映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

僕たちは希望という名の列車に乗った(2018年)

2019-06-30 | 【ほ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv66497/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 冷戦が続く1956年。東ドイツのスターリンシュタット(現在のアイゼンヒュッテンシュタット)にある高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を目にする。

 ソ連の支配に反発したハンガリー市民数千人が死亡したといわれ、テオとクルトは級友たちに呼びかけ、授業中に2分間の黙祷を行う。自由を求めるハンガリー市民に共感した彼らのこの行為は純粋な哀悼であったが、ソ連の影響下にある東ドイツにおいて社会主義国家への反逆行為とみなされ、当局の調査が入り、人民教育相自ら生徒たちに一週間以内に首謀者を明かすよう宣告。

 大切な仲間を密告してエリート街道を進むか、信念を貫き進学を諦めて労働者として生きるか、生徒たちは人生を左右する大きな決断を迫られる。

=====ここまで。

 

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◆邦題が作品を冒涜しているの件。

 邦題がね、、、。予告編は面白そうだったんだけど、最後に出た邦題でガクッとなって劇場行きはナシだな、、、と思っていたんだが、割と評判良さそうだから、やっぱり見に行っておこうと思い直して劇場まで足を運ぶことに。

 私が予告編を見た際に邦題にガクッときたのは、内容を知った上でのことではなく、単純にダサいと思ったから。すげぇセンス悪い、、、と思っただけ。

 が、しかし。本作を見終わって、この邦題のセンスの悪さは、単にダサいにとどまらず、悪質だと感じた。

 ドイツ語の原題は“Das schweigende Klassenzimmer”で、静かな教室という意味らしい。英語版では“The Silent Revolution”で、やっぱり静かなる革命くらいの意味になっている。まあ、革命ってのはちと飛躍が大きい気がするが、それでも邦題よりナンボかマシだ。本作を見て、若者たちが乗った列車を、“希望という名の列車”と呼ぶとは、どうすればそういう思考回路になるのかナゾ。彼らはやむにやまれず列車に乗る選択をしたのであり、希望というよりは、祖国に対する失望と罪悪感を抱いて乗ったのではないか。

 それに、そもそも本作の主眼は“列車に乗”ることにはないし、それは追い詰められた挙げ句に手段として選ばれたわけで、結論でも何でもない。

 もちろん、タイトル=メインテーマ、である必要もなく、秀逸なタイトルというのは、必ずしも作品の内容を体現しているものではない。

 しかし、本作の原題は、静かな教室であり、本作を見れば、若者たちが抵抗した手段が“沈黙”であったことがキモであることは明らか。何より、彼らが西側行きの列車に乗ったことで全てが解決したと誤解している(と思われても仕方のない)頭の悪さがこの邦題には滲み出ていて、正直言って、何となく恥ずかしささえ覚える。

 邦題を誰がつけたのか知らんが、恐らく配給会社かその周辺だろうが、若者たちの葛藤と苦悩を踏みにじるに等しい、何とも愚かなことをしたもんだと思う。

 やっぱり、「沈黙の教室」でしょ。……ま、これだと、セガールの沈黙シリーズと誤解される、、、とでも思ったんかいな。分かるやろ、いくら何でも違うことくらい。それを懸念したのだとしたら、“欲望という名の電車”の安っぽい二番煎じになることをもっと気にして欲しかったよね。せっかくの良い映画なんだからサ。

 

◆独裁国家は右も左も結局同じ。

 ……とまぁ、文句はこれくらいにして。

 映画自体はなかなか良かったのよ。終始途切れることのない緊張感と、若者たちの青春ドラマが良い具合に絡み合って、秀作だと思う。

 誰が首謀者なのか、、、を執拗にあぶり出そうとするシュタージの手先みたいな女ケスラーが怖い。見た目も怖いが、高校生たちに厳しい心理戦を強いてくるあたり、やはり怖ろしさを感じる。

 私があの教室の1人だったら、ケスラーが怖ろしくてあっさり口を割ってしまいそうだと思って見ていた。というか、怖ろしさの余り、口には出さなくても、激しく挙動不審になり相手にバレてしまいそうだ。

 しかし、彼らは首謀者の名を絶対に口にしない。ケスラーの揺さぶりにも何とか耐える。大臣が来ても、動揺しながらも口を割らない。……スゴイ。

 なかなか事態が進まないことで、生徒たちの親も巻き込んでいく。親たちもいろいろな背景を持っていて、皆、この国での我が子の将来が心配なのだ。中でも首謀者クルトの父親は威圧的で、共産主義の権化みたいな人間だが、いざ我が子が西側へ逃げた際には、その行動を無言で後押しするのである。検問所でのこのシーンには胸を締め付けられる。

 ドイツは、敗戦により国が二分されたことで、同じ敗戦国でも日本とはまた違う意味で非常に複雑な感情が戦後人々の間に渦巻いたことが改めて分かる。やっていることはナチと大差ないのに、ナチを毛嫌いする共産主義国家。とにかく、矛盾だらけで、見ていて息苦しくなってくる。

 だからこそ、彼らが最終的に乗った列車が“希望”という名のものなどではない、と改めて言っておきたい。そんな甘っちょろい話じゃないのだ、この映画は。

 

◆その他もろもろ

 首謀者クルトを演じたトム・グラメンツ君よりも、その親友テオを演じたレオナルド・シャイヒャー君がイケメンで可愛かった! キャラ的にもクルトよりテオの方が魅力的。

 あと、テオのガールフレンド・レナを演じたレナ・クレンクちゃんが可愛かった。役のキャラはイマイチ好きじゃないけど。テオみたいなイイヤツが彼氏なのに、クルトと浮気しちゃうとか。……まあ、テオとは信条が違うから、、、ってことみたいだけど、なんだかなぁ。ただ、それがバレたあとのテオの言動がなかなか大人でナイスだったのもポイント高し。

 そんなテオの父親を演じていたロナルト・ツェアフェルトは、どこかで見た顔だなぁ、、、と思っていて、終盤気付いた。『あの日のように抱きしめて』でニーナ・ホス演じるネリーの夫ジョニーを演じていたのだった! でもジョニーはもうちょっとシュッとしたイケメンだった記憶があるのだが、もしかしてかなり太ったのかな、、、?

