映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ブレハッチのシューマンとショパン

2024-02-27 | 番外編

◆ワルシャワ・フィル @サントリーホール 2024.02.08

 昨年も2月に来日していたんだよね、、、と思ったら、鑑賞記録を書いていなかった、、、ごーん。何で? まあいいや。昨年はモーツァルトが良かった。

 で、今回はリサイタルだけじゃなくて、ワルシャワ・フィルと共演、しかも、なんとシューマンの協奏曲とな!!色めき立って、速攻チケット取りましたよ。今回は、抽選応募したので、席は選べず。結果として、1階席の前方真ん中と、本来なら一番良い席なのだが、何せサントリー、、、ピアノはねぇ。

 待ちに待った2月♪ あー、やっとブレハッチのショパン以外のコンチェルトがライブで聴けるんだわ~~~、とワクワクしながら行ってまいりました。

 会場に入って、見れば席は結構空いている、、、がーん。これなら、発売日当日に座席選択で買えば良かった、、、とショック。何で??昨年11月のシャハムも後方ガラガラだったし、ブレハッチでこんなに空席があるなんて信じられん。誰とは言わんが、普通に上手いだけのアイドルピアニストが即完とかの一方で、ブレハッチがこれだなんて、、、もう世も末だな。

 グチはともかく、、、ブレハッチ君、相変わらず良い姿勢で颯爽と舞台に現れました。椅子を調整したときに、ギギィ、、、って割と大きな音が出たせいか、ニッコリ(?)ほほ笑む。

 ……始まったよ、シューマン。……でも、え? え?? ……えーーーーっ!

 彼は、ショパンコンクールで優勝して、デビューした当時からずっと「中庸」と言われてきたのだ。つまり、奇をてらった演奏はしない、小手先で主張しない、ということ。しかし「中庸」なんて言われていたのがウソみたいな、超スリリングな個性的シューマンに衝撃を受けてしまいました。

 とにかく驚いた。コースギリギリを狙って猛スピードで疾走するF1みたい。そういや彼はスピード狂だそうだけど、、、。

 こんなシューマンありか!と呆然。しかし、手に汗握りながらもなぜか不快さはまるでなく、あっという間に終わってみれば、私の持つシューマンのイメージは跡形もなく破壊された感じである。もう、ルプーやリヒテルを聴いても物足りなく感じるかも知れぬ。いや、彼らの演奏も素晴らしいのだが。

 オケとは崩壊寸前だったがギリギリのところでキメていたのも、ある意味スゴい。あれは指揮者の技か。

 あまりに衝撃が大き過ぎて、何と言うか、、、あんまし他のことを覚えていない。アンコールはショパンだったけど、ボーッと聴いてしまった。大げさではなく、マジでこの後何日も引きずった。それくらい、衝撃的なシューマンだった。

 それにしても、サントリーはピアノはダメだ。まだ2階席の方がマシ。もう絶対1階席は取らない。

 あ、、、メインのブラームス2番は、洗練され過ぎず、野暮ったさも回避しつつ、良い意味で田舎っぽさ感じられて、なかなか良かった。この曲はキレイ過ぎない方が良いのよね。Vaの最後尾にピエール・ニネみたいな長身小顔のお兄さんが居て、眼福でした。


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◆リサイタル @東京オペラシティコンサートホール 2024.02.22

 8日のシューマンに脳髄直撃されてボーッとしたまま、、、というのはちょっと大袈裟かもだけど、でもまだ衝撃から覚めやらぬまま、この日を迎えましたとさ。

 この日は、何と完売。割と直前で売り切れたっぽい。というのも、2日前に行われたミューザに行かれた方が、こちらのチケットをミューザで買ったとTwitterに書いていたので。

 まあでも、確かに行ってみれば人が多くてビックリ。CD販売(買った人は公演後にサイン会に並べる)に長蛇の列が出来ており(いや、サイン会は8日のサントリーホールでもあったんだが、この日の方が圧倒的に人が多かったように思う)、見ただけで疲れるので早々にロビーから逃げる。

 席は1階前方中央寄り左側のブロックだった。これも先行抽選にしたので、席は選べなかったけど、まあまあかなと。

 で、いよいよオールショパンプログラムが始まった。前半は全部マズルカ。やっぱりこのホールはピアノの音ちゃんと聞こえるんだな~、とサントリーと比べると感じる。ブレハッチのクリアな美音がストレートに耳に入って来る。

 嗚呼、彼はショパンが一番好きなんだなぁ、、、と聴きながら思う。マズルカってのはポーランド人のための音楽なのかもね。車窓から見えたずーっと先まで地平が続くポーランドの景色が浮かんでいた。

 私は、聴いただけでマズルカの作品番号〇ね!と言えるほど聴き込んでいないが、56だけは曲と作品番号がちゃんと繋がっている。……が、ハレ?? これは56ではないのでは? と思ったけど、彼は前にも当日に曲順を変更したことがあるので、今回もそうなのか、、、と思っているうちに前半終了。

 休憩中に掲示など探したけど、曲順変更の案内などは出ていないし、うぅむ、、、。相変わらず、CD販売前には長蛇の列で、これ絶対、並んでいる人全員買えんやろ、、、。

 で、後半もマズルカから始まるかと思ったら、いきなりソナタから始まってビックリ! いや、別にいいんだけど。

 この曲はちょっと変わっているけどかなり好きである。有名な3楽章もいいけど、私はやはり1楽章と、あっという間に終わってしまう4楽章が好き。その4楽章、これまで聴いたことのあるどの演奏よりもグッときた。あの、音と音の境目が分からないような、水流のようなフレージングは、やはりブレハッチ。相変わらず美しくクリアで触れたら切れそうなのに、触れると滑らかで心地良い音に脳内占拠される。で、ホントにあっという間に終わってしまった、、、。

 最後にマズルカで占めて、アンコールでマズルカ56の2、3を披露。どうやら、ミューザでちょっとしたハプニングがあった模様。それを踏まえてのことだったみたい。

 2週間前のシューマン・ショックは緩和され、やはりブレハッチだったなぁ、、、と噛みしめながら、サイン会に並ぶ長蛇の列を横目に、足早に家路につきました。そして、先日のスピード狂炸裂シューマンは何だったのかと、帰路、改めて考える。もちろん、分からん、、、。

