映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ナイトクローラー(2014年)

2016-09-21 | 【な】



 コソ泥して盗品の金属を売りさばいてどうにか生活していたルイス(ルー)・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)は、たまたま事故現場でパパラッチの仕事ぶりを見かけ、興味を持つ。見よう見まねで、自分もパパラッチ稼業を始めたところ、どうやら性に合っているのか、撮った映像を地元のマイナーTV局が思いの外良い値で買ってくれた。

 これに味を占めたルーは、真正パパラッチに変貌していく。犯罪スレスレのことも平気で行い、いかに衝撃的な映像を撮るかに心血を注ぐようになる。

 ある日、決定的な大スクープになると確信するネタを掴んだルーは、超スクープ映像を撮影するべく、夜陰に紛れて立ち回るのだが、、、。

 ジェイク・ギレンホールが痩せすぎでコワいけど、面白い。傑作!


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 昨年、劇場に行きそびれました。やっとこさDVD鑑賞にこぎ着けました。


◆ルー君は、まさに、、、

 まあ、客観的に見たら、ホントにもうゴキブリ(以下「G」)みたいなルー君なんですけれども、ここまで突き抜けたG野郎は、むしろアッパレだとさえ思いますね。

 Gに良心だとかモラルだとか、そんなもんあるわけない。万人に嫌われようが疎まれようが、ただただ己の欲望を満たすために行動あるのみ。手段選ばず。これぞ、Gの真骨頂でしょう。いつもはコソコソ人目を忍んで暗闇を這い回っているけど、見つかったらば一転、対象物の真正面に羽音を立てて飛んで向かって行く。何者もが避けて通りそうな腐敗臭漂うモノでも物ともせずにかっ喰らう、、、。

 まさにGの生態そのものじゃありませんか、ルー君。


◆最初からイッちゃってるルー君。

 登場シーンのジェイク・ギレンホールの顔が、もう既にヤバい。こんな人、街中歩いていたらコワい。一目で危ない人って分かる人、そうそういないけど、ルー君はそれ。目がギラギラ、笑った顔は口が耳まで裂けている。ギャ~~~、口裂け男ぉ~~!!

 ルー君の生い立ちが気になるところだけれど、そういうのは一切描写無し。まあ、推して知るべしですけどね。

 彼の部屋がまた、何とも言えない。わびしい部屋なんだけれど、小ぎれいにしていて、実際、ルー君、結構きれい好きっぽい。助手のリックがガソリンをちょっと車体に着けただけで「塗装が剥げる! 今度こんなことしたら殺してやる(クビにしてやる、、、だったかも?)」とか言うんです。なんか、こういうところが、ルー君の歪みを見事に表していて秀逸。

 あと、自分を売り込むことにはもの凄い饒舌になるルー君。盗んだ金属を売りに行った社長に、「志が高くて覚えも早いです(だから雇ってくれ)」とかベラベラ喋る喋る。挙句、社長に「コソ泥は雇わない」とバッサリやられるんですけど。映像を売りに行った先のTV局のディレクター・ニーナ(レネ・ルッソ)にも、同じような文句を、これまた立て板に水のごとく、、、。でもこれが、聞いている方からすれば、ただの誇大セリフだとバレバレなところが悲しいルー君です。

 でも、ルー君の強みは、そんなことには全くめげない傍若無人さ。プライドなんかない。だって、彼はG野郎なんだから、、、。


◆我々視聴者はG以下。

 本作の何が一番気に入ったかって、もちろん、ハッピーエンディングなところです。変にルーに辛酸を舐めさせたり挫折させたりしない。つまり、説教臭くないのです、全く。

 ある意味、ブラックコメディですよねぇ。Gがトントン拍子で成功していく物語なんて、、、。

 でもって、そうさせているのは、我々一般社会。社会のニーズがあるから、Gが躍進するのです。皆、Gの姿を見れば、露骨に嫌悪感を表すクセに、Gが自分たちの知らない所で苦労してやっとの思いで手に入れた腐敗臭プンプンの代物には喜んで喰いつくんですからね。サイテーなのは、ルー君たちではなく、私たち視聴者なのです。G以下、ってことだわね。