 しかし、大臣を演じたブルクハルト・クラウスナー、出番は少ないのにスゴイ存在感。怖い怖い。同じくらいケスラーを演じたヨルディス・トリーベルも怖い。とにかく表情がまったく変わらない。動じない。こういう人は怖いよね、、、。

 本作は、実話が元になっているとのことだが、実際には、4人を除いたクラス全員が、西側に逃れたのだとか。……でも、その背後には、東に残った家族がいるんだよね。だから、やっぱり、希望という名の列車なんかじゃなかったのだよ、彼らが乗ったのは。

 

 

 

 

 

自分の18歳頃と比べると、、、

 

 

 

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瀬戸内美術館めぐりの旅 ③

2019-06-24 | 旅行記(国内)

 

につづき 

《2日目》 つづき

◆大塚国際美術館

 この美術館はHPの展示フロアマップを見れば分かるが、階が上がるごとに、時代が下るように展示がされている。最上階が現代の作品ってこと。

 で、私が一番見たいのは、やっぱりルネサンス~近代なので、地下2階と地下1階を主に巡ろうと決めていた。時間が余れば、中世辺りも見たいと思っていた。

 滞在時間計4時間のうち、冒頭の1時間弱は学芸員さんの解説だったから、正味3時間ちょっと。しかも昼食時間やお土産ゲット時間もとらねばならないとなると、とにかくお目当てにGo!

 ……というわけで、まずは地下2階へ。テッツィアーノ、ファブリアーノ、ラファエロ、ボッティチェリ、、、とまあ、これでもかと続く名画の数々。撮った写真はイロイロあるけど、ここで全部載せても意味がないので、敢えて精密複製画を展示するというこの美術館の存在意義を感じられたものを少し。

① 修復前vs修復後

 

修復前と修復後が同じ部屋に!

 ご存じ、ダ・ヴィンチの最後の晩餐。これはやっぱり、本物の作品では見比べることは不可能だから面白い。奥行きの描き方に特徴があるのは有名だけど、こうやって、左右反対方向から同時に見比べられるってのも面白いよねぇ。

 さて、左と右、どっちが修復前でしょう? 答えは以下のとおり。

修復前

 

 修復後

 

② 立体的な再現

ゴヤの家が再現されている

 ゴヤが晩年に手掛けたという“黒い絵”が「聾者の家」に配置されたままに再現されている。これ、見たかったんだよねぇ、、、。何年か前に東京でゴヤ展でもサトゥルヌスとか来ていたけど、こんな風に再現されているのは滅多に見られないもんね。プラドではどんな風に展示されているのかな……。

 

モネの「大睡蓮」

 こうして見ると、いかに大作かということが実感できる。遠くから連作を一望できるのも面白い。

 

③ 幻の名画

 焼失した「ひまわり」

 ゴッホの「ひまわり」は全部で7枚あるけれど、そのうちの1枚は、日本で燃えてしまって現存しない。でも、忠実にそれを再現した上、7つのひまわりを並べて見比べることが出来る。もう、絶対に本物を目にすることは出来ないけど、こんな絵だったんだろうなぁ、、、という以上の味わいを感じられるのも、この美術館の面白いところ。

7つの「ひまわり」がズラリと並ぶ様は壮観

 「ひまわり」を集めた展示は、企画展などで実現しているみたいだけど、焼失した作品も全部含めて、、、ってことになると、やっぱり不可能だもんね。複製画とは言え、面白いなぁ、と思った。

 

門外不出の「ラス・メニーナス」

 昨年のプラド美術館展で、隣の「皇太子バルタサール・カルロス騎馬像」は現物を拝めたけれど、ラス・メニーナスは門外不出だから、プラドに行かない限り絶対に見られない。というわけで、死ぬまでに見られるかどうか分からないけど、実物大で精巧に再現された複製画で、本物の“感じ”だけでも味わえるのは、ちょっと嬉しい。しかも名画が並んでいるし。 

 

④ 画家の部屋

 本物の名画は世界のあちこちの美術館に散在していることが多いけど、ここで、一堂に会している。

 フェルメールの部屋

 

 

 レンブラントの部屋

 

 

 

カラバッジオの部屋

 

 

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 それにしても、美術館は楽しいけど、疲れる。寸暇を惜しんであちこち歩き回り、さすがにくたびれたので、ランチで休憩。

 

その名も「ヴィーナスカレー」

 お皿の形がまさにヴィーナスが生まれ出て来た貝殻の形! 具は、もちろんシーフード&鳴門のさつまいも! 何と1,000円。まあ、こういう所のレストランなのでお高目なのは想定内。でも、味はなかなかイケましたよ。具もたくさん入っていたし。

 これは、地下2階にあるカフェ・ド・ジヴェルニーというレストランでいただきました。で、このレストランの前には、モネの睡蓮をイメージした池がある。

 なかなかキレイな池でした

 

 

  

トイレにもルノワールが、、、

 

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 あとは、私が個人的に好きな絵を少し、、、

 「我が子を喰らうサトゥルヌス」 ゴヤ

 

 

「夢魔」 フュースリ

 

 

 「波間のたわむれ」 ベックリン

 

 

 ……ほかにもイロイロ撮ったんだけど、キリがないのでこの辺で。

 この美術館、建築費だけで約200億円、複製画の展示権利費用や複製画の制作費、額装などで約100億円、、、だとか(あれ、建築費とその他費、逆だったかも)。それだけの私財を投じて、このようなユニークな美術館を造ろう! と発想したことが凄いと思う。美術館というよりは、アミューズメントパークに近い。もう一度くらい、しばらくしてから訪れても良いかも。

 そして、これがあの恐怖のエスカレーターの上からの眺め。

 怖っ!

