映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

愛する映画の舞台を巡る旅Ⅴ ~函館から八甲田へ~ ③

2023-02-26 | 旅行記(国内)

関連映画:『八甲田山』(1977)
 

につづき


《3日目の当初の予定》 善知鳥(うとう)神社 → 八甲田(ロープウェイ) → 弘前津軽藩ねぷた村 → 新青森駅(帰京) 


 6時50分に朝食。八甲田には行けない可能性が高い朝はイマイチ気分も下がり気味、、、。でも、まあ天気には勝てないし、正直なところ、天気予報を見ていて、旅に出る前から“これはヤバいかも……”と思ってはいた。けれど、私はかなりの強力晴れ女なので、今回も神通力が……っ!!とか思っていたのだが。

 朝食会場に行ったら、早々に添乗員さんに「やはり八甲田ロープウェイは運行中止です、道路も4日まで通行止めになりました」といきなりのカウンター。

 ……うっ、、、哀しい。覚悟していたとはいえ、このためにこのツアーを選んだようなもの。がーん、、、がーん、、、、、、、。どこが晴れ女や。

朝食(ほぼ味の記憶がない、、、)

 

 ショック大で、あんまし朝食のこと覚えていない。コーヒーを部屋まで持って行けたので、コーヒーを持ってとぼとぼ部屋へ戻る。

 同じツアーで、「八甲田に今回4回目だけど、3回ダメだった、、、、」と言っている人もいらしたので、頭では仕方がないと理解できても、何か月も前から楽しみにしていたので、、、、。まあ、仕方ないよなぁ。

 これは、旅行後に聞いた話だけど、青森在住の知人曰く、冬の八甲田は天候が変わりやすいから「今日は行けそう!」という日に地元民は行くのだそうな。旅行者はなかなか難しいらしい。やはり、確率4分の1なのか、、、。

部屋から陸奥湾を臨む。まあこれじゃあ仕方ないか、、、

 

 しょんぼり荷造りをして、8時ちょうどに宿を出発。

 バスの中で、添乗員さんが変更後の予定を発表する。善知鳥神社の後、「ねぶたの家 ワ・ラッセ」と「三内丸山遺跡」へ行くとのこと。ふーん、、、と、まだこのときは若干不貞腐れていた感じ。


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 バスで10分ちょっとで、善知鳥神社に到着。雪は降っていないけど、やはりかなり寒い。

巫女さんたち、、、寒そう。

 

 
社務所の前には池ならぬ“沼”

 
 で、ここでハプニングがあり、ツアーに参加していた高齢男性が凍結した石畳の参道上で足を滑らせて後ろ向きに転び、まともに頭を打って仰向けに倒れてしまった。私は偶然、その瞬間を目撃したのだが、ホントに手をつく余裕もなく仰向けにひっくり返ってしまった感じで、倒れた後、まったく動かない。周囲の数人が慌てて近づいて声を掛けたんだが無反応。添乗員さんを急いで呼びに行き、神社の方も119にすぐに電話してくれた。

 幸い数分後には男性の意識も戻って、最終的には自力で立ち上がれたので大事にならなかったんだけど、救急車を呼ぶべく電話をしてくれていた巫女さんは、かなり執拗に「コロナ感染の可能性」を消防から聞かれていた様で、「熱は? 咳は? ワクチンは?」と、そんなんもしも一人旅の通りすがりの人だったら知る由もないことを、恐らくマニュアルなんだろうけどあれこれ聞くのもどうなのかね? もし、一刻を争う状況だったら、そんなことしていたら最悪な事態にだってなりかねないのでは。……まあ、救急も感染症対策をしなきゃいけないので、仕方がないとは思うが、こういうところもコロナ対策のお粗末さを感じざるを得ないよね。

 

これが“うとう”なのかしらん?(肝心の説明書きと思しき石碑に雪、、、)

 

 後で調べてみたら、うとうは架空の鳥、神の使い、、、というものらしい。家内安全とか、交通安全とかのご利益があるとのこと。 

 その後、社務所でお守りなどを買って、バスに戻る。バスガイドさんに、今日の八甲田の天候がいかにひどいかをアナウンスされながら、「ねぶたの家 ワ・ラッセ」に到着。

 

 

ワラッセに到着、、、

 

 来館、先着100名(だったかな?)に、(なぜか)どら焼きをプレゼントでいただく。併せて、鈴としおりとどちらか好きな方をと言われ、しおりは一杯持っているので鈴をいただく。

 

 ねぶた祭を実際に見たことはないのだけど、TVなどで見るたびに、あのねぶたの構造は一体どーなっているの??とかなり疑問だったので、今回、間近に内部もじっくり観察出来て面白かった!