 正直なところ、昨年のリサイタルの方が、私は満足感が大きかった。オールショパンプロというのは最初から分かって聴きに行ったわけだが、やっぱし、私としてはショパン以外も聴きたいわけで。ドイツものなら、そりゃ何と言ってもブラームスが聴きたいし、シューベルトももちろん。ラヴェルやドビュッシーももっと聴きたいよねぇ。

 まあでも、やはりドイツもののコンチェルト、できればブラームス1番かベートーベン4番あたりを聴きたいかな。シューマンみたいに弾いたら、どっちの曲も本当に破綻すると思うが、それでも敢えてギリギリのコーナリングみたいな演奏も聴いてみたいかも。プロコかラヴェルも、彼なら面白く弾いてくれそうな気がする。あのシューマンなら、プロコとか絶対イイと思うんだが、どーでしょう。

 

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現実逃避の旅 ~ベトナム中部でのんびりしたい~ その④

2024-02-23 | 旅行記(海外)


その③につづき


 少し遅めの昼食。ベトナム宮廷料理のお店。

 

皇帝夫妻が座るとされる席の前に、、、

  

 皆さん、地ビールを飲む中、ジンジャーティ。グラスの底にショウガの大きな欠片がいっぱいあるけど、飲むとそれほどショウガがキツい感じはない。基本、ベトナム宮廷料理に添えられる野菜は“飾り”だと、アンさんが言っていた。このニンジン鶏、やや干乾びていたのはご愛敬。

 ブンボ―フエという、米粉麺で牛肉が入っているフエ名物をいただく。肉より練り物の方が大きいのだが、味はクセがなくて美味しい。けどまあ、麺の食感とかフォーの方が好きかなぁ。

 

  

 海鮮メニューが続々、、、。デザートは、ぜんざい

 どれも美味しくいただきました。宮廷料理とのことだったけど、いたって普通の料理という印象。これって、現代人だから普通に感じるだけで、当時からすれば贅沢なお食事だったんですかね。

 4人席で一緒になったご夫婦は、ベトナムは初めてで、コロナ前は年に1度ヨーロッパをあちこち車で回っていらしたのだとか。ツアーで旅行するのは久しぶりだそう。イタリア縦断旅行のお話を聞きながら、ランチ終了、、、。


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 お次は、バスで20分弱、阮朝(グエン朝)王宮へ。グエン王朝は、ベトナム最後の王朝で1802年~1945年まで140年以上続いたとのこと。こちらは世界遺産。

 正門前の広場には9門の大砲が、、、。初代の王によって造られたそうだが、9門は、五行と四季を表しているとのこと。実際に使用されたことはなく、象徴的に置かれているのだって。

 シンボリックと言えば、こちらのフラッグタワーも。ちなみに、国旗の大きさは54平米だとか、、、。ウチより広い。ちなみに、木の根元が白いのは、防虫剤を塗った跡だとか。

 

正門(午門)

 

 

 んで、正門をくぐるとメインの太和殿、、、のはずが、残念、修復中(右の写真の奥の門のさらに奥に太和殿があるはずなのに覆いが、、、)。……ごーん。正門の中を上がることが出来て、展示物など見学。

 

左:歴代の皇帝や皇族が使用していた印/右:玉座(だと思う)

 

  

左:鐘もある、、、/右:未練がましく修復中のところを撮影

 

  

 

皇帝の書斎のような場所だったらしい

 

 中国の紫禁城をモデルに造っただけあって、建物は中国の影響を強く感じる。宮殿の名前はそのまま紫禁城だしね、、、。

 フエはベトナム戦争でも激戦地の一つだったため、この建物もかなりダメージを受けたとのこと。旅行に行く前にネットで画像を見ていたら、壁に弾痕があったり塀に大きな穴が開いていたり、というのも目にしたけど、私が歩いた範囲ではかなり修復が進んでいるみたいだった。

 

 全部は回れないけれど、メイン所を一通り見て回って、お次は世界無形文化遺産の宮廷雅楽ニャーニャックを鑑賞する。

 

こちらの閲是堂で開始を待っていると、お姉さんが登場

 

 

獅子の雄雌が出て来て、寄り添ったと思ったら、、、

赤ちゃんが産まれた!

 

 

 

美女や老人に変身した悪魔と闘うヒーロー!?

 

 

群舞ですかね、、、

 

おしまい

 

その⑤へつづく

 

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異人たちとの夏(1988年)

2024-02-13 | 【い】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv17827/


 脚本家の原田英雄(風間杜夫)は、離婚し、仕事場として使用していたマンションの一室で生活するようになる。寝起きするようになった初めて、そのマンションのほとんどの部屋は事務所として使用されており、住んでいるのは自分と、もう一部屋だけらしいと知る。

 そんな部屋に旧知のプロデューサー間宮(永島敏行)が訪ねて来て「離婚されたのだから奥さんに近づかせてもらう」と宣言され、原田はショックを受ける。その晩、もう一部屋の住人と思われる女性(名取裕子)がシャンパンを持って訪ねて来るが、間宮の話で気分が悪かったため、女性を追い返してしまう。

 数日後、ふらりと生まれ育った浅草へと足を向けた原田は、そこで30年近く前に亡くなったはずの両親と出会う。その直後に、ケイと名乗る女性とマンションのロビーで再会したのを機に、深い仲になる。

 懐かしさのあまり、たびたび浅草の両親のアパートを訪ねる原田だが、周囲が心配するほどにやつれて行く。しかし、原田自身が鏡を見ても、以前と変わらない自分がそこに映っているだけだった。ケイに「本当に見えないの?」と驚かれ、もう両親に会ってはいけないと強く止められるが、再び、浅草へと原田は向かうのだった……。

 山田太一著の同名原作小説を映画化。


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 山田太一が亡くなりましたね、、、。彼の書いたドラマリストをwikiで見たところ、ちゃんと見たのは「ふぞろいの林檎たち」だけ。しかもこれパート4まであったんですね。3までは知っているけど、ちゃんと見たのは1だけかな。4はオンエアしていたことさえ知らなかった。あと、大河ドラマの「獅子の時代」(1980年)は最初の方は見ていた記憶が。