 

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 15:45の集合時間が近付いて、バスに駆け込むと、どうやら私が最後だったみたい。でも、まだ3分前くらいだったんだけどな~。このツアー、皆さん集合が早い早い。これから、屋島(香川県)まで移動。

 1時間半ほどで屋島に到着。ここで、屋島寺を訪ねる。

屋島寺近くの展望台からの眺め 見えているのは男木島(小さい方)と女木島(大きい方)

 

 

 高松方面

 

 

この展望台からこの素焼きの皿を投げる“かわらけ投げ”を体験

 かわらけ投げ、初めてやってみたけど、結構難しい。お皿のくぼんでいる方を下にして、フリスビーを投げるみたいに、横に力を抜いて腕を振り切るように投げるとキレイに遠くに飛んで行ってくれる。願い事をしながら投げ、遠くに飛ぶと願いが叶うらしいけど、遠くに飛ばすことに必死になってしまって願い事なんぞしている余裕はまるでナシ。ま、大した願い事もないので良いんだけど。

屋島寺

 

 途中から雨も降ってきて、皆で慌ててバスへ戻る。屋島では40分くらいだったかな、、、滞在時間は。短かったけど、ガイドのおじさんが面白くて楽しゅうございました。

 この後、倉敷へ移動。もう、2本も橋を渡ったので、さほど感激するわけでもないけど、これがあの“瀬戸大橋”かぁ~~、とやっぱり写真を撮ってしまう。

 瀬戸大橋を渡ったど~~!

 

 

 というわけで、倉敷に着いたのは7時過ぎ。もはや事前に調べたお店に夕飯を食べに行く気力はとっくに失せ、宿の近くのコンビニで夕飯を適当にみつくろって、部屋で食べて、疲れ果ててすぐに寝ました。

 はぁ、、、やっぱり広すぎる美術館巡りは、楽しかったけど疲れた、、、。

 明日は大原美術館です~!

 

 

につづく

コメント (5)
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ネットワーク(1976年)

2019-06-22 | 【ね】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv6850/

 

 大手TV局の看板番組で15年間メインキャスターを務めてきたハワード・ビール(ピーター・フィンチ)だったが、かつては28%もあった視聴率が、今や12%と低迷していることから、クビが決まる。しかし、ビールは辞めたくないと主張し、なんと翌日の番組本番でTV局の裏側をあることないことぶちまけた挙げ句「この番組を辞めることになった、明日のこの時間、この番組内で自殺する」と宣言してしまう。スタッフ一同慌てるが、これが視聴者には受けたのか視聴率が跳ね上がる。

 その状況を知ったエンタメ担当プロデューサーのダイアナ・クリステンセン(フェイ・ダナウェイ)は、これはチャンスだとばかり、ビールを“時代の預言者”に仕立て上げたワイドショーで儲けようと画策する。

 実際、ビールを預言者としたエンタメ番組は人気を博し、視聴率はうなぎ上り。おかげで報道担当プロデューサーであるマックス・シューマッカー(ウィリアム・ホールデン)がお払い箱となる。その一方で自分を追い落としたダイアナに、マックスは惹かれて2人は不倫関係に陥る。

 しかし、ある日、ビールが喚き散らしながら発した言葉がスポンサーの不興を買ったことを切っ掛けに、ビールは局のオーナーに脅迫まがいの洗脳をされて、翌日からはオーナーの信条を番組内で預言として喚き散らすようになる。それとともに、視聴率はどんどん低下していく。

 ダイアナは、いよいよビールを辞めさせなければならないと考えるが、オーナーはビールを降ろしたくない意向であるらしく、悩む。そうして、ダイアナは一計を思い付くのであったが、、、。

 

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  どうしてこの作品をレンタルリストに入れたのか覚えていないのだけど、恐らくシドニー・ルメット監督作品ということで見てみようと思ったんだと思われる、、、。出演者も何気に豪華だしね。まあ、面白くなくはなかったけれども、ううむ、、、という部分もイロイロありました。

 

◆本題よりも気になったことが、、、

 TV局って、ネットがここまで普及した今でこそ存在価値が薄れてきた感があるけれど、本作が撮られた当時は、そりゃもう、影響力で言えば他に追随を許さぬ圧倒的な存在だったわけで。こんなにTV局が落ちぶれた今だって、仁義なき視聴率戦争は続いているのだから、当時は推して知るべしである。

 視聴率=カネさえ稼げれば、モラルも法もあったもんじゃない、、、そんな話を本作は描いている。監督のルメットはTV出身の人だそうなので、内幕を描くのはお手の物だったろう。実情はこんなもんじゃないだろうけれども、まあ、えげつなさは十分伝わってくる。

 で、この本題よりも、私が本作を見ていて気になっていたのは、フェイ・ダナウェイ演ずるダイアナと、ウィリアム・ホールデン演ずるマックスが不倫関係になるエピソードの必要性である。

 まぁ、こう言っちゃ悪いが、このエピソードいらなくない? と思う。一応、本作でのただ1人の良心的存在が、このマックスなんだが、しかし、訳の分からない不倫に走ることで、見ている方としてはマックスもただの薄汚いオヤジにしか思えなくなる。だいたい、ダイアナみたいな女性が、マックスのような会社を追われたヨボヨボの爺ぃと恋愛関係になるなんて、あまりにもリアリティがなさ過ぎる。百歩譲って、そういうこともあるかもね、、、と思ってみたところで、マックスが長年寄り添ってきた妻を傷つけるロクデナシであることに変わりはなく、結局、本作におけるキャラの配置が意味をなさなくなってしまっているのである。

