姿は、それだけ見れば十分笑える材料だから。だけれど、世間の不条理や人生のままならなさをある程度味わった身としては、人生の悲哀に打ちひしがれながらも何とか自分を保って必死になっているオッサンたちを、どこか嘲笑しているみたいな感じを受けてしまって、素直にガハハと笑えなかった。

 偉そうにふんぞり返っているメタボなオッサンたちが、シンクロやらせてみたらお話にならなくて、みんなに笑われている、、、っていう図式なら素直に笑えたんだろうけどね。

 『フル・モンティ』と比べられているみたいだけど、『フル・モンティ』の方が突き抜けていて明るかったような気がするなぁ。もう大分忘れているから違うかもだけど。久しぶりに見てみようかな。今見ると、また受け止め方が違ってくるかも知れないし。

 でも、本作は本国フランスで大ヒットだったというから、きっと本作を見て励まされた人も多いということなんだろう。嘲笑するために映画を見に行く物好きもそうはいないだろうから。日本ではイマイチ当たっていないみたいだけれど。

 

◆男子シンクロって、、、

 本題とは関係ないんだけど、終盤、男子ASの世界選手権のシーンがある。ここで出てくる男子ASが実に素晴らしくて、これをほんの少しだったけれども見られたのが良かった。

 正直、元々私はシンクロという競技自体があんまし好きじゃない。女性たちがハイレグ水着で水面から脚をにょっきり出して広げたり閉じたりしている様は、あんまし見ていてステキ、、、と思えなかった。ヘンな競技だなぁ、、、と。ちょっと同じ女性として恥ずかしいというのもあったかな。何で水の中であんなことやってるわけ??みたいな不思議さもあったし。まあ、水中だからああいう動きが出来るんだけど。

 でも、今回、本作に出ていた男子のグループによるシンクロは、まさにスポーツって感じで、カッコ良かったんだよねぇ。女子のシンクロは、化粧もケバケバしく無理に作った笑顔を見せて、どこぞの国のマスゲームみたいな印象に近いというか、ちょっとスポーツとは言い難いと感じていた。けれど、男子のシンクロは、格好がそもそもシンプルで、動きも女子のシンクロより力強い。女子にはしなやかさみたいなものを感じるが、男子は全体に直線的な印象。速さも感じたし。すごくパワフルで、正直言って男子シンクロに対するイメージがガラッと変わったといっても良いくらい。

 この男子ASの世界選手権ってホントにあるのかしらね? ネットでちょっと調べてみたんだけど分からなかった。女子と男子のペアなんてのはあるらしいが、個人的には、男子のチームによるシンクロの方が断然見たいわ。すね毛だらけの脚が水面からにょきにょき出て、見るに耐えるのか??と思っていたけど、どーしてどーして。私の浅はかな思い込みでありました。

 マチュー・アマルリックは情けないオジサンを好演。まあ、世界選手権で優勝(!!)してちょっと自信を回復して良かったね、、、というエンディングだったけれど、現実はそんなに甘くないからね。彼のその後は、やっぱり心配だわ。

 オッサンたちをスパルタ指導するトレーナーのアマンダが、セクハラ&パワハラやり放題で凄かった。オッサンたちに「このブタ~!」とか「何やってんだおいぼれ~~!!」とかもっとヒドいことも一杯言っていた。あんまりヒドいからオッサンたちにプールに投げ込まれるんだが、足が不自由で車椅子に乗っているアマンダを投げ込むのもいかがなものか、、、と、この辺もあんまし笑えなかった要因かな。

 ……と、色々書いてきたけど、他愛ないオハナシで、別に見て不快になる映画ではありません。念のため。

 

 

 

 

同じスウェーデンの男性シンクロをモデルにしたイギリス映画も公開されるらしい。

 

 

 

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ブルース・ブラザース(1980年)

2019-07-20 | 【ふ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv7951/

 

以下、wikiよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 ジョリエット・ジェイクは強盗を働き、3年の刑期を終えてシカゴ郊外の刑務所(ジョリエット刑務所)を出所し(仮出所;判決は懲役5年)、弟のエルウッドが彼を迎えに来た。兄弟はかつて育ててくれたカトリック系の孤児院に出所の挨拶に行くが、そこで、孤児院が5,000ドルの固定資産税を払えないため立ち退きの瀬戸際にあることを知る。孤児院の危機を救うため援助を申し出る二人だが、犯罪で得た汚れた金は要らないと逆に女性院長に追い払われてしまう。

 何とか孤児院を救いたい二人はかつて孤児院で世話を焼いてくれたカーティスに相談すると、ジェイムズ・クリオウファス牧師の移動礼拝に出席することを勧められる。気乗りのしないジェイクをエルウッドがプロテスタント教会での礼拝に無理矢理連れてくると、クリオウファス牧師の説話を聞いていたジェイクは突然神の啓示を受ける。「汝 光を見たか?」「そうだ!バンドだ!」

 こうしてふたりは、昔のバンド仲間を探し出しあの手この手でバンドに引き入れ、音楽で金を稼いで孤児院を救う「神からの任務」に立ち上がったのだが、行く手にはイリノイやシカゴの警官、州兵、マッチョなカントリー・ミュージック・バンド、ネオナチ極右団体、そしてジェイクの命を付けねらう謎の女が待ち受ける。

 あらゆる伝手を使い、満席となった会場で“凱旋コンサート”を催し、舞台裏でレコード会社の契約を受けた二人はレコーディングの前払金として現金10,000ドルを受け取る。孤児院存続に十分な資金を得た二人はブルース・モービルに乗って追手を振り切りシカゴ市本庁舎に到着、クック郡を担当する窓口で期限前に納税を済ませるも、州警察や軍隊の総動員によって身柄を拘束され刑務所に収監される。

 刑務所の食堂施設でエルヴィス・プレスリーの“監獄ロック”を演奏するバンド一同とブルース兄弟。

=====ここまで。

 今回は、movie walkerのあらすじよりも、wikiの方がスッキリまとまっていたので。

 

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   午前十時の映画祭10にて鑑賞。今年で最後と言われれば、まあ、普段なら足を運びそうもない作品でも“見ておかないと損”みたいな気持ちになるのと、本作が大好きだという映画友の熱心なお誘いもあって、見に行って参りました。

 本作は時々TV放映していたのをながら見したことがあるくらいで、ハッキリ言ってただの“おバカ映画”くらいの印象しかなく、今回初めて最初から最後までちゃんと見た。……結果、食わず嫌いだったと反省。確かにおバカ映画ではあるけど、気の利いたコメディで、すごく面白かった!

