2年ぶりのブレハッチ君。前回はコンチェルトでしたが、今回はバッハ・ベートーベンを引っ提げてのリサイタルでありました。
チケットを買うのが少し遅れて、あんまし良い席が残っていなかったんだけど、3階席のバルコニー前列を選択。その後しばらくして完売してしまい、追加公演がサントリーホールで決まったんだけど、サントリーのピアノリサイタルはイマイチ(音が)なので、迷ったけれど、今回はオペラシティの1回のみで我慢することに。プログラムは同じだしね、、、。
……というわけで、感想というか、、、個人的に書き留めておきたいという程度のものです。
【プログラム】
J.S.バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV 826
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第5番 ハ短調 Op. 10-1
ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO. 80
フランク(バウワー編曲):前奏曲、フーガと変奏曲 ロ短調 Op. 18
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op. 58
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19時開演なのに、10分過ぎてもブレハッチ君現れない。客席も少しザワついてきたところへ、ようやくご登場。割と颯爽と歩いてきて座ると、少し間があって客席に向けて何か喋り出した。恐らく、遅れた理由だろうと思うが、声が反響しちゃって何言っているかゼンゼン聞こえない。
まあ、終演後のめちゃくちゃザックリしたアナウンスによれば「急用の国際電話のため」だそうな。でも、彼はもっといろいろ喋っていたし、その姿からは明らかに遅れたことについて、聴衆にきちんと説明しておきたいという気持ちが感じられ、あのホールの作りから声が反響しちゃうのはしょうがないわけで、招聘事務所は彼が話した内容をアナウンスできちんと説明すべきではないか。
ツイッターで(恐らく1階席の前方に座っていた方だろう)、彼の妹さんの具合が悪いという知らせが入って少々エモーショナルになっていた、、、みたいに言っていた気がするがよく分からなかった、、というような書き込みをしている方がいたが、それならなおさら聴衆に伝えるべきではないのかね?
彼の誠意が聴衆に伝わっていないのであれば、それをフォローするのが事務所の仕事だろう。あんなザックリなアナウンスで説明したつもりになっているのか。これって、私が求め過ぎなのかしら?
でも、もしや体調不良か(過去にもあったから)、、、と心配していたけど、どうにか始まったのでそれは良かった。その後の名古屋も無事に行われたようなので、諸々大丈夫なのかな。若干心配だけど、事務所のHPにもツイッターにも、相変わらず何の説明もない。
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で、ようやく感想。
彼のバッハのアルバムは持っているけど、パルティータ2番は入っていない。まあ、彼が元はオルガン奏者だということは知っていたが、今回、ライヴで彼のバッハを聴いて、すごく納得した。オルガン的な響き、、、等という陳腐な表現では表せないけど、ピアノで弾いているのに音が全然ブツ切りにならないんだよね。しかも、あの反響するホールで一音一音はクリアに聞こえるという、、、、ものすごく不思議な感じがした。CDを聴いても同じことは何となく感じていたが、ライヴで聴くと、それがより一層感じられ、彼の演奏している姿に見入ってしまった。
3階席からは彼の手元は遠過ぎてよく見えないが、近くで、、、というか、あれはカメラで寄って撮らないと分からないレベルの手の動きによるものなんだろうな。
……と思ったら、事務所のHPに4年前の彼のインタビューがあり(作家の平野啓一郎氏のツイッターで知ったんだが)、読んだら、すごく納得することが書いてあった。
ブツ切りにならないのに、クリアなのは、オルガン的な奏法をしていたからなんだ、、、。ペダル操作ではなかったのかーと。「手の指だけで表せるレガート」って、これ、バッハに限らず、ショパンでもすごく感じるのだけれども。そうだったのかぁ、と納得。
ベートーヴェンは、変奏曲の方が良かったなー、個人的に。ソナタももちろん良かったのだが。……というか、ホントに無駄な間とかテンポの揺らしとか、ないんだよね、この人の演奏は。どの音も、全て理由があってそう弾いている、と感じさせる。
私がこの演奏会で一番印象に残ったのはフランク。やはり、この演奏でも、オルガン奏者だったのを感じたのよね。フランクって、こんなに美しい音楽書くんだっけ、、、? と私の偏見に満ち満ちたフランク像を思いっ切り覆してくれました。もう一回聴きたい、、、。
最後のショパンも、もう言うに及ばず美しかった。やっぱし、彼のピアノの最大の特徴は、弱音の信じられないくらいの美しさ。ppがこれほど美しいピアニストは、そうはいないと思うな~。ルプーの弱音も美しいけど、ルプーより音質的には温かみがある気がするし。やっぱしこれも、元オルガン奏者の成せる業かしらん??
バッハ、ベートーベン、フランク、ショパン、、、という構成も良かったような。フランクが効いてたよね。どれか一つでも順番が変わっていたら成立しなかったプログラムだと思った。
やっぱし、音が悪いの承知で、サントリーにも行っておけばよかったかな、、、とちょっと悔やまれる。何度でも聴きたいわ。
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あくまでも私の好みの問題だけど、私は、アクションが大きい演奏スタイルの奏者が好きじゃない。先日まで開催されていたショパン・コンクールの動画配信もいくつか見たけど、アクションや顔芸がすごい奏者が多くて引いてしまった。ブレハッチを好きなのは、演奏スタイルに無駄が感じられないというのも大きい。
毎回彼の演奏している姿を見て思うけれど、上体を過度に揺らしたり、顔の表情を過剰に変えたりしなくても、十分美しく表現力豊かな演奏はできるってこと。彼の演奏は、前述のとおり、音もそうだけど、動き一つ一つも理にかなっているというか、そういう表現をするためにそういう動きなんだね、と見ていて納得できる。
ピアノに限らないけど、私は淡々と演奏するスタイルの奏者がやっぱり好きだ。そこから繰り出される美しい音楽に感動する。アクションが大きくて顔の表情が豊かでも、その間は何? そのテンポの揺れはどういう意図?? と感じる演奏では興ざめだ。
あと、やっぱし、オペラシティのホール、あんまし好きじゃないわ、音。席によるかもしれないけど、このホールは残響が長いと思う。先週のカヴァコスは1階席だったけど、やっぱりちょっとワンワン言ってる感じはしたよね。逆に、サントリーは全然ダイレクトに聞こえない席があるし(しかもS席!)。
恐らく、ピアノのリサイタルにはどっちも広すぎるんだろなと。やっぱり、ピアノのリサイタルで1,000席超えるのはよろしくないのでは。まあ、採算を考えて、多く集客したいってのは分かるけれど。売り上げが全然違って来ちゃうもんね。コロナ禍で、ますます経費はかかっているはずなので、、、。
勝手なことを承知で言うと、できれば、東京文化会館の小ホール(649席)か、王子ホール(315席)でお願いします。紀尾井ホール(800席)は、音がキンキンする感じがしてあんまし好きじゃない。評判の良いハクジュホール(300席)は行ったことがないので分からない、、、。席数的にはベストだと思うけれど。
招聘事務所に文句書いちゃったけど、こういう状況で、海外の演奏家を呼ぶことの大変さは察するに余りある。よくぞ実現に漕ぎ着けてくれたものだと感謝したい。できれば、もうちょっと親切なアナウンスをしてくれていたらな、、、、というファン心理です。