 そう、本作は、ハッピーエンディングでなければならないのです。必然です。

 とはいえ、ルー君の起こした会社の今後は、順風満帆だと思うか? と聞かれれば、それはNOかなぁ。なぜなら、ルー君、いずれはやっちまうと思うのです、犯罪を。こちらの思い描く刺激的な映像のために、仕込み過ぎ、度を超し、、、。

 なーんて予想してしまう私は、所詮、常識人。Gは、全生物が滅んでも生き残ると言われる、地球上最強生物。いずれは、世界を睥睨するポジションに上り詰めるかも知れませんね、、、。まあ、それも面白いですが、映画でなら。


◆アメリカのニュース番組って、ホントにこんな映像流してるの?

 私も昔は、ワイドショーとか時々見てましたけれど、今は、まあそもそもTVを見なくなりました。先日、休暇をもらった際に、たまたま平日の昼間にTVを時計代わりにつけてしまったら、もう、うんざりするようなゴシップネタがあっちの局でもこっちの局でも、、、。しまった、と思って消しましたけれども。

 でも、本作に出てくるパパラッチの撮る映像は、日本のワイドショーなんて子ども騙しでさえない、真っ当なものに思える、それはそれはエゲツナイものでした。本当にこんな映像がお茶の間に流れているのでしょうか、アメリカでは、、、。日本のゲームが暴力的だとかって文句言っているけど、実際の血まみれ映像流している方が、何倍も罪だと思うんですが、、、。それって、私の感覚がやっぱりヘンなのかな。

 そして、これは日本でも言えることだけれど、TVで流れる映像は、決して真実とは限らないってこと。ルー君は、事故現場でより印象的な映像を撮るために、遺体を動かしたり、被害者宅の冷蔵庫に貼ってある写真を並べ替えたり、、、改竄しまくり。でも、視聴者は、そんなことは知らないわけで、それがそのまま真実だと思い込む。、、、恐ろしいけど、普通にやっていることよね、メディアは。

 ストーリーに則った映像の方がよりインパクトがある。だからストーリーからずれたものは排除する、あるいは、ストーリーに合うように手を加える。ニュース映像とは、作られたものなのです。北朝鮮のように、ニュース番組であってもLIVEじゃないと分かっている方がむしろ、視聴者が騙される確率はグッと下がるかも。ニュース番組で流れる視聴者の撮った映像だって、本当にそれが何の手も加えられていない、、、映像を加工していなくても対象を動かしたり排除したりしていないという保証はどこにもないのです。映像=真実、という私たちの脳みそに強く刷り込まれた思い込みを、この時代に生きる私たちは捨てるべきでしょう。

 図らずも、本作は、そういうことを見る者に教えてくれます。全く説教臭くなく、笑えるほどにブラックに。


◆その他もろもろ

 ジェイク・ギレンホールは、もう、凄いを超えて、不気味です。役者だからって、それこそちょっと度を超している気がする。どうしてもトイ・ストーリーのウッディーに見えるんですが、こんなに痩せぎすのウッディー、子どもが見たら泣くよね、、、。

 ニーナ役のレネ・ルッソ、60過ぎとは思えない色気と美しさ。ダン・ギルロイ監督の奥様なのねぇ、、、。知らなかった。調べたら、彼女の出演作で見た映画、ゼロだった! 名前しか知らなかったもんなぁ。「被害者は貧困層やマイノリティじゃダメ。富裕層の白人が一番よ」などとルー君にアドバイスする雇われディレクター役を、微妙な立ち位置が伝わる芸達者振りで見せてくれました。素晴らしい。

 あと、カーチェイスの映像が迫力満点でした。ルー君、あんな運転これからもしてたら、成功する前に死ぬよ、マジで。






本作は、G映画です。




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