 

◆黒いスーツに黒い帽子に黒いサングラス

 話の中身は、、、まぁ、どーってことない。本作の見どころは、やはり音楽(歌)と踊りのミュージカル的な部分と、ハチャメチャな展開に尽きる。

 とにかく、主演2人ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが、実に良い。出所した兄を、弟がパトカーの中古車で迎えに来るっていう出だしで、ぷぷっ、、、って感じ。

 そもそもあの出で立ちが効いている。全身黒ずくめで、風呂に入っているときも、あの黒い帽子と黒いサングラスは外さない(でも、ベルーシが最後の方でちょっとだけサングラスを外す場面があるんだけど、、、意外なパッチリお目々がカワイイ!)。おまけに2人は終始ほとんど笑わないのに、見ているこっちは何か笑っちゃう。ベルーシの小太り(失礼!)な体型な割に動きが俊敏(バック転繰り返すシーンはお見事!)で、弟役のダンとの凸凹コンビっぷりが面白さを演出しているのよね~。

 同じ笑いでも、無理して観客を笑わせようと必死なイタさが感じられるのは見ていて辛いが、本作は、そういうイタさがない。もう、あの2人がスクリーンに映っているだけで可笑しいくらい。ヘンなギャグとかもないし、受け狙いな過剰演技もなく、おバカに徹した洗練されたエンタメ・コメディに仕上がっているのが素晴らしい。1980年制作で、確かに車や街並みはそれなりに時代を感じるが、映画としてはゼンゼン今でもOK。

 謎の女に、バズーカぶっ放されて建物ごと生き埋めになったり、機関銃乱射されて撃たれたりするんだけど、この兄弟は死なない。平然と立ち上がって、次の行動へと移る。このリアリティのなさが逆に笑いの要素になってしまっているのがスゴい。

 まあ、あとは有名な終盤のカーチェイスシーン。一体何台のパトカーをムダにしたんだよ? てなくらいに、もの凄い数のパトカーに、兄弟たちが乗るオンボロ中古パトカーを追跡させ、ことごとくクラッシュしていくザマは、皮肉なんだろうね。他にも宗教やら政治やら警察やらを皮肉るシーンがあちこちに出て来て、本作を“気の利いたコメディ”と思った所以。やっぱり、コメディはこうでなくっちゃね。

 

◆スゴい出演陣に圧倒される。

 出演者たちがもの凄い豪華で、ビックリ。ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ等々、まあ、音楽が重要な映画だってことを差し引いても、これらのメンツを揃えているのはスゴい。実際、彼らは作中でその素晴らしい歌声を披露してくれていて、これだけでもスクリーンで見る価値があるってもの。

 ほかにも、ちょい役で、ツイッギー、チャカ・カーン、キャリー・フィッシャーなどがズラリ。ジョン・キャンディまで出ている!! いやぁ、、、こんな豪華キャストだったとは。

 バンドを無事に再結成させた後に、どこかの居酒屋で演奏するシーンで、ステージ前には金網が張ってあって「何だコレ、鳥カゴかよ!?」みたいなセリフを(確か)弟が吐き捨てるように言うんだが、金網のある理由がその後の演奏シーンで分かる。客たちは演奏に不満があると、容赦なくカップやら食べ物やら酒瓶をステージに向かって投げつけてくるのだ。もう、このシーンも、ほとんどお笑い。

 ラストの、シカゴの市庁舎でのシーンも、カーチェイス同様、過剰な警察官の数をあちこちに溢れさせて、警察を小バカにしている。やり過ぎなんだけど、でもイヤミじゃないというか、ただただおバカね、、、と笑えるのが良い。

 イタいコメディと、イタくないコメディの差って何なんだろうか? イタくないコメディだって、絶対に笑わせてやろうと思って作っているはず。まあ、見る人の感性にもよるから、私から見てイタくないコメディを、イタいと思う人もいるだろうし、逆もあるんだろうけれど、、、。でも、本作みたいに長く名画として多くの人に評価されているコメディは、やっぱりそれなりに洗練されたコメディと言っても良いのでは。

 久しぶりに良質なコメディ映画を見た気がします。 

 

 

 

 

 

ジョン・ベルーシはこの数年後に亡くなっている、、、。

 

 

 

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新聞記者(2019年)

2019-07-17 | 【し】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv66869/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 日本人の父と韓国人の母の間に生まれ、アメリカで育った吉岡(シム・ウンギョン)は、ある思いを秘めて東都新聞の社会部記者として働いている。

 そんなある日、彼女のもとに大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。その真相を究明するため、早速、吉岡は調査を開始。

 一方、内閣情報調査室官僚・杉原(松坂桃李)は、「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、現政権に不都合なニュースをコントロールする現在の任務に葛藤していた。愛する妻(本田翼)の出産が迫るなか、杉原は尊敬する昔の上司・神崎(高橋和也)と久々に再会するが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう……。

 真実に迫ろうともがく女性記者と、“闇”の存在に気付き、選択を迫られる若手エリート官僚。そんなふたりの人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる……。

=====ここまで。

 このご時世で、この内容。そら制作会社が“干される”からって腰が引けるのも無理からぬ。2社だけだったことの方がむしろスゴイ。

 

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  東京新聞記者である望月衣塑子氏の原案。望月衣塑子氏といえば、毎日、官邸の記者会見で菅さんにどれほど邪険にされようが質問して食い下がっている方として、ネットではよくお見かけする。個人的に、彼女について思うところはあるが、しかし、決してめげずに引かないその姿勢は、何であれ尊敬する。ちなみに原案の書籍は未読。

 

◆恥知らずはどちら??

