映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

息子の面影(2020年)

2022-06-19 | 【む】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv77115/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。
 
 メキシコの貧しい村に暮らすマグダレーナ。貧困から抜け出すため仕事と夢を求めた息子は、友⼈とアメリカへ向けて旅⽴ち、そのまま消息を絶つ。

 多くの若者が国境を越えようとして命を失うことが多い中、マグダレーナは、息⼦を探す為に⼀⼈、村を出発する。やっとの思いで得た情報を頼りに、ある村へと向かうマグダレーナは、道中で息⼦と同じような年齢の⻘年ミゲルに出会い、彼が母親を探していることを知る。

 息子と母、それぞれが大切な存在を探している二人は共に旅を始める。

=====ここまで。

 いろんな意味で“おそるべき”メキシコ映画。

 
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 見たいなぁ、、、と思いながら、ついつい延ばし延ばしになっていたこの映画、ようやく先日劇場まで行って見ることができました。

 感想前に愚痴です。

 せっかく劇場まで行ったのに、斜め後ろの席の中年カップルがサイテーで、、、。予告編のときから、スナック菓子を、ボリボリ、カリカリ、シャリシャリ、、、とすごい音を立てまくって食べていて、まあ、本編が始まったら静かにしてくれるだろう、、、と思っていたけれど、始まってもゼンゼン変わらないトーンで食べる食べる。ここは自宅のリビングじゃないんですけど、、、。

 本作みたいにセリフではなく映像で展開していく映画の場合、シーンとしたシーンが(ダジャレではないです!)多いのだが、そのシーンとしたところで、シャリシャリ、、、、ボリボリ、、、響く響く。始まって数分でさすがに注意しようかと思ったところ、別の女性が「静かにしてください。音立てないように!」と注意してくださいました。

 が。ちょっと音を気にするように遠慮がちに、まだ食べるのだ、このカップル。こんな非常識カップルを気にしていると時間とお金がもったいないので、私は途中から映画に集中するように脳内モードを頑張って切り替えました。気が付けば音は止んでいたけれど、ああいう人の神経って、ホント理解できん。自分の立てた音が劇場内に響き渡って(しかも大事なシーンの最中)いるのに、よく平気でいられるよなぁ。私なんか、ほとんど音は出ない水筒の蓋を外すときでさえ、ものすごい気を使うのに、、、。

 劇場では、たまにこういうハズレなお隣さんに当たってしまい、気分が台無しになることがあるけれど、こればっかりは運だね、、、嗚呼。

 ……で、ようやく感想です。


◆地味ながら秀作

 この映画、ほとんど説明的なシーンもセリフもない。なので、シーンがぱっと飛んで??となるところが何か所かあるのだけど、そのまま見ていれば「ああ、そういうことか……」と分かるようになっている。それを映像と最小限のセリフだけで成立させているところがなかなか凄いと思った。

 メキシコというと、怖い話をよく聞くのだが、本作でもやっぱりそういう社会的な背景が重要なファクターになっている。

 息子と友人が2人とも行方不明になり、友人の方は、早々に遺体となって無言の帰還をする。友人の葬儀の後、友人の母親から、息子を探しに出る足しにしてくれと現金を渡されるマグダレーナ。このエピソードが、ラストにすごく効いてくることになろうとは……。

 息子の消息を訪ねてあちこち歩き回るマグダレーナ。息子が乗ったバスの会社(?)に訪ねて行き、職員の女性に「バスが襲撃されたんじゃないか? 運転手に話を聞きたい」と言うマグダレーナ。女性職員は「そんな事実はありません」と実にそっけない対応。肩を落とすマグダレーナは、とぼとぼと事務所のトイレに入って、手持ちの現金の残りを数える。

 すると、先ほどの女性職員がトイレに入って来て、マグダレーナが入っている個室の扉の外から「あんなこと人前で言わないで。襲撃なんてよくある。運転手も帰って来ていない」と言って、とある人物を訪ねるようにとこっそり教えてくれる。つまりは、そのような事件は日常茶飯事で、下手するとバスの運転手もグルだったりするんだろう(そこまでは描かれていないが)。

 マグダレーナは、その人物がいる危険な地域へ出向くが、その途中、アメリカから退去命令を出されて帰って来たミゲルに出会い、ミゲルは「この辺は危険だし、(マグダレーナの目的地は)ダムの向こうだから今日中には行けない。ウチに泊まると良い。母親とも気が合うと思うよ」と言って、マグダレーナと共に実家へと帰る。しかし、帰った実家はもぬけの殻で荒れており、小屋で飼っていた豚は死んで悪臭を放っている。

 結局、ミゲルは母親を探すことになり、マグダレーナはミゲルの知人にダムの対岸まで船に乗せてもらって渡る。目的の人物に会って、バスが襲撃された様子を聞き、マグダレーナは息子が死んだと受け入れざるを得ない状況だったと知る。

 ミゲルの家に戻って来たマグダレーナは、母親の見つからないミゲルに「私と一緒に住もう」と提案し、その晩はミゲルの家に泊まるのだが、そこへ、何者かが数人で襲撃にやってくる。慌てて家を飛び出し草むらに隠れたマグダレーナとミゲルだが、ミゲルは見つかり射殺される。マグダレーナも驚いて音を立ててしまい追い掛けられる。

 マグダレーナが転んで絶体絶命……、と思いきや、、、。

 まあ、敢えて結末は書きませんが、このラストはなかなかの衝撃な展開で、ただ観客を驚かせるだけ、、、というのではもちろんなく、メキシコの闇がそこにあったのでした。正直なところ、終わって劇場内が明るくなっても、しばらく立ち上がれなかった。うぅむ、これは辛い。


◆その他もろもろ

 監督のフェルナンダ・バラデスも、俳優さんたちも無名で、マグダレーナとミゲル以外は素人を起用しているらしいが、いろんな賞を獲ったのも納得の逸品だと思う。

 ストーリーもだけど、映像の説得力が素晴らしい。メキシコの荒涼たる自然が間々に挟まれ、セリフが少ない分、実に雄弁な映像に終始目が離せなかった。

 メキシコ映画というと『闇の列車、光の旅』(2009)がなかなか強烈だったけど、本作は『闇の~』に比べてどぎつい映像はまったくといっていいほどないが、同じくらいの怖ろしさがあった。怖ろしさの質が違う。『闇の~』は直截的だったけど、本作は背景にあるものを想像するとゾッとなるように作られている。

 途中、スペイン語でないセリフの部分では字幕が出ないのだが、ここは敢えて字幕をつけなかったということだろう。その代わり、セリフの内容が分かる映像になっている。このあたりの作りも巧い。

 残念なのは、パンフがないこと。終わった後、売店で買おうと思っていたら、係の人が「本作品のパンフレットはございませ~~ん」と大きな声でアナウンスしていた、、、がーん。こういう映画こそ、パンフが欲しいのに。……まぁ、配給会社にはよくぞ、日本で上映してくれたと感謝しておりますが。

 メキシコ映画は、あまり見ていないけど(怖いという先入観、、、)、小説をいろいろ読んでみたくなった次第。何年も前に読みかけて途中で放り出したロベルト・ボラーニョの『2666』もまた読んでみたくなったし。

 行ってみたいけど、ちょっと怖いなぁ、、、。ツアーなら良いのか? 知り合いのお子さんがお仕事でメキシコに赴任しておられるが、都会の一部と、観光地として有名なところは「比較的安全」と言っていたらしいが。比較的、って、他があれじゃあね……。

 

 

 

 

 

 

 

 


映画館では音の出ないお菓子を食べましょう。

 

 

 

 

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コメント
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