 彼のドラマは、セリフ回しが独特過ぎて、ちょっと苦手だったのもあり、あまり見たいと思えなかったのだけれど、先日、追悼企画でNHKが「今朝の秋」というドラマを放映していたので録画して見てみました。1987年オンエアだったようだけど、もちろん、知らなかった、、、。感想は、……あんましピンと来なかった。主演は、笠智衆。縁側で、加藤嘉と並んで座って喋っているシーンがあるんだけど、何とも言えない雰囲気でした、、、、ごーん。

 それはともかく。本作は、4月にアンドリュー・ヘイ監督によってリメイクされた「異人たち」が公開されるため、ちょっと見ておこうかな、と思った次第。ジェイミー・ベルが出るし。ついでに原作も読みました(1日で読めます)。


◆良い映画です、、、が

 終盤までは、かなり原作に忠実に作られた、しかも大林宣彦監督作にしては実に味わい深い真っ当な映画だったのだけれど、、、肝心のオチがっっっ!!(後述)

 というわけで、あのオチさえなく、原作に沿ったものにしてくれていたら、多分、の数はあと2個くらい増えたかもしれません。本当に、そこまでは良い映画だったのです、、、嗚呼。

 主人公の、ちょっとくたびれた脚本家・原田を演じるには風間杜夫は渋みが足りない感じもしなくもないけど、まあ許容範囲。彼は演技が上手いのか上手くないのか、、、イマイチ分からない。

 んで、原田が邂逅する亡き両親を、片岡鶴太郎と秋吉久美子が演じているのだが、この2人が実に素晴らしい。何か、本当に下町にこんな夫婦いそう、、、な感じ。

 鶴太郎氏は、本作での演技が好評で、本格的に俳優業に転じたとのこと。確かに彼は演技巧者だと思うなぁ。大分前に、大河ドラマで北条高時演じていたんだけど、すごく面白くて上手だった。めったにTVに出ている人を褒めない母親が「この人上手やなぁ」と感心していたのには驚いたけど。でも、ホントに良い演技をしていた、本作でも。

 秋吉久美子も、まだ若いお母さんのままで可愛らしさもありつつ、落ち着かない夫をどーんと迎える肝っ玉な感じもあり、おっさんになった息子に別れを告げられて涙するところは、こちらも泣けてしまった。

 ……という具合に、なかなか良い人間ドラマになっていたのに、、、、!!! やはり大林監督、やってくれちゃったよ、、、ガーン。

~~以下ネタバレです~~


◆大林監督の本領発揮

 原作では、名取裕子演ずるケイも、実は異界の人だってのがオチなんだが、その描写はさりげなくグロテスクで、怖ろしいというよりは、私は何とも言えない失望を覚えたのだった。……あ、小説に対してではなく、原田の置かれた境遇に、、、ね。

 離婚で、自覚している以上に精神的にダメージを受けていた原田が、亡き両親と邂逅したり、ステキな女性と新たに恋愛関係を築いたりして、どうにか立ち直りつつあったと思っていたら、それらは全部、この世ならぬものだった、、、なんて、あまりに残酷ではないか。それで、すごく落ち込んでしまったのよ。とはいえ原作の読後感は悪くなく(それはラストの原田の言うセリフが良いからなんだけど)、この辺は、さすが手練れの脚本家・山田太一だなぁ、、、と感じた次第。

 ……それなのに。それらをぶち壊すような終盤の展開は、ズッコケもいいとこで、ガックシを通り越して爆笑しながら見てしまった。なんじゃこりゃ、、、状態。

 詳細は書かないけど、早い話が、思いっ切りB級(いやC級かな)ホラーになっていた、ってことです。どんな風にB級かというと、名取裕子が宙に浮いたり、明らかに染料と分かる血のシャワーが飛び散りまくったり、それを浴びた風間杜夫と永島敏行が全身真っ赤っかになったり、、、と風情の欠片もないシーンでござんした。なんちゅうことしてくれんだ、大林監督は。

 あと、周りが引くほどやつれ行く原田、、、なんだが、風間杜夫の特殊メイクがあまりにも、、、で、これも、不謹慎ながら、ぷぷっと笑ってしまいました。いや、今のメイク技術と比べて、という意味ではなく、あまりにもやり過ぎというか。私が監督なら、風間杜夫に5キロくらい減量してもらうかな、、、と思った。もともと細めの人だから、5キロ痩せれば、かなり頬もコケてやつれた感じになるだろうし。そこでちょっとメイクしてヤバさを出せば十分だったんじゃないのかしらん。あれじゃ、お化け屋敷のお化けみたいだよ、、、。

 いやホントに、そこまでがすごくイイ雰囲気で来たのに、何か突然違う映画になったみたいでひっくり返りそうになりました。

 原作の描写どおりにしていれば、静かに怖い、、、大人の映画になったと思うのに、残念。


◆異界の人

 本作がどんな風にリメイクされるのか分からないが、原作を読んで感じたのは、死者との邂逅などという甘いノスタルジーではなかった。

 12歳で両親を亡くした原田にとって、両親への思いは言葉にできないものがあるだろう。小6なんて、まだまだ親に甘えたい年齢だ。でも、彼は親を亡くしてから泣いたことがないというくらい、自分を子供ながらに律して生きて来て、そのまま大人になったわけで、離婚して心が弱っていたときに、ふと魔が差したのだと思う。

 心が弱っているときって、本当に肉体的にダメージが大きい。肉体的というのは、まさに身体的な部分と、頭の働きの方と両方である。健康なときには考えもしないような思考に陥ることがあるのだ。私にも経験が有るのでよく分かる。きっと、原田はそういう状態だったのではないか。

 原田が亡き両親と邂逅したのは、ケイが原田に追い返されて自殺した直後である。思うに、亡き両親は、ケイから原田を守ろうとしたのかも知れない。原田があそこまでやつれたのは、生気を吸い取られていたのであり、それは、亡き両親と会っていたからではなく、ケイとしばしばセックスしていたからだろう。だからと言って、両親は何をできるわけでもないが、原田自身の潜在意識が、両親を見たのだと思えば、何となく腑に落ちる。

 ……というような考察も、本作の終盤では何の意味も持たなくなるのだが、まあ、あのB級ホラーチックな展開も、面白いと言えば面白いので、映画は映画として楽しめばよいのである。