 どう見たって、アベ政権下で起きたあれこれがモチーフになっている“不祥事”“スキャンダル”がいくつもエピソードとして描かれている。その基となった出来事がリアルに思い出されて、正直言ってスクリーンを見ているのが気恥ずかしくなるくらい。よくまあ、これだけ序盤にエピソードを詰め込んだものだ。ここまでやれば、天晴れである。

 とにかく“ナイチョウ”と呼ばれる内閣情報調査室のやることのおぞましさといったら半端じゃない。徹底的に“ソーリ”の危険因子を叩き潰す。

 もし、現実世界で、もみ消しやら偽造やらを目の当たりにしていなければ、「いくら何でもここまでやらないでしょ」と思ったと思うが、現実が現実だから、こんくらいはやっとるね、確実に、、、、としか思えなかった。というか、実際はもっとグロテスクだろうと思った。

 思えば、アベより前の総理たちは、本音を言えばもっとエグいことをやりたかったけれども、さすがに国民の目のある中でそこまで露骨なことをやるのは憚られる、、、という、最低限のプライドがあり、また一種の“恥を知る”文化が辛うじて生きていたと思う。しかし、プライドのないアベはやっちまうのだ。2度目に総理に返り咲いてまだ日が浅い頃、NHKに百田某とか長谷川三千子とかを送り込んだときには、正直なところ、よくもまぁ恥知らずな、、、と開いた口が塞がらなかった。そんなザマでよく人に「恥を知れ」などと言えたもんである。

 ……てな気の狂ったリアルをウンザリするほど見せつけられている側からすれば、こんなナイチョウの描写は、むしろ上っ面なんじゃないのか、とさえ思えてくる。

 とはいえ、もちろん本作は十分頑張っていると思う。欲を言えば、後半、大学新設が実は軍事目的だった、、、っていう設定が、ちょっとドラマチックすぎるかなってこと。現実はもっと卑小でセコい話だったわけで、それが総理の人間性そのまんまなわけだから、本作でも、そんな壮大な裏目的なんぞ設定しないで、思いっきりみみっちくてセコい話に集約させた方が、ブラックになったんじゃないかと感じた次第。

 

◆またかよ、虎馬。

 ただねぇ、、、まぁ、この辺が今の邦画の限界かな、と感じたのだけれど、女性記者・吉岡がリスクを冒して真相究明に乗り出す動機が、“同業者だった父の無念の死”ってのがね……。個人的にウェットで嫌だなと。

 例えば、オスカーをゲットした『スポットライト 世紀のスクープ』にしても、昨年公開された『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』にしても、スクープを追うのは単純に記者としての使命が原動力になっていた。ジャーナリストとしての在り方、それが全てだったわけで、そうであった欲しかった、本作も。

 日本では刑事モノとかにも“トラウマ”を持った主人公っていう設定はよくあるが、安っぽいからもういい加減やめたら? と思う。そういう情緒に訴えないとドラマにならないと思い込んでるんじゃないのか? と疑いたくなる。

 それは、松坂桃李演じる官僚・杉原が不正を白日の下にさらす決断を下す動機にも言えることで、杉原は、生まれたばかりの我が子を抱いて涙を見せ、その後に、吉岡に対して協力を申し出るという展開になっている。しかも、「いざとなったら、私の実名を出してください」などと言っている。第一子が生まれたばかりの若い官僚に、そこまでの決断が、果たして本当に下せるか?

 私の知り合いにも官僚さんが何人かいるが、彼らはもっと老獪というか、ドライだと感じる。自らを危険にさらすことは、よほどのことでもない限りしない人種じゃないかなぁ。その代わり、もう少し屈折した手段で自らの正義感を納得させるように動くような気がする(飽くまで、これは私の個人的な印象)。

 実際、映画のストーリーとしても、そういう展開にした方がよりスリリングだったのではないか。実名を出す覚悟をしちゃったら、ぶっちゃけ、後は怖いモンなしに近い。吉岡にリークしたのが杉原だと、バレバレってのもどうなのか、、、。

 あと、これもイヤだなぁ、と思ったのが、杉原の妻の人物造形。完全に夫を支える“だけ”の物わかりよし子で、古風すぎる。こういう人もいるだろうけど、映画で今ドキこれかい、、、?って感じで、大いに鼻白んだ。

 まぁ、2時間弱の尺で描けることは限られるので致し方ない部分もあるとは思うが、浪花節な動機付けだけは、どうにも嫌悪感を拭えなかった。

  

◆その他もろもろ

 「この国の民主主義は形だけで良いんだ」……とは、杉原の上司のセリフだけど、この国は今、形だけでも民主主義を保っているってこと?

 まあしかし、国のトップがセコくてバカだという現実は、国民がそれを許容しているからこそなのであり、その国の政治は民度が反映されているのだ、哀しいことに。権力の座が目的化している人たちに、理想論や正論を投げつけたところで、響くはずはないし、響くどころか届きもしないだろう。

 こういう映画が出て来たことは、そんな状況にあって一筋の光明である。一億総白痴化計画でも進行しているかのごときラインナップの邦画界にあって、こういうエンタメ要素を維持しながら観客に何らか刺激を与える作品は歓迎したい。

 そして、このご時世で、そんな作品に出演した松坂桃李くんは偉い!! 演技もなかなか素晴らしかった。朝ドラでヒロインの相手役していた頃は、線の細いアイドル役者かと思っていたがどーしてどーして。なかなかホネのある、考えて行動している賢い役者さんではないか。こういう、カッコイイ上に、物議を醸しそうな作品にも果敢に挑戦する俳優ってのは、応援したくなる。

 あと、『太陽の蓋』にも出ていた北村有起哉は、本作でもイイ味出していた。杉原の上司を演じていた田中哲司、自殺した外務官僚の妻を演じた西田尚美などなど、芸達者な人々が脇を固めている。

 いろいろ文句を書いてきたけど、それは、本作への賞賛が前提でのこと。その志の高さに、プラス1個献上いたします。

 

 

 

 

