映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

マンイーター(2007年)

2014-11-29 | マイケル・ヴァルタン



 アニマルパニックもの。お目当ては、マイケル・ヴァルタンだったけど、なかなかの作品でしょ、これ。

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 B級だろうと思って見たので、意外にも、良い作りに得した気分です。とても真面目に作られた、パニック映画というよりは、心理サスペンス映画でしょう。公開当時、アニマルが何なのか隠されていたそうですが、今回の敵は、巨大ワニです、はい。

 ネットで見ると、何気に豪華キャストだとか、サム・ワーシントンが主役だと思ったとか、誰が主役なのか終盤まで分からんとか、ヴァルタンにしてみればヒドイ言われよう・・・。予備知識はほとんどなかったけれど、どう見たって、ヴァルタンが主役だって最初から分かるでしょう。

 だって、あのクルーズ船に乗った面々見てくださいよ。あの中で最後に敵と一騎打ちできそうなの、ヴァルタンしかいないでしょーよ。そら、サム・ワーシントンは途中で出てきてちょっとカッコイイところ見せるシーンがありますけど、所詮はチンピラです。確かにヴァルタンは線が細いので闘うキャラに見えないのは仕方ないんだけれど、世間の目、あんまりだわ。

 まぁ、制作年から日本公開まで時間が開いたせいで、その間にサム・ワーシントンやらミア・ワシコウスカやらが売れちゃってるから、こういう感想が出ても致し方ないんでしょうね。

 この手の映画にしてはグロいシーンはほとんどなく、敵の巨大ワニの姿も終盤までハッキリは出てきません。もちろん、これが本作の演出で、最後、ヴァルタン演じるピートが一騎打ちする際に姿を現すときも、直截的な描き方をしていないところがなかなかニクいです。見ている方がこれがかなりゾクゾクして怖い!!

 というか、本作は、ラストこそ、巨大ワニVS人間、という図式になりますが、それまでは、飽くまで人間同士の心理戦、人間VS人間をかなりしつこく描いています。そうやって、見ている者に、巨大ワニの存在を意識させながらも、イライラ&ドキドキを常に感じさせることに成功しているように思います。

 そうはいっても、もちろん、突っ込みどころもありまして・・・。満潮で沈んでしまうという中洲ですが、結構高さのある木があって、別にムリして向こう岸に渡らなくても、いざとなったら、潮が引くのを木に登って待ってりゃいいじゃん、と思いましたし。向こう岸に渡り終えた人々がピートを置き去りにしてどこかへ行ってしまうんだけど、それが、ピートと巨大ワニとの一騎打ちに持ち込むためのご都合シナリオなのが見え見えだし・・・。

 それに、もう一人の主人公、ラダ・ミッチェル演じるクルーズ船の女性ガイドが、巨大ワニに襲われるんですが、まあ、主人公だから仕方ないとはいえ、あんな襲われ方して生きているんです。これもちょっと、、、ムリがあるような。あんなに噛みつかれて、グルグル体回転されたら、いくらなんでも千切れちゃうと思うですよねぇ。

 でもまあ、こういう映画に突っ込みどころは付き物ですしねぇ。「あー!」とか「わー!」とか言いつつ突っ込み入れながら見る、これが、醍醐味でもあります。

 そうそう、可愛いワンちゃんも出てきます。しかもなかなか賢い。でも・・・、喰われちゃうんですけどね。このシーンが一番悲しかったかな。
 
 ヴァルタンは、この時39歳ですねぇ。なるほど、ちょっとオッサンになってはいましたが、やっぱりカッコイイです。サム・ワーシントンなんかより、ゼンゼン知的だし、私にとっては百倍イイ男です、ヴァルタンの方が。



巨大ワニがいると分かっている河を泳げますか?