 

 

 

すごい迫力

 

 

 

 

 近づいて見ると、愛嬌があったり、芸が細かかったり、、、。

 それにしても、昔は電球ではなくろうそくでねぶたを照らしていたっていうんだけど、燃えちゃわないのか、、、?とかなり心配になる。実際、燃えたこともあったらしいけど、提灯同様、一応燃えにくくはしていたみたい。

 

こんなねぶたが片隅に。秋田犬かな? 


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 お次は、三内丸山遺跡へと向かう。その途中、自衛隊の青森駐屯地前を通る。

 そう、あの第五連隊は、ここから出発したのだ、、、。今回、八甲田には行けなかったけれど、いかにあの雪中行軍が無謀だったか、数日の旅でもよく分かった。一体、当時の軍は何を考えていたのか、、、。ますます分からなくなる。

 バスで20分ほどで三内丸山遺跡に到着~。もうこの頃には私のナナメだったご機嫌もすっかり元に戻っていた、、、かな。

 

 で、遺跡を見たい人は、ツアーに参加してくれと言われる。なぜなら吹雪いてホワイトアウトになると迷子になって、最悪、遭難するからなんだそうである。そんな大げさな、、、と、この時は思ったけど、後からそれは結構リアルなことだと分かる。

 正直、この近くにある県立美術館にもちょっとそそられて、係の人に歩いてどれくらいかかるか聞いてみると、「15分くらい」だけど、やはり「この後吹雪くかもしれないから、慣れていない人は止めた方が良い」と言われる、、、。そりゃそうか、と納得し、遺跡見学ツアーに迷わず参加することに。

 ツアー出発時刻まで少し時間があったのでミュージアムを見学することに。これが、思いのほか充実した展示で、楽しい。再現された生活の様子が良くできていて、当時の様子がリアルに感じられる。

 

 

 

土偶、、、たくさん。1コずつ見ると可愛い


 で、ツアー出発前に、ゴム長に履き替えさせられる。普通のブーツに滑り止めではダメだと。

 

 いざ、出発、、、と、その前に、館内のジオラマを見ながら説明を受ける。

 

 今度こそ。いざ、出発。……外へ、、、

  

さぶ~~~っ

 

ガイドさんの眼鏡が……。右の画像は、の真ん中にある大型掘立柱建物(復元)の跡

 

 建物内に入って説明を受けている間も、吹雪いたり晴れたり、目まぐるしく天気は変わっていた。ものすごい風で、ビュービュー音がしていて、ガイドさんの声も聞こえづらいほど。

ホワイトアウトになるのが想像できる、、、


 強風で遺跡全体を回れなかったものの、どうにか無事に帰還。寒かった、、、けど、なかなか面白かった、三内丸山遺跡。


④につづく

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イニシェリン島の精霊(2022年)

2023-02-23 | 【い】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv78227/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。

=====ここから。
 
 本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。

 島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリック(コリン・ファレル)は長年友情を育んできたはずだった友人コルム(ブレンダン・グリーソン)に突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。

 賢明な妹シボーン(ケリー・コンドン)や風変わりな隣人ドミニク(バリー・コーガン)の力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる。

 美しい海と空に囲まれた穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる“精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。

=====ここまで。


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 アイルランドが舞台、というだけで劇場まで見に行きました。死ぬまでに一度は行きたい、アイルランド、、、。

~~以下ネタバレしていますので、よろしくお願いします。~~


◆対人距離感がおかしい人。

 初めに言っておくと、面白かった! インパクトも大。いろんな意味で忘れられない映画の1つになるのは間違いない。

 でも、好きか? と聞かれると、あんまし好きじゃないかも、、、、。多分、自分にも似たような経験があるからだと思う(後述)。そのときの、何とも言えないイヤ~~~な感じを追体験させられたような感覚になったのだよね。