もう形も壊れているのでは、この国の民主主義。

 

 

 

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ゴールデン・リバー(2018年)

2019-07-14 | 【こ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv67479/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 1851年、ゴールドラッシュに沸くアメリカ、オレゴンのとある町。普通の平穏な暮らしに憧れる兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と裏社会でのし上がりたい弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)は、最強と呼ばれる凄腕の殺し屋“シスターズ兄弟”だった。

 あるとき、彼らの雇い主である提督から、連絡係モリス(ジェイク・ギレンホール)が捜し出すウォーム(リズ・アーメッド)という男を始末するよう依頼される。

 兄弟がサンフランシスコに南下しているころ、モリスは数キロ先のマートル・クリークでウォームを見つける。2日後、次の町ウルフ・クリークで、モリスはウォームから声をかけられる。うまい具合に話が進み、モリスはウォームと一緒にジャクソンビルへ砂金を採りに行くことになる。ウォームはモリスに、黄金を見分ける化学式を発見したと打ち明ける。だがジャクソンビルに到着すると、モリスの正体がばれてしまう。

 雇い主の目的は化学式を奪うことだと知ったモリスは、翌朝、ウォームと連れ立って逃げ出す。道中、ウォームは手に入れた黄金で理想の社会を創る計画を語る。その話に心酔したモリスは、父の遺産を資金に、その夢に加わることにする。メイフィールドまで来た兄弟は、その町に自分の名前をつけた権力者がウォームの化学式を奪おうと部下を放ったと聞き、モリスの裏切りに気づく。

 サンフランシスコで兄弟は二人の居場所を突き止めるが、二人に捕えられる。しかしメイフィールドの部下も現れ、兄弟の力を借りて彼らを撃退する。ウォームからの提案で、4人は手を組んで黄金を採ることに。だが、4人の思惑が交錯し……。

=====ここまで。

 リンクのあらすじ、兄と弟の名前が入れ違ってますけど、、、(コピペ内では直しちゃってありますが。青字のとこ)。人物名間違えるのはちょっとマズイだろ。

 

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 監督が『ディーパンの闘い』ジャック・オーディアールで、ジェイク(特別好きなわけじゃないけど)が出ているというので、一応見ておくべき? みたいな感じで見に行って参りました。

 

◆凸凹兄弟が行く、、、

 話が動き出すのが中盤からなので、前半はちょっと退屈だった。でも、モリスとウォームが手を組む辺りから面白くなる。

 ウォームが見付けたというのは「黄金を見分ける“予言者の薬”を作る化学式」なんだけど、まあ、錬金術だよね。人類の見果てぬ夢。みんなチャレンジしては敗れ去っていったのだから、あんな薬、実際あったらタイヘンだ。当然、容赦ない殺し合いになる。

 本作は、この殺し屋兄弟の凄腕ぶりと、裏腹なトボケた人物像を描くことに終始した映画、と言っちゃっても良いだろう。デコとボコの兄弟が繰り広げる珍道中は、ハラハラドキドキで面白いけど、正直言って、あまり深みもないし、見終わって余韻が残るという感じでもない。パンフを買う気にもならなかった。

 『ディーパンの闘い』よりは、思いっきりエンタメ作品になっていて、分かりやすい。人物描写もちゃんとされているし、これといって文句をつける気にもならないけど、何かを語りたくなる映画ではなかった、私には。

 

◆豪華出演陣なんだけど、、、

 ジョン・C・ライリーは、本当に良い役者だなぁ、、、と改めて思った。強面、、、と言って良いのか、でも一見殺し屋って感じにも見えなくて、弟のチャーリーとのやりとり見ていると、ホント、人のイイおっさんでしかないのに、銃を手にした途端、ちゃんと人殺しの顔に見える。目つきが変わるというか。

 野宿していて、口開けて寝ている間に、タランチュラ(だと思う)が口の中に入っちゃうから、え゛、、、どーすんのあれ??と思って見ていたら、なんとそのまま口を閉じちゃって、むにゃむにゃ、、、多分、噛んで飲み込んじゃったんだろうけど、そのせいで翌朝起きたら顔はパンパンに腫れているし、気持ち悪くなっているしで、可哀想なんだけど、かなり可笑しいシーンだった。

 チャーリーはいかにも弟ってキャラで、お調子者なんだが、兄さんがタランチュラ食べちゃって苦しんでいるときはちゃんと看病したりと、まあ憎めないキャラになっている。ホアキン・フェニックスって、実はあんまり出演作を見ていない気がするけど、チャーリー役ははまっていた感じだった。

 ジェイクは、意外にもあんまし見どころのないキャラで、ちょっともったいない。ジェイクには多面的な役が合うと思うんだけど、モリスは割と良いヤツで、裏がないので、ジェイクの持ち味発揮って感じじゃなかったのが残念。

 リズ・アーメッドとジェイクといえば、『ナイトクローラー』だけど、あれからリズ・アーメッドもかなり出世したのぉ。顔つきもちょっと変わったような。まぁ、ウォームの役もイマイチ捉えどころのない感じで、その辺を巧く演じていたと思う。

 ……というわけで、主要4役者は皆良かったし、そこそこ面白かったので、見て損はないと思うけど、私的にはDVDで十分だったかな、という感じでした。

 

 

 

 

“予言者の薬”よりも“金のなる木”の方が欲しいな~♪

 

 

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COLD WAR あの歌、2つの心(2018年)

2019-07-11 | 【こ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv67161/

 

 冷戦下のポーランド。民族音楽舞踊団「マズレク」に所属するズーラは、ピアニストのヴィクトルと瞬時に恋に落ちる。

 愛し合う2人だが、舞踊団にソ連が介入してきて、本意ではない音楽を強いられ、ヴィクトルは自由を求めるようになる。そんな中で、東ベルリンに演奏旅行で訪れた舞踊団。ヴィクトルは、公演後に西側へ逃げようとズーラに言う。ズーラも西への脱出を約束する。……しかし、約束の時間にズーラは来なかった。仕方なく、ヴィクトルは1人で西へと向かう。