 ちなみに、山田太一は、本作の終盤について「とんでもないことになっていた」と言っていたそうだが、それはそれで受け入れていたそうな。まあ、彼はプロだからその辺は十分承知しているのだろう。本作の脚色は、市川森一だが、ご本人が脚色しなかったのも分かる気がする。きっと、あのB級ホラー展開は、大林監督の趣味だろう、、、と思うことにしている。

 リメイク版も楽しみだ。ジェイミーは鶴太郎氏の役ですな。
  

 

 

 

 

 

 


亡き両親の暮らすアパートが風情があって素敵。

 

 

 

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現実逃避の旅 ~ベトナム中部でのんびりしたい~ その③

2024-02-11 | 旅行記(海外)


その②につづき

【2日目のスケジュール】 フエ観光

カイディン帝廟 → ティエンムー寺 → 昼食 → 阮朝王宮 → ホイアンへ戻り夕食 → ホテルへ


 2日目は、ホイアンからバスで片道3時間半かかるフエまで往復するため、朝はちょっと早めの7時半集合。朝食は6時半から。

 夜中ずっと隣室がドタバタと音がうるさかったらしく、友人はほとんど寝られなかったらしい、、、。私はどこでもいつでも寝られる人間(時差ボケとかなったことがない)なので、ゼンゼン気付かなかったわ。

朝食はこちらのレストランで

 

 

左:左上の紫キャベツとニンジンの上の黒いのが並んでいるのはサラダ巻き!/右:オレンジのはマンゴーでなくパパイヤ

 

 

  川辺で朝焼けを眺めながらの朝食、、、なんて素晴らしいんでしょう。日常のモロモロなど忘れ去り、お腹も空いていたのでパクパク食べて完食! フォーがないねぇ、、と言っていたら、隅っこでサーブしてくれていたらしい。明日は絶対食べよう!

 デザートのバナナが、台湾で食べたバナナと似ていて(絶妙な酸味と甘み)、美味しかった♪


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 いざ、フエへ。ホテルを出て、バスが来てくれている所まで歩く。朝7時を過ぎると、旧市街にもバスが入って来られるらしい。

 

フロントの軒のランタンが可愛い/旧市街の広場まで歩いて3分ほど

 

 10時半ころ、最初の目的地、カイディン帝廟に到着。

 カイディン帝生前から着工して、亡くなった6年後の1931年に完成したとのこと。建物はフランスの影響を受けたカイディン帝によりバロック様式で建てるよう命じられたものの、中国様式、ゴシック様式も見られるとか。確かに、独特な雰囲気。

 カイディン帝は、ベトナム阮朝第12代の皇帝。アンさんの説明によると、どうやらゲイだったらしい。んで、さらにはかなり評判の悪い(というか人気のない)皇帝だったそうで、この廟を建てるのにも重税を課していたとか。アンさんの口ぶりから、そのダメっぷりが伝わって来て、現代のベトナム人の間での評価が察せられる。

 

モザイクだらけ、、、左:春夏秋冬をあらわしている/右:寿の文字が随所に見られた

 

 モザイクは、陶器等の破片を集めて出来ていて、中には日本のビール瓶(今のキリンビールらしい)もある。ベトナムでは以前は漢字が使われていたが、このカイディン帝によって現在のクオック・グーに改められたそうで、割と最近まで漢字文化圏だったのだ。

 

左:漢文でカイディン帝の業績(?)が書かれた石碑/右:御写真はカイディン帝

 

 

左:カイディン帝/右:阮朝の系図

 

カイディン帝はこの下に眠っているのだそう

 

 集合時刻まで少し時間があったので、レモンのアイスを食べる。値段は、確か24,000ドン(≒145円)だったと思う。外側がシャリシャリのレモンシャーベットで、中はミルクアイス。暑かったのですごく美味しかった~。

 

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 バスで30分弱移動し、お次はティエンムー寺。 

 1601年に建立されたフエで最も古い寺院の一つで、漢字で書くと「天老寺」。阮王朝時代の前の広南国時代に、一人の老婆が「いずれ支配者が現れてここに塔を建てる」と予言したことに由来するのだそう。

トゥニャン塔(慈悲塔)。中国でもよく似た塔があったような

 

 建立は1845年。お婆さんの予言した塔は、これのことか? 高さが21m、7層各階に仏像が安置され、最上階には金色の釈迦如来像が安置されているのだそうだが、中には入れない。

 

ご利益があるとかで、線香をあげるけど、暑いから早々に日陰へ避難

 

これはティック・クアン・ドックという僧が焼身自殺を図った際に使用した車オースチンA95

 ティック・クアン・ドックの焼身自殺の件は、wikiに載っているので詳しくお知りになりたい方は検索してください。

 

フォン川を一望。のんびりクルーズとか良いかも

 

 この時点でお昼を回っており、お腹が空いた~~。……というわけで昼食へ!!

その③へつづく

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推し活レポート◆2024.Jan.

2024-02-10 | 推し活

 推し活を始めて2年。結構通ってます。ちなみに、昨年(2023年)の推し活実績は以下のとおり。

2月17日 読響@サントリーホール(ブラームス)
2月23日 リサイタル@三鷹市芸術文化センター・風のホール
3月25日 東響@ミューザ川崎シンフォニーホール(コルンゴルト)
3月28日 東京・春・音楽祭2023@東京文化会館・小ホール(シューマンの室内楽)
4月26日 都響@東京芸術劇場(メンデルスゾーン)
6月27日 N響 Music Tomorrow 2023@東京オペラシティコンサートホール(一柳 慧/ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲)
7月 1日  N響ベストクラシックス@かつしかシンフォニーヒルズ(チャイコフスキー)
7月 4日  浜離宮ランチタイムコンサート@浜離宮朝日ホール(ギタリスト・徳永真一郎とのデュオ)

 ……ね、結構行ってるでしょ。8月以降は、なかったんですよ、コンサートもリサイタルも、、、しょぼ~ん。でもでも!その間は、前回の推し活記事に貼り付けた動画の「スコットランド幻想曲」を毎日聴いて、寂しいのを凌いでおりました。

 が!!!

 なんと、この動画、先月突然「非公開」になってしまい見られない・聴けない状態になってしまいました。が~~~~~~~ん!!!!私の生命維持装置だったのに!!