 さらに言えば、私はパードリック系の人が大嫌いなんだが、あんまりにもパードリックだけがめちゃくちゃ救いがないオチに同情してしまい、その「嫌悪」と「同情」という相反する感情が自分の中で収拾がつかない感じ。コルムは自らの意志でしたことだけど、パードリックは友人も妹もロバも、、、愛するもの全てを失ってしまうのだ。

 最初、コルムがいきなりパードリックを絶縁するのは、ちょっとあんまりやない??と思ったんだが、見ているうちに、こりゃ絶縁したくなるわなぁ、、、とコルムに激しく共感。だって、パードリック、バカ過ぎる。あれこそ“真正バカ”。もう、どうしようもない、手の付けようがない、修正が望めないバカ。そういう人には、ああやってコルムみたいにキッパリ・ハッキリ絶縁宣言せざるを得ないし、しかしバカはある意味怖いもんナシの人なので、コルムを逆に追い詰めることを平気でやってしまう、、、それくらい絶望的なバカなんである。

 「ここまでしてもダメなのか」とコルムが抱える絶望感は、私も経験者なので痛いほど分かる。私の場合、絶望した相手は、戸籍上の元夫だが。もうね、人との距離感ってのが、生まれつきヘンなんだよね。分からないの、言葉で言っても、ゼンゼン。宇宙人と話しているみたいな感じ。こっちは深く深く絶望の底なし沼へと落ちていくんだが、相手はこっちが何で絶望しているかが分かんなくて、挙句「言ってくれなきゃ分かんないよ!」と。だから言ってんじゃんよ、、、って。コルムと同じ。もし、私もコルムみたいに「今度やったら自分の指切り落とす!」と宣言していたら、私の場合は両手指10本全部失くしていたはず。

 とはいえ、あんなバカのためにそんな犠牲を払うのは、私はゴメンだが、コルムが指切り宣言してしまった気持ちはすご~~~~く分かる。“それくらい言わないとこいつはダメだ”と思って、“それくらい言えばこんだけバカでも分かるだろう”と考えたわけよね。でも、分からなかったんだ、パードリックは。

 一応、戸籍上の元夫の名誉のために言っておくと、彼は人を絶望させるバカだけどお勉強はすごーく出来た(多分)人だったんですよ。頭の良し悪しとお勉強の出来る出来ないは比例しないんです。パードリックはどっちもダメみたいだったけど。

 だから、私が人生でこれ以上ないほど嫌悪した人と同類のパードリックに同情を覚えざるを得ない展開のお話、、、ってのは、やっぱし好きとは言えない。


◆ネットの感想拾い読み。

 コルムがなぜ指を本当に切り落としたか、について、パンフの解説では「コルムは鬱だったのかも」みたいに書かれていた。

 まあ、そうかも知れないが、私は、パードリックへの見せしめだったのだと思っている。飽くまで正気。そうやって、自分がどれだけお前のことを嫌っているのかを分からせてやる!とね。正気じゃ出来ないだろう、、、と普通は思うし、私も前述のとおり、そんなヤツのために自分の身体を傷つけるのはまっぴらだが、正気でやることはアリだと思う。誰かを激しく嫌うと、自分に対する嫌悪感も増幅するので。

 希死念慮に囚われている、と書いている人もいたけど、私も、終盤でパードリックがコルムの家に火をつけたときにコルムが家の中で身じろぎもせずに座っているシーンを見て、ありぃ?このままコルムは死ぬ気なのか??とちょっと思ったけど、その後ちゃんと家から脱出していたので、やっぱり死にたいわけじゃないんだな、と感じた次第。終始、コルムに死にたい願望があるようには、私には見えなかった。

 別の人は、パードリックとの友情がそれだけ重みのあるものだった、、、と書いていたが、もちろん可能性はあるけど、多分違うと思う。理由は前述のとおりだが、ただ、あの閉鎖的な島という環境で人間関係が狭くて濃いので、重みがあるというよりは、逃げられないお隣さん的な圧迫感はあったと思う。いずれにしても、コルムが友情故に指を切り落としたとは考えにくい。

 後世に残る仕事をしたいから、という理由でパードリックに絶縁宣言したのに、フィドルを弾くために欠かせない指を切り落とすなんて矛盾してるだろ、という感想も目にしたが、矛盾だらけなのが人間ってもんだし、フィドルを弾けなくたって作曲はいくらでも出来る。