 その後、パリやユーゴで再会する2人だが、2人の時間を共有することは出来ぬまま。

 そして、東ベルリンで別れて5年後のパリ。ズーラはイタリア人の男と、ポーランドから合法的に出国するために結婚し、パリにいるヴィクトルの下へやってくる。ようやく共に時間を過ごせるようになった2人だが、共に過ごす時間が長くなるにつれ、2人の間には小さな亀裂が生じ始め、それはある日突然、ズーラのポーランドへの帰国という決裂となる。

 ズーラを失って彼女の存在の重みを思い知るヴィクトルは、彼女を追ってポーランドへと戻るが、国家を裏切った罪で投獄される。そこへ再びズーラが面会にやって来るのだが、、、。

 

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 ここ2~3年ポーランドにハマっている身としては、あくまでも個人的にだけれど、最近では公開前のワクワク度が一番高かったんじゃないだろうか、、、。とにかく、1か月前から公開を指折り数えていたし、見る前には本作のためのレクチャーまで聞きに行ってしまったくらい。でも、聞いておいて良かった! というのも、本作は、その舞台となった時代背景や、文化的な背景を知っておいた方が断然楽しめるから。知らずに見るのはもったいない。これから本作を見る予定のある方は、是非予習をなさってからご覧あれ。

 ……と言っても、予習というのは簡単で、少し早めに劇場へ行き、パンフを買ってp.09~13までを本作上映開始までに読めば良いのです。その原稿を執筆されたのが、レクチャーで講師をしてくださったポーランド広報文化センターの久山宏一氏で、ほぼレクチャーで配られたレジュメの内容と被っていますので。

 あと、できれば同監督の『イーダ』を見ておくと、さらに本作に気持ち的に入りやすいかも。

 

◆これぞ“スルメ映画”

 楽しみにしている映画の前評判は、高ければ高いほど怖ろしい。見終わった後に落胆する可能性が高くなるから。そんな作品はいっぱいある。逆に、見終わった後に期待を上回る感慨を覚える作品は、まあ、数少ない。少ないからこそ、稀少であり、自分にとって価値ある映画として胸に刻まれるのだ。

 ……そして、本作もそんな数少ない作品の一つになりそうだ。「なった」と断言しないのは、これは、何度も見て味わうべき“スルメ映画”だから。見てみれば、これがスルメ映画だと分かる。

 実際、私は今んとこ本作を劇場で2回見た。感動して憑かれたように2度目を見に行ったのではなく、いろいろともう一度見て確かめたいことがあったから。そして、2度目に見て1度目には感じなかった“痛み”と“哀しみ”がじんわり胸に来た。

 もう一度見て確かめたいと思ったというのは、本作は、非常に寡黙な映画だからだ。文字通りセリフが少ないということもあるが、とにかく省略が多く、見る者に想像力を要求される。シーンとシーンの隙間を想像力で埋める必要がある。それを見ている間にしていると、ちょっとした人物の動きや仕草を見逃してしまったり、見ていても見えていなかったりするからだ。だから、1度目を見終わって、あれ、、、あのシーンは何だったんだろう??みたいな箇所が結構出てくるのだ。

 ……想像力というと語弊があるかしらん、、、。感性の方が近いかな。感性で隙間を埋めていかないと、主人公の女性・ズーラの行動が支離滅裂に見えてしまうかも。そうすると本作の良さがかき消されてしまう。

 1度目は補いきれなかったものを、2度目で何とか補えた。補いきれなかったのに1度目を見て“つまらん映画”と思わなかったのが、きっとこの映画の持つ魅力なんだと思う。それは、本作の映像の美しさと、音楽、そして、ズーラの美しさと歌。あと、個人的なポーランド愛と、『イーダ』の魅力もあったから。

 1度目を見終わって“分かんないとこもあるけど、惹かれる”と感じれば、2度目を見たくなるでしょ? 2度目を見て腑に落ち、それがグッとくれば、また見たくなるでしょ? 本作はだから、私にとってスルメ映画なのです。そして、『イーダ』もそういう映画だったんだよねぇ。

 

◆好きなの、どーしようもなく。

 ネット上での本作の感想をチラッと見たけど、ズーラのことを「小悪魔」とか「男を振り回す女」とか書いてあるのがあったけれど、私はそれは違うと思うのよね。

 ズーラとヴィクトルは、アッと言う間に恋に落ちるし、くっついたり離れたりがブツ切りに描かれているので、ただ発情しているだけのカップルで、ズーラの言動が“気まぐれ”に見えがちだけど、そうじゃない。この2人は、理屈じゃなくお互いにひたすら好きなのよ。

 何故か分からないけど、どうにもこうにも好きでしょうがない人、、、、っているでしょ? てか、いても不思議じゃないでしょ? あんなんのどこがええの??と周りに言われて、自分でもそう思うけど、でも好き!! ってこと、あるでしょ? あってもいいでしょ? ズーラとヴィクトルはそれなのよ。だから、決定的な別れに見えても続きが起こる。

 世間ではそれを“腐れ縁”とも言うけど、本作ではもう“運命”みたいな描かれ方をしている。他の相手と一緒に暮らしたり結婚したりしても、そんなことは些末なこと。お互いが彼・彼女でなければダメだと分かっている。……そいういう関係って、確かにあるんじゃないかな、、、と思う。

 だから、私はズーラのことを、小悪魔だとも、男を振り回す女だとも思わない。ズーラはただただヴィクトルが好きなのよ。じゃぁ何でヴィクトルと一緒に西へ行かなかったのか? ……なんてのは愚問です。強いて理由を挙げれば、恐らくは祖国を捨てられなかったから。けれども、ヴィクトルと離れること=別れではないのよ、彼らにとっては。離れているだけ。常識や理屈でぶった切ることなど出来ない感情、だから厄介なのよ。

 物理的に距離がどれだけあろうが、法的に他の人の配偶者になろうが、2人の気持ちは変わらない。それを縦糸にし、音楽を横糸にして、本作は編まれているのです。

 