 もし、どうしても不倫関係を描きたいのなら、もう少し、ダイアナという女性の人物像を掘り下げるためのものとすべきだったんじゃないかしらん。ダイアナがなんであそこまで、男とセックス中に仕事絡みのセリフを喘いで言うほどまで、24時間1秒の隙もなく仕事人間になったのか、、、という彼女のバックグラウンドを描けば、もう少し本作にも奥行きが出たかも知れない。でも、本作では、マックスはそんなダイアナの無機質さに引いてしまって、ただ去って行くのである。もちろん、妻の下へ帰るのだ。なんじゃそら、、、と思うでしょ、フツー。

 ……まあ、でもダイアナの背景なんてくどくど描写する必要性もあんまりなさそうだし、……やっぱり不倫の話はいらんだろう、という結論にしかならない。

 それに(こっちの方が私的には重要)、申し訳ないが、ウィリアム・ホールデンはあんまり知的に見えないし、年齢的にもちょっと不倫の描写に耐えられるルックスではなくなっている。ダイアナがなんであんな爺ぃによろめいたのか、ダイアナより年上のおばちゃんから見ても全く理解できん。まあ、うんと年上が好き、という人もいるけどね、世の中には。

 正直な話、人間、50も過ぎると、やっぱりガタがあちこち来ていて、それがモロに表面化してきて、見た目的にも“キレイじゃない”のだよ。もちろん、自分も含めて。だから、同年代の素敵な男性であっても、あの人とキスしたいとかセックスしたいとか、まるで思えないのだよ。歯周病やないん?とか、老人斑の出た皮膚とか、加齢臭??とか、こっちだってたるんだ腹とか、、、、もういいです、って感じ。死ぬまでしたい、と思う人もいるんだろうけど、私はゴメンだわ。スキンシップで十分。

 もしかして、ルメットか、脚本のパディ・チャイエフスキーの願望かしらん……?

 

◆ピーター・フィンチの演技が圧巻。

 本作では、一応、主役はフェイ・ダナウェイになるんだろうけど、真の主役は、ピーター・フィンチだろう。それくらい、彼の演ずるビールが強烈だ。

 最初にキャスターをクビになった後、彼はメンタルを病んでしまう感じで、どんどん病的な言動になっていく。しかし、それを面白いからと言ってダイアナは見世物にするわけだ。

 ピーター・フィンチは、そのイッちゃっているビールを、もしかしてそれが“地”なんじゃないの? というくらい乗り移ったかのように演じている。彼のあの狂った演技が、この作品の印象を決めているといってもいいくらい。彼が、死後にオスカーを受賞したのも納得。

 フェイ・ダナウェイは、ものすごい美人というわけじゃないけど、知的だし品があるし、こういうバリバリの仕事人間の役には向いている。カネのためだったら手段を問わない、人間性の欠落したキャラが、あの冷たい大理石のような肌の彼女にピッタリ。

 あと、ロバート・デュヴァルが若い! つーかカッコイイ、と思った。頭髪はもう後退しているけれど、ちょっとエキセントリックで自己チューな役がハマっていた。

 個人的には、出番が少なかったけれど、マックスの妻を演じたベアトリス・ストレイトが素敵だなぁ、と思った。……ら、なんと彼女、これでオスカー受賞していたのねぇ、ビックリ。あと、マックスの自宅がすごく素敵だった。本棚が一杯あって、グリーンもさりげなくあちこちに置かれて、、、あんな家にほんの数日で良いから暮らしてみたいわぁ。  

 

 

 

今でいう“炎上狙い”ですね、これは。 

 

 

 

 

 

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母さんがどんなに僕を嫌いでも(2018年)

2019-06-19 | 【か】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv64869/

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 幼い頃から、美しい母・光子(吉田羊)のことが大好きだったタイジ(太賀)。しかし、家の中にいるときの光子はいつも情緒不安定で、タイジの行動にイラつき、容赦なく手を上げるのだった。

 そんななか、夫との離婚問題が浮上し、タイジの存在が不利になると考えた光子は、9歳のタイジを児童保護施設へ入れてしまう。1年後。良い条件で離婚した光子は、タイジとその姉・貴子を連れ、新しい家で暮らし始めるが、そこでもまた不安定な生活を送ることになる。

 17歳になったタイジは、ある日、光子から酷い言葉と暴力を受けたことをきっかけに、家を出ることを決意。ただ日々を生きていくだけのなか、タイジは幼い頃に唯一自分の味方をしてくれた工場の婆ちゃん(木野花)と再会、自分への強く優しい想いに心を動かされるのだった。努力を重ね、やがて一流企業の営業職に就いたタイジは、社会人劇団にも入り、金持ちで華やかだが毒舌家のキミツ(森崎ウィン)と出会う。そんな彼に戸惑いながらも、次第に打ち解けていくタイジは、会社の同僚・カナ(秋月三佳)やその恋人・大将(白石隼也)とも距離を縮めていくのであった。大人になって初めて人と心を通わせる幸せを感じたタイジは、友人たちの言葉から、自分が今も母を好きでいることに気付き、再び母と向き合うことを考え始める。

 そんなある日、長らく絶縁状態だった光子から連絡を受けたタイジは、光子の再婚相手の葬儀に出席するが、光子から冷たくあしらわれてしまう。だが自分から変わることを決めたタイジは、食事を作るため光子の家へ通い、もっと母のことを知ろうと叔母のもとを訪ねる。そこで、母の幼い頃の苦労を聞かされたタイジだったが、母が亡き夫の残した莫大な借金を背負っていることを知る。その借金を巡り、光子とタイジは口論。そしてまたも光子はタイジを拒絶するが……。