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悪魔の発明(1957年)

2014-11-27 | 【あ】



 ジュール・ヴェルヌの古典名作と言われる原作を、信じられないような実写&アニメーションの融合映像で描いた大傑作。

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 今、神奈川県立近代美術館(葉山館)で、「東欧アニメをめぐる旅 ポーランド・チェコ・クロアチア」と題した展覧会を開催していて、先日、はるばる行ったのだけれど(感想は後述)、その前に、有名な本作を見ておこうかな、という程度で見てみた次第です。

 ・・・が!! これが、まあ、すごいのなんの。のけぞってしまいました、ハイ。

 モノクロなのですが、素晴らしい美しさ! 背景に版画のような、線が基調の細か~い描写の絵があり、そこに、人間が実写で配されています。なんだか、人間がアニメの一部に見えてくるのです。あの人たち、絵じゃない? みたいな。でも、普通に動いているんです。

 先日見た『天才スピヴェット』が“飛び出す絵本”なら、こちらは、“動く絵本”といったところ。

 とにかく、そのアニメーション技術に目を見張ります。どうやって撮ったのだろう・・・。と思って、ネットを検索したら、ちらほらありましたけれど、まあ、折角だから色々詳しく知りたいなぁと思い、こりゃ、展覧会が楽しみだ! と期待値がいやがうえにも高まってしまった訳です。

 でも、展覧会でのゼマンのコーナーはほんのちょっとで、肝心の撮影技術に関する展示はほぼゼロ。がーん、、、。

 おまけに、チェコといえば、シュワンクマイエルだと勝手に思っていた私は(展覧会概要でも紹介されていたんだもん)、彼のアニメの原画でも見られるかと思っていたら、それもなく・・・。え゛~~、、、。

 というわけで、まあ、展覧会にはいささか失望したのですが、しかし、本作は本当に素晴らしいです。ストーリーも、60年近く前という制作時代を思うと、考えさせられる部分もありますが、それよりなにより、やっぱり映像の美しさ、緻密さ、素晴らしさ、これに尽きるでしょう、本作は。

 ツタヤでレンタルできますので、アニメ好きの方も、そうでない方も、是非ご覧ください。見て損はありません。

 

絵本が動いている、そんな感じ。




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やさしい人(2013年)

2014-11-24 | 【や】



 ちょっとだけ名の知れた中年ミュージシャン、マクシムは、自立しきれず親の家に居候。若い女性メロディと束の間恋に落ちるが振られ、荒れるマクシム。どんづまりの彼がとった行動は、、、。イタ過ぎるだめんず映画。

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 いきなりですが、、、何なんでしょうか、あのマクシムを演じるヴァンサン・マケーニュという俳優さんの髪型は・・・。毛の量が恐ろしく少ない長髪で、さらには後頭部に髪がなくて、なんつーか、カッパみたいなんだよなぁ。どうしてもそこに目が行っちゃう。

 ま、それはさておき。、、、個人的に、マクシムのようなイイ歳こいて自立しようとしない大人が好きになれない私には、何だか不思議な作品でした。意外に嫌悪感を抱かなかったのです、マクシムに。

 某全国紙の夕刊に掲載している沢木耕太郎の「銀の街から」で紹介されていたのだけれど、沢木の文章より、掲載されていた作品のショット--浴槽に浸かるマクシムをじっとお座りして見ている犬--もう、これで劇場行きが決まりでした。これ、ポスターにもなっていたのですねぇ。ホント、ステキなショットだと思います。

 そう、この犬、カニバルが、結構いい味出しています。ヴェルレーヌの詩が好きな犬、なんて、なかなか憎いじゃないですか。孤独な捨て犬だったのをマクシムの父親が拾った、ってことなんだけれど、どこかマクシムの境遇に通じる感じがします。

 マクシムも、ちょっとばかり名が知れた程度で、決して自分が納得できるミュージシャンではないし、今のささやかな名声だってこのままじゃすぐに消え去ってしまうことが彼には分かっている。メロディとの恋は、そんな彼の孤独感や焦燥感を、一時的に忘れさせてくれるものだったのかも。