◆2つの心、4つの瞳。

 本作は、ヴィクトルとイレーナという女性が土着の音楽を収集しているシーンから始まる。この土着の音楽=ポーランドの民族音楽=マズルカが、本作では重要なファクターである。舞踊団の名称「マズレク」は、もちろんマズルカのこと。ショパンが数多く作曲したマズルカはこれにインスパイアされたもの。

 実際、ヴィクトルは途中でショパンを弾いている。マズルカじゃないけど。ポーランド音楽とショパンは、まあ、切っても切り離せないわね。ましてやヴィクトルはピアニストなんだし。

 で、ズーラが披露する民族音楽の歌で、本作のテーマ曲ともいえる「2つの心、4つの瞳」が実に実に印象的。マズレクで民族音楽として歌うとき、パリのジャズバー“エクリプス”でポーランド語で歌うとき、パリでアルバム制作のためにフランス語で歌うとき、どれも同じメロディなのにゼンゼン違う曲に聞こえる。フランス語で歌う「2つの心~」は、ズーラにとってはもう別の曲になってしまっていることが、後の彼女の行動から分かるシーンがとても哀しい。ヴィクトルとも不協和音マックスになる。

 ちょっと??と思ったのはエンディングで流れるバッハ。しかもグールドの曰く付きの録音盤。何でバッハなのか、、、分からない。ある意味、最後の最後で監督に謎かけされた気分。パンフで映画評論家の河原晶子氏という方は「ヴィクトルとズーラの魂を浄化するように深い余韻を残している」と書いているが、そうなのか??

 これには、本作のラストシーンをどう解釈するかが関わってくる。ラストは十字路が舞台となるが、『イーダ』でも重要なシーンで十字路が使われていた。この十字路はかなりこの監督にとって重要なファクターのようで、まあ、普通に考えれば宗教的な意味合いが大きいと思われる。実際、ヴィクトルとズーラはその前に廃墟となった教会で2人だけの結婚式を挙げるわけだが、、、。このラストシーンを、本作を見た者たちはどう解釈すれば良いのか。

 普通に考えて、この2人は、、、、と思われるけれど、それを書いちゃうとアレなので、ここではやめておきます。でもまあ、……それしかないよね、この2人には。

 ちなみに、最後に「両親に捧ぐ」という献辞が出ますが、このズーラとヴィクトルの物語は、監督の両親がモデルと言われています。実際に、亡くなったのも(詳細は語られていないものの)同じ年だったとのこと。んでもって、監督はかなりイケメン(というかシュッとしたオジサン)です。

 

 

 

 

 

 

オヨヨ~ィ♪

 

 

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永遠のマリア・カラス(2002年)

2019-07-07 | 【え】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv32511/

 

 絶頂期のように歌えなくなったディーバ、マリア・カラス(ファニー・アルダン)は、最愛の男で海運王のオナシスにも捨てられ、失意の中でパリの高級マンションの自宅に引きこもりの日々を送っていた。そこへ、長年の友人であるプロデューサー・ラリー(ジェレミー・アイアンズ)が企画を持ち込んでくる。それは、歌声はカラス全盛時のものを映像に被せ……つまり口パク……カラス主演でオペラ「カルメン」の映画を撮る、というもの。

 最初は鼻であしらうカラスだったが、ラリーの熱心な口説きにほだされ、次第にヤル気になる。久しぶりの現場復帰は、彼女に生きる力を甦らせる。そんな生き生きとしたカラスを見て、ラリーも幸せを感じるのであった。

 しかし、全てを撮影し終え、完成試写会も行った後になって、カラスは公開中止をラリーに求めるのであった。

 

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◆ゼッフィレッリ亡くなる。

 もう随分な高齢だから、いつ訃報を聞いてもおかしくないとここ数年は覚悟していたけれども、実際にその日がやって来ると、やっぱり寂しいし悲しかった。

 私が映画を見るようになったのは、ゼッフィレッリのおかげといっても良いくらい。映画を見て、本当の意味で“感動”を覚えるという体験をしたのは、ゼッフィレッリの『ロミオとジュリエット』が最初だったから。まだ、10代だった私にとって、あの豪華絢爛たるセットと衣裳、哀愁を帯びた音楽、そして美しい主演2人が繰り広げる恋愛メロドラマの世界は、まさしく“別世界”だった。ビデオによるブラウン管での視聴だったけど、約2時間という短い間とはいえ、私は図らずも“異空間”に連れて行かれたのだ。あのときの体験がなければ、映画を見ることの楽しみなど分からないままだったかも知れない。

 だから、私にとって、ゼッフィレッリは特別な人なのよ、、、。一度も会ったこともないのに、特別なの。直接会えなくても、この世のどこかにいるのだと思えるのと、もうこの世のどこにもいないのだと思い知らされるのでは、やっぱり心の持ちようがゼンゼン違う。

 そんな寂しさを紛らわすべく、心の小さな穴を埋めるべく、そして、ささやかな追悼の思いを込めて、彼の作品を改めて見てみた次第。

 

◆ゼッフィレッリのカラスへの愛

 本作は、もちろん公開時に劇場で見ているが、その後、まったく再見していなかった。BSでオンエアしているのをチラ見したことはあったけれど、本当にチラ見。今回、ゼッフィレッリ作品の再見に当たって本作を選んだのは、もう一度ちゃんと見たいと思いながら、何となく見ないままになっていたから。

 で、オープニングでいきなり「こんなだったっけ、、、?」とビックリ。いきなりロック全開で、カラスが主人公の映画と思えぬ幕開けなのだ。そして、ロンゲを後ろに結わえたジェレミー・アイアンズの登場。え゛ー、こんな髪型してたっけか?? こういう髪型、正直言って彼は似合わないね。彼の演じたラリーは、ゼッフィレッリの投影された役柄であることは誰の目にも明らか。作中でもラリーはゲイだしね。

 とにかく、ラリーは、扱いが難しいカラスのあしらいが非常に上手い。きっと、実際にゼッフィレッリとカラスの関係も似た感じだったのだろう。ゼッフィレッリの自伝、タイトルもまんまの『ゼッフィレッリ自伝』 にも、カラスのことはかなりのボリュームで描写があったように記憶している。