=====ここまで。

 コミックエッセイの映画化だそうな。もちろん、原作未読。

 

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 親子のゴタゴタ系は割と見てしまうので、これもついつい手を伸ばしてしまったけれど、いろいろ??なところがありすぎな上に、中盤で気持ち的に大コケしてしまって、もうあとはどーでもええわ、、、という感じだった。だから、別にわざわざ感想を書くまでもないかなぁ、という気もしたが、思うところあって書いておくことにしました。

 ちなみに、本作をお好きな方は以下お読みにならないでください。

 

◆この母親はマジで息子が嫌いなの。

 虐待という要素を除いても、この母親は、私からすれば異星人レベルに理解不能な思考回路である。

 例えば、離婚が成立して豪邸を手に入れたから、施設から帰ってきたタイジを待ち構えて一緒に連れて行く。大嫌いで産まなきゃ良かったとまで言っているタイジをだ。「アンタ連れてかないわけにいかないでしょ!!」とか言っているんだけど、なんで?? 施設にムリヤリ入れておいてそのセリフは何?? そして、包丁を突き付けて怪我させたりとか、、、意味不明。

 かと思うと、長らく音信不通だったタイジに、ある日突然電話してきて、「(再婚相手の)お通夜に出て。こっちの親戚誰もいなくてカッコ悪いから」などと言ってくる。毛嫌いしている息子にわざわざ電話してきて、自分にとっては短いながらも貴重な時間を共有できた最愛の男の喪の席に、その大嫌いな息子を座らせる、、、とか。

 他にもイロイロあるけど、、、多分、実際にこういう出来事があったんだろうけど、エピソードをただ切り貼りしただけでつなぎ目に気を配っていないので、なんかもう、支離滅裂なんだよね。人間は複雑な生き物だ、つったって、そういう問題じゃないでしょ、これは。

 一つだけ言えるのは、この母親はホントにタイジのことが嫌いだったんだな、ってこと。終盤で和解を臭わせるシーンがあるが、あれは母親が体力的に弱っていたから、もう息子を追っ払うのも面倒くさかっただけだと思う。あとは、せいぜい多少の罪悪感かな。

 それ以外のことは、全面的にこの母親の行動が謎です。

 

◆経験者の傷に塩を塗る無神経極まりない映画。

 それでもまあ、中盤過ぎくらいまではどうにか見ることが出来ていた。一気に萎えたのは、タイジに“おともだち”が言ったセリフだ。

 「気付いた人間から変われ。親に変わって欲しければ、まず自分が変われ」

 セリフ的には、もう少しソフトな言い回しだったけど、これはねぇ、虐待を受けた人にはある意味タブーに近い言葉です。これで良い方向に向かう人はいるかも知れないけれども、被害者に対して“加害者を受け容れろ”と言っているようなもんだからね。これは、私的には絶対にナシです。

 このセリフは、あくまで対等な人間関係において、話の通じる相手に対して有効なのであって、自分を虐待する親を対象にしたものとしては、サイアクです。

 親に虐待される子供は、十分、自責の念に苛まれているわけよ。自分が悪いから親を怒らせているんだ、、、ってね。もう何百回も思わされているのよ。その上でまだ、親との関係性において自分に何か責務があると思わされるのは、あまりにも酷な話。

 この映画を見た被虐待経験者が、ヘンに自分を追い詰めるような思考にならないことを願うばかり。もっと言えば、 「私が変わればあの親が変わってくれるかも」などという期待を持たせる非常に罪な映画である。親の虐待に苦しんでいる人がゴマンといる中で、こんなセリフをばらまくなんて、無責任だとさえ思うねぇ。

 本作を見て無邪気に「あなたが変われば親も反省するかもよ」などと、被虐待経験者にアドバイスなんぞすることは、もの凄く深刻なことをしてしまっているのだということだけは言っておきたい。

 こういう親は、“変わらない”と思っておいた方が良い。変わって欲しいと期待すればするほど、被虐待者の傷は深くなり、回復が遅れるだけだ。だから、「まずお前が変われ」などというセリフは無視すれば良い。

 レアな成功エピソードを大げさに三流感動映画に仕立てて、多くの傷ついた実体験者の傷口にさらに塩を塗るようなことをするな、と言いたい。あ、これは原作に対してのことではなく、映画に対してね。原作は読んでいないので知りません。

 ……というわけで、は1コです。ゼロでは出演者に対し、あまりに失礼だと思うので。  

 

 

 

 

 

見たことを後悔する数少ない作品となりました。 

 

 

 

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瀬戸内美術館めぐりの旅 ②

2019-06-16 | 旅行記(国内)

 

につづき 

《2日目》

◆明石海峡大橋 ~ 鳴門公園

 朝8時ちょうどに集合し、宿を出発。この旅の目的の一つ、瀬戸内海に架かる橋を渡る! というので、ワクワク。実は、この歳になるまで、私は本州を出たことが一度もないのだ。最初に本州を出て行くなら、絶対四国!と昔から決めていた。別に理由はないけど、何となく。そして、行くなら、瀬戸内海の橋を渡って行きたいと思っていたのだ!

 同じように大塚国際美術館を目玉にしたツアーは他にもあったのだけど、いきなり四国まで羽田から飛行機で行っちゃうのとか、船で瀬戸内海を渡るのとか、、、ってのはパス。飛行機で行くのは、割と催行決定しているツアーも結構あったのだけど、どうしても橋を渡りたかったのよ。何でだろう、、、自分でもよく分からないけど。

 バスは日替わりで席が決められていて、この日の私の席は、運転席と反対側の最前列! ……というわけで、このような画像撮り放題でありました。

 

見えてきた~! 明石海峡大橋!!

 

渡るど~~!

 

瀬戸内海を行き交うたくさんの船が豆粒のように見える(見えます?)