 男同士の、恋愛感情ゼロ関係での拗らせ話って、ビジネスも絡んでいないし、案外珍しいのでは? 男同士の友情がメインの話って、前向きで汗くさいウザ系が多い気がしていたんだけど、私の思い込みかしら。

 ……と思って、検索してみたら、「マイフレンド・フォー・エバー」「最強のふたり」を挙げている人が割といるなぁ。どっちも未見なんで分からない、、、。私の大好きな「きっと、うまくいく」を挙げている人もいる。あれも超前向きで、ウザ系といえばウザ系ではある。でも大好きだけど。「ショーシャンクの空に」「グリーンブック」も挙がっているけど、まあ、これらもザックリ括れば“良い話”よね。

 やはり、本作は、ジャンルでいえば珍しいと言っても良いかも知れませぬ。


◆その他もろもろ

 本作は全体に暗いのだけど、セリフで笑っちゃうのが結構あって、ブラックコメディと言っていいくらいじゃないかと思う。

 ちょっと知的障害のありそうなドミニクが時々言うことが笑えるというか、鋭いというか。パードリックが、「コルムに絶交された」と愚痴ると「何だソレ、12歳かよ」(セリフ正確ではないです)とヘラヘラ笑いながら言ったり。パードリックがバカにしているドミニクの方がよほど察しが良いし、道理が分かっているという皮肉。

 パードリックがいかにウザいかという描写としては、パブで酔っ払ってコルムに絡むシーンが秀逸。「俺が嫌いなものが3つある。1つ目は警察官。2つ目はフィドル奏者。3つ目は………(何だっけ)??」(セリフ正確ではないです)とヘラヘラ笑いながら繰り返して言ってるんだが、何かもう、、、ウザ度全開で笑っちゃいました。そら、嫌われるよ、あなた。

 結局、マトモな、、、というか、ちょっと知識欲のある人は、あの島での生活はかなり厳しいんだろう。まあ、分かる気はする。パードリックの妹シボーンは、コルムの絶縁宣言を理解できちゃって、結局、島での閉鎖的で保守的な生活に耐えられず本土へと出て行ってしまった。コルムも島を離れればよかったんじゃないのかとも思うが、年齢的に体力・気力が残っていなかったのかな。その割に、教会での告解シーンでは神父に笑える悪態ついていて、十分気力はあると見えたけどなぁ。

 コルムを演じたブレンダン・グリーソンのフィドルを弾く姿が実にナチュラルだったのが感動モノだったんだけど、パンフを読んだら、彼はプロ級のフィドル奏者だとか。……納得。

 本作は、アイルランド内戦のメタファーだとか、背景にあるとか言われていて、それはそうなんだろうけど、そういうことをゼンゼン知らなくても、映画だけで十分面白いし、イロイロ考えさせられる作品になっている。

 原題は“The Banshees of Inisherin”で、イニシェリン島のバンシー。バンシーってのがアイルランド語で直訳すると「妖精女」だそうな。アイルランドの妖精といえば、私の大好きな映画「フィオナの海」があるけど、あれはアザラシが妖精の化身とされていた。「フィオナ~」はまさに妖精譚でちょっとファンタジーな話だったので、本作とはゼンゼン違う。DVD化されていないのがなぁ、、、ホントに悲しい。

 また、アイルランドで妖精といえば、リャナンシー(パンフにも言及があって感激!)。リャナンシーはまさに音楽の妖精で、コルムが指の無くなった左手を振り回しているシーンを見て、リャナンシーのことが頭をよぎっていた、、、。みんシネにリャナンシーというHNのレビュワーさんがいて、ファンだったんだけど、もう10年以上書き込みがなくて寂しいなぁ。お元気かしら。

 

 

 

 

 

 


ロバのジェニーが可愛かったけど、、、

 

 

 

 

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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年)

2023-02-11 | 【し】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv78914/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。
 
 ニューヨーク・タイムズの記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は、ハリウッドに君臨する映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶ性的暴行について調査を開始する。

 取材を進める中、ワインスタインが過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明。さらに、被害にあった女性たちはそのほとんどが示談を受け入れており、証言すると訴えられるという恐怖や、当時のトラウマによって声をあげられずにいた……。

 問題の本質は業界の隠蔽構造だと知ったミーガンとジョディは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。

 そして、サバイバーたちによって遂に沈黙が破られ、ワインスタインによる悪質な事件の全貌と真実が明らかになっていく……。

=====ここまで。


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 スルーしようと思っていたけど、巷で評判が良いのでやっぱり見に行きました。


◆ノミネートゼロは妥当なのか?