 ちなみに、この自伝は結構面白いし、読み応えもある。いささか総花的ではあるけれど、映画はもちろん、オペラ演出でのあれこれ、もちろん彼自身の出自や生死を彷徨う事故等々、もりだくさん。私は、この本を10年くらい前にamazonで買ったんだけど、絶版になったのか今やとんでもない値段がついていてビックリ! まあでも、面白いから未読の方には図書館ででも借りて、是非読んでみていただきたいわ~。

 ……ともかく、カラスは、ラリーを信頼して口パクでの復活を心に決める。この口パク映画の撮影シーンがまた豪華で目の保養になる。この辺は、さすがゼッフィレッリ。彼の演出した「カルメン」は、クライバー指揮による舞台でのライブ映像のDVDがあるが、この絢爛豪華な舞台を彷彿させるシーンがあちこちにあり、見ているだけで楽しい。

 面白いのは、ラリーと若い恋人マイケルの描写。マイケルは画家の卵で、才能もあるらしい。カラスをマイケルのアトリエに連れて行って、そこでカラスは彼の絵にインスパイアされたりもする。ベッドで2人が全裸で横たわっているシーンとかもあり、こういう描写を入れたゼッフィレッリの心理を深読みしたくなる。

 カラスの孤独や苦しみの描写はあまりなく、前半にちょっとあるくらいだが、それでもファニー・アルダンの素晴らしい演技で胸打たれる。歌うことが全ての人にとって、歌えなくなることがどれほどのものなのかは、もう想像を絶する。だから、口パクでも復帰してエネルギッシュに撮影に取り組むファニー・アルダン演ずるカラスは、見ている者にとってホッとさせられる。これは、きっと、ゼッフィレッリ自身がこの映画を撮ることで、カラスを失ったことによる心の傷を癒やしているのだろうと感じる。

 ファニー・アルダンの衣裳がまた素敵。カラス自身が実際にシャネルを愛用していたそうだが、本作でもカラスの衣裳はシャネルが提供しているとのこと。本当に、どれも実にファニー・アルダンに似合っていて美しい。こういうところにもゼッフィレッリのカラス愛を感じるわ。

 終盤はいささか呆気なく、まあ、その辺が物足りなさを感じる人もいるみたいだけれども、私はゼッフィレッリ映画は酷評しない主義なので、これはこれで良いと思う。実際、カラスの死には謎も多く、ゼッフィレッリ自身は殺されたと主張しているくらいだから、この後のことは余韻持たせた描写にしたかったのだろう。そうでないと、あまりにもバッドエンドになってしまうもんね。

 

◆再びゼッフィレッリについて。

 それにしても、本当にゼッフィレッリは映画でもオペラでも数多の超一流アーティストたちと仕事をしていて、ただただ溜息ものである。クライバー&ゼッフィレッリの舞台なんて、この目でライブを見られたら死んでもええわ、、、と思っちゃう。ああ、この舞台を見られた人たちがただただ羨ましい。DVDで見たって、、、ねぇ。まあ、ライブじゃクライバーは後ろ姿(つーか頭の上の方だけ)しか拝めないから、彼の麗しい指揮っぷりが前から映っているのを見られるのはDVDならでは、とも言えるか。クライバーの信者としては、やっぱりそのお姿を見たいものだから。この頃のクライバーは、ホントにセクシーなのよねぇ、、、。

 前出の自伝には、きら星のごとく世界中のスターの名前が登場する。一番印象に残っているのは、エリザベス・テイラーとリチャード・バートン夫妻のエピソード。ゼッフィレッリは、この夫妻による「バージニア・ウルフなんかこわくない」の舞台版の演出を手掛けたのだが、そのときのエピソードが凄まじいのだ。もう、このお話のまんまのスポイルカップルだったらしい。たしか、ゼッフィレッリも見ていてウンザリしたみたいなことが書いてあったような、、、。

 ちなみに、ゼッフィレッリが監督したこの夫妻による『じゃじゃ馬ならし』でも、まさにそう。こんなんで何で結婚しようと思ったのか、謎すぎる。ま、私はこの夫妻はどっちもあんまし好きじゃないから、さもありなん、という感じだが。

 本作が、ゼッフィレッリにとって映画の遺作ということになったようだけど、私が一番好きなゼッフィレッリ映画は、もう断然『ムッソリーニとお茶を』だ。ロミジュリも素晴らしいが、ゼッフィレッリの自伝的な映画でもある『ムッソリーニとお茶を』は、何度見ても感動する。これだけの豪華出演陣を差配できるのもゼッフィレッリだからだろう。

 まあ、異論のある方も多いだろうけれど、ゼッフィレッリは私にとって特別な映画監督なのです。カラスが彼にとって永遠だったように。

 

 

 

 

 

永遠のフランコ・ゼッフィレッリ

 

 

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瀬戸内美術館めぐりの旅 ④

2019-07-05 | 旅行記(国内)

につづき

《3日目》

◆大原美術館

 9時開館に合わせて、8:45バスに集合。5分ほどで大原美術館近くの駐車場に着いて、そこからは歩き。

 

大原美術館

 最終日は土曜日ということもあってか、入口にはかなりの人。でもまあ、そうは言っても大したことはないが。……ここでチケットをもらって中へと進む。ここからは自由行動。

 大塚国際美術館とは違って、こちらは中は撮影できない、当たり前だけど。25年前に来たのだけど、覚えているのはエル・グレコの受胎告知くらい。でもまあ、受胎告知は、おぉ、そうそう、これこれ、、、と思って感慨深く見た。

 本館の印象派の絵も良かったが、割と面白かったのは工芸館・東洋館。25年前はここは見なかったのか?と思うくらい、記憶になかったけれど、仏像や陶器がかなりの数のコレクションなのだが、私が一番見入ってしまったのは、芹沢銈介のデザインものの数々。こういうデザイナーの頭の中、一体どうなってんだろ、、、といつも思う。

 棟方志功の作品も一杯あったけど、こちらはイマイチそそられなかった。

 