 メロディに振られた後の彼は、名実ともにただのストーカーなんだけれど、私がイタいと感じたのは、ストーカーになった後より、むしろその前かな。メロディが通うダンススクールのレッスンに乱入して一人踊り狂うシーンがあるんだけれど、もう、あれはサイテーだと思ってしまいました。私がメロディだったらドン引きもいいとこです。

 、、、なぜそんなにイタいと思ったか。まあ、冒頭書いたとおり、異様なカッパみたいな髪型の頭を大げさに振りながら踊っている姿は、ハッキリ言って「醜い」の一言だったからです。踊りも何だか究極の自己陶酔にしか見えず。醜い男の自己陶酔ダンス、こんなもん、誰が見たいかっての。ほとんど、気持ち悪いの域です。

 ただ、マクシム自身に嫌悪感を抱かなかったのは、多分、後半、彼がストーカーになっちゃったからだと思うのですね。なんかもう、破れかぶれ的な、メロディにすがるしか生きる道がない、ってことを体現しているその様が、もうイタいもクソもないというか・・・。そうか、あなた、そこまで追い詰められていたのか・・・、みたいな。

 形は違うけれど、人生折り返し点を過ぎれば、誰だって、そういう「どうしようもなさ」みたいなものって抱えていると思うのです。若い頃はそれでも、まだ自分の人生の可能性を信じることができたし、そこに逃げ道を見出せた。でも、もうこの歳になると、そんなことあり得ないって直感で分かってしまう。だから、何かにすがりたくなる。すがりたい何かが、この手からすり抜けようとすればするほど執着してしまう、そういう、心のどうしようもない動きに、マクシムは外面も構わず正直にしたがって行動した訳です。

 それで他人を傷つけているのだから、褒められたことじゃないけど。こんなサイアクな形になって表出するケースは少ないけれど、中年の男女の誰しも、みんなあると思うのだよね、人生そのものに対する焦りが。

 沢木は、マクシムを定型から外れた男の成長物語的な感じで書いていたけれど、まあ、確かにそういう見方もあると思うけれど、マクシムがレールを外れた人間の象徴とは、私には思えなかった。定型・非定型を問わずだと思うのだよね、こういうの。むしろ、定型にある人の方が、こういうのは自覚のないところで疼いている傷なんじゃなかろうか、と。

 同じ女性としては、メロディみたいなタイプは嫌いなんで、ああいう女に人生振り回されるのは、男としてサイアクな選択だとは思いましたが。もっと優しく賢い女はゴマンとおりますよ、世の中に。

 ま、良い作品だとは思いますが、何となく、好きとは言い難いので、★は少なめです。

 

生きるってタイヘンだ・・・。嗚呼。




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クヒオ大佐(2009年)

2014-11-19 | 【く】



 ジョナサン・エリザベス・クヒオ。すごい頭の悪そうな偽名・・・。でも、騙されるときは騙される。実際にあった話なんだから。

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 実在のクヒオに関するニュースは、リアルタイムで記憶にありまして、映画化された時も、若干興味を抱いたのですが、どうもわざわざ劇場まで行く気になれず、1年くらい前にBS放送分を録画したのを、ようやく見た次第。

 よく、詐欺に遭った被害者に対し、「何でこんなヤツに騙されるのさ」と言う人がいます。例えば、オレオレ詐欺で大金をむしり取られた老親に、何で確かめもせずに金を振り込んだんだ!と怒る息子や娘とか・・・。まあ、怒りたくなる気持ちは分かるのですが、騙されるって、そういうもんじゃないでしょうか。

 幸い、私自身は、今のところ金銭面で騙されたことはなく(騙されるほど持っていないからですが)、それ以外の面でも、詐欺みたいな話に遭ったことはないのですが、男にまんまと二股掛けられていた(らしい)ということはありました。というのも、その男の身の上に大変なことが起き、それで知りたくもないのに、「私が本命」と名乗る女から電話がかかってきて判明した次第でして・・・。もう20年も前の話ですが。今もってコトの真相は謎のまま・・・。何しろ、当の男は(生きてはいますが)別人格になってしまい、確かめようもないのでした、、、ごーん。