 

淡路島が見えてきた!

 淡路島に上陸~! ってことで、SAでトイレ休憩。

 ちょっと曇っているのがねぇ……。でも良い眺め

 

 

うぅむ、見通しはイマイチで、大阪までは見えないけど

 

 ……というわけで、今度はいよいよ四国に渡る。次に渡るのは、大鳴門橋。

見えてきた、大鳴門橋! ……なんかさっきと同じ光景

 

うずしおっぽいのも見えたりして、、、

 この日のこの時間は、中潮だそうで、あまり立派なうずしおは期待出来ないけど、ちょっとなら見られるかも、、、とのことだった。まあ、うずしおは期待していなかったので、別に良いのだけど。

 大鳴門橋を渡ったところで、鳴門公園へ。

 鳴門公園から大鳴門橋を臨む。画像左側の海面にポツポツ見えるのはわかめの養殖場

 

☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆

 

◆大塚国際美術館

 いよいよ、大塚国際美術館へ! この美術館は、鳴門公園の一部らしい。山(?)をくり貫いて造ったので、地下3階、地上2階の5階建て。バスを降りて入口を入ったところが、目もくらむような長~いエスカレーター。ちなみにこの入口は地下3階のさらに下にあって、このエスカレーターに運ばれて上がったところが、ようやく地下3階。

こんなに長いエスカレーターは東京の地下鉄のエスカレーターでも見たことないかも

 

 やっとたどりついた地下3階、まずはシスティーナ大聖堂を模した「システィーナホール」がお出迎え。

 

 本物のシスティーナ大聖堂の壁画を見られるのはいつになるか分からないけど、この、同じ大きさで再現されているものを見るだけでも、その圧巻ぶりは堪能できる。……でも、これ見ちゃうと、本物を見たときの感動・感激がちょっと薄れちゃうかしら。、、、いやいや、本物の放つパワーはきっとこんなもんじゃないだろう。それでも、十分スゴさを体感できるのは面白い。

 

 

 ちなみに、縦横に線が見えるのは、陶板の大きさがこれ以上大きいのは焼けないから、ってことだそうな。これでも一つ一つの陶板はかなり大きいのだけど。

 あ、もちろん、陶板=焼き物なので、褪色等がないということで、写真はどれも撮り放題、触ることもできる。

 うぅむ、これはなかなか面白そうじゃない? と、広い広い館内を、いざ巡るぞ~~~!!!

 

 

につづく

 

 

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メモリーズ・オブ・サマー(2016年)

2019-06-11 | 【め】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv67651/

 

以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 1970年代末のポーランドの小さな田舎町、夏。

 12歳の少年ピョトレックは母親のヴィシャとはじまったばかりの夏休みを過ごしていた。父イェジは外国へ出稼ぎ中だが、母と息子は、石切場の池で泳ぎまわり、家ではチェスをしたり、ときにはダンスをしたりする。ふたりの間には強い絆があり、ピョトレックは楽しく夏休みを過ごしていた。だがやがてヴィシャは毎晩のように家をあけはじめる。ピョトレックは、おしゃれをし、うきうきとした母の様子に、不安な何かを感じ始める。

 団地に、都会からマイカという少女がやって来る。母に連れられ、おばあちゃんの家へ遊びに来たマイカは、田舎町が気に入らないようだ。仏頂面のマイカに、ピョトレックは一目で惹かれる。やがてふたりは徐々に仲良くなり、郊外へ一緒に出かけるようになる。

 母は相変わらず出かけてばかりいる。月に一度、ふたりのもとに、外国で働いている父イェジから電話がかかってくる。喜んで話をするふたりだが、「ママに何か変わったことはないか?」という父の質問に、ピョトレックは沈黙する。その様子を見ていた母は、息子に「なぜあんな真似を」と怒りをぶつける。その日から、ふたりの間には緊迫した空気が流れ始める。そんななか、大好きな父が出稼ぎから帰って来る……。

=====ここまで。

 

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   数年前から続くマイ・ブーム、ポーランド。昨年2018年は、ポーランド独立回復100周年だった。プロイセン、ロシア、オーストリアによる三国分割が終わってから、ちょうど1世紀。そして今年は、日本とポーランドの国交樹立100周年だそうで。今月末には『COLD WAR』も公開されるし、本作もポーランド映画界期待の若手監督の作品だとか。ネットでチラッと評を見て、ちょっと面白そうかなと思って見に行って参りました。

 

◆一見静かな映画だけど……

 こういう雰囲気の映画は、かなり好きな方。あんまりセリフで話を進めないで、とにかく映像での描写に徹する作風が良いなぁ、と思った。

 父親不在で、母と息子の2人の生活。とにかく、序盤の2人は、とても仲が良い。12歳といえば、日本じゃ小学6年生か中学1年生辺りで、母親と一緒に(しかも抱きついて)寝ているってのは、、、まぁそんなもんかね。

 余談だけど、私の中学1年生の担任は30歳くらいの女性だったんだけど、パッと見が冷たい感じの厳しそうな先生で、入学式の後のHRで保護者たちを前に話した内容がインパクト大で、今でも鮮明に覚えている。

「中学生になったのだから、親御さんにもそれなりの対応をお願いしたい。例えば、天気が急に変わって雨が降り出した場合、よく親が傘を持ってきて下駄箱に掛けていったりするが、そういう行為は小学生までで十分ではないか。また、(異性の)子と一緒に風呂に入るのを得意げに親が語るのを見ることもあるが、1年生といえども中学生はもう大人の一歩手前である。異性の親と一緒に風呂に入るのはいかがなものか。差し出がましいと思われるかも知れないが、親と子の関係性についてはよくよく弁えていただきたい」