 ご存じ、#MeToo運動が広がるきっかけとなった、アメリカ映画界セクハラ事件を世に問うた記者たちの悪戦苦闘を描いた映画。少々実話モノに食傷気味でもあり、ゾーイ・カザンがちょっと苦手なこともあって、スルーするつもりだった。

 何で見ようと思ったかというと、Twitterで賞賛のツイートがチラホラ流れて来ていたのと、本作が今度のアカデミー賞の賞レースにかすりもしなかったことで、一部フェミの間で批判が上がっていたから。

 そーか。じゃあ、どんな映画かこの目で見ておこう、という気になった次第。

 で、結論から言うと、面白いし真面目に作られた良い映画だけど、まあ、ノミネートゼロなのはそれほど不思議じゃないな、ってこと。

 何でどの部門にもノミネートなしだったのか、真相は分かるはずもないけど、私が感じたのは、既視感が強いということ。この手の“ヤバいネタ”を世に出すためのメディアの裏側を描く映画では、古くは『大統領の陰謀』(1976)とか、最近では『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)とかが既にオスカーをゲットしているし、フェミ系映画としては割と斬新な切り口の『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)がオスカーをゲットしている。別に、フェミへの眼差しに欠けるから、フェミ映画として本作を無視した、ってことでもないように感じる。

 本作が賞レースに乗るには、それらの既出作品を超える何かがなければならないという、かなり高いハードルが最初からあったともいえる。


◆事実を確実にニュース化するということ。

 こういう、メディアの裏を描いた作品を見ていつも思うのは、やっぱし、事実を公にする、報道するためには、多大なコストがかかるってこと。

 なぜなら、あるネタが事実かどうか、ウラをとるのは、人間がするしかないから。近未来ではAIができるようになるのかも知れないけどさ。やはり、人が動く=金がかかる、なわけよ、ぶっちゃけ。その人が、大手メディアの記者だろうが、フリーのライターだろうが、動けば、普通に交通費や人件費がかかる。場合によっては、飲食費や宿泊費も余計にかかる。手間もかかるが、その手間にも金がかかっている。

 ネットのタダ記事に馴らされている現代人は、金を払って情報を買うことの意義を忘れがちだが、事実を、しかも重大で、ヤバければヤバイ事実ほど、それをニュース化するには、膨大なコストがかかるのだ。逆に言えば、タダで出てくる情報なんてのはゴミみたいなもんだということ。所詮“安かろう悪かろう”なんである、情報も。

 もちろん、金だけじゃない。こっちの方がもっと重要だろうが、取材力・調査力が必要不可欠だ。この能力は、一朝一夕に培えるものではない。そこに既にもの凄い時間と費用がかかっているわけだが、この能力なくして、重大な不都合な事実を暴くことなど不可能である。

 それが証拠に、ワインスタインは多大なコストを掛けて情報をコントロールしていたではないか。そこまでして、己の性欲・支配欲を満たそうとする思考回路は理解不能だが、世に出したくない、不都合なネタほど、手段を選ばず隠蔽されている。だから、それを掘り起こそうとすれば、財力・知力・胆力が必要なのである。

 本作で主役の2人の記者ミーガンとジョディは、そういう意味ではまだ若干経験値が足りないのだが、そこを絶妙にカバーして彼女らを導くのがパトリシア・クラークソン演ずる上司レベッカ・コルベットである。彼女の経歴は分からないが、恐らく彼女も、男社会だったニューヨーク・タイムズで数々の修羅場をくぐって来たツワモノだろう。この方が実在したのかどうか(多分実在だろう)分からないが、こういう人がいるというのは、若い2人の記者にとってどれほど心強かったろうと思う。

 真相に迫る過程はやはりスリリングであり、ワインスタインは声と後ろ姿でしか出て来ないが、直接2人が対峙する終盤のシーンは、本作の白眉である。彼女たちは、レベッカたちに鍛えられて、ワインスタインらを前に堂々としたもんだった。エラい!!