 はい、ここで、大抵の方は「真相は謎のままじゃなくて、二股掛けられてたんだよ、認めろって」と思われるでしょう。そーなのです、「謎」と書いてしまう私は、まさに典型的な騙され人、、、なんだろうなぁ。騙される人って、こういう心理なんだと思うわけです。

 ちなみに、私は、ぜーんぜん、二股なんぞ疑ったことがありませんでした。それは、男が完璧に立ち回ったから、というよりは、私が疑うことを全く知らなかったから、という方が大きいでしょう。

 本作での、しのぶさんや春さんも、そうでしょうね。傍から見れば、笑っちゃうくらいのバレバレなのに。本人は至って自然に信じているのです、ジョナサン・エリザベス・クヒオを。大体、クヒオはそれほど頭の良い詐欺師じゃありません。むしろ、馬鹿と言っても良いでしょう。実際、本作での彼が手にした金は大した額じゃありません。

 なのに、真っ当に生きているしのぶさんも春さんもコロッと騙されているのです。真っ当に生きているから、かな。

 それは、オレオレ詐欺とは違って、色恋が絡むからだ、という見方もあるでしょうが、オレオレ詐欺だって、子を思う親の情、あるいは金銭欲といった、人間の本質的な欲求を刺激していることには変わりありません。

 本作では、クヒオを堺雅人という(私はあんまし好みじゃないけれど)イケメンが演じているため、こういう顔形の男だから成立する話かと思えば、実際のクヒオは、イケメンとは程遠いおじさんです。でも、騙された、、、。

 案外、人間、簡単に騙せちゃうものなのかも知れません。しかし、そうと分かっても、「誰かを騙してやろう」というその心理は分かりません。クヒオも、騙してやろう、と思っていたわけじゃないように見えました。しのぶさんのことも、春さんのことも、クヒオの正体を見破っていたホステスさんも、クヒオは女性として惹かれるものがあったので近づいたのではないでしょうか。でもって、彼は金に困っていた、だから、彼女たちに出してもらおう、みたいな短絡的な発想だったとしか思えません。でないと、あんな突飛な行動、却ってとれないと思うのです。

 しかし、騙されたと分かった後の、しのぶさんと春さんの行動は正反対でしたねぇ。受け入れたしのぶさん、受け入れられなかった春さん。どっちの気持ちも分かるような。そしてどっちも、クヒオのことがまだ好きなんです。

 本作でのクヒオを詐欺師、というのは、ちょっと違う気がしますね。頭のねじが1本くらい外れた、貧乏なアーミーマニアのおっさんです。

 騙される女しのぶを、松雪泰子さんが実に巧みに演じておられました。また、クヒオの正体を一瞬で見抜くしのぶの弟を新井浩文さんが好演していて、これが一番可笑しかったかも。後は、全編、哀しい雰囲気漂う作品でした。

 映画としては、若干散漫な印象があったので、★は少なめです。


好きな男or女に金の話をされたら、迷わず逃げましょう。




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天才スピヴェット(2013年)

2014-11-18 | ヘレナ・ボナム=カーター(H・B・C)



 科学の才能に恵まれた10歳のT・S・スピヴェット(テカムセ・スパロウ・スピヴェット)は、自分の発明がスミソニアンで表彰されることを知らされる。その少し前に双子の弟レイトンを銃の暴発事故で亡くし喪失感に覆われていたスピヴェット家から、T・Sはこっそり抜け出し、一人スミソニアンを目指す!

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 天才児が主人公のハートウォーミング映画は結構あって、まあ、嫌いじゃないのだけれど、本作については、ただただヘレナ・ボナム=カーターが出演しているので見たかったのでした。その後、監督が『アメリ』の人だと知り、あれは私はダメだったので、正直どうかなー、と思いながら公開初日に劇場へ行きましたが、これは、一応アタリかな。

 3D初体験でございました。この映画で3D? と思ったけれど、なるほどね、という感じでした。何というか、飛び出す絵本的な3D。心配したほど目も疲れませんでした。全編、とにかく映像が美しい。

 さて、タイトルからもお分かりの通り、主人公は天才のスピヴェットなのですが、スピヴェットというのはラストネームでして、天才児のファースト&ミドルネームは、T・S(テカムセ・スパロウ)なのよね。ちなみにお父さんであるカウボーイ親父はテカムセ・エリヤ。天才児はスピヴェット家の長男なのです。

 そもそも、天才児に一人旅を決意させたのは、二卵性双生児の弟レイトンを亡くして意気消沈する両親の姿。なんたって、レイトンは天才児とはキャラが全然違って活発な野生児で、カウボーイ親父のお気に入りだったのだから。

 そんな両親の喪失感を、自分はどうしても埋められないと強く感じた天才児は、タイミングよくかかってきたスミソニアンからの電話での招待に応じることにしたのです。たった一人で、、、。う~、泣けるよ、このいじらしさ。

 始まります、天才児の一人旅。まあ、この辺はありがちな、無賃乗車&ヒッチハイクで、無事スミソニアン着。、、、でもって、いよいよ授賞式でのスピーチです。

 このスピーチが、、、。泣けます。いえ、見ている間は泣きませんでしたが、今、思い出すと泣けるのです。レイトンの亡くなった事故の責任が自分にあると、天才児は深く自分を責め続けてきたことが、ここで分かるからです。ちがうちがう、事故の最大の原因は、レイトンに銃を与えたカウボーイ親父なのよ、と、見ている大人たちは心の中で叫びます。私も叫んでいました、心の中で。

 この天才児のスピーチを、どういう訳か、ヘレナ・ボナム=カーター演じる母親のクレアが会場で聴いています。この辺、描写がないので、どういういきさつで何時の間に彼女がワシントンに来ていたのか(カウボーイ親父も来ているんだけど)がナゾ。まあ、でもそんなことは気にならない。

 最終的に、両親はT・Sが一人自分を責めながら心を痛めていたことを知り、家族再生でハッピーエンド、という、言ってみれば結構単純なストーリーです。

 ただ、まあ、スピヴェット家の人々がみんなもの凄く愛すべき変人たちで、その変人ぶりを見事に飛び出す絵本的に描いてくれていますので、非常に楽しめます。T・Sが一人旅で出会う人々ももれなく愛すべき変人です。

 天才児とはいえ、やっぱり子どもは子ども。恐ろしく知恵が回るかと思う半面、短絡的というか単純というか。親の愛情に飢えている、一人の男の子なのです。そして、天才児でもコンプレックスを抱くという当たり前の事実。自分よりゼンゼン勉強なんかできないけど、両親の愛情を自分より一杯受けているレイトンは、彼にとって、どうにもこうにも乗り越えがたい存在なのです。天才児はつらいよ、トホホ・・・。

 天才という峰が高いだけに、恐らく彼のこれからの人生、谷も深いに違いない・・・。けれども、彼はきっと、あの愛すべき変人家族に囲まれて、それを乗り越えていってくれるだろうな、と期待させてくれる作品です。

 ま~、何と言っても、特筆すべきは、T・Sを演じたカイル・キャトレットくんの可愛さ。撮影時11歳だというけど、7~8歳くらいにしか見えない・・・。なんつーか、個人的に秘かなお気に入りのマイケル・ヴァルタンの子ども時代はきっとこんなだったんじゃないか、と思わせるようなイケメンぶりで、おまけに演技もバッチリと、もう、彼に尽きるでしょう、本作は。

 我が愛するヘレナも、ステキな変人お母さんを演じておられまして、久々のハマリ役ではないでしょうか。こういう知的なぶっ飛んだ役は、彼女にピッタリです。
 
 見に行って良かった!


天才児も楽じゃない・・・。




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シュガーベイビー(1984年)

2014-11-11 | 【し】



 アラフォーの肥満&干物女マリアンネ。が、ある日、地下鉄の運転手に一目惚れ。毎日が一変する!! 幸せな2週間を過ごすが、彼には気の強い妻がいた、、、嗚呼。

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 本作は、中野京子氏の著書「恐怖と愛の映画102」(文藝春秋)に紹介されていて、前々から見たかったのだけど、残念ながらツタヤのレンタルにはなく、amazonでDVDを購入するか否か、長年逡巡していたのであった。何しろ、私はあの『バグダッド・カフェ』がダメなクチだったんで、同じ監督&主演女優って、大丈夫なのか、と心配だったのよ。

 でも、中野さんの文章は非常に素晴らしく(他の作品の紹介も、どれどれ見てみたい、と思わせるものばかり)、やはりここは、中野さんの文章を信じて買ってしまえ! と、清水の舞台から飛び降りるつもりでゲットした次第。だって、3,000円以上するんだもん、ハズレだったら高すぎる・・・。

 というわけで、見てみました。が、これはアタリだったかも。少なくともハズレではなかった!

 まぁ、、、本作は、なんつっても、とにかく、マリアンネに尽きる。凄いんだよ、彼女。まあ、お世辞にも「キレイ」とか「カワイイ」とか言ってあげられないルックスで、おまけに身なりも構わないわ、私生活もベッドで食事してそのまま眠りこけるわ、で、ある意味、“ただ生きている”状態なわけ。

 でも、自分よりかなり若くてイケメンの地下鉄の運転手さんに一目惚れしたことで、彼女は、まさしく“生きている女”になるのだ! 彼が自分のことを知らなくてもヘーキ。とにかく、彼のことを調べるために仕事も長期休暇を取って休み、調べまくる。この様はまさにストーカー。でも、ゼンゼン深刻さはなく、むしろ、笑いながら見てしまう。もう、とにかく“可笑しい”のよ、彼女。

 相手が振り向いてくれる保証もないのに、ダブルベッドは買うわ、セクシーランジェリーはオーダーメイドするわ、、、。そこかい! 痩せるんが先ちゃうんか! と突っ込みを入れつつ、彼女の暴走ぶりを楽しく見てしまう。

 で、いよいよ、イケメンに相対することに! このイケメン、彼女が自分のことを嗅ぎ回っていたと知っても、別にビビらないのだ。そして、ダブルベッドにイン!! それから、2人のめくるめく2週間が始まる次第(イケメンの奥さんは葬式で2週間不在なのね、その間を狙って彼女は彼に声を掛けたわけ。すげ~~)

 まあ、正直、ちょっとどうかと思う半面、元気になれるのも確か。ここまで自分に正直に猛進できるなんてアッパレでしょう。そりゃ、現実にこれやったら犯罪だけれど、これは映画。こういうのはアリだと思う。

 そして、ヒロインが、おデブちゃんなのがミソ。彼女、顔が不細工なわけではないのだけれど、いかんせん、あの体形。でも、だからこそ、本作は成立するのね。だって、やや不細工程度のフツーの体形の女じゃ、むしろ本当のストーカー映画になっちゃって、ただ怖いだけだもんね。彼女はそういう意味で、コメディーを体現できる、存在感ある女優さんということ。

 途中、マリアンネとイケメンが、ダブルベッドで彼女の身の上話をするというシーンがもの凄い長回しであるのだけど、このシーンや、二人で湯船に入りながら彼の仕事の話をするシーンは、結構グッとくる。彼女のルックスとは裏腹の笑えない過去や孤独感がひしひしと伝わってくるからかな・・・。

 ラストは、ハッキリ言ってヒジョーに痛い・・・。なにも、あんな決着のつけ方させなくても、、、監督も残酷だなぁ、、、と思っちゃうけれど、まあ、あの後彼女はどうなったのか。もしかして、イケメンが運転手として初めて経験する“あれ”が、彼女の“それ”かも、、、なんてサイアクな想像してみたりして。

 ・・・いや、彼女はそんな選択しないよな、多分。しないでほしい、もちろん。だって、彼女は2週間で本当に“生きる”ってことを実感したのだから。


「私、生きてる~」って最近いつ思いましたか?




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ラルジャン(1983年)

2014-11-07 | 【ら】



 ちょっと裕福な家の少年がやらかした「偽札使用」という犯罪。その偽札が巡り巡って貧しい労働者イヴォンを人生の谷底に突き落とすという不条理極まる話。

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 ブレッソンの遺作で知られた本作です。ブレッソン作品を見たのは、これが2作目。最初はあの『スリ』。本作も、やはり、『スリ』とタッチは似ています。ムダな描写やセリフが一切ないところとか。最初から最後まで目が離せません・・・。

 不条理も、ここまで来ると、もうなんというか、虚脱状態になります。特に、本作は冤罪による不条理なので、もう、見ていてドキドキしっぱなしで疲れます。そう、冤罪ものは本当に見るだけでもの凄く体力というか、エネルギーを消耗します。あまりに不条理すぎて動悸が止まらないのです。

 『スリ』はドストエフスキーの「罪と罰」が下敷きにあるということだけれど、あの映画はそんな哲学を見ている者に全く感じさせない、ひたすら「スリというお仕事」にフォーカスした作品だったので、見ている方も、ドキドキはしながらも、やるせなさに襲われるということはなかった気がする、、、。と思って、みんシネで『スリ』に何を書いたか見たけれど、やっぱり消耗した形跡はナシ・・・。

 でも、本作は・・・、とにかく見ていて、く、苦しい。ブレッソンの怒りなのか、これって。厳然と横たわる“格差”。その前にあまりにも無力なイヴォン。これでもかと不運と不幸が続き、彼は、遂に“殺し”に手を染めてしまう。本人に責任のないことが引き金となって、人間とはここまで堕ちて行くものなのだ、しかも、いとも簡単に堕ちて行くものなのだ、ということを、一切の無駄を省いた描写でえげつないほど見せつける。何が彼をここまでの創作に駆り立てたのだろう、と思うと、これまたドキドキしてしまうのです。

 本作にしても、『スリ』にしても、要は金、カネ、money、そう、ラルジャンなわけです、人生を狂わせしもの。

 よく、借金がらみで殺人事件が起きていますよね。金を貸してくれないから殺した、金を返してくれないから殺した、どっちも、正直なところ動機としては分からない。痴情のもつれの方がよっぽど分かります。でも、本作を見ると、何となく少し「カネで殺し」が分かってしまう気がします。

 イヴォンの殺しを見ていると、殺しに対し得るにしてはあまりにも“はした金”です。でも、イヴォンに躊躇は一切ない。そこが怖い。こうなっちゃうんだよ、人間は、と言われているようで。そして実際に起きている、カネで殺しが、あちこちで。

 お金って、額の多寡にかかわらず、持つ人の人間性を露出させてしまう、実に恐ろしいツールです。お金って人間にとって、最悪の発明品だと常日頃ぼんやり思ってはいましたが、ブレッソンにここまでダメ押しされると、そうはいっても必要悪なのよ、と反論したくもなってくるような、、、。

 途中、イヴォンに優しさを見せる人もいるのですが、最早、彼にとってそんな程度の善意は何の救いにもならなかった、ということなんでしょう。最初に偽札を使った少年は、まさか、自分の行為が一人の見知らぬ人の人生を完全に破壊しているだなんて、思ってもいないであろうことが、究極の不条理です。

 恐るべし、ブレッソン、、、。


恐ろしきモノ、それは「お金」




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マイ・ルーム(1996年)

2014-11-04 | 【ま】



 長年音信不通だった姉妹。姉ベッシーが白血病と分かり、骨髄移植の可能性を求め妹リーに連絡したことから、20年ぶりに再会を果たす。老いて寝たきりの父親を独身のまま介護するベッシーと、自由奔放そうに生きてきたリーは、やはり相容れない。

 リーに反抗ばかりしている長男ハンクが介在することで、ぎこちない姉妹の関係に変化が、、、。

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 自分を殺して家族のために犠牲になる姉 VS 自由奔放な妹、という構図。まあ、ありがちです。その姉、ベッシーの終盤でのセリフが、本作での全てかも知れません。正確じゃないですが、そのセリフとは、「私が選んだ人生。私は幸せ。彼ら(寝たきりの父親と認知症気味の叔母)をこんなに愛しているから」・・・です。

 幸せとは、本人が感じるものであり、周りが外から見えることだけで決めるもんじゃない、ってことですね。確かに、人生の充実度とは、いかに愛されたか、よりも、いかに愛したか、にあるというのには同感です。

 でもですね、ベッシーの状況を見て、それを言葉通りに受けとめるのはかなり難しいですよ、正直な話。そもそも、ベッシー、どうやって生活しているのか、経済状況がまったくのナゾです。仕事をしている風が一切ないのです。彼女の世界は、あの家で完結しちゃってる、っぽいのですね。強いて言えば、時折通っている病院が唯一の彼女にとっての外界。

 確かに、結婚歴の有無、子どもの有無、それらが幸せの尺度でないことはよく分かります。しかし、どう見ても、彼女が「自分で選んだ」と言うその過去は、それは、選ばざるを得なかった、と言い換えた方が正確なのではないでしょうか。自分のために費やす時間がほとんどないのです、ベッシーには。これで、「幸せ」と言われても、素直に「そう、そう言えるなんて、本当に幸せね」とは言い返せませんね、私は。

 が、しかし、それは私が根っからのわがまま勝手エゴイストだからなのかも知れません。こうして、他者のために時間を使い切っても、それを心から幸せと言える人も、世の中にはいるのかも知れません。少なくとも、私の周囲には見当たらない、というだけで。類友って言いますからね。

 ただ、本作は、介護が重要なファクターになっている作品でもあり、そういう意味では、非常に重いです。親の介護もそうだけれど、自分が要介護の存在になったらどーすんだ、という切実な問題。考えただけでも心がズーンとなります。私には子がおりませんから、公的な援助を受けざるを得ないんでしょう。できることなら、社会保険料を払えている間にお迎えが来て欲しいもんです。

 でも、まさに本日、先日受けた健康診断の結果が出てきて、申し分のない総合「A」判定だったしなぁ。当面、くたばりそうにない自分、、、がーん、、、。もちろん、健康には常々気を付けているし、感謝します。ならば、狙うはぴんぴんころり。まぁ、多くの人の理想ですよね。

 本作でも、ベッシーが亡くなった後こそどーすんだよ、ってことです。あの性格のリーに介護生活が務まるとは到底思えません。結局、この問題はエンドレスなのです。そこがもの凄く重さを感じてしまいます。本作自体は、少しだけ姉妹融和という兆しが見える救いのあるラストでしたが、問題はその後なんだよ、っていうツッコミが私の頭の中では渦巻いておりました。

 あと、ディカプリオ演じるハンクが、ベッシーに書置きを残して出ていくシーンがあるのですが、そのちょっと後で、何の説明もなく普通に戻ってきています。また、デ・ニーロ演じる医者のいる病院の受付に、その兄と思われる男性がいて、これがちょっと知的障害のある人っぽいのですが、この設定が全然ストーリー的に意味をなしていないのもナゾです。

 ・・・というわけで、映画としてはヒジョーに宙ぶらりんかつ中途半端、おまけに鑑賞後に心が重ーくなるってことで、評価は低めです。


介護のことを嫌でも考えさせられる映画




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