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◆美観地区散策

 美術館は2時間くらいで後にして、12:45の集合時間まで、倉敷美観地区をぷらぷら歩くことに。

 とはいっても、少々疲れたし、お腹も減っていたので、本当は美術館近くにあるらしい古民家風の和食屋さんを狙っていたのだが、時間もあんまりなさそうだし、喉も渇いていたので、ふと目に付いた蕎麦屋へ。

 ……が、これがイマイチ(敢えてお店の紹介は割愛)。まあ、ゆっくりできて喉の渇きを癒やせたので良しとすることに。

 その後、お土産屋さんなどを何軒か物色し、再びぷらぷら。……と、ちょっと面白いもの発見。

いがらしゆみこ美術館

 さすがに、マンガ『キャンディ♥キャンディ』のイラストこそ出していなかったが、大音量でかかっていた音楽は、アニメ「キャンディ♥キャンディ」のテーマソング。……それ、著作権、大丈夫なのか? ホント、この人も懲りない御仁だ。お客さん、ほとんど入っている様子はなく、外観もショボいそのもの。これじゃ、キャンディが、いやテリィ泣くぞ、、、。

 

加計美術館

 お騒がせ加計学園グループの美術館らしい。獣医学部騒動で、すっかり愛媛県のイメージがついているけど、そういや岡山理大が近くにあるもんね。

 どーでもよいけど、血税を掠め取ってこういうものを観光地に造る神経が分からない。いかにも、鉄面皮経営者のやりそうなことだ。1日の入館者はどれくらいいらっしゃるのかしらね。

  ……それにしても、3時間45分の自由時間って、結構あっと言う間。バスに戻る時間が刻々と近付いてくるので、途中で目にして、最後に食べようと思っていた“メロンソフトクリーム”をゲット。

 ほどよいメロンの香りで、甘さも控えめで意外にさっばり。まあ、そうは言っても、やっぱり後で水を飲みましたが。

 で、時計を見たら、もう35分!! 急いでバスに戻って、これにて本ツアー全日程終了。

 

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◆今回の旅でゲットしてきたものたち

鳴門公園脇にあったお土産屋さんで

 右の「さくさく味付けわかめ」は、その名のとおり鳴門の有名なわかめを塩で味付けして干したもの。ヘルシーなスナック菓子ってとこかしらん。おつまみにちょうど良いかな。かなり美味い!

 「すだちの香り」は入浴剤。まあ、ほのかにすだちの香りがいたしました。「すだちマーマレード」は、物珍しさで買ってみたけど、かなり美味しかった。緑色のマーマレード??と怖々パンに塗ってみたら、、、、こんな感じ。

 マーマレードと銘打っているけど、寒天がつなぎになっているみたいで、厳密にいうとマーマレードとはちょっと違うかも。でも、そんなことは気にしない私は、かなり気に入りました、これ。通販でも買えるみたいなので、また買っちゃうと思う。ちなみに、マーマレードは550円、、、高いね、ちょっと。

 

 大塚国際美術館で

 右のは、大塚国際美術館オリジナルで、1日限定50個販売の「叫び」の和三盆。ちゃんと叫びの顔の形しています。味は、普通の和三盆で美味しい。左のは、叫びのボールペン(色は黒)。ちなみに、ここの美術館に「叫び」は1枚しかなかったな、、、。どうせなら、全部複製して並べたら面白いのに。

 

 屋島寺そばの売店で

 あの辺りは、オリーブをたくさん栽培しているらしく、オリーブオイルが一杯並んでいた。これは、その自慢のオリーブオイルを使ったハンドクリーム。ガイドの面白いおじさんが、「これでアトピーも治るよ~!」などと誇大宣伝していて、でも、おじさんのお姉さんという方が80歳過ぎなのにお肌ツヤツヤで皺なんかゼンゼンない白肌で、「アタシ、お手入れはこのオリーブオイルだけよ!」などと言っていて、それを見たら、なるほど、確かにオリーブオイル良さそうだな、、、、と、まったくもってカモになっている私。

 でも、美容オリーブオイルではなく、こちらのハンドクリームにしました。おまけしてくれて1,500円。もう何年も手に湿疹が出来ては治り、、、を繰り返しているので。……で、これを帰ってから塗っているのだけど、確かに、湿疹が治まっているのですよねぇ、、、。まあ、ちょっと出たりはしますが、かなりマシになりました。これって、このクリームのおかげなのかね?? たまたま??

 

大原美術館で

 右のタオルハンカチと、真ん中のブックマーカーは、この美術館のシンボル(?)、蓮の花のデザインで結構可愛い。左のモネのボールペンはお土産用。

 

倉敷のお土産屋さんで

 右のは倉敷のフルーツジャム。白桃、マスカット、ピオーネ。どれも美味しかったけど、ピオーネが一番好きかも。昆布しょうゆは、出汁がかなり効いている。カレーはまだ食べていないけど、大体味の想像はつく。ま、旅の記念にご当地カレーってことで。

 

山陽自動車道の三木SAで

 パインアメ、好きなんですよね~。右のは、それのカステラ?? 初めて見る!! どんなん?? と思って買ってみました。432円! 調べたら、高速のSAで主に売られているらしく、道理で東京で見掛けないはずだ、、、。

 お味は、確かに、あのパインアメを思わせる香りと甘さのカステラで、美味しい!

 そして、西の方へ来たらば買って帰らねばならぬもの、、、、それはこの「赤福」!!! 私、「赤福」大好きなのです。でも東京じゃ絶対買えない。そら、通販なら夏場以外買えますが、やっぱし、即日購入はできない。赤福に限っては、何と言っても鮮度が命、、、(ちょっと前に表示偽装問題がありましたねぇ)。

 というわけで、必ず最終日に買って帰ろうと心に誓っておりました。……そして、帰ったその日の夜に、早速食したのでした。

 あ~~~、何年ぶりだろ、赤福を食べられるの。嬉しぃ~~~。見よ、このツヤツヤのあんこを。

 ……というわけで、美術館巡り旅行記なんだか、食レポなんだか分からなくなったところで、おしまいです!

 

 

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