 多大なコストをかけて、やっとの思いで記事化されたのは良いが、問題はそれを出すタイミング。何であれ、重大スクープは出すタイミングが命取りになりかねない。ライバル紙の動きも気になるし。本作では、ネット社会での記事の出し方も考えさせられるラストシーンとなっている。その一瞬は、呆気ないほどである。

 ただ、驚いたのは、ジョディが被害者の一人に会いに行くシーンで、本人が留守だったためにその夫と話をするんだが、被害に遭ったことを夫にベラベラ話しちゃうんだよね。これ、マズいんじゃないの??とビックリ。だって、夫に秘密にしていたかもしれないし(実際、夫は知らない様子だったし)、あまりにも不用意だと思うのだが。その後、被害者本人と話すシーンが出て来て、この件は何事もなかったかのようにスルーだったのが、ますます??だった。


◆怖いんだよ!!

 本作は、実際にあった事件を映画化しているということで、主要登場人物は実名である。こういうところは、正直、本当に羨ましい。邦画界でこれを実現させられる骨のある映画会社はゼロだろう。……というか、アメリカ映画では基本実名なんだが。邦画界も、もっと自国の観客を信頼してはどうか。どこを向いて映画を作っているんだろうか。

 ワインスタインのやってきたことは、セクハラなんてもんじゃなく、立派な性犯罪である。なのに、長年黙認されてきたってんだから、この手の問題の闇は深い。とにかく、セクハラもそうだが性犯罪の場合、加害者よりも被害者が責められるという、特異な社会構造がある。加害者が100%悪いのに、なぜか被害者に非があると言われる。お前が誘ったんだろ、隙があったんじゃねーの、等々。

 しかも、本作では、ワインスタインはその財力にモノを言わせて、金で相手の口を封じ、被害者の弁護士も巨額の成功報酬に目がくらんで、刑事告発をさせなかったというのだから、もう、被害者にとっては地獄である。まさに“加害者天国”。メディアも法曹界も映画界も、こぞって天国の演出に加担していたってことだわね。

 でもこれ、アメリカに限らず万国共通だと思うわ。当然、日本もね。で、被害者は沈黙させられる。

 印象的だったのは、被害者が一様に、被害に遭遇した時の心情を「怖かった」と言い、その後、被害について口にすることも「怖かった」と、常に恐怖感を口にしていたこと。もうね、これは、もの凄くよく分かる。私もセクハラレベルの被害なら、かつていくつも遭遇しているので。ましてや、犯罪ともなれば、、、。

 取材する2人も(原作読んでいないので分からないが)、実際はもっと緊迫した局面が多々あったに違いない。自らの意志で調べているとはいえ、恐怖感は相当なもんだったろう。

 ネットの感想で、男性によるものをいくつか見たが、やはり『SNS-少女たちの10日間-』(2020)でも見かけたのと同様、「こんなひどいことが実際あったなんて!」的なことを書いている人がいた。確かに酷いけど、女の私から見れば極めてリアルな話でしかなかった。中には、「大好きな映画の世界でこんなことが、、、」というのもあり、オメデタ過ぎて笑ってしまった。この問題での男女の認識の差って、永遠に埋まらないのかも。

 良かったのは、あんまし“女だから”的な要素が強調されていなかったことかな。記者2人は子持ちのワーキングマザーだが、仕事と子育ての両立!!みたいな切り口はほぼなく、ミーガンが若干産後鬱っぽくなっているくらいで、日常としての描写に徹している。

 ミーガンを演じたキャリー・マリガン、あんなにハスキーで低い声だったかしらん?? なんか、出産後で育児に疲れている感じがよく出ていた。

 本作は、ブラピが出資しているのね(アンジーにDVで訴えられていたのは却下されたのか?)。グウィネス・パルトロウも実名で声だけの出演をしている。ワインスタインの制作した映画をみんシネで検索したら、ものすごい数で、しかも、DDLやHBCの出演作も複数あり、ヴァルタン主演の「マンイーター」もだった!! もしや、DDLやヴァルタンも傍観者だったのではないか、、、と不安になる。もしそうだったら、かなりガックシだなぁ、、、。

 

 

 

 

 

 


相変わらずダサい邦題(何とかならんのか、、、)

 

 

 

 

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