 ……みたいな話だった。まだまだガキンチョだった私には、かなり脳天直撃の内容だったが、半面、この先生は信頼できる、と何となく確信したのも覚えている。実際は、冷たいというより常にピリッとしていて、厳しいことも結構言われたが、つい数年前まで年賀状のやりとりをしていたくらい。返信が来なくなって、こちらから出すのも迷惑かと思い出さなくなったが、良い先生だったと思う。

 と、そんな原体験に近いものがあるので、小学6年生か中学1年生で、母親と親密すぎる関係ってのは、ちょっと??な気もする。が、まあ、欧米ではそれほど珍しいことでもないのかな。私の同級生は、息子が4年生までは一緒に寝ていた、と言っていた。それが2年延びたくらいのことなのか。日本でも今は普通なのかもね、よく知らんが。

 そもそも男はイイ歳になっても程度の差はあれ大抵マザコンだから、ピョトレックがお母さん大好きなのは12歳なら当然といえば当然だ。ピョトレックも実に嬉しそうなのよね、お母さんと一緒にいる時間が。なんか微笑ましいのです。

 でも、2人で泳ぎに行った帰り、自転車に乗って汽車と競争しているときに、ピョトレックは気付いてしまうのね、お母さんが泣きながら自転車を猛然とこいでいることに。「どうして泣いているの?」と、ピョトレックは聞けない。このシーンの感じがとても切ない。

 そして、しばらくするとお母さんはめかし込んで出掛けるようになる。直截的な描写は一切ないが、まぁ、男が出来たんだな、、、と見ている者は思うでしょう。そこから、ピョトレックの表情がだんだん暗く、、、というか、何となく憂を帯びてくる。ここでもピョトレックは、「行っちゃうの?」とは言っても「行かないで」となかなか言えない。挙句「行っちゃえ!!」なんて心にもない言葉を叫んでしまう。

 おまけに、、、このお母さんが夜ごと歩いて行く道は、かなり暗くて人通りもほとんどない、言ってみれば“結構コワい”道なんである。街灯らしきものも見当たらないし、ピョトレックが一度後をつけるのだが、あっという間に暗闇に消えて見失ってしまう。しかも、そこをパンプスを履いて歩いて行く、、、ってんだから、このお母さん、根性あるわ。私が彼女なら、いくら男が好きでも、あんな夜道を毎晩歩くなんておっかなくてゴメンだわ。そんな思いしてまで男とセックスしたいって気持ちにならない。男が車で迎えに来てくれるとかなら分かるが。

 しかし、ピョトレックが尾行し、お母さんを見失った直後に、暗闇から、小鹿が現れるんである。この小鹿がまた、可愛らしいんだけど、ホントに弱々しくて心配になるくらい。ピョトレックは、お母さんのことなど一瞬忘れたかのように小鹿に見入ってしまう。どちらも親を見失った者同士の思いがけない遭遇シーンも、何やらまた暗示的で胸に来る。

 そして、お母さんの恋は破れ、お父さんはお母さんの変化に気付き、、、

 ……てな具合に、一見静かで地味に進行していくのだが、実際に起きていることはピョトレックにとっては実にドラマチックで、ただのチョコケーキかと思ってフォークを入れたら、中からあっついチョコソースがジュワっと出てくるフォンダンショコラみたいな感じの映画だ。

 

◆本作の構成とかもろもろ

 本作は、割とよくある、ラストシーンを冒頭で見せる、という手法がとられている。もちろん、エンディングのオチは見せないけど。こういう構成は、正直言ってあんまり好きじゃないのだけれども、本作についていえば、これが功を奏していると感じた。

 つまり、本作は、この冒頭シーンがあるおかげで、最初から最後まで緊張感漲る作品になっている。もし、この冒頭シーンがなく、次の、お母さんとピョトレックの微笑ましいシーンから始まっていたら、観客は、そういう“ほのぼの系”映画だと思って、しかし見て行くうちに、その不穏さに???となっていき、あのエンディングに気持ち的に着いて行けないんじゃないかと思うのね。

 まあ、前半と後半で別の映画じゃないか?と思うくらいガラリと雰囲気が変わる作品は珍しくないし、それが一概に悪いとは思わないけれども、本作の場合は、やっぱり終始緊張感を見る者に感じさせた方が正解だと思う。だからこそ、あのラストシーンが効いてくるのではなかろうか。

 そのラストシーンについて、ここで書いてしまいたいけど、そうするとたとえネタバレ承知で読んだとしても、本作を見る価値が半減するので、やっぱりやめておく。

 でも、単なる少年のひと夏の成長譚で終わらせない人間ドラマに仕上がっているのは、この構成に負うところもかなり大きいと感じた。

 本作を見ている間、『ラブレス』(2017)が頭に浮かんでいた。設定は違うし、少年の置かれている状況は、圧倒的に『ラブレス』のアレクセイの方が厳しいのだけれど。作品の雰囲気(緊張感が途切れないところとか)が似ているのもあるけれど、両親の不和で家庭が安住の場でなくなり、少年が試練に直面する、というテーマが同じだからかも。

 ピョトレックの今後を考えると、なかなか厳しい感じがする。父と母の間には決定的な溝が出来てしまい、父は単身赴任のままだし、母とピョトレックもかなり緊張した関係になるだろう。そうすると、まだ内面的にはオコチャマなピョトレックとしてみれば、ちょっとキツい状況なのではないか。

 本作は、70年代のポーランドが舞台だが、ピョトレックの住むアパートの部屋とか、衣装などから、何となく時代を感じさせる。ソ連支配下の東欧って、やっぱりどこかちょっと重苦しさがあったんだろうな、、、。昨今は右傾化が懸念されるポーランドだが、2年前に行ったときはそんなこと微塵も感じさせないほどにワルシャワの街並みは美しかった。彼の地がずっとあのまま荒れることなくあって欲しいと、本作を見終わった後に思った次第。その前に自国の方がヤバいかもだけど。