 N響さんよ、せめて事前に告知しておくれ。んで、お願いだから、お金払うからダウンロードできるようにしておくれ、、、。お願いです。私が何年オタクの会員やってると思ってんだ!!!

 、、、と言ってもしょーがないのだが、とにかく、彼女のコンチェルトをまともな音源で聴けるのは、コレしかなかったので本当にショックです。昨年発売されたリサイタルのCDを聴いて、何とか生き延びています。

 そんなわけで、今年も推し活は続きます。せっかくなので、自身の記録のために、推し活レポートも書くことにしました。


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◆1月13日 神奈川フィルハーモニー管弦楽団みなとみらいシリーズ定期演奏会第391回 @横浜みなとみらいホール

 今年の推し活第1弾は、かなフィルとの共演。

 曲は、私の大好きなブラームスのコンチェルト。昨年、読響でも聴いているので2回目。いや、この読響とのブラームスが、とにかく圧巻だった(オケは普通だったけど)。

 なので、今回も楽しみにしていそいそと横浜まで行きました。フランス映画祭では、横浜遠いからなー、と思って行かないのに、金川さんの演奏を聴くためならゼンゼン苦にならない!

 片道1時間ちょいかかって、みなとみらいホールに到着。ここのホールは20年くらい前に来て以来だと思う。ホールについてはゼンゼン覚えていなかったけど、キレイなホール。席は1階のやや前方の中央右寄り。音は、、、どうなんだろうか。

 

 金川さん、濃紺のシンプルなドレスで登場。

 ……が、嗚呼、席選びを間違えたと途中で気付く。楽器の向きが変わると、あの美音が聴こえなくなる角度があるのだ、、、がーん。ダメじゃん、みなとみらいホール!!!

 うぅ。。。悲しい。なんということだ。もちろん、それでも聴こえるときは、あの美音が骨の髄まで沁みて来る。2楽章など、あまりの美しさに陶然、、、。

 やっぱり2階席にするべきだな。このホールに限らず、コンチェルトは1階席で満足な音で聴けた試しがない(サントリーもまあまあヒドい)。でも、席が選べないときもあるし、こればっかりは運だなぁ、、、。

 ブラームスでは、ソリストアンコールなしなんだよね。読響のときもそうだった。でも、なんか分かる気がする。ブラームスは消耗も激しいのだろうし、あの曲の後に何弾いても、何か違う、、、となる。

画像は公式Xよりお借りしました


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◆1月27日 群馬交響楽団第594回定期演奏会 @高崎芸術劇場大劇場

【プログラム】
 モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K. 136
 シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
 ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98

 自慢じゃないが、私は相当の出不精である。家でダラダラするのが至福の人間。それなのに! なんと、高崎まで行ってしまいました!! 新幹線の距離ですよ? もちろん、在来線で行きましたが。片道2時間超!遠かった。この私が、、、。自分でもビックリ。

  

高崎芸術劇場外観&ロビー。このホールは初めてなのだけど、駅からは近くて便利。完売とのことで、すごい激混みでした

 ……というのも、曲がシベリウスだったからです。ブラームスだったら、行かなかったかも、、、いや、行ったかな。

 難曲で名高いシベリウスだけれど、結構、ソリストによって個性が出る曲だと思う。私はこれまで、この曲はライブではなぜか、日本人女性バイオリニストの演奏ばかり聴いている。諏訪内晶子さん、青木尚佳さんで、いずれもN響と。どちらも良かったけど、私は基本的にあんまし感動しない人なので、「凄いなー」で終わることが多く、彼女たちの演奏もそうだった。

 で、3年前に、青木さんの演奏と、金川さんの演奏(都響)を聴き比べた感想を書いている人がいた。その人が言うには、青木さんの演奏は、シベリウス・北国の人々の心理の深層に迫り得た演奏だったが、金川さんの演奏は「ドイツ的な解釈」で疎外感を味わった、、、んだそうである。

 私は、青木さんの演奏はこの方と同じ演奏を聴いたわけだが、正直言って、彼女のシベリウスから特別北国の魂なんぞは感じなかった。シベリウスの曲はもちろんいくつか知っているし、好きな作曲家ではあるが、そもそも私は骨の髄まで日本人なので、「シベリウス・北国の人々の心理の深層」がどんなんかさっぱり分からん。

 で、この日は、初めて金川さんのシベリウスを聴くことができたのでした。

 いやぁ、、、もう2楽章がね、、、、涙出ました。北国の深層とかそんなん知らん。とにかく美しく、心の襞に深く入り込んでくる美音が、ただただ沁みる。そこからラストまでの躍動感は、行ったことないけど、それこそ、北欧の雪が舞う森の情景が浮かんできたよ、私の脳内には!!

画像は公式Facebookからお借りしました

 んでもって、今回はソリストアンコールがあり、「パガニーニ/カプリース 第24番」。超絶技巧をサラサラと弾いて、圧倒されました。

 ちなみに、このコンサートの前に、金川さんのトークがあり、彼女の飾らない一面を垣間見ました。フィンランドにもコンクール前に一時期ホームステイしていたことや、コンクールのプレッシャーなども聞けて良かったです。

 帰りに、有名なだるま弁当などを買って帰りました。美味しかったです♪

 

 

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東京物語(1953年)

2024-02-09 | 【と】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv23661/


 尾道に暮らす平山周吉(笠智衆)と妻のとみ(東山千栄子)は、東京の下町で診療所を開業している長男・幸一(山村聰)の下へと遠路はるばるやって来る。同じく東京に暮らす長女の金子しげ(杉村春子)や、戦死した二男の妻・紀子(原節子)も一堂に会し、久しぶりの再会を喜ぶ。

 しかし、幸一は往診を頼まれるなどして忙しく、しげも美容院の仕事に追われ、両親の歓待どころではない。せっかく上京して来たのに所在ない平山夫妻を、紀子が東京見物の案内をすることに。帰りには紀子のアパートにも寄って、もてなしを受けた2人は楽しい時間を過ごす。その後、平山夫妻は、しげと幸一の計らいで熱海の温泉に足を延ばすが、その温泉宿は安宿で騒がしく夜も寝られない。早々に東京に戻ってくれば、「何でもう戻って来たの?」としげに言われる始末。

