以下、上記リンクよりストーリーのコピペです(青字は筆者加筆)。
=====ここから。
円城家に新しい女中さんがきた。田中姫子
(小川真由美)は福島の貧しい農家に生れ、砂利トラック相手の売春婦にまで身を落した過去をもっていた。だが、砂利トラックの運転手鈴木亀吉
(北村和夫)を知ってからは、地道に結婚資金を稼ぐために、弥生家政婦会に所属したのだった。
円城家は、狭心症で寝たきりの主人礼次郎と、芸者あがりの後妻由紀
(高千穂ひづる)、長男のテレビライター英介
(梅宮辰夫)、長女の短大生冬子
(緑魔子)、それに婆やのしの
(浦辺粂子)が、広い邸宅に住むブルジョア家庭であった。姫子にとっては上流家庭の雰囲気だけでも、快いものであったが、礼次郎の莫大な資産をめぐる由紀と冬子の争いには、へきえきさせられた。
そんな姫子に悲劇が襲って来たのは、冬子の誕生日であった。らんちき騒ぎの末、クジ引きで負けた冬子が、その全裸の代りを姫子に要求したのだ。だがそれは英介の出現で、救われた。前から姫子の肉体を狙っていた英介にはよいチャンスであった。
思いあまった姫子は、弥生会のはつ
(杉村春子)に廃業を申し出たが励まされて、ひとまず亀吉の実家に帰った。だが英介の子供を身ごもったと知った亀吉に追われ、再び円城家に帰った。
一方冬子は、財産を狙い、礼次郎の命を縮めて英介とも関係をもつ由紀へのはらいせに、姫子を英介の別荘にやり、由紀との三人の対決を仕組んだ。
数日後、由紀に呼び出された姫子は、二百万円で子供をゆずって欲しいと持ち出された。財産目当の由紀が巧みに考えたことであった。思いあまった姫子は、礼次郎にすべてを話した。だが、礼次郎は、姫子を養女にしようと言った。
あわてた英介、冬子、由紀の三人は、姫子を誘いだし湖に突き落した。だがその夜、英介は水びたしの姫子によって猟銃で射殺された。姫子の執念が、英介の前に辿りついたのだった。
=====ここまで。
すごい豪華キャスト、、、、(嘆息)。
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先日まで
神保町シアターにて「1964年の映画――東京オリンピックがやってきた「あの頃」」という特集をやっていて、『愛と死をみつめて』とか『乱れる』とかはどーでもよいけど、『月曜日のユカ』『五辧の椿』『散歩する霊柩車』なんかは見たいなぁ、、、と思っていて、でも『月曜日のユカ』『五辧の椿』はDVDも出ているし、何よりスケジュール的になぁ、、、と思って諦めかけていたんだけど、ひょっこり平日の昼間に時間が出来て、滑り込みセーフで、本作を見て参りました。
これは……、見に行って正解! ソフト化して欲しい!!
◆このキャストで面白くないわけない。
オープニングが、何やら怖ろしげで(スクリーンの右半分に小川真由美の虚ろな表情の顔、左半分に「悪女」とタイトルが入り、小川真由美のあの調子のナレーションが流れるのよ)、これは、一体どんな悪女を小川真由美サマは演じておられるのだろう、、、、と思って見ていたら、ゼンゼン違うやん! え~~っ!! となりました。本作の“悪女”は、小川真由美サマではないよね??
……しかしまぁ~、とにもかくにも、今から思えばすんごい豪華キャスト。主役の小川真由美サマにとって、同年の『二匹の牝犬』での緑魔子とのW主演作に続く主演映画。脇を固めるのは、家政婦紹介所の元締めを杉村春子、円城家のドラ息子を梅宮辰夫、姫子の彼氏を北村和夫、家政婦の先輩を浦辺粂子、、、と錚々たる顔ぶれ。
緑魔子といえば、私にとっては
『盲獣』なんだけど、やっぱり本作でももの凄い存在感で圧倒。緑魔子演ずる冬子嬢のキレイな脚を風呂場で愛おしそうに撫で洗う姫子の小川真由美の画は、もう邦画の名シーンの一つと言っても良いと思う。それくらい、この2人が同じ画面にいるのがキョーレツなのであります。
私の知っている小川真由美は、やっぱし
『八つ墓村』のイメージが強く、妖艶で、得体の知れない怖さと貫禄を感じるのだけど、本作での彼女は、ホントに田舎から出て来たちょっとオツムの弱い娘、って感じで、かなり意外。当然、貫禄などもなく、華奢で可愛らしい。金持ち独特の底意地の悪さや些細なことなど、あっけらかんと気にせずに、「わだすは人が喜ぶ顔見ると、嫌なことぜ~んぶわすれるんです~☆」とか言いながら、冬子の脚を泡泡にしながら洗っている姫子は屈託がない。ホントに、小川真由美が可愛い、なんて意外過ぎる。
ドラ息子・英介に靴を磨けと言われて、靴を磨く姫子に、「君、ボーイフレンドいるの?」と英介が聞くと、姫子は「はい、一人!」なんて無邪気に答える。英介が「一人いれば十分なんだよ!」と大笑いして返すシーンは微笑ましくさえある。
一方の冬子嬢は、仏文を学ぶ女子大生なんだけど、レズビアンで、しょっちゅう家にガールフレンドを連れ込んでお楽しみに耽るという、この時代にしてはかなり先鋭的なお嬢。緑魔子、ある意味、ハマり役かも。
冬子の継母・由紀を演じた高千穂ひづるが、いかにも芸者上がりという感じで、おまけに冬子に負けず劣らず性悪なところが笑える。この継母、心臓が悪くてほとんど死にかけて役立たずの夫(円城家の主)を、早く死なせようと添い寝して興奮させ(もちろん出来ない)、その一方で、継子のドラ息子・英介とセックスしているのである。
まぁ、金持ちの家族が狂っている、っていう設定はありがちだけど、本作の円城家の人々もなかなかの狂いっぷり。しかも、演じているのが緑魔子と梅宮辰夫だからね、、、。そこに思いがけず入り込んじゃった、これまたある意味狂っている田舎娘が小川真由美、、、。面白くないわけないよね。
◆“悪女”とは誰のこと?
英介にレイプされて妊娠してしまった姫子。そのせいで、彼氏の亀吉には「淫売!」とまで言われて捨てられるんだけど、でも、姫子は(この辺がオツムの弱さを露呈しているんだけど)英介の子を妊娠したのだから、英介と結婚すれば良い、と考えちゃう。使用人など犬猫以下と思っているような人間との結婚を、本気で考えてしまう、、、。亀吉への未練とか、ほとんど描かれていない。
結局、あれがあってこれがあって、英介に殺されかけた姫子は、逆に英介を猟銃で射殺する。お腹の子の父親でありながら、自分と子どもをもろとも抹殺しようとしたことへの怒りだったのかなぁ。それとも、殺さなければ、殺される、という思いからなのかなぁ。その両方かも知れない。とにかく、姫子は英介を殺し、自首して、刑務所で出産する。
まあ、中盤から終わりまでは、前半のノリは一転して暗く陰惨な感じになっていくのだけど、詰まるところ、本作での悪女は、小川真由美演ずる姫子ではなく、冬子と由紀になるのではないか。姫子は、飽くまで被害者で、殺されそうになったから殺した、ということを考えると、悪女とは言い難いでしょ。
でも、あの曰くありげなオープニングからは、どう見ても、姫子が悪女である、と言っているように見えるのよね。この辺が、ちょっと最初の印象と中身がゼンゼン違うなぁ、、、という感想になった所以であります。
◆余談&東京五輪
緑魔子と梅宮辰夫は、その後もたくさん共演しているらしい。浦辺粂子とは、『盲獣』でも共演している、、、と思ったら、あちらは千石規子だった。すんません。
小川真由美もそうだけど、この頃の若い女優さんは、皆、ものすごく美しいし、なんというかオーラがある。姫子のような田舎娘を見事に演じていても、やはり端々に見せる美しさは隠しようがない。映画スターという単語がしっくりくる役者さん達である。
60年代~70年代の邦画を見ると、勢いを感じる上に、挑戦的で見ていてゾクゾクさせられる作品が多いと思う。今の邦画も良い作品はあると思うが、良くも悪くも商業映画が主流で、やはりこの頃の、アバンギャルドさは感じられない。業界がある程度成熟した、という面もあるとは思うが、本作などを見ると、やっぱり何か現在の邦画に物足りなさを感じることは否めない。
それから、オリンピック、、、。
東京オリンピックなんて全く興味ない、というより、むしろ、今からでも1,000億円払ってでも返上して欲しいくらい。前回の1964年に東京にオリンピックを誘致する意義は確かにあったんだろうなと思うけど、2020年に東京でオリンピックを開催することに、一体どれほどの意義があるのか疑問。いや、ほとんど意義などなく、ムダだと思う。オリンピックやってる場合か、とさえ思う。
オリンピック開催中に、東京湾直下の地震が起きたらどーすんの? 津波、確実に湾岸エリアに来ますよ?? そこに、施設がたくさんありますが、どーすんの、避難とか。今の五輪実行委員会の面々が真面目にそういうことを考えているとは、到底思えない。地震なんて来るわけない、んだよね、きっと。でも、来ない保証はないよ??
○兆円というお金があれば、今、東京が、日本が抱えている喫緊の課題がたくさん解決できるはずなのに、福島だっておよそアンダー・コントロールじゃないのに。
私は、東京に住んでいて、あちこちで五輪ポスターを目にするけれど、目にする度に憂鬱になり、怒りさえ覚えます。関心の全くない都民の一人として、オリンピックなど関係なく過ごしたいのに、向こうから強引にやってくる。
せめて、興味ない人にはオリンピックなど見聞きしなくてすむよう静かに過ごさせてくれ。って……ムリなんだろうな、、、トホホ。
緑魔子、やっぱりイイなぁ~。
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