 

 

 

 

ひと夏の経験、、、にしてはシビアすぎるお話。 

 

 

 

 

 

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瀬戸内美術館めぐりの旅 ①

2019-06-08 | 旅行記(国内)

 

 前から行きたかった鳴門の大塚国際美術館。昨年、とあるサイトで、この大塚国際美術館を含む良さげな美術館めぐりのツアーを見付けたので申し込んだんだけど、申込者が少なかったのか催行中止に。しょぼ~~ん、、、。ガックシ来すぎた反動で“ベトナムおひとりさまツアー”に申し込んでしまったのだけれど、今年は、運良く催行決定している日程に申し込めました。

 1人参加でも代金が同額というツアーなんだが、1人の申し込みは結構すぐに埋まっちゃって、催行決定しているツアーだと、2人なら空きがあるけど、1人だとNGってことが多いのよね、、、。でも、今回は1人ちょうど空きがあったようで、ラッキ~。

 何でも、昨年末の紅白歌合戦で、米津玄師というお方が大塚国際美術館からロケ出演したとかで(私は見ていないんだけど)、やたら入場者数が増えているんだとか。そのおかげで、ツアー催行も増えたのかもね。

 まあ、何やともあれ、念願叶って行けたのだから、忘れないようにサクッと旅行日記を。

 

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【ツアーのスケジュール】

《1日目》  羽田空港11:30発 → 伊丹空港12:35着 → 国立国際美術館 → 姫路泊

《2日目》  姫路発 → 明石海峡大橋 → 鳴門公園 → 大塚国際美術館(4時間)→ 屋島 → 瀬戸大橋 → 倉敷泊 

《3日目》  大原美術館&倉敷散策/自由昼食(3時間)→ 伊丹空港16:20発 → 羽田空港17:30着  

 

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《1日目》

◆国立国際美術館

 

 伊丹空港からバスで約30分。国立国際美術館に到着。

 地上には画像のようなモニュメントのようなものしかなく、本体は全部地下に造られている。

 

入り口を入ってすぐに下る

 

下ってきたところ地下1階。受付やらレストランはこの階にある

 添乗員さんが受付してくれている間に、キョロキョロ。ミロの陶板画(70年の大阪万博に使用されたもの)が地下2階との吹き抜けにあったり……。

 

さらに下って地下2階

 この日は、企画展として『ジャコメッティと Ⅰ』を開催中。いずれも所蔵品の展示。

 絵を見るのは好きだけど、美術史は詳しくないし、見る目もないので、現代美術がメインのこの展示はあんましピンとこなかった。ジャコメッティといえば、数年前に、ジェフリー・ラッシュとアーミー・ハマーが共演の映画があったような、、、と思って検索したら、昨年『ジャコメッティ 最後の肖像』が公開されていた。予告編を見て、ほんのちょっと興味をそそられもしたけど、ううむ、、、と思っている間に忘れていた。

 ……とはいえ、ジャコメッティなんぞ、名前くらいしか知らないし、彼の彫刻作品が多く展示されていたが、ずいぶん特徴的な人体で、まぁ、ある意味どんな人か興味を持った。映画見てみようかな。

 セザンヌ、ピカソ、フジタや、私の好きなカンディンスキーも展示されていて、こっちの方がやっぱり見ていて楽しい。

 

◆姫路駅前ぷらぷら

 国立国際美術館を後にして、姫路までバスで1時間ちょっと。駅前の宿に着いた後は自由行動。

 ……というわけで、姫路駅前を散策。姫路城までは徒歩20分はかかるというし、時間的にもう中には入れないと聞いたので、行く気は毛頭なく、駅ビルや駅前の山陽百貨店のデパ地下を探検。

遠目に見える姫路城

 

 お腹も空いたので、事前に調べておいたジャンキーフードコートへ。

 姫路だけど、明石焼き風たこ焼きを食べに来たのだ。

 

 まずは、食券を買い、たこ焼き、焼きそば、それぞれのカウンターへ食券を持って行く。ご覧のとおり、どれもお安いし、たこ焼きだけでは満腹になる自信がなかったので、たこ焼きと焼きそばの両方を注文。……でも、焼きそばは持ち帰りにしてもらった。

 元気の良いおばちゃんたちが手際良くたこ焼きやら焼きそばを焼いていて、待つこと数分でたこ焼きが焼き上がり。

 

なんか可愛い……

 このお出汁につけて食べるんですか? とおばちゃんに尋ねたら、「出汁につけても良いし、ソースつけても良いし、ソースつけたんを出汁につけて食べても良いし、イロイロ試してみて!」と教えてくれる。

 ソースはテーブルに置いてあって、他の人の食べるのを見よう見まねで食べてみる。イロイロ試した結果、私は、ソースなしで出汁につけて食べるのが一番気に入った。出汁はちょっとしょっぱいのだけど、たこ焼きをつけて食べるとちょうど良い。ソースも良いけど、まあ、これだと普通のたこ焼きと大差ないからね。

たこの大きさは普通かな

 

 たこ焼きを食べている最中に、焼きそばができたよ~、と呼ばれる。こちらは、宿に持ち帰って、結局、すぐに食べた(だったら、店で食べても良かったんじゃないか、、、と思った)。

 

ちゃんと包装紙に包んでくれて、、、

 

 

 麺がちょっと太いのと、ソース味というよりは、出汁醤油味という感じで、割とサッパリ系。たこ焼き10コ食べた後だけど、ゼンゼン普通に食べれてしまった。炭水化物摂取過多だね。

 

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 明日はいよいよ大塚国際美術館。瀬戸内海を渡るのだ!

 美術館めぐりの旅行記なのに、食べ物の画像ばかりに、、、。すみません。

 

につづく

 

 

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