 仕方がないので、尾道に帰った平山夫妻。帰って間もなく、とみが危篤になる。


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 小津映画は、ほとんど見ていなくて、もう何十年も前になぜか『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』を見ただけ。小津映画が世間で(というか世界的に?)評価が高いのは重々承知なんだが、正直言って食指が動かなかったというか、興味を持てなかったというか、、、。

 本作は名作として度々TVでも部分的に有名なシーンを見たことはあったけれども、話の筋も何となく知っている程度だし、“いまさら名画”シリーズ第5弾として、一度ちゃんと見てみようかな、、、とアマプラで配信していたので見てみることにしました。

 ……というわけで、本作をお好きな方、小津信者の方々は、この先はお読みにならない方が良いと思います(悪意は全くありませんが、若干悪口になっているので)。


◆大人になった我が子の家を訪ねるということ

 平山周吉は、本作内の設定では70歳だそうだ。私の母方の祖父(明治生まれ)より一回りくらい年上かな。でもまあ、大体同世代と言っても良いだろう。ちなみに父方の祖父は私が生まれる前に亡くなっている。

 で、本作を見ていて、私は無意識に祖父と周吉さんを比べてしまっていたのだった。というのも、祖父は「結婚した我が子の家には絶対に行かない」を信条としていた人で、妻(祖母)にも「決して行ってはならん」と言っていたという。母方の兄弟姉妹は8人いるが、息子であれ娘であれ、祖父母が訪ねて行ったことは(全くないかどうかは分からないが)ないらしい。父方の祖母は時々我が家に来ていたが、少なくとも、私の記憶する限り、母方の祖父母が揃って訪ねてきたことは一度もない。

 なぜ、祖父がそこまで頑なに子の家庭を訪ねなかったかといえば、本作がその答えと言って良いだろう。

 結局、子には子の生活があるということだ。祖父は、自分たちが訪ねて行くことが、いかに子に物理的・経済的、そして何より精神的な負担を掛けるかを分かっていたから、頑として訪ねなかったのだと思う。

 客人が来るとなれば準備も必要、食事や茶菓子、寝具だって買い足さなきゃいかんかも知れぬ。おまけに、送迎の交通費やら、観光案内でもした日にゃ外食費やら何やら、土産代に至るまで、出費はいやでもかさむ。金の話だけじゃなく、幸一もしげも自営業ならそもそも都合をつけること自体が難しい。

 身も蓋もない話だけど、親が子の家庭を訪ねるのはトラブルの素である。ネット掲示板でも、義理の両親が訪ねて来て迷惑だという内容の書き込みは定番だ。父方の祖母が我が家へ来れば、両親は必ず揉めた。母親は専業主婦だったが、家は広くないし、経済的にも余裕があるわけじゃなし、そもそも姑である祖母を母親は嫌っていた(理由は耳タコってくらいに母親から聞かされていたがここでは割愛)。しかも祖母は一度来ると1週間は滞在していたので、昼間仕事に行ってしまう父親は丸投げで済んだが、そりゃ母親にとってはかなりの負担だったろう。

 ちなみに祖父亡き後、母方の祖母は時々我が家へやって来ては長逗留していた。そして、娘である母親と険悪になっていた(父親は適当に対応していた)。そうまでして祖母が我が家へ来る理由が分からなかったが、まあ、寂しかったのかな。ほかにも兄弟姉妹がたくさんいるのに、ソリの合わない母親の所にわざわざ来るのは不思議だった。

 それはともかく。そんな祖父と生まれ育った時代はほぼ同じ周吉さんが、子の家を泊まり歩いている姿が、私にはあまり好ましいものに見えなかったのである。おまけに、そんな子らのことを妻と「優しくない」と言ってグチっている姿は、正直言って醜悪だとさえ思えた。

 子にしてみれば、親だからこそ邪険にできず、しかし自分の生活もあるので板挟みになるのだ。そういうことに思いが及ばないのか、及びながらもなのか分からないけど、夫婦でグチる姿は、お世辞にも微笑ましいとは思えなかった。


◆本作に、日本が“悪くなった”理由が描かれている、、、らしい。

 あちこちでされている本作の紹介文を読むと、実子が冷たく親をあしらう一方で、他人である嫁が老夫婦に誠意ある対応をしたことの対比云々、、、というのが目に付くが、本気で言っているのかと書いた人の見識を疑う。

 老親はそれだけで哀愁を誘う姿である。言ってみれば「弱者」であり、バリバリ働く子たちは「強者」である。強者が弱者をいたわらない図は、たしかに非道に見える。

 けれど、紀子があのように振舞えたのは、彼女が独り身で子が居らず、勤め人で、ある程度自由が効く身だからに他ならない。あれで、戦死した夫との間に幼子でも居たら、しげのように店を構えていたら、話はゼンゼン変わって来るだろう。ましてや、紀子と周吉夫婦は赤の他人である。滅多に会わない他人だからこそ、たまに会ったときくらいは親切にできるという側面は確実にあるのであって、背景や関係性の違い過ぎる者同士を対比させて、実子のくせに冷たいだの、他人の方が優しいだの、あまりにも表層的で浅はかなのでは。

 もっとも、監督の小津はそんなことは百も承知で、だからこそ、終盤に、紀子が「私、ずるいんです」と周吉に話すシーンが入っているのだろう。

 紀子を“優しい人”と感じる人々は、かなりオメデタイと思う。もちろん、感じが悪いより良い方が誰しも好きなのは理解できるけれど、「日本の良さを体現する人物」「東京なるものに日本人の美徳が壊されていくのを辛うじて阻む存在」とか書いている人がいたのには苦笑してしまった。紀子さんの見せた“感じ良さ”は彼女のほんの一面に過ぎないということ。人間は多面体なのだよ。別の顔があるんですよ、紀子さんには。この映画では描いていないだけです。

 私が時々拝読している映画ブログ(ブログ主さまは男性で70代と思われる)では、本作が最高点になっていて、レビューでも激賞されていた。……まぁ、それは好みの問題なので良いのだが、その方は、本作のについて「家の崩壊をテーマにしている」と書かれている。「家の崩壊」とは、「家(族)制度の崩壊」「核家族の発生」という意味だそうである。さらに、戦後の小津は、そのことを懸念しており、映画でそれを訴え続けていたと。驚いたのは、「日本の社会の諸悪(少子化や犯罪の増加等)は家制度の崩壊から始まったと言っても過言ではない」とまで書かれている。

 他作品の映画評を読むと、保守寄りのリベラル、、、という印象なのだが、本作の感想は、思いっきり昭和オヤジ丸出しで、のけぞった。

 家制度ってのは、そりゃ、男(特に長男ね)にとっては実に都合の良い制度で、もっと言うと、女の犠牲の上に成り立っていたんスよ、、、。だから、こんなもんが崩壊して日本が悪くなったってぇんなら、それは家制度の地獄の側面を無視した、安直な懐古趣味に浸ってるってことです。まあ、家制度については書くと長くなるのでやめておくけど。

 また、本作の解説をしている複数のサイトで、子が成長して家族が崩壊していく様を描いているとしているのが目に付いたんだが、それは家制度下でもあった話じゃんね。男でも、二男以下は家から出ざるを得ないことが多かったんだから、必然的に家族はバラバラになるわけで。どんな制度であれ、人間が成長して老いる生き物である以上、形が変わらない家族なんてない。家族の形が変わることを「崩壊」というなら、崩壊しない家族はこの世に存在しない。

 で、考えてしまったのである。前述の私の祖父は、言ってみれば家制度のど真ん中で長男として育ってきた人でありながら、なぜ周吉さんと違って、子の家に行かないことをポリシーとしていたんだろう、、、と。祖父のことなど、ゼンゼン知らないのだよな、、、。

 本作を見て以来、祖父についてイロイロ思い出そうとして記憶をたどったのだが、祖母にはよく「女の子なんやから云々、、、」ということを言われていたが、祖父の口から「女の子だから」「女のくせに」というセリフは聞いたことがない、、、という事実に思い当たった。私の両親もしょっちゅう「女の子だから」「女のくせに」と言う人たちだったが、祖父がそんな言葉を口にしたのは全く記憶にない。むしろ、幼い孫娘である私や姉に「しっかり勉強してエエ大学行って立派になれ!」とよく言っていた(おじいちゃん、ゴメン)。

 でも。一方で、祖父は自営業で羽振りも良く、祖母も結構泣かされていたらしい、、。一体、どんな男やったん、、、おじいちゃん!!


◆嗚呼、小津映画。

 実は、本作を見る前に、昨年末にNHKBSでオンエアしていたのを録画してあった『秋刀魚の味』を見たのだけれど、本作同様、あんましピンと来なかった。それはやはり、作品内で描かれる女性の置かれた立場が、どうにも受け入れ難いものがあるからだと思う。

 小津映画が高く評価されているのは知っているが、私は撮影技術なんかはよく分からないし、構図が云々とか言われても「ふ~ん」という感じでしかない。それよりも、もっと分かりやすい、例えば、笠智衆の棒読みな演技とか、セリフ回しのくどさとか、いかにも芝居がかった演出とか、、、に目が行ってしまう。

 だから、こんなことを書くと小津信者に怒られるだろうけど、若干、過大評価されているんじゃないか、という気がしてしまう。

 ある人は「この時代に、普通の人の普通の生活の普通の話を取り上げて描いたところがスゴいんだ」みたいなことを書いていたが、そうなのか? まあ、映画史を分かっていないからツッコミようもないが、そういうもんなんですかね。

 一つの「映画作品」として見て、あんまし魅力的だとは、、、私の目には映りませんでした。良かったのは、おじいちゃんのことを思い出させてくれたこと。

 名画の誉れ高い作品に、こんな感想ですみません。他の小津映画をいっぱい見れば、印象変わるんでしょうか。

 

 


 

 

 

 

原節子演ずる紀子さんより、杉村春子演ずるしげさんの方が正直で好き。

 

 

 

 

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エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事(1993年)

2024-02-03 | ダニエル・デイ=ルイス(D・D・L)

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv10602/


以下、早稲田松竹のHPよりあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。

=====ここから。
 
 1870年代初頭のある一月の夕べ、ニューヨークの高等音楽院の舞台を見るために社交界の人々が集まっている。弁護士のニューランド(ダニエル・デイ=ルイス)には婚約者のメイ(ウィノナ・ライダー)がおり、率直そうな額、まじめな目、明るく無邪気な口を持ち、これ以上にない結婚相手だった。

 しかし、社交界に突然、夫から逃れてヨーロッパから帰国したという噂のエレン(ミシェル・ファイファー)が現れる。

 幼なじみのエレンの突然の出現に心を揺さぶられ、彼女の率直な態度や考え方に、自分の住む社交界にはない新しさを感じる。メイがいながらもニューランドはエレンに惹かれ、新たな恋の苦悩に身を焦がすことに…。

=====ここまで。


☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆

 


 私がDDLの信者になった直接のきっかけは、この映画。それまでにも彼の出演作(『眺めのいい部屋』とか)は見ていたが、まあキレイだなとは思ったもののスルー、、、であった。

 本作の何にそんなにグッと来たのか、、、と不思議に感じる方もいるだろうけど、何しろ、苦悩するDDLにビビビ、、、と来てしまった……んだと思われる(記憶が薄れているので)。を8コもつけているのは、DDL映画は無条件で2コ献上するマイルールがあるから(つまり、実質、並みの6コってことね)。

 しかも、本作を初めて見たのは恐らくVHS、つまりレンタルビデオ!だったはず。ブラウン管を通して見るDDLが、当時の私の目には、それはそれはもう、、、神々しいほど美しく官能的に見えたのでありますよ。若かったしね、私も。

 その後、DDLについて色々調べてみて(昔はさ、、、今みたいに何でもググればそこそこ情報が仕入れられるなんて時代じゃなかったんだぜ)、その変人振りもステキ!となり、ファンから、かなり最短速度で信者になったのでありました。

 そんな、私にとっては記念すべき本作を、ようやくスクリーンで見ることが出来ました~!!わーーいパチパチ

 早稲田松竹がマーティン・スコセッシ特集を組んでくれたので、3時間半もある『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を尻目に、本作をいそいそと見に行ったのでありました。

 スクリーンに映るニューランド・アーチャーは、やっぱしめっちゃ美しかった、、、。『眺めのいい部屋』のセシルの方が大分若いのに(いや、セシルも美しかったんだケド)、なぜか私の美男センサーにはニューランドが引っ掛かるのだよ。なぜかしらん??

 ……というわけで、本作の感想、というか、思うことについては、以前の記事「『キャンディ・キャンディ』に思う」「絶望を生きる男 ~テリィとニューランド~」と題して駄文を書いておりますので、今回は割愛いたしまする。

 今回は、いかに私が本作のDDLを好きか、ってことを書きたかったのでした。失礼いたしました。私の好きなシーンの画像があったのでお借りして貼っちゃいます。

 

 

 こちらの美しいDDLもどうぞ。

 

 

 

まだ鼻筋真っ直ぐなDDL、、、

 

 

 

 

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現実逃避の旅 ~ベトナム中部でのんびりしたい~ その②

2024-02-01 | 旅行記(海外)


その①につづき

【初日到着後のスケジュール】 ダナン市内観光

ダナン大聖堂 → 地元マーケット散策 → ホイアンへ移動 → 夕食 → ホテルへ


 ……というわけで、バスに乗り込み、一同、ダナン大聖堂へ。

 バスで30分くらいだったか、、、。まさに市街地の真ん中にあるのだった。しかも、この日はイベントの準備とやらで門の中には入れず。建物の中にも普段から入れないそうだが、この日は門の外から眺めるだけ。

背後の銀行のビルが、、、

 フランス統治下で、フランス人によって建てられたとか。ゴシック様式のカトリック教会。ピンク色が可愛い!ということで、フォトスポットらしい。確かに美しいけど、イベントの設営で建物の入り口も見えないしなぁ。

 で、ここから歩いてすぐの所にある市場へ行くという。

 

大聖堂から歩いて数分、、、/ハン市場

 30分のフリータイムとなる。

 まぁ、とにかく人が多いこと、、、。アンさん曰く、観光に来る外国人は、中国人より韓国人が多いとか。日本人はそれに比べると全然少ないと、、、。確かに、市場内ではハングルがよく聞こえていた。

 

 友人とも別行動でプラプラ歩いていたら、マンゴーキャンディ(というかグミかな)を試食でもらったので食べてみたら美味しい!!……というわけで、バラマキ土産に決定。5袋で10万ドン(≒600円)と店のお姉さま。まあ、でも他を見てからでも良いかと立ち去ろうとしたら、お姉さま「じゃあ、これでどう?」と電卓で「70000」と見せて来る。えー、、、別に価格交渉する気ゼンゼンなかったんだけど、メンドクサイしどうせ買う必要もあるから、あっさり交渉成立。

 戦利品はこちら。ぷにぷにしていて濃厚マンゴー味で、お土産にはちょうど良い感じであった。

1袋に入っている個数もバラバラ。5袋で計49個!

 その後も、市場内を見て回る。

 

右のは乾燥ナマコ! なかなかのグロさ☆

 

 2階には、衣料品がメインで所狭しと並んでおり(イメージとしてはドンキの店内に近い)、友人はワンピースをゲットしていた。アオザイも売っていたし、カワイイ生地もたくさん。時間があれば端切れとかも欲しかったかも。

 
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 さて、市場を見終わったのが15時過ぎ。宿へと向かう。ホイアンまではバスで1時間弱。

ハン川に架かるダナン名所(?)ドラゴンブリッジ(奥の黄色いの)

 

 このドラゴンブリッジは最終日の夜にまた来るのだけれども、、、。

 バスに揺られてホイアンのホテル近くまでやって来る。16時を過ぎると大型車はホテルの旧市街には入れないので、カートに乗り換える。

この一番後ろの座席に乗りました。しかも端っこに、、、

 

 確か、インドのタージ・マハルに行くときも同じような理由で似たようなカートに乗ったんだった、、、。

 いやしかし、このカート、まあまあ怖い。これで普通に公道をかなりのスピードで走るわけで、排ガスも凄いし、道は結構ガタガタだから揺れるしで。……とかいいながら、スマホで動画を撮っていた私。このブログには動画を貼る機能がないので載せられないのが残念。

 で、カートに揺られること5分くらいで、ホテルに到着。フロントでアンさんから部屋の鍵を渡されて、部屋へと向かう。

  

フロント&ロビー

 

   

左:フロントから部屋へと向かう途中(奥がフロント)/右:私たちの部屋のある棟

 

 リゾートホテルなので(?)低層造りで、一部3階建ての2階建てコテージみたいなのが並んでいる。私たちの部屋は2階の端っこ。ホテルの方がスーツケースを部屋まで持って来てくれた。

 

 

この部屋にこれから3連泊。バルコニーもある♪

 

 入った途端、レモングラスの強烈な香りが。といっても、キツい香りではなくて、すごくいい香り。これはおそらく虫よけも兼ねていたのではないか、、、。実際、蚊もいたしね。


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 少し休憩してから、夕食へ。旧市街を流れるトゥボン川を渡ってのんびり歩く。

 

 

夕暮れ時で美しい、、、

 

 ホテルから歩いて5分ほど、、、こちらのお店へ。

  

 

 初日はやっぱりベトナム料理。

 

 

 生春巻きの向こうで青い光を当てているのは、お向かいに座った同じツアーの方。多分、お箸を殺菌されていたのかと、、、。(ちなみに女性お二人連れだったのだけど、お二人ともめちゃくちゃ小食でビックリ)

 フォーは、事前にバスの中で、チキンorビーフでどちらが良いかをアンさんに申告。アンさん曰く「ビーフの方が美味しい!」とのことなので、それを信じて私も友人もビーフをチョイス。なるほど、ビーフの出汁が出ていて美味しい。友人は「やっぱチキンの方が好きかな」と言っていたけど、私はどっちも美味しいと思うわ~。

 

デザートはバナナの揚げ物。レモングラスみたいな葉の香ばしいお茶と

 

 初日の夕食、どれも美味しくて、今回の旅の食事は期待できそう!? 


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 店を出るとすっかり暗くなっている。再び歩いてホテルに戻る。

 

 平日の夜なのに、夜祭のような賑わい。旧市街の目抜き通り(?)アンホイ橋を渡って、出店が連なる通りを抜けて行く。アンさんに聞けば「毎晩こんな感じです」だそうな。……楽しそう。

 

橋のたもとになんちゃってドラえもん、、、/夜店がいっぱい

 

 無事ホテルに到着~♪ 1日目終了。この後はシャワー浴びて、すぐに寝ましたzzz……


その③